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調性は大切だと思ってます

 声楽のレッスンに行ってきました。発表会後、初めてのレッスンです。今回のレッスンから妻がレッスンに復帰しました。

 先生の発表会の感想は、言葉少なめでした。基本的には“失敗だった”という感じでした…ってか、先生は直前まで、この程度の出来で発表会に出して良いものだろうかと、真剣に悩まれていたようです。

 このブログでも書いていましたが、私、7月の中旬から9月の中旬ぐらいまでの2か月間、発表会の準備で自分を追い込まなければいけない時期に、体調が芳しくなかったのですよ。本来なら、発表会に向けて練習を積み重ねる時期に、歌うことすらできないくらいに弱っていたわけです。実際、ちょっと歌うと、すぐに咳き込んでしまうし、歌っていなくても咳き込んでしまうし、咳き込んでいなくても、なんかカラダが疲れ切っているし…という状態で、先生がおっしゃるには、発表会の直前の状態は、発表会の前段階の曲決めをした頃(7月上旬)よりも歌えなくなっていた…ってわけで、曲決めをした時は、その後の伸びしろも含めて「これならイケる」と思って選曲したのに、当日は曲決めをした時よりも歌えなくなっていて「こりゃあダメだ」って思ったようです。

 いや実際、今の状態でも、まだ曲決めの時の私ほどは体調回復していませんし、歌えていません。いかに、夏の体調不良が悪影響を及ぼし、それが未だに尾を引いているというわけなのです。今思うと、夏の私は、何か良くない病(とは言え“夏風邪”ですね)にかかっていたのかもしれません。

 風邪を甘く見てはいけないというわけです。

 さて、発表会も終わり、今回のレッスンから新曲に取り組みますが、その新曲の次に歌う課題曲を決めないといけません。ダメ元で選曲してきたので、先生と相談です。

 最初に相談したのがドイツ歌曲で、今回はシューベルトの「Die Forelle/ます」を持ってきました。実はこの曲、以前にも提案した事があったのですが、その時は「ダメ」と却下されました。あれから年月も経ったので、再度俎上に載せてみたわけです。

 先生はしばらく悩んだ末に、今回はOKを出してくれました。

 先生が悩んだ点は、メロディにG4♭が出ることです。いわゆるテノールにとっての「高いソ♭」って音です。この高音を発声する事だけに夢中になってしまい、しっかり音色のコントロールが可能だろうか? という点に悩まれたようです。先生はドイツリートに関しては、音色のコントロールやちょっとした歌い回しとか、そういう細かい部分に気を回して歌えるように指導をしていく方針なので、ちょっと無理めな高音や低音がメロディに入っているような曲は、極力避けていきたいわけなのです。

 「声に合わせて、無理せずに中声用の楽譜で歌いませんか?…と言いたいところなのです」とは先生の弁です。

 先生は、歌曲は自分の声に合わせた楽譜を選択して、無理なく歌っていくべきだと考えていらっしゃいます。そうでないと「世界中にあふれる名曲たちを歌えないじゃない?」と考えるのです。

 でも私は、自分に歌えない歌なら、別に歌わなくてもいいや…って考えています。世界中にあふれる名曲たちをすべて歌えるわけないのですから。私の人生の残り時間を考えれば、すべてを歌うなんて、最初から無理なわけです。どうしても選んでいかないといけません。そこで私は「作曲家が書いた調性で歌う。それが無理なら歌わない」と考えています。私が歌える歌なんて、探せばいくらでもあるわけですか、ならば作曲家が思い描いた音世界で戯れてみたい…と思うわけです。

 調性、大切だと思ってます。

 私がそういう原典主義とか原調主義である事を先生は知っていますので、G4♭を歌わせるべきかどうか悩み、今の私ならイケそう…と判断してくださったというわけです。ありがたい事です。先生の期待を裏切らないように頑張っていきたいです。

 ちなみに「Die Forelle/ます」って、こんな感じの曲です。

 歌っているのは、トーマス・クーレイというテノールです。私はよく知りません(ごめんなさい)。この音源を紹介するのは、むしろ伴奏している楽器が面白いからです。これ、19世紀のシューベルトの時代のピアノなんだそうです。今の時代のピアノに慣れた耳で聞くと、いかにも軽い音色の楽器ですが…シューベルトが思い描いた音世界は、実はこれなんだなって思うと興味深いです。

 それにしても、ますって、いい曲ですよね。

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