日本では、地域によって違いがありますが、大都市を中心として概ね、外国の有名な歌劇場の最近の上演を映画館で見る事ができます。それを、オペラの“ライブビューイング”と呼びます。まあ、本来のライブビューイングは“生中継”の事を指すし、実際、これらのライブビューイングによるオペラは、諸外国では生中継をされています。でも日本の場合、字幕を入れる作業が必要な事もあり、生中継用に収録されたものに字幕などを付加して上映する事もライブビューイングと呼ぶようです(少なくも、オペラではそんな感じです)。
関東地方では、三つの歌劇場のライブビューイングを楽しむ事ができます。一つが、アメリカのメトロポリタン歌劇場で、二つ目が、フランスのパリ・オペラ座、三つ目が、イギリスのロイヤル・オペラ・ハウス(いわゆる、コヴェント・ガーデン)です。メトロポリタンが松竹系の映画館で、パリ・オペラ座が東急系で、ロイヤル・オペラ・ハウスがイオン系で見ることができます。
この中で、私と縁遠いのが、ロイヤル・オペラ・ハウスのライブビューイングです。なにしろ、イギリスで上演し収録したものを、すぐに字幕などを付けて、翌日に1回きり上演してお終い…なんです。まあ“生中継”ではないけれど“取って出し”なのが特徴です。
まあ“取って出し”とは言え、たった一日で翻訳を付けて上映するのですから、オペラの日本語訳は事前に用意しておいて、それを映像に合わせてはめ込んでいくのでしょうが、それでも、その作業をたった1日でするのですから、スタッフは大忙しでしょうね。ですから、このロイヤル・オペラ・ハウスのライブビューイングでは、オペラ本体には日本語訳が付くそうですが、幕間の解説部分には字幕が付かないそうです。まあ、英語が聞き取れる人なら、何の支障もないでしょうが、案外、クラシック音楽ファンって、英語の苦手な人も多いので、字幕無しではつらく感じる人も多いのでは?
あと、なにしろ“取って出し”なので、上映するのが、平日の夜となります。上映劇場の近くに住んでいた勤めていたりするれば別ですが、私はそうではないので、全く見に行くことができない、幻のライブ・ビューイングなんです。
以前、最寄りの映画館で、一週間だけ3Dで、ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されたビゼー作曲の「カルメン」の上映をしてくれましたが、まだ上映方法が試行錯誤だったのでしょうし、おそらく当地では思惑ほどに人が集まらなかったので、現在の方式に変わってから、上映劇場から外されているのだと思います。
たとえ平日夜の上映でも、近所の劇場だったら、なんとか都合をつけて見に行くだろうに…ああ、残念です。
日本でオペラのライブビューイングを始めたのは、メトロポリタン歌劇場(通称、メト)なんだそうです(ほんと?)。
とにかく、メトのライブビューイングは、実によくできていると思います。まずは演目が素晴らしいし、出演歌手たちも素晴らしい。旬の大物歌手がよく登場するし、無名な人であっても、かなりの実力派揃いだから、見ていて結構安心できます。また、演出も気をてらったものが少なく、割とオーソドックスなものが多いのも良いです(それでも最近の“新演出”は奇をてらったものがあるので、注意する必要があります)。
幕間のインタビューも実に情報量が多いし、休憩時間もたっぷりあって、休み時間もあって、うれしいです。なにしろ、オペラの1幕って、普通の映画の1本分あるので、立て続けにやられると、結構つらいんですよね。
メトの最新上演作を約一ヶ月遅れで上映してくれるのもうれしいです。ですから、オペラのシーズンは、10月開始の5月終了ですが、日本のライブビューイング版は、11月開始の6月終了となるのも、なんかいい感じです。さらに、メトの場合、8月中旬から9月中旬のオフシーズンにかけて、アンコール上映があるのもうれしいです。上映する映画館はさらに限られますが、シーズン中に見逃した作品を見ることができるのが、うれしいです。
私の中では、このメトのライブビューイングが、ライブビューイングのデフォルトとなっています。
そこへ行くと、パリ・オペラ座のライブビューイングは色々と変わってます。まず、パリの場合、メトと違って、あまり有名な歌手は出演しないようです(失礼)。その代わりに演出が、結構奇抜だったり斬新だったりします。メトがオペラ初心者向けなら、パリはオペラ中級者向けかもしれません。あと、メトはすべての演目がオペラなのに対して、パリはオペラは半分だけで、残りはバレエだったりします。だから、メトが1シーズンに10作前後のオペラを上映するのに対して、パリは5作前後と、ややボリュームに欠けます。幕間のインタビューもメトほど充実しているわけじゃないです。
ただ、メトと違って、全国一律の日程で上映しているわけじゃなく、それぞれの上映館で、少しずつ上映日程が違うのが面白いです。メトだと見逃したら、アンコール上映まで待たないといけませんが、パリの場合、少し待てば、別の上映館で見ればいいのです。そこがちょっと便利かもしれません。
以前は「World Classics @ CINEMA」という企画があって、ヨーロッパのいくつかの歌劇場の上演をセレクトして、日本でも数年間はオペラ上映をしていたようですね。ネットでググると今でもヒットしますが、最近は上映していないようです。残念ですね。
しかし、これら映画館でのオペラ上映も、よくよく考えてみれば、大都市圏だけの話です。生のオペラ公演が大都市だけでしか行われないのは、収益性を考えれば仕方のない事ですが、映画上映であっても、大都市近郊でしか上映されないとは、よっぽどオペラって、儲からないコンテンツなんですね。いやあ、残念。
最後にそれぞれの公式ホームページをリンクしておきます。
World Classics @ CINEMAのライブビューイング
しかし、ライブ・ビューイングも良いのですが、やはりオペラは“生”に限りますよ。今年は何回、生のオペラを見られるかな?
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