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2012年 ラ・フォル・ジュルネに行ってきたよ その8…フルートとマトリョミン

 本当に時間が厳しかったんです。

 これは、岸本氏のCDを買ってあげられなかった言い訳なんですが、本当に厳しかったんです。とにかく、急いで、東京国際フォーラムの会議室に移動しないといけないんです。もし、遅刻したら、部屋に入れてもらえませんから、そりゃあ、必死になって移動しました。
 
 
工藤重典フルートコンサート

 次のコンサートは、有料コンサートで、工藤重典氏のロシアン・プログラムです。

 そう言えば、私がフルートを始めた、そもそものきっかけは工藤氏の演奏を生で聞いた事だし、それ以降も、毎年必ずどこかで工藤氏のコンサートを聞いています。現在、私が師事するH先生は、工藤氏の兄弟弟子ですし、何か不思議な縁を感じるフルーティストさんです、工藤氏は。

ストラヴィンスキー:ディヴェルティメント(バレエ音楽「妖精の口づけ」より)
プロコフィエフ:フルートソナタ ニ長調

 会場に、本当にギリギリのタイミングで入りました。とにかく間に合ってよかった。もし間に合わなければ、プログラムの半分を聞き損なってしまうところでした。

 座席に着いて、荷物を置いて、息を整えたところで、工藤氏が伴奏者のクレール・デゼール氏と一緒に入場しました。そういえば、クレール・デゼール氏も、毎年必ず聞くミュージシャンの一人ですね(笑)。

 演奏は…とにかく超絶技巧です。すごい…のひと言です。なぜ、あんな風にフルートが吹けるんだろ? どうすれば、あの領域に踏み込めるんだろ?

 ストラヴィンスキーは“音遊び”と言った感じの、とりとめのない曲です。フルートの多彩な音色を見せつける音色博覧会のような演奏でした。おまけに、ほぼ現代曲という事もあって、リズムはヘンテコだし、はっきり言っちゃえば、演奏も鑑賞も難しい曲ですが、それを工藤氏の演奏力だけで楽しませてしまうんだから、やっぱりすごいフルーティストです。

 プロコフィエフは、ひたすらに美しかったです。重厚で押しの強い音色で、たっぷりと、ソナタという音楽を聴かせてもらいました。平伏して感謝したいくらいの演奏でした。

 いつもなら、演奏を聞きながらメモを取る私ですが、工藤氏の演奏中は、一文字と言えども、書くことができませんでした。全神経が耳となって、工藤氏の演奏を聞いていたからです。

 2曲で約45分。ずっと吹きっぱなしでした。大仕事だったと思います。観客はいつまでも拍手をして、アンコールを求めていましたが、それに応える事はありませんでした。いつもなら、気前良くアンコールに応じる工藤氏ですが、今回の2曲の後でアンコールは、ちょっと厳しかったのかもしれません。

 とにかく、私は、大満足です。

 ほぼ放心状態のまま、展示ホールに向かいました。
 
 しかし、展示ホールに行って、驚きました。だって、あふれるばかりの人人人…だったんですよ。初日の、あの閑散ぶりはどうした事でしょう。最終日の夕方に、こんなに人があふれているなんて…。何があったのでしょうか?

 ラ・フォル・ジュルネの中日に、東京国際フォーラムからNHKがテレビの生中継をするので、それの影響でしょうか? NHK-FMで一日中ラ・フォル・ジュルネ特番をしているからでしょうか? それとも、単純に天気が良いので、人が集まってきたとか? 何はともあれ、イベントなんてものは、人がたくさん参加しないと面白くないものです。ああ、よかった、お客さんがたくさん来てくれて…。

 とにかく展示ホールの演奏会場に行きました。ステージ真正面、前から5~6列目ぐらいの、かなり良い席をゲットできましたので、次のステージまで30分ほどありましたが、座って待つことにしました。ああ、こういうゆったりした時間も貴重ですよね。膝も痛いし…。このステージを聞いたら、今年のラ・フォル・ジュルネは終わりにして、帰宅しようっと。
 
