さて、完成まで約一カ月の月日がかかりましたが、ようやく完成したヴァイオリン「キラメキ」ですが…どうも、出来上がったヴァイオリンは…どうにも「キラメキ」というイメージじゃないんですよ。なんか、違うんですよ。あなた、どうしちゃったの?って感じです。
確かに、我が家に来たばかりの時は、半分以上シャレだったけれど「キラメキ」と呼べたし、製作の途中までは、確かに「キラメキ」だったんです。しかし、完成が近づくにつれ、どんどん「キラメキ」というイメージから遠ざかっていきました。完成した現在、もはや、この子は「キラメキ」とは到底呼べないところに着地したみたいです。
「キラメキ」はどうやら幼名だったようです。大人になった今は、新しい名前を必要としているようです。
出来上がった彼女を見た妻は「このヴァイオリン、甲虫みたい。カブトムシかなあ…」と言ってました。確かにボディは甲虫系の色だし、角が一本生えているけれど、カラダは薄くて平べったいので、とてもカブトムシって雰囲気じゃないと私は思ってます。私にとっては、茶色くて薄い体型の方の方が印象深く、虫…と言われて「クワガタムシ」を連想しました。
クワガタムシと言っても、日本には色々な種類がいます。オオクワガタ、コクワガタ、ノコギリクワガタなど、たくさん有名なクワガタがいるけれど、やっぱりクワガタは何と言っても“ミヤマクワガタ”でしょう。なので、この娘の新しい名前は“ミヤマ”にします。よろしくお願いします。
(本当は、ここにクワガタの画像をアップするつもりでしたが…辞めました。なんか、空耳かもしれませんが…悲鳴が聞こえたような気がしたんですよ。なにしろ…リアルな虫の画像を…アップするつもりでしたから)
さて、キラメキ改め、ミヤマの査定です。玄関のお飾りになるか、私のサブヴァイオリンになるか…それを確かめるために(恐る恐る)弾いてみました。
ミヤマは…実は、意外に、ちゃんとした音が出ました。アレレ? ホワイトヴァイオリンの時代に仮組をした時の音とは全然違います。いやあ~、ビックリ。だって、これ、普通にヴァイオリンじゃない。全然、聞き苦しくないです。いや、むしろ耳に優しい音がします。これなら、玄関の飾りにする必要はないし、サブヴァイオリンとして十分通用します。いや、スズキ君とは音色がかなり違うので、使い分けができるかも…。
音色だけでなく、音程だってちゃんと取れますし、故障していたり、不具合があったりするわけでもなく、むしろ、きちんと健康な楽器です。一応、完成はしましたが、もし真面目に使用するつもりなら、もう少し、調整をつめていく必要はあるかもしれませんが、まあまあ、普通の廉価なヴァイオリン程度の性能は、十分ありそうです。ほんと、意外。7000円のヴァイオリンでも、きちんと手をかけると、ここまでちゃんとしたヴァイオリンになるとは、思いも寄りませんでした。いや~、7000円のヴァイオリンキット、なめちゃいけないね。案外、やるもんです。
もっとも、7000円のキットを買ってきて、ただ組み立てわけじゃないです。色々と手を加え、手間をかけ、いくつかのパーツは交換しました。
と言うわけで、最終的にいくらかかったかと言うと…
本体 7000円
透明ニス 2100円
ステイン(メープル)500円
ニス刷毛 200円×2本→400円
紙やすり 200円
精密ヤスリ 300円
大型カッターナイフ 100円
駒 1000円
アジャスター 1000円×2個→2000円
アゴ当て 8000円
弦 5000円
合計 約2万7千円
つまりミヤマは、原材料費を全部ひっくるめると、3万円弱って感じです。もっとも私の労働賃金がここには入っていません。私は、ミヤマを作るのに、約50時間ほど使ってますから、もしも、これを必要経費に数えて費用に入れれば、プラス5万円(時給は千円で計算)になります。うひゃあだね。けれど、ミヤマを作ったのは趣味なんだから、労賃どころか、塗装費やその他も“持ち出し上等”なので、やはりミヤマは“7千円ヴァイオリン”って事で、いいんじゃないかな? それが趣味ッてもんです。
しかし、ヴァイオリン本体が弓付きで7000円なのに、交換パーツの値段が結構してますね。特に、アゴ当てが8000円と言うのは笑っちゃいますね。実は、アゴ当ては、日本製品で、良質なエボニーを使っているし、日本人の職人さんが作ったパーツなので、お高いんですよ。
でね、仮に私が製作者で、ミヤマを販売するって事になったら(あくまで妄想ですが)、原材料費に私の労賃を入れて、さらに販売に関する利益なんてものを計上した場合、原価が約3万円で、職人さんの労賃が5万円(職人さんにしては激安ですな:笑)の合わせて8万円を仕入れ値として計算をするなら、ミヤマの店頭販売価格っていくらになるんだろ? ヴァイオリンなんて店舗における回転率が良いはずがないから、利幅はかなり広くとらないと商売としてやれないでしょう。そうなると、実際の販売価格は…10万円? 15万円? まさか20万円? そう考えると、案外、ミヤマも馬鹿にできないのかもしれません(って、製作者が素人なので、そんなふうにはなりませんね)。
最後に、記録のために、実際の作業を行った日程をアップしておきます。
2010年
