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Y先生のコンサートに行きました

 いやあ、久し振り。まだ先生に師事していなかった頃。まだ先生が活動の拠点を東京に移す前の頃。Y先生は、わが地元で地道に歌手活動をしてらっしゃいました。コンサートを開いたり、オペラ公演をプロデュースしたり…、私は地元の音楽ファンとして、それらの活動を見に行ったものです。

 そして、時が過ぎ、Y先生は活動の拠点を東京に移し、それっきり、なかなかY先生の歌を聞くチャンスが無くなりました。

 しかし、ふとした縁で、Y先生と師弟の関係になりました。元々ファンですし、今や生徒となったわけですし、当然、先生のコンサートって奴を、可能な限り、コンプリートしなけりゃなりませぬ。少なくとも、前の師匠であるキング先生の時は、ほんと、可能な限り、リサイタルやコンサートに出向いたものです。まあ、一種の“動員”ってやつです(笑)が、それが“仁義”だと思ってましたし、先生のコンサートのチケットを購入するのも、謝礼の一部と考えていました(でしょ?)。

 ですから、Y先生に師事するようになって「先生のコンサートとかあったら、教えてください。ぜひ見に行きたいのです」とお願いしました。Y先生のコンサートは、師弟の関係だから“お義理”で見に行くと言うよりも、元々師弟になる前からのファンですから、結構マジな気持ちでお願いしたのですが、そのたびに「いいですよ、無理しなくても…」とおっしゃって、決して教えてくれなかったです。「チケットは、ちゃんと売れているから、気にしないで」と言うのが、先生の常でした。

 「いやいやいや、気を使って言ってるわけじゃなく(いや、多少は気を使ってますが…)、私、あなたのファンですから…」と言っても、普段はなかなか取り合っていただけませんでした。

 それがある日、ふと「今回のコンサートは、チケットが売れてなくて困っているんだよ…」とポツリと言うじゃないですか!

 ビッグチャンス! 普段は「コンサートに行きたいです」「大丈夫です、無理しないでください」という会話だったのに、今回は遠回しにコンサートに来てもいいですよっておっしゃるわけで…。場所も横浜だし、その日は休みも取れるし…さっそくチケットを買わせていただきました(実際は「買いたいです」「無理しないでください」で一悶着あったわけですが…)。

 で、念願かなって、Y先生のコンサートに、行ったわけです。いや~、先生が活動拠点を移して以来、始めてのコンサートで、ほんと、久し振りでした。

 先生が「チケットが売れていない…」と言うから、ガラガラじゃないかと思っていたら、ウソウソ。400名弱入るホールに七割方のお客さんですよ、それも真夏の平日の昼間ですよ。全然チケットが売れなくても不思議ないのに…なんですか、この集客力! ちなみに、会場の七割方のお客さんってのは「ほぼ満席。良く見ると、チラホラと空席があるかな?」ってレベルです。いやあ、地元で活動していた頃とは雲泥の差じゃないですか? 音楽事務所に所属して、地道に活動していると、ファンも増えるものなんですね。

 まあ、やせても枯れても、プロの歌手ですからね、そのくらいの集客力がないと、演奏でメシは食えないわけで…当然と言えば当然な話です。趣味で歌っているわけじゃないのですから、七割程度の入場客では「チケットが売れなくて…」とも言いたくなるんでしょうね。コンサートも立派な仕事ですからね。

 でも、こうして、客の入りが悪くても(と言っても300名前後は入っているんだけれど)地道にキャリアを積んで、ファンを増やして、そして立派な歌手になっていくんでしょうね(って、上から目線でごめんなさい)。私は生徒だけれど、一人のオッチャンとして、応援したくなります…ってか、私は先生の以前からのファンだった(笑)。

 で、コンサートの演目は…日本歌曲(うわ、地味!)。今回のコンサートは、お一人ではなく、奥様先生(ソプラノ)との共同コンサートって奴で、Y先生ご自身のコンサートは何度か行きましたが、奥様先生の歌声を聞くのは初めてなので、それも楽しみでした。

 最初、日本歌曲のコンサートと聞いて、ちょっぴり引いた事は白状します。だって、私、日本歌曲、好きじゃないもの。だってね、日本歌曲って、どれもこれも根暗で、ウツウツとしていて、陰にこもるじゃない? そういうのって、苦手なんだよね、私。

