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ヴァイオリンの試奏に行ってきました その7 「ヴァイオリンの弾き比べミニコンサート」というのに参加したよ

 先日、おもしろい企画を見つけたので、参加してきました。今回の記事は、そのちょっとした報告です。

 その企画とは、過日、銀座の山野楽器で行われた「ヴァイオリンの弾き比べミニコンサート」という奴です。300~400万円クラスのバイオリンを、ズラリと並べて、プロ奏者に弾き比べてもらって、その音の違いを楽しもうという企画です。おもしろそうでしょ。

 演奏の際は、二梃のヴァイオリンを取り上げ、その名称(作者名)と値段を伏せて、同じ曲を演奏し、その音を聞き比べるという形で行われました。ちなみに弓(サルトリ450万円)と肩当ては、不公平が無いように同じものが使用されていました。

 第一戦は、新作イタリアンヴァイオリン対決でした。当日は、楽器の名称は伏せられていましたが、ここでは(隠す理由もないので)書いちゃいます。ジョ・バッタ・モラッシー対フランチェスコ・ビソロッティの対決でした。曲はベートーヴェンの「メヌエット」でした。

 もちろんどちらも300万円超のヴァイオリンで、悪いはずはありません。ただ、個性はだいぶ違うので、音の好き嫌いは当然あると思います。演奏をしてくださったプロの方は、フランチェスコ・ビソロッティの方が好きだと、ちょっとヒイキにしていましたけれど(笑)。

 私が聞いた感じでは、どちらも“イタリアの音”がしてました。そういう意味では同じグループだなあと思いました。あえて言うと、ジョ・バッタ・モラッシーの方がソリッドな音で、フランチェスコ・ビソロッティの方は多少柔らかめな音でした。どちらも若い楽器って感じがして、これから音もドンドン変わっていくんじゃないかなって印象です。それにしても、イタリアの楽器って、えも言われぬ雰囲気を持ってますね。おそらく、そういう雰囲気が好きな人がイタリアの楽器を求めるのでしょうね。私は…柔らかい音が好きなので、ビソロッティの方に一票入れたい気分ですが、イキがいい音がお好みの方はモラッシーがいいと思いました。

 第二戦は、新作イタリアン対モダンフレンチ対決でした。新作イタリアンの方は、シメオネ・モラッシーで、第一戦で登場したジョ・バッタ・モラッシーの息子さんの作品だそうです。対戦相手は、1930年製のモダンフレンチ。名前は言ってましたが、ちゃんと聞き取れなかったし、この楽器だけ商札が出てなかったの正式名称は分かりません(申し訳ない)。新作イタリアンが300万円超に対して、こちらのモダンフレンチは150万円だそうです。演奏曲目は、サンサーンスの「白鳥」でした。

 値段的には約半額のオールドフレンチは、当日の会場ではかなりの人気でした。私も、実は、今回の6梃のヴァイオリンの中ではベストな楽器だなと思ったほどです。新作イタリアンはどれも高音のキレとノビが素晴らしいのだけれど、オールドフレンチは独得の響きがして良いです。演奏者の話では、オールドな楽器は、散々人に弾きこまれているせいか、よく手に馴染むそうです。

 第三戦は、お値段的にはちょっと下がって、170万円バイオリン対35万円ヴァイオリンでした。ま、みんなが買う楽器って、これくらいでしょ。という現実路線の対決ですね。170万円ヴァイオリンはサンドロ・アシナリ、35万円ヴァイオリンはヤコブ・フィッシャーでした。ちなみに、ヤコブ・フィッシャーには様々なグレードの楽器があり、今回出てきたのは、一番廉価なモデルだそうです。演奏曲目はフォーレの「夢のあと」でした。

 この対決は、値段の差がどれだけ楽器の差になるかという、ある意味、一番注目の決戦でした。まず、見た目ですが、ヴァイオリンの見た目と値段は全く関係ないですね。見た目じゃお値段は区別できません。じゃあ音は…と言われると、音は違うんだけれど、それは、それこそ好き好きのレベルかなって思いました。ただ、私は、どっちが35万円のヴァイオリンの音かって事は分かりましたよ。それくらい(一応、音の)違いは分かりやすいです。やはり、こう言っては身も蓋もないけれど、楽器ってやっぱり値段なりの音がしますが、安い楽器(と言ったって、あくまで比較対象の問題であって、やっぱり安い楽器も高価である事には違いないのだけれど)の音であっても、演奏目的を考えれば、むしろその方が良いという事もあります。実際、私、どっちの音が好き?って尋ねられたら、ヤコブ・フィッシャーって答えちゃうかもしれません。