 
マトリョミン・アンサンブル

 次のステージは、マトリョミン・アンサンブルのマーブルという団体の演奏です? マトリョミンって何?って感じですよね。

 マトリョミンとは、ロシアの民芸品のお人形であるマトリョーシカの内部に、ロシア生まれの、世界で最初の電子楽器であるテルミンが仕込んである楽器です。“かわいい手乗りテルミン”って感じでしょうか? 楽器そのものは、マトリョーシカですから、可愛い人形の形をしていますが、それを演奏している姿は…かなり怪しいですよ。まるで魔女がマトリョーシカに魔法でもかけているような動作で演奏するんですから(笑)。さらに言うと、その魔女は、なぜか聴診器をぶら下げているんです。シュールというか、何というか…。

 ちなみに、このマトリョミン、なんと、日本人開発の日本製の楽器なんだそうです。おそらくは、ケロミンとかオタマトーンなどと同じジャンルに属する楽器でしょうが…ああ、それにしても、わけわからん。

ロシア民謡メドレー:ともしび~赤いサラファン~カチューシャ
グリンカ作曲:ひばり
メドレー:ボーリュシュカ・ポーレ~ヴォカリーズ~モスクワの郊外の夕べ

 演奏者のマーブルという団体は日本人による団体です。メンバーの大半が女性なのですが、中央にいる男性(後で分かったのですが)がマトリョミンの開発者さんだそうです。

 その開発者さんの解説によると…

 魔法をかけているような怪しげな手の動きは、音程を操作しているのだそうです。実はマトリョミンには鍵盤に相当するような音程を決めるメカがありません。マトリョミンの頭部にアンテナが組み込まれていて、そこから電磁波を出しているのですが、その電磁波を手を使って、空間中のどの位置で遮るかで音程が決まるそうです。ザックリ言っちゃえば、マトリョミンに手を近づけると音程が高くなり、遠ざけると低くなるようです。

 聴診器は…マトリョミンには小型アンプとスピーカーが内臓されているのですが、ヘッドフォン端子が組み込まれていない(?)そうなのです。なので、自分の音だけを取り出して聞きたい時は、マトリョミンのスピーカー口に聴診器をあてて、そこで自分の音を取り出して聞くんだそうです。自分の音だけを取り出して聞く事ができないと、合奏なんて無理だものね。まあ、なんとも、おもしろい楽器です。

 マーブルさんは、10数名のメンバーからなり、彼女たち一人一人が手に手にマトリョミンを持って、そのマトリョミンを見つめながら、あやしい手つきで、真剣に大まじめに、音楽を演奏していきます。演奏姿は、はっきり言って、奇々怪々だけれど、やっている事は、実に大まじめです。その音楽も、音色や音の立ち上がりやハモり方などが独特だけれど、やはり真面目なものです。

 などと私が言葉だけ書いても、全然伝わらないでしょうから、YouTUBEで見つけた、マーブルさんの画像を貼っておきます。ね、私の言っている事が嘘じゃないってわかるでしょ。シュールでしょ。あやしいでしょ。

 これはなかなかおもしろい音楽と巡り合ったものだ…と、しばらく感心していたのですが、聞いているうち(私は前方中央席付近に座ってました)に、なんかちょっと、私のカラダがダルい? 夕方になってイスに座ったものだから、疲れが出てきた? でも、眠いわけじゃないぞ…なんて思っていたら。

 マトリョミンが、高い音を奏でた時に(あくまで感覚の話だけれど)頭の中で『プンッ!』って音がして、鼻の中に血の匂いが充満しました。だからと言って、鼻血が出たわけではなりません。ただ、音がしたような気がしたのと、鼻の中に血の匂いが充満しただけです。で、気分が一気に悪くなりました。たぶん、顔色も悪くなっていたんだと思います。それらに加え、コンサートの終わり近くでは、急に私の左耳の聴覚がアップしてしまい、ビックリしました。そうなんです、急に左耳に補聴器を付けられたかの様に、耳が感度アップしてしまったのです。右耳は普通の聴力のままでした。とにかく、マトリョミンの音を聞いて、私のカラダが異常反応をしていました。

