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タクシーに乗ってレッスンに行ってみた

 声楽のレッスンの記事です。

 「ああ、レッスンの時間になってしまったなあ」とつぶやいた時に私がいた場所は、職場の会議室ってところで、私はどうしても抜けられない会議の最中だったわけです。とにかく、会議が早く終わる事ばかりを願って、私は余計な事にクチをはさまずに、まるで嵐が過ぎ去るのを頭を低くして待っているような感じで、ひたすら会議が終わるのを待っておりました。

 会議が終わったのは、レッスンが始まってから、すでに約30分がたったあたり。もはや、この時間となっては、自転車をすっとばして、先生のお宅に向かっても、到着はレッスンの終了後になってしまいます。では、レッスンを休むか? 声楽のレッスンは二週に一度しかないわけで、一回休んでしまうと、一カ月レッスン無しになってしまうわけだし、今は発表会を控えた大切な時期だし、なんとしてもレッスンに向かいたかった私です。

 そこで、タクシーを呼んでみました。

 タクシーって、呼んだらすぐに来るものと思っていたけれど、呼んでからタクシーが来るまで10分もかかってしまいました。ううむ、これなら、その10分を見越して、タクシーを呼べばよかったな。

 タクシーに乗って、先生のお宅まで15分、2500円もかかりました。まあ、安くはない金額ですが、自転車でレッスンに向かえば、全くレッスンできずに終わってしまいますが、タクシー代2500円を支払えば、多少時間が短くなってしまうけれど、レッスンが受けられるわけで、そこはお金に変えられないものがあるわけなんですよ。それに、何と言っても、タクシー利用のいいところは『全然疲れない』って事です。職場から自転車を飛ばして来ると、ヘロヘロになって、とても歌える状態じゃないですからね。それを考えると、タクシー料金くらい、安い安い(って、強がってます:笑)。

 とにかく、タクシーを利用したおかげで、レッスンはいつもよりも短い時間となってしまいましたが、それでもなんとか受ける事ができました。やれやれ。

 ちなみに、私のレッスンは、妻と一緒に受けていて、一人45分ずつの二人で90分のレッスンなんです。で、普段は私が最初で、妻が後にレッスンを受けているのですが、今回は、妻のレッスンを先にしてもらって、妻のレッスンが終わるまでに、私が先生のお宅に到着できれば、御の字のはずだったのですが、そうもいかずに、少しばかり遅刻してしまいました。まあ、私が遅刻した分だけ、妻はたっぷりとレッスンしていただけたので、夫婦的には損も得もなかったわけです。

 ってなわけで、遅刻してレッスンに臨んだ私です。

 レッスン室に入ると…当然、妻がレッスンを受けていたわけですが、先生が妻のレッスンで面白い事を言ってました。

 モーツァルトの時代の音楽は、現在、普通に演奏されるテンポよりも、ずっと速いテンポで演奏されていたのではないかと、最近は考えられているのだそうです。その理由は、モーツァルトの書いた楽譜にたびたび見られる白玉音符のタイが、それなりに長いのですが、楽器と言うのは、その性能によって、音を鳴らし続けられる時間ってヤツに限界があるので、当時の楽器の性能を考えると、その曲のだいたいのテンポが分かるのだそうです。

 と言うのも、モーツァルトの時代の楽器は、現代の楽器とは違って、まだまだ古楽器が頑張っていた時代なわけで、あの手の楽器は、実は持続音を鳴らすのが、今の楽器と比べると、かなり苦手なんです。今の楽器なら、楽々鳴らし続けられる音も、当時の楽器ではさっさと減衰して消えてしまう…というわけです。

 だから、モーツァルトの書いた楽譜の中に現れる、白玉音符をタイでつないだ箇所の音が鳴っている時間は、その当時の楽器の持続音の最大持続時間内に収まっているわけだから、その曲のロングトーンの長さを見れば、全体のテンポが分かるわけだ。

 なので、モーツァルトの曲って、実はかなり速いテンポになるんだそうです。

 だから、モーツァルトの曲を練習する時に、参考音源として、あまり古い音源を聞いてしまうと、モーツァルトが作曲した当時の観点から考えると、考えられないほどゆっくりと演奏されたモノもあるので、そういう演奏は、ちょっと避けた方が良いのだそうです。なにしろ、今の楽器なら、いくらでもゆっくり演奏できるし、歌手って奴は、テンポを落として歌いたがるものですからね。

 ま、昔の演奏を記録した音源の音楽的の価値は不変であっても、当時の時代(と今の時代)の演奏の常識とは合っていないって事ですね。

 さて、妻のレッスンは、たっぷりやったはずなので、そうそうに終わりにしてもらって、残りの短い時間で私のレッスンをしてもらいました。

 「発声練習は必要ですか?」

 そりゃあ、必要ですよ。会議の時は、石になっていましたので、全然、声が出ませんよ。

 そこで(時間が短い事もあって)発声練習はごくごく簡単に、声を前に飛ばす事と、響きを落とさない事を意識して、サラっとやりました。

 さっそく曲の練習です。発表会でも歌う予定の『Non t’amo piu!/君なんかもう』です。

 色々と注意を受けましたので、その注意点を簡単に羅列してみます。

 ・音程が跳躍する時は、跳躍した先の音よりも、跳躍をする前の音をしっかりと歌うこと。

 ・音程の跳躍の幅が広い時は、お客に分からない程度のポルタメントを使って跳躍すると結果がうまく行きます。

 ・(いつも言われている事けれど)休符でカラダを休めないようにしましょう。休符を見たら、カラダは力を抜かずにカタチを維持したまま、パンと張り続けているようにしましょう。