 しかし、安価なヴァイオリン代表で35万円ってどうよ? 私に言わせれば、まだまだお高いセレブな楽器です。もっと安価な初心者向け、セットで20万円とか、ええい、セット10万円とかの楽器と、その店で一番高価な楽器の対決って奴が聞きたかったです。なぜやんなかったんだろ? 「さすが、お高いだけあるよね~」となったかもしれないし「値段の差ほど、音の差はないんだな…」となったかもしれないのに、残念無念です。

 さて、6梃弾いて、人気投票(挙手ですが)をしたところ、フランチェスコ・ビソロッティ(演奏者推薦)と1930年製モダンフレンチが人気だったので、最後にこの2梃のヴァイオリンでエルガーの「愛の挨拶」を演奏してくれました。よかったです。

 今日の収穫。やっぱりイタリアの楽器はイタリアの音がします。プロ奏者は手首がすんごく柔らかいです。

 あとチューニングの時、まだちょっとだけ音が低いんだけれど、ここでペグを回しちゃうと行き過ぎちゃう…って時あるでしょ。「でもでも…」と思いつつ、「ええい、ままよ!」とペグをちょっとだけ回して、ジャストな音程を行き過ぎちゃう事ってあるでしょ。あれの対策を、実はプロの方はやってました。どうやっていたと言うと、…「あとちょっとで合うんだけれど…」までペグで合わせたら、隠し味的にペグボックスに指を突っ込んで、ナットの向こう側の弦を指でちょいと押してました。そうすると、そのちょっと低かった弦の音程が、ジャストになるんだよね。不思議な魔法だよね。でも、ナイスな方法なので、さっそく日々のチューニングの時のテクとして盗んでみました。ちゃんちゃん。

 そう言えば、せっかく楽器屋に行ったのに、アジャスターを買い忘れた(呆)。キラメキ用にゴールドに輝くアジャスターを二つ購入するつもりだったのに、交通費が馬鹿にならないから、そんなに何度も出かけられないんだよねえ…。あああ、愚かだな、私。

コメント

  1. アンダンテ より:

    わぉ~なんて魅力的な企画なのかしらっ!!
    私もいきたかった~

    > なぜやんなかったんだろ?
    それはたぶん、やるまでもないと思ったんじゃないですかね。企画者は。

    前に、ホームコンサートのときに、先生が愛の挨拶をマイバイオリンで弾くのと、私のスズキ最安値モデルで弾くのをやってくれたことがあるんですよ。そしたらね…みんなの感想は
    「安物のラジカセで聞いてるみたい」
    「つやの部分がなくなった」
    ってことで。わかりやすすぎます。

    ちなみに、そのときの録音あります。
    http://blog.goo.ne.jp/andante-dandanto/d/20100511

    それから、初心者(私)が安いバイオリンと(購入したての)高いバイオリンで弾きくらべた録音もありますよ。
    http://blog.goo.ne.jp/andante-dandanto/d/20100623

    ん~こうして見ると、私のブログってば、超いたれりつくせりじゃありませんか??(^^;;

  2. 河童 より:

    ン?
    先日、山野楽器を通りすがったときのバイオリン演奏はこれだったんですね
    すとんさんとおぼしき体格の人は目に入らなかったなあ??(もちろん目から溢れてもいません、失礼)

  3. すとん より:

    >アンダンテさん

     聞きました。ううむ、録音の限界って奴ですね~。音色の違いは大雑把には分かるし、好き嫌いも感じますが、肝心な音の回りにまとわりつくキラキラとした部分やフワっとした部分はやっぱり録音だとちょっと再現無理ですねえ。このキラキラとかフワッという部分で、ヴァイオリンの場合、値段が大きく変わるような気がするし、生演奏だと、モロバレなんですけれどね。

     逆に言うと、マイクを通すと、値段の違い(楽器としてのランクの違い)は無くなってしまうので、マイクを使う世界で演奏するなら、楽器にこだわるのもバカらしいと今は思ってます。あ、これはヴァイオリンだけでなく、歌もフルートもギターも、みんな一緒ね。生演奏の持つキラキラとかフワッとした部分を再現できるようなオーディオ機器もあるのだろうけれど、そういうのは、普通のライブハウスには置いてないから(笑)。