 コンサートが終わって、なかなか立ち上がらない私に「だいじょうぶ?」と妻が声をかけてきました。

 「マトリョミンが高い音を出した途端に、気分が悪くなったよ…」
 「なんか、電磁波に弱くなったねえ…」

 そうです。マトリョミンって電磁波をコントロールして演奏する電子楽器なんですよね。あれだけたくさんのマトリョミンがステージ上にあったわけだし、それらが電磁波を垂れ流していたわけだから、実は電磁波が目で見えたら、演奏中のステージ周辺って、すごい状況だったのかもしれません。

 電磁波酔い? または、ある種の電磁波にやられた? 私は元々、帯電体質だし、電磁波には弱い体質なんだろうけれど、水晶の首輪をするようになってから、ますます電磁波に弱くなっているのかもしれません。少なくとも、今後、私はテルミンやマトリョミンには近づかない方が良さそうです(涙)。

 本当は、このステージを聞いたら帰ろうと思っていたのですが(音楽にも、楽器にも、演奏者にも責任はありませんが)気分が悪いまま、今年のラ・フォル・ジュルネを終えるのは、なんか後味悪くなりそうなので、もう一つだけ、パスしようと思っていた無料コンサートを見てから帰る事にしました。やはり、最後は気分よく終わりたいものね。

 少し休んで聴力が元に戻るのを待って、痛む頭を抱えながら、次のステージまで、かなり時間があったので、神戸屋さんでお茶しました。大きなリンゴが固まりのまま入っていたアップルパイが、とっても美味しかったですよ。

 では、続きはまた明日。

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コメント

  1. 神楽坂雪華 より:

    工藤重典氏のコンサートもあったんですね。
    私は北海道在住なのでこうしたイベントはなかなか縁が
    ないのですが、首都圏にいたら行っていたことでしょう。

    誰が聞いてもすごい演奏なのでしょうが、同じ楽器を
    演奏している立場で聴くと、さらにすごさが実感できるのでしょうね。

    今、吹き方を変えている私にとっては身にしみて感じてます。

    すとんさんのH先生は工藤氏と兄弟弟子とのことでしたが、
    私の前の先生は工藤氏の弟子だったそうで、
    何だか縁を感じますね。

  2. すとん より:

    神楽坂さん

     工藤氏は、割とよくラ・フォル・ジュルネに出演してくださるミュージシャンさんですよ。来年は、フランス音楽なので、おそらく来年も出演してくださるんじゃないかな~なんて期待してます(マジで)。

     H先生は、工藤氏とは、同門同期同級生で、同じ頃、ともに留学している仲間なんだそうです。ただし、留学先は違っていて、工藤氏はフランス、H先生はドイツに留学したそうです。だから、仲はとても良いし、裏話もたくさん知っていて、その内容も結構辛辣だったりもします(なので、H先生の工藤氏話は、ほとんどブログに書けません:笑)。

    >何だか縁を感じますね。

     ですねえ~。

  3. 椎茸 より:

     マトリョミン、かわいいし音も出せるなんて素敵!
     と、だいぶ前に興味を持ったことがあります。しかし、意外にお高くて断念…
     アンサンブルの動画は初めて見ました。見る限り、うーんって感じです(個人的には)。

     おつかれさまでした。
     

  4. すとん より:

    椎茸さん

     お値段については私も知らなかったので、さっそくググってみたところ、5万円前後から…というところが多かったです。この値段だと、興味本位で「ちょっとやってみようかな?」と言った軽い気持ちでは、なかなか手が出せないかな?

     まあ、楽器としては、5万円から始められるのですから、フルートやトランペットの最低価格モデル並の価格設定ですが、フルートやトランペットほど、一般的でもなければ、汎用性もなのところが、ちょっと腰がひけちゃうところです。それに、習い事で…と思っても、なかなか先生を見つけられないという点も難しいし、独学ではちょっと…というのも正直なところです。

     演奏そのものは…好き好きでしょうね。でも、かなり難しいと思いました。演奏者に絶対音感があるか、さもなければ、かなり優秀な相対音感を持っていないと演奏できないかな? そういう意味では、音楽初心者が手を出すのには、かなりハードルの高い楽器だなって思いました。

     私? 興味はないわけじゃないですが、電磁波が怖いので、パスです(笑)。

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