 …と思って、覚悟を決めて言ったのですが、結構コンサートは楽しめました。たぶん、選曲がよかったんですね。もちろん、根暗でウツウツとした曲もありましたが、コミカルな曲もたくさんあって(主にY先生担当)、声をひけらかすタイプの曲もあって(主に奥様先生担当)、日本歌曲も捨てたものじゃないなと、認識を改めた私でございました。

 それにしても、初めて聞いた奥様先生は…パねえなあ。うん、実にパねえ歌声でした。あれほどパワフルなソプラノ歌手って…プロでも滅多にいないよ。あれは、ホンモノ中のホンモノって感じです。ホールがとても小さく感じました。

 無論、我がY先生も、頑張ってました。以前よりも、さらに歌に味わいを感じました。バリトンってのは、高い方でも低い方でも勝負をしない声種なんですが、じゃあどこで勝負をするのかと言うと、中音域なんですね。一番、歌でよく使う音域、その中音域をうっとりする美しい音色で歌うのがバリトンの真骨頂なわけで、以前よりも、さらに深みのある歌声になってらっしゃいました。いやあ、ちゃんと進化進歩してらっしゃいます。

 今回、Y先生が歌われた曲の中でも「落葉松」「つくだ煮の小魚」「木菟」「歌」は特によかったです。私も歌いたいかも。

 次はY先生のドイツ歌曲のコンサートに行きたいかも。あの声だもの、ドイツ歌曲はきっといいでしょうね。

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コメント

  1. おぷー より:

    師事している先生が上手に舞台で演奏されると、自分も誇らしく思います。
    「さすが、先生だわーっ!」って。
    で、私、もっと勉強しなきゃって思うのです。
    素敵なコンサートでよかったですね![E:happy01]

  2. おはぎ より:

    やっぱり歌声に聞き惚れるような先生に習いたいものですよね・・。

    最近、自分の声楽の先生の声が、聞きづらい私・・。

  3. すとん より:

    おぷーさん

     誇らしい…そうかもしれません。「さすが、先生!」と思いますよ。で、その先生を目標に、少しでも近づこうと思うわけです。うんうん、そういう意味では、先生が演奏家であるというのは、恵まれているのかもしれません。

    >素敵なコンサートでよかったですね

     いや、ほんと、全くです。

  4. すとん より:

    おはぎさん

    >やっぱり歌声に聞き惚れるような先生に習いたいものですよね・・。

     ですね、そういう点では私は恵まれているのだと思います。今のY先生も素晴らしいし、以前のキング先生も(その教え方は私には合わなかったようですが)歌も声も素晴らしい方でしたからね。

     先生って、身近にいる、目標だし、あこがれの山頂なんだと思います…でないならば、それはちょっと考えものなのかもしれないと、個人的に思います。

  5. だりあ より:

    私、「落葉松」(小林秀雄さんのほうですよね?)、大好きなんです。特に、本田武久さんの歌われる落葉松を聴くと、なぜか涙がにじんできます。
    日本の歌曲はどれも好きなんです。言葉の意味がよくわかるし、しっとりして、耳にムリがないので、いつもスーっと脳に浸み込んでくるような感じがします。

    すとんさんは日本の歌曲はイマイチ・・、とのことですが、この歌はお好きとのこと、ぜひ、いつかこの歌をパワーフルに、悠々と、すとんさんのお声で歌い上げてくださいませ。

  6. すとん より:

    だりあさん

    >私、「落葉松」(小林秀雄さんのほうですよね?)、大好きなんです。

     はい、小林秀雄氏の方です。

    >すとんさんは日本の歌曲はイマイチ・・、とのことですが、

     これは近々書こうと思ってますが、私は「日本歌曲がイマイチ」なのではなく、今まで聞いてきた「日本歌曲を歌う歌手の歌がイマイチ」だったせいかな…と思うようになってきました。

     それはともかく、日本歌曲は自分で歌うには、ハードルが高すぎます。歌うくらいなら、朗読の方がナンボも得意ですよ、私。詩の朗読と同等かそれ以上の説得力をもって歌えない限りは、日本歌曲を人前で歌うのは厳しい…と思ってます。もちろん、勉強のために歌う場合は、その限りではありませんが。

     日本歌曲は音楽的にはドイツ歌曲の向こう側にある音楽だと思ってます。つまり、日本の詩に、ドイツ風の音楽をつけたものが、日本歌曲だと考えています。イタリアものを中心に勉強している私にとって、ドイツ音楽はなかなか難しいですし、その向こうにある日本歌曲は、もっともっと手強いって感じです。

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