私はビートルズファンです。しかし、いわゆるリアルタイム世代ではありません(そこまで年寄りでは無いのです)。私は、第二次ブーム…と言うか、ビートルズ解散後に、彼らのレコードが再発された時にファンになった、いわゆる第2世代のファンです。
リアルタイムの第1世代のファンは、当時、リアルタイムに国内で販売されたビートルズのレコードでビートルズに親しんでいたわけです。その時代のレコードは、現在、CDで流通しているアルバムとは全然違っていて、いわゆる“日本編集盤”と呼ばれるモノで、アルバムのタイトルも違えば、収録曲目も違うし、曲によってはテイクも違う、日本独自のレコードだったわけです。とは言え、日本のレコードは基本的にステレオ盤だったし、歌手の声がよく映えるようにカッティングされた、今思えば、良質なレコードだったわけです。
もっとも、当時国内で流通していたレコードが現在のCDと違うと言えば、本国イギリスもそうで、あの国で当時流通していたビートルズのアルバムは、原則的にモノラル盤だったそうです。一応ステレオ盤も製作されてはいたのですが、もっぱら流通していたのはモノラル盤だったそうです。このあたり、我々日本人には、何とも理解できませんよね。
そうであっても、後期のアルバムは、さすがにステレオ盤しか製作されなくなったとは言え、それでも当時のステレオ盤は(今では信じられませんが)モノラルのオーディオでの再生を前提として作られたステレオ盤だったわけです(だから、泣き別れミックスでも問題なかったわけです)。この現象はイギリスだけの話であって、イギリスって…不思議な国だよね。
閑話休題。
私達の世代が成長して音楽を聞くようになった頃、ビートルズの第二次ブームが訪れ、日本国内では、ビートルズに関する様々なレコードがたくさん発売されるようになりました。昔売っていた、日本編集盤はもちろん、本国イギリスで発売されたオリジナルアルバムのステレオ盤、アメリカで発売されたアメリカ編集盤や、その他の国で発売された各国の編集盤のレコードたち等々、ほんと、様々なビートルズのアルバムやシングル盤が再発されたのです。実際、ほとんど脈絡なく、たくさんのビートルズのアルバムが乱売されました。おそらく、出せば出すだけ売れたんでしょうね。
なぜそんなに売れたのか? もちろん、ビートルズ自身の人気が全然絶好調だった事もありますが、実はこれらのアルバムに収録されていた曲って、少しずつ違っていたのです。例えば、テイク違いの曲もあったし、ミックス違いもあったし、カッティングの違いによる音質差もありました。とにかく、どこか違っていたのです。
だから、第2世代の新しいファンのみならず、古い第1世代のファンたちも、これらの購入したわけです。いわば“ビートルズ・ロス”につけこむ商売だったわけで、だから出せば出すだけ売れたんです。
ちょっと違う…と言えば、友人が持っていたアメリカ盤の「ヘルプ」などは面白かったですよ。今の「ヘルプ」という曲は、イントロ無しでいきなりヴォーカルから始まりますが、アメリカ盤の「ヘルプ」にはイントロがありました。それもあの有名な「007のテーマ」がイントロとして使われていました(笑)。そんな感じで、各国ごとに色々なビートルズが発売されていたのです。それらが寄せ集められて商売となっていたのです。
ちなみに私は、ビートルズのアルバムを、本国イギリスのステレオ盤で揃えました。リアルタイムでイギリスで主流になっていたモノラル盤は、日本のファンには合わない…と思ったのでしょうね。それらが当時日本で発売される事はありませんでした。その代わりに、イギリスで、一応、作られたけれど、あまり流通しなかった、ステレオ盤が日本では大々的に発売されたわけで、私はそれでアルバムを揃えたわけです。当然の、泣き別れミックス盤です。
当時の日本は、モノラル大好きなイギリスとは真逆で、とにかくステレオじゃなきゃダメ!みたいな信仰があったようで、モノラルとステレオの2バージョンあったら、ステレオを販売し、モノラルしかなければ、それを元に“疑似ステレオ”に加工して販売し、それもダメなら、小さく小さく“mono”と書き込んだモノを売るという、つまり“ステレオ至上主義”だったみたいです。だから、イギリス盤を売るなら、とにかくステレオ盤になったみたいです。
でも、それを全部集めても、ビートルズの曲が全部揃うわけではありません。と言うのも、ビートルズは、シングル盤やEP盤で発売した曲をアルバムには収録しないと方針のグループだったので、アルバム未収録の曲は、編集アルバムや他国盤を買う事で揃えました。例えば、イギリス編集の初期のベスト盤である「オールディーズ」とか、アメリカ盤の「マジカル・ミステリー・ツアー」と「ヘイ・ジュード」、日本編集盤の「レアリティーズ」とかですね。当時は、イギリス・オリジナル・アルバム以外に、最低、これらのアルバムを買えば、多少の楽曲のカブリはありましたが、ビートルズの全曲か揃ったわけです。
でもこれは昔話です。
ビートルズの楽曲の権利って、1980年代にマイケル・ジャクソンによって買われた事があります。当時、マイケルが「ビートルズのアルバムや曲が、国ごとに違うのはおかしい」と言って、それまで各国独自で発売されていたアルバムを廃盤にして、世界共通盤を制定したそうです。そしてアルバム未収録曲は「パスト・マスターズ」という新しい編集盤を用意して、そこにすべて収録したのです。それ以来、ビートルズの楽曲をカブリなく、全曲揃えられるようになったわけで、若い世代のファンたちは、恵まれている…と思うものの、かつてあった、各国盤ごとのテイク違いを聞く楽しみがなくなったわけです。
まあ、それは寂しいと思ったのでしょうね。ビートルズの楽曲の権利が、マイケル・ジャクソンからソニーに移った時に、いわゆるアンソロジー・プロジェクトが企画され、曲の細部が異なるテイク違いとか、海賊盤でしか聞けなかった未発表曲とかが、改めて、聞けるようになったわけです。
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