東京のティアラ江東(江東区公会堂)に行ってオペラの実演を見てきました。映画で見るオペラも悪くはないですが、やはり生に勝るものはありません。
演目は、プッチーニの「三部作」です。最初に「外套」、2番めに「修道女アンジェリカ」を、最後に「ジャンニ・スキッキ」という順番で、短い1幕モノのオペラを3つ立て続けに上演するのが「三部作」です。一応、プッチーニ生前最後のオペラです(「トゥーランドット」は死後発表されています)。はっきり言って、珍品オペラの一つです。
主なスタッフ&キャストは以下のとおりです。
指揮:諸遊耕史
演出:土師雅人
オーケストラ:江東オペラ管弦楽団
合唱:江東オペラ合唱団外套
ミケーレ:村田孝高(バリトン)
ジョルジェッタ:中島寿美枝(ソプラノ)
ルイージ:川久保博史(テノール)修道女アンジェリカ
アンジェリカ:正岡美津子(ソプラノ)ジャンニ・スキッキ
ジャンニ・スキッキ:山口邦明(バリトン)
ラウレッタ:藤澤史帆(ソプラノ)
リヌッチ:東原佑弥(テノール)
ツィータ:巌渕真理(メゾソプラノ)
実演ではめったに見られない珍品オペラですから、とても楽しく見させていただきまし。いやあ、眼福眼福。
これら3つのオペラは、普通は同じ歌手が3つともに出演して、全体の人件費を抑えるのが常ですが、今回の上演では、ソリストに関しては、3つすべてのソリストが、全然別の歌手が担当しています。そのため、全体でソリストだけで32人も関わっています。多いですね。ちなみに、今回、合唱は全部で24人ですから、合唱よりもソリストの方が多いという、とても珍しいことになっていました。一体、楽屋はどうなっていたのでしょうか? 絶対、楽屋は不足していたと思うんだよね。
ちなみに、まったく別の3つのオペラを上演する…という形式だったので、1本ごとにカーテンコールはあったし、休憩ごとに、ホールで出演者とお客さんの交流タイムがありました。また、お客さんたちも、お目当ての方が見終わるとお帰りになるようで、オペラが進むにつれて、客席が寂しくなっていきました。まあ、劇ではなく、人を見に来ているお客さんが少なからずいるからなのですが…。
全体的には、なかなか楽しめるオペラでしたが、細かいことを言い出すと、それはキリがありません。何しろ、ソリストが多すぎますから、ソリストに力量差があります。素晴らしいソリストもいる反面「合唱団員じゃないの?」と思ってしまうような力量の方も少なからず、いらっしゃいました。無論、皆さん、大学でしっかり勉強されてプロになったわけですから、いわゆる“ヘタ”な方は、もちろんいませんが、声が無いのにソリストをやってらっしゃるという不思議な方々も若干、いらっしゃいました。声が無いなら、たとえ大学を優秀な成績で卒業されていても、オペラは無理だと思いますよ。
声の有無は才能だからね、いくら努力しても、無いものは無いでしょ? それなのにプロのお仕事を引き受けちゃダメでしょ。これは、今回のオペラで、ソリストが大勢いらっしゃることの弊害でしょう。3つのオペラの出演者を、通常の上演スタイルのように1つのオペラ分に絞れば、優秀な歌手ばかりになるので、素晴らしい上演になったろうと思われるだけに残念です。
日本のオペラ歌手は、もちろん素晴らしい方もいらっしゃるけれど、今回のように人数を集めてしまうと、歌手の層の薄さが分かってしまいます。素晴らしい方は、ほんの一握り…なのかもしれません。
この江東オペラという団体は、ティアラ江東を本拠に活動している、なかなかに興味深い団体で、年に2~3回、定期的にオペラ公演をしているNPO団体です。残念なのは、チケットをネット販売していないことです。昔のように、現地販売と関係者による手売りが主な販売ルートなのです。今回は、知り合いがゲスト出演していたので、彼女からチケットを購入できましたが、知り合いが出演しなければ、チケットは、まず、入手できません。だって、東京まで、わざわざ電車賃かけてチケット買いに行くほどの酔狂でありません。当日販売とか、電話によるチケットの取置とかはありますが、それらの販売窓口が開く前に、行列は長くなってしまいます。
座席指定はなく、全席自由ですし、ティアラ江東は座席数が1300程度の小さめな大ホールですから、早めに会場に行って、並ばないと良い席には座れませんが、当日券とか取り置きチケットだと、まずはチケット入手が優先されますから、その列に並べませんので、良い席には座れません。いや、そもそも、オペラって、前売りで終了して、当日券が販売されないことだってあるからね。
オペラ鑑賞は、自分の好みの席で聞く…のが大原則だし、そうでないと、オペラに没入できません。自分の好みの座席が入手できないのなら、行かないのが正しい選択だと思います。ですから、指定席で販売されるか、全席自由であってもネットでの購入が可能でなければ、私のような地方の人には、ここのオペラ団の上演を見るのは、無理ゲーです。なので、せっかく面白いオペラ団体を見つけたのだけれど、知り合いが出演してくれない限り、ここには二度と来れないでしょう。残念です。
まあもっとも、集客には苦労していなさそうなので、私のような地方人にまで、無理に販路を広げる必要もないのでしょう。
蛇足1 それにしても東京って、うらやましいです。オペラの実演がひっきりなしに、あっちこっちで行われているんだよね。湘南から、それらの上演を見に行くことはできるのだけれど、問題は、いつどこで何を誰がやっているのかという情報が入手できないことです。知らなきゃ出かけられないのです。ほんと、情報さえ入手できれば、あっちのオペラもこっちのオペラも見に行けるのになあ…。
蛇足2 アリアの途中で、歌手がブレスをしたり、ブレイクしたりして、歌に余白ができると、そこで拍手したり、掛け声を掛けたりする人が、今回もいましたが、これってどうにかならないものかな? 海外では絶対にないだけに、日本だけの珍現象なんだけれど、これやられると、ほんと、冷めるんだよね。
蛇足3 ティアラ江東、段差多すぎ! どこもかしこも階段だらけ。まったくバリアフルです。おかげで妻が転んで、怪我しました。人混みの中だと、段差に気づきたくても気付けないものだよ。人混みで押されて転ぶなんて、あり得ないよ! 危ない危ない。そういう意味では、ここは今どきの親切な構造の会場では無いので、あまり来たくない会場です。ただし、とてもきれいで清潔な会場であったことは間違いないです。ここまで清潔で明るい会場というのも珍しいです。だから、問題は段差だらけってことだよね。
蛇足4 ホールがそこそこ小さいのに混雑するのは…おそらく、ロビーとかホワイエとか呼べる空間がほぼ無い事でしょうね。こういう構造のホールは初めてかもしれません。ちなみに、ホールの扉と外扉の僅かな空間に、休憩ごとに毎回、たくさんのソリストが出てきて、それに群がって挨拶するお客さんが固まって、どうにもならなくなっているわけです。活気あふれる…とも言えるけれど、休憩時間に一息つける場所すら無いって、どうなんだろ?
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