ヴァイオリン購入に向け、試奏の旅をすることにしました。なので、不定期で「ヴァイオリンの試奏に行ってきました」を連載していきたいと思います。
連載に先立ち、お約束を書いておきます。記事を読む人の参考になるように、なるべく伏せ字を用いないで書くようにしますが、だからと言って、この記事の内容を鵜呑みにしないでくださいね。ヴァイオリンの独学を始めて、わずか1カ月程度の人間が書いている世迷い言ですからね。そこんところ、よろしく。
それと楽器の評価は、もちろんすべて、私すとんの個人的な感想ですから、私が「嫌い」と書いてあっても、それは私が「嫌い」なだけで、楽器としてダメという意味ではありませんので、そこんところ、よろしくです。
まず私自身の楽器の好みを、最初に書いておきます。私は手が大きいので、おおぶりな楽器が好きです。ネックは細いよりは太い方が好きです。私は、歌う人なので、ヴァイオリンの音色も楽器っぽい音は苦手で、リリコソプラノのようなウェットでつややかな声楽っぽい感じの音が好みです。ま、私のイメージを具体的に書けば、ヴィヴァルディの「四季」に似合う音が好みでして、ベートーヴェンっぽい音は苦手です(分かるかな?:笑)。
そんな私がヴァイオリンの試奏に行って参りました。興味関心がございましたら、ぜひご覧くださいませませ。
さて、楽器と言えば、お茶の水です。人生最初のヴァイオリンの試奏は、その楽器の町、お茶の水にある、クロサワバイオリンのお茶の水店に行って参りました。こちらは弦楽器専門店ですが、いわゆる路面店で、気軽にお店を尋ねる事ができます。対応してくださった店員さんは、とても親切丁寧で、こちらの無理難題にも笑顔で答えてくださるという、素晴らしい方でした。
ここのお店では、7梃のヴァイオリンと2本の弓を試奏しました。
お店に入って、店員さんを捕まえて、まず最初に「20万円前後の予算でヴァイオリンの三点セット(楽器・弓・ケース)が欲しいのだけれど、お薦めを教えてほしい」と尋ねたところ「どんな音の楽器がお好みですか」と尋ねられました。当然「リリコソプラノのような音」と答えたところ持ってきてくださったのが、ルーマニアのグリガのガマ2というヴァイオリン。このガマ2、見た目はアンティーク仕上げでいかにも古そうだけれど、実は新品なのだそうです。試奏は、まず店員さんに弾いてもらって、その上手な音を聞いてから、私が手にとり、演奏のしやすさとか、間近で聞く音色などを確認していくという手順でおこないました。
「リリコソプラノみたいな音」という注文で出してきただけあって、このガマ2、音色は、滑らかでちょっぴりウェットでセクシー系の音。確かに“リリコソプラノ”って感じの、女声っぽい音色のヴァイオリンでした。持った感じも軽く弾きやすいですね。ネックがやや細めなのはマイナスポイントですが、まあ悪くはないです。ただし、この楽器は、音色は良いのですが、音量がかなり小さいのが気になりました。
もう一つの選択肢として「たぶんお好みとは違うと思いますが…」と言って持ってくださったのが、クラウスヘフラーNo.600というヴァイオリン。こちらは音量が、むしろ大きくて、ガマ2の後だと、とても聞き映えがします。音色は少々ドライな感じがしますが、いかにもオーケストラで聞けるヴァイオリンのような音がします。器楽っぽい音です。ネックの感じも私にしっくりきます。楽器としては、嫌いじゃないけれど、音色が好みと違うのが残念です。
さらに、クラウスヘフラーNo.702という楽器も持ってきてくれました。こちらはNo.600と比べて、さらに音量が大きく、音色的に、よりしっかりした密度の高い音がします。音もドライからウェットの方に舵を切っている感じで、男声的って感じでしょうか? 女声的というよりも、テノールのハイトーンのような音です。こういう感じって、嫌いじゃないです。
私がガマ2を気に入ったので、その上位モデルのガマ1を持ってきてくれました。こちらは音色的にはガマ2とほぼ同じですが、音量が全然違います。ガマ1はクラウスヘフラー並の音量があります、と言うか、ガマ2が小音量な楽器なだけなんだと思いますが…。音量の最大値が大きいと言うことは、それだけ音量の強弱の幅が広いわけで、つまりは表現力が豊かであるという事です。ガマ2は音色的には良いのですが、表現力に難点アリって事になります。
スフォルザンドのNo15という楽器を持ってきてくれましたが、これはチューニングの音を聞いて、すぐに分かりました。ザラっとした音で、私の好みの音色ではありません。私はこういう方向のヴァイオリンの音は苦手です。ただ、誤解のないように書くと、こういう音も、ヴァイオリンとしてはアリだし、CDなどでもたまに聞くヴァイオリンの音ですが、私の好む方向とは明らかに違います。
新品ばかりではなく、中古の楽器(オールド楽器じゃないよ)の音も聞きたいと言ったところ、二梃ほど、中古の楽器も試奏させていただきました。