 ・前回は「Meno mosso」は楽譜通りゆっくり歌うという事に決めたけれど、やっぱりそれでは、落ち着きがよくありません。理屈は通らないけれど、楽譜ではなく慣習に従って「Meno mossso」の部分は、テンポを速めて歌う事にしました。

 ・細かい音符が続くところは、急がないで、歌を前へ前へ進行させることを考えて歌うこと。

 ・表現したい事は抑えず、表現していきましょ。

 ・pとかディミヌエンドとかあっても、表現が反対の方向を求めていたら、表現が求めるように歌う事が大切。

 ・低い音は高みから軽く歌う事(低い音は捨てる)。

 ・“piu”の“u(本当はアクセント記号が付いてます)”は、私の「ウ」の発音では浅いので、「ウ」と「オ」の中間音程度の発音がちょうど良い。

 って、感じでした。最後に先生がおっしゃったのは、この曲は私の声に合っているのではないか?って事です。そう言われると、なんか、うれしいですね。

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コメント

  1. operazanokaijinnokaijin より:

    某管楽器奏者さんのエッセイに曰く、
    バッハ自身のライブ演奏(としか思えない)海賊版レコードがあるそうなので、
    そういうのを聞けば、当時のことがわかるかも。

    古楽器オーケストラを聞いていて、
    弦は別段、変に思わないのですが、
    管、特にフルートの古楽器に関しては、
    うーん、なんだか、音が細いなあ、
    現代楽器の演奏の方がいいなあ、と感じること、しばしば。

    木から金属に、指で塞げるサイズから、キーで塞ぐサイズへ、
    などなど、改良に改良が重ねられ、音量音質ともアップしているのだから。

    有田さんのトラベルソの演奏は、素晴らしいと思うのですが、
    有田さんの現代楽器の演奏も、また、素晴らしい。

    ベームのモーツァルト40番を聞いて、大感動して、
    後日、カラヤンの指揮で聞いたら、すっごくガッカリ。
    ええ、テンポが。ベームは遅く、カラヤンは早く。
    しかし、カラヤンの方が、モーツァルト時代のテンポなのかしら?

    音楽は、作曲家の意図を超えて、
    楽器の改良、奏者の解釈、聴衆の好み、などなどによって、
    変わっていくのですね。

    おしまい

  2. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

     カラヤンはモーツァルトが苦手、という定評がありますから…。まあ、晩年に録音した「ドン・ジョヴァンニ」がかろうじて合格点で、後は…なんて事を言う人もいるくらいですから、モーツァルトのシンフォニーをカラヤンで聞くのは、私はお薦めしません。

     しかし、カラヤンって、オーストリアの人で、モーツァルトと同郷のザルツブルグ出身者なんですが、自分のお里の作曲家の演奏が苦手と言うのも、なんか不思議な気がします。

     さて、ベームの40番はいいですね。ウィーンフィルとベルリンフィルで録音していますが、私は断然、ウィーンフィルとの録音の方が好きです。

     私は学問的に正しい事と、音楽的に美しい事は別だと思ってます。ですから、プロの演奏家は、美を追求するために、しばしば作曲家の意図を越えた演奏を行います。私は、それが結果オーライなら認めます。と言うのも、それは二次創作であると思うからです。だから、ベームの40番の、あのテンポはアリなんです。

     でも、それはプロの演奏家が自己の芸術魂をかけて行うべき事であって、アマチュアが恣意的に行って良い事ではないと思います。アマチュアの場合は、真摯に作曲家の意図を生かした演奏をするべきでしょうね。

     ただ、劇場やサロンの音楽の場合は、慣習的な演奏法が確立している場合がありますので、その時は、作曲家の指示ではなく、慣習に則った演奏もアリだろうと思ってます。

     古楽器に関して言うと、弦楽器は古楽器も現代楽器も、楽器としては、実は大きく変わりません。ネックの角度(つまり弦のテンション)と指板の長さが違うくらいです。だから、本来は古楽器であるストラディバリウスなんて、多少の改造を加えた上で、普通に現代でも通用するわけです。

     でも、管楽器は違います。現在のベーム式フルートは19世紀の半ばに作られたもので、それ以前のモノとはたとえ名称が同じでも、楽器としては、全くの別物です。ましてや、フラウト・トラヴェルソは名称だって違うわけですから、これは現代のフルートとは全く違う楽器です。たまたま、レパートリーが共通しているってだけの話で、どっちが良いとか悪いとかの話ではないと思います。

     つまり、ピアノとチェンバロを比較するようなものです。

     ま、個人的な好みを言うと、私はもちろん、現代フルートの方が好きですよん。

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