     ちなみに、私は貧乏耳なので、案外、安価な楽器の音って、好きだったりします。

  4. 良いものを聴かれましたね。ジョ・バッタ・モラッシー、フランチェスコ・ビソロッティは我国ですぐ買える楽器としては双璧と言われます。どちらも作家が高齢で、前者が76歳、ビソロッティが81歳です。前者の息子さんのシメオーネさんも評判が高いようです。これら三人の楽器はいずれも高過ぎ、モダンの安価な物と値段が同じくらいになっています。同門の安価な物を探した方がと思いますね。サンドロ・アシナーリも入賞歴があり、新作イタリアンの中では高いランクにあるのではないでしょうか。その割に価格も妥当です。なお、ジョ・バッタ・モラッシーは、若い時に材木関係の仕事をしていたらしく、バイオリン用の良材をかなり抱えていると言われ、供給もしていると聞きます。

  5. すとん より:

    >河童さん

    >すとんさんとおぼしき体格の人は目に入らなかったなあ??

     体重を見て、巨漢を想像したら、見つかりませんよ(笑)。私はデブですが、これでも体型はウエスト95cmのアンダーバストは105cmという、立派な“逆三角形”してますから(笑)。肩幅も背中もとっても広いのよ(爆)。体格の基本ベースは格闘家体型なんですよ。お腹も出てないし…ね(ピース)。ま、現在は“格闘家”と言うよりも“中年マッチョ”なカラダしてますけど。

     中年マッチョとは、骨格が良くて、筋肉もたっぷりあるけれど、脂肪もたっぷりついていて、カラダの表面は重力に負けているので、服を来ているとそれなりに立派に見えるけれど、裸になると、なんともはや残念な体型のことです。若い時に、ブリバリ頑張ったスポーツマンに多く見られる体型です。

     なんとかダイエットを続けて、たっぷり付いている脂肪を取り除くと“中年マッチョ”から“リアルなマッチョ”に変身できるはずなのですが…。

     これでも私、体育会系の人間ですから。学生の頃(柔道部でした)は、吹奏楽部の青びょうたん男子なんて、鼻でせせら笑って馬鹿にしていたクチです。それが今では…(涙)。

  6. すとん より:

    >エルネスト・アントルメさん

    >ジョ・バッタ・モラッシー、フランチェスコ・ビソロッティは我国ですぐ買える楽器としては双璧と言われます。

     うわ、そうなんですか? そうとはつゆ知らず「さすがにヴァイオリンも300万円を超すと、かなり違うなあ…」と思う程度でした。そうか、第一戦は横綱同士の戦いだったんだね。お店の人も、そこんとこの解説が欲しかったなあ…。

     でも、その音はしっかり聞きましたし、記憶もしました。今の私は、色々なヴァイオリンの音を聞いて、その審美眼(耳?)を高めるという事をしていますので、そんなに良いヴァイオリンを聞けたとは、実にラッキーだったと思います。

  7. Yuki より:

    良いな~!!
    ほんとに面白い企画ですね!!

    でも、ちょうど今30万くらいの楽器を探している私としては、やっぱり「安物同士対決」が聴いてみたいかも。。。

    >ペグボックスに指を突っ込んで、
    という音程の微調整は、私はレッスンの初回に習った記憶があります。
    私の楽器のペグが回りづらかったからかも。
    逆に下げるには指板上の弦に指を引っかけて引っ張る、というのとセットで教えて貰いました。乱暴な……と思っていましたが、皆さんやってるんですね。ほっとしました!!

  8. すとん より:

    >Yukiさん

     ペグボックスに指を突っ込んで…というのは、割と普通の手段でしたか。私は、レイトスターターな初心者なので、それでも新鮮な発見でした。

    >逆に下げるには指板上の弦に指を引っかけて引っ張る、というのとセットで教えて貰いました。

     ほぉ、なるほど、理に適ってますね。これで微妙な音程の上げ下げにも対応できるわけで、すごく得した気分です。確かにやり方としては乱暴かもしれませんが、ヴァイオリンって、とても古い時代に出来上がった楽器だから、そういう乱暴なやり方でちょうど良いのかもしれませんね。…電子楽器の調子がおかしいからと言って、チョップを喰らわせたら壊れちゃいますが、ヴァイオリンは電子はおろか、メカ以前の楽器ですから、これでいいんですよ、きっと。

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