ブランド名は忘れてしまいましたが、中国製の中古ヴァイオリンは、見た目は渋くて好みでしたが、音は私の好みとは全然違いました。やはり音がザラっとしているのです。さっき、ナシと思ったスフォルザンドも中国製なので、こういう音色の特徴は、中国製のヴァイオリンに共通するものですかと尋ねたところ、このクラスの中国の楽器は、だいたいこういう音がしますと答えてくれました。そうか、私は中国の楽器は嫌いなんだな(メモメモ)。
そこで、ヨーロッパものを弾いてみたいと思ったので、イギリスの中古ヴァイオリンを試してみましたが、これも好みとは違いました。このイギリスのヴァイオリンはキンって感じの音なんでした。音の粒立ちが良すぎるって感じでした。音がドライなんですね。
弓は二本、試しました。一本はガマ2のセットに付いている3万円の弓、もう一つは5万円のカーボンの弓です。カーボン…単なる炭素繊維で木材じゃないんですよ。私は???と思ってましたが、実際に弾いてみると、カーボンの弓って、なかなか良いかもです。少なくとも、ガマ2のセットの3万円の弓よりは、5万円のカーボン弓の方が良いですね。どう良いかと言うと、弓が弦に吸いつく感じで、弾いてて気持ちいいんですよ。
まとめ。もしもこの店でヴァイオリンを購入するなら、ガマ2に5万円のカーボン弓の組み合わせかなって思いました。ガマ2は音量が足りませんが、音色的には魅力たっぷりです。私がヴァイオリンを弾く場面で、音量が必要とされる事はないでしょうから、ガマ2でもOKという判断です。ただ、やはり予算が許せば、ガマ1の方が良いのはもちろんですが、ガマ1にカーボン弓だと、30万円オーバーになってしまいます。同様にクラウスヘフラーNo.702にカーボン弓という組み合わせも捨てがたいですが、こちらも30万円オーバーになってしまいます。お金は大切だもんねえ…、予算はきちんと守らないと…。もちろん、具体的な商談に入れば、お店も勉強していただけるので、多少はお財布に優しい事になるでしょうが…やはり、ここはまだまだ思案のしどころです。それに、余所のお店に、ガマより良いヴァイオリンが待っているかもしれないじゃないですか。
私のヴァイオリン試奏の旅は始まったばかりです。焦りは禁物。まずはたくさんのヴァイオリンを弾いてみましょう。
コメント
イタリア風のイメージの音を求めていらっしゃるのでしょうね。
昔、イ・ムジチの四季が流行りました。アーヨがソロの1959年
のステレオ録音のソロ楽器はCapicchioni、1956年
製だそうです。サラサーテという店のホームページの「新作ヴァイ
オリンを聴く」の欄で紹介されていました。オイストラッフや
メニューヒンも同じ作家の楽器を持っていたようです。製作者が
故人なので、モダンの仲間入りをしていて、値段は1千万を軽く
超えると思います。
いいですね~、試奏の旅。
私も選ぶとしたらリリコ・ソプラノが良いです。
ストラディバリウスのコピーとかも気になります。
すとんさんの「ばよりん放浪記」(勝手に名付けています)は楽しく読んでいます。
オーディオでいうならマホガニー製でニスの輝くヨーロッパのスピーカーから流れるつややかな音色ですね。イ・ムジチの話が出て思い出しました。
「佐々木ヴァイオリン製作工房のホームページ」を見ました・・・こういうマニアック?な話はわりと好きです。
>エルネスト・アントルメさん
フェリックス・アーヨ! まさにそれですね。いやあ、私も俗物だとは思いますが、色々と、ヴィヴァルディの「四季」は聞きましたし、イ・ムジチも歴代ソリストたちのレコーディングは一通り聞いていますが、やはりアーヨの音が好きです。カピッチオーニ1956という楽器なんですね。軽く一千万円するのなら、試奏すらできませわな~(汗)。
でも、あの系統の音が好きです。まあ、私の予算では、あの音の楽器が買えないのは理解してますが、方向性だけでも、そっちに向いている娘が欲しいなあと思います。
>Ceciliaさん
ストラドのコピーですか? 私も興味あります。「ホンモノが手に入らない以上、コピーでも…」と言うのは、普通なら情けない発言ですが、ホンモノが私の生涯賃金を上回るお値段なので「コピーでも」と言っても、全然、情けなくないですよね。
色々なメーカーから「ストラディバリウス・タイプ」のヴァイオリンが発売されているので、そういうものをチェックすればいいんだろうと思います。
>河童さん
「ばよりん放浪記」いいですねえ。そういう連載タイトルにすりゃあ良かったなあ。ちょっと残念。でも、放浪しますよ~、そのつもりです。
>オーディオでいうならマホガニー製でニスの輝くヨーロッパのスピーカーから流れるつややかな音色ですね。
私はオーディオにはそれほど詳しくないのですが、でも、そういう感じです。木製品っておもしろいもので、見た目と音質が案外似かよっているんですよね。
ああ、そうか、私もツヤツヤで色っぽい容姿のヴァイオリンを選べばいいのか!
ストラディヴァリウスのコピーという話題が提供されましたが、私の理解では、ほとんどの楽器がストラディヴァリウスのコピーか、そこから派生したものです。どのストラディヴァリウスをコピーしたのか、明記してある場合には、その忠実なコピーでしょう。
ストラディヴァリウス以外となると、グァルネリウス、アマティなどの名器のほか、過去の名品のコピーも多数あります。ただ、残念ながら、私が見て分かるのは、特徴のあるグァルネリウスのコピーくらいで、その他は区別できませんけれど。
>エルネスト・アントルメさん
なるほど、明記してあるしていないとか、どの程度の忠実さかは別として、大半のヴァイオリンがストラディヴァリウスのコピーと考えて良いのですね。
忠実なコピー…魅力的ですね。ただ、どこが忠実なのかは、ちょっとこだわっちゃいますが。容姿が忠実にコピーされているというモノよりも、その弾き心地が忠実に再現されているとか、音色が忠実だとかの方が魅力だな。え、それは当然だって? 失礼しました。
クロサワバイオリンの評判を検索していまして、見つけて読んで居りましたが、何か楽器選びのご様子が優雅で、うらやましく感じられました。私は長年バイオリンをやっています(現在39歳で歴34年)が、高貴なクラシックに取り組んでいるのに心はさもしいと思いました。高貴さって、その方のあり方や捉え方によるのかも知れません。「ゆとり」・・・そういう心持で音楽にもヴァイオリンにも接したい、と反省仕切りです。どうもありがとうございます。記事が2年前ですので、もう楽器はご購入でしょうか。それでは。
ていくうさん、いらっしゃいませ。
楽器選びの様子が優雅? それは良く見すぎですよ(笑)。まあ、私の場合は、切羽詰まった部分がない事と、楽器選びそのものを楽しんでいる部分があるので、そう見えたのでしょうか?
>もう楽器はご購入でしょうか。
結局、既製品を購入するのを止めて、ホワイトヴァイオリン(半完成品)を購入して、それを自分で調整して、塗装して、ニスを塗って、完成させました。大人の自由研究・木工編って感じです。そのあたりの事は「ヴァイオリンを作ってみよう! その1 キラメキです、よろしく」という記事(http://stone.tea-nifty.com/blog/2010/07/post-17c8.html)から始まる一連の記事に、その詳細がアップされていますので、もしよかったら、どうぞ。
グリガのガマについて調べている際に、このページに行き当たりました。ガマ1の裏板は1枚でしたか?2枚でしたか?ガマ1でも2枚板のものもあるようで、音が大きかったといわれるガマはどっちだったのか、教えていただければ幸甚です。
名無しさん、と、ひとまずお呼びいたします。
ご質問に答えるにしても、お名前が無いと返答のしようがないので、ひとまず“名無し”さんと仮に呼ばせていただきますが、次からはお名前(ハンドル可)のご記入をお忘れにならないように、お気をつけてください。
昔の記事にコメントしていただき、感謝です。もう、この当時の事は、ほとんど忘れてしまいましたし、私自身もヴァイオリンを止めてしまいました。
>ガマ1の裏板は1枚でしたか?2枚でしたか?ガマ1でも2枚板のものもあるようで、
ガマ1の裏板が1枚モノか2枚モノかは、記憶にありません。おそらく、確認すらしていないんじゃないかな? ヴァイオリンは、裏板が2枚モノが標準のはずですが、別に裏板が1枚モノであるか2枚モノであるかは、ヴァイオリンの性能とは無関係です。“1枚モノの方が良い”という記述を時々ネットで見ますが、あれはたぶんウソです(笑)。ちなみに、私の安い中国製ヴァイオリンだって、裏板は1枚モノですよ。裏板が何枚であれ、良い楽器は良い楽器だし、ダメな楽器はダメなんだと思います。
>音が大きかったといわれるガマはどっちだったのか
記事に書きましたが、ガマ1の方です。ヴァイオリンの値段は、おおむね、その楽器の最大音量と比例関係にあります。つまり『高価な楽器ほど最大音量が大きい』と思っていれば間違いないです。音の大きな楽器が欲しければ、まよわず値段の高い楽器を買われると良いですよ。