7月12日(月) アマゾンに発注7月13日(火) ヴァイオリン到着。「キラメキ」と名付ける。ひとまず干してみる。
7月15日(木) ナット、ペグボックス&f字ホールを調整する。
7月17日(土) 指板剥がし、失敗。マスキング処理をした。
7月18日(日) ひたすら、スチールウールを使って表面塗装を剥がす。
7月19日(月) 下地塗り(ステイン塗装)開始。この日は、2回塗った。
7月20日(火) 下地3回目を塗った。
7月21日(水) 下地4回目を塗った。
7月22日(木) 下地5回目を塗った。
7月23日(金) 下地6回目を塗った。
7月24日(土) 下地7回目と8回目を塗った(下地塗りは終了)。最後に木目を自分で書き加えてみる。
7月26日(月) 最初のニス塗りを開始(4回塗った)。塗装に失敗した表板と側板の一部の塗装を剥がす。
7月27日(火) 剥がした箇所にステインを塗る。シミのような大きな木目を表板に発見。
7月28日(水) 剥がした箇所の下地塗装終了。着色ニスを塗り始める(4回塗る)。
7月29日(木)全体にオールナットを塗る。これをニス塗り5回目と勘定。これ以降はクリアニスの重ね塗りをした。
7月30日(金) ニス塗り6回目と7回目、8回目、9回目を行う。
7月31日(土) ニス塗り10回目、11回目、12回目を行う。ペグボックスの中をプラモ用の塗料で塗る。
8月1日(日) ニス塗り13回目を行う。
8月2日(月) ニス塗り14回目、15回目を行う。
8月3日(火) f字ホールの削り直しとその断面の再塗装を行う。
8月4日(水) ニス塗り16回目(最終ニス塗り)を行う。マスキングテープを外し、微妙なニスはがれを修正。エンドピンホールとペグホール内部についてしまったニスを彫刻刀と精密ヤスリで丁寧に削る。ペグホールの調整も行う。
8月5日(木)ネックをオイルフィニッシュにした。えごま油を3回塗る。指板とサドル、テールピース、アゴ当てもオイルフィニッシュにした。
8月6日(金)駒削りは中止し、組み立てる。発注から25日で完成する。
いやあ、ヴァイオリン作りはとても楽しかったです。なんか癖になりそうです。もしも次に作るなら、今度こそは「キラメキ」と名づけられる、キラキラなゴールドヴァイオリンを作りたいと思います。
コメント
うわーついに完成だ!!
ミヤマくん、なかなかかっこいいです。
ここまで手をかけると音もきちんと良くなるもんなんですかね?? それにしてもたいへんだ~
高いような安いような…
> それが趣味ッてもんです。
あ、そうですね(^^;; 確かに。
なかなかじゃないですか
と言っても私はヴァイオリン弾きじゃないので良く分かりませんが…(笑)
ミヤマに改名したんですね
そのままヴァイオリンのブランドになりそうな名前ですね
私も作るだけやってみたくなりました
自分では弾けないのでそれで終わりになってもったいないのでやりませんが…
>アンダンテさん
>ここまで手をかけると音もきちんと良くなるもんなんですかね??
…みたいですねえ(笑)。もちろん“とびっきりの音の良さ!”なんてものは期待しちゃダメです。でも、このくらいの音のヴァイオリンって、試奏した中にもありましたよ。だから、音色に関しては好き好きですが、これはこれでアリかな?って思ってます。音色はクリアしても、その他の部分で実用的かどうかという点が問題となるでしょう。
なので、安価な初心者入門ヴァイオリンとしては、合格?…かなあ、と思ってます。そのレベルの楽器になりました。
しかし、正直に書いちゃうと、このままでは、ちょっと実用品としては???な部分がまだあります。なので、ひとまず完成はしましたが、さらなる調整作業は必要です。特に、ナットまわり、駒まわり、テールピース周辺など、音や演奏に直結するところは、もう一度見直しが必要でしょう。
実は二の足を踏んでいて、実行できないのですが、ペグをもっと硬い木材に変えた方が良いのかなあ…と思っていたりします。
>水香瑶妃さん
ミヤマは元々、ヴァイオリンの調整の勉強のために購入しました。一台、作る事で、自分でヴァイオリンの調整ができるようになれるかなあ…とそういう軽い気持ちだったんです。ですから、出来上がってしまったら、玄関の飾りにするつもりでしたが…、出来上がってみたら、意外に良い出来だったので、ちょっと欲が出てしまってます。
実はフルートも自分で調整できるようになりたいです。そのために自分で一本作ってみたいんですが…フルートはキットのようなものがないので、ちょっと無理ですね。金工は木工よりも、ウンとハードルが高いみたいです。
アルソ出版主催のフルート調整講座が年一回開かれていますが、あそこに参加したいと、いつも願っているのですが、仕事が忙しい時期に開催されているので、参加できてません。本当は、あそこに参加して、頭部管作りたいんですわ~。
洒落っ気で胴体にミヤマクワガタのシルエットを書き込むのはどうですか?
>河童さん
おっ、そのアイデアは良いね。特に小さめのヤツをワンポイントで入れると、グーッだね。問題は、私は自分が納得できるほどに、虫の絵とかが上手ではないのが問題かな? いい感じのステッカーとかがあったら、それを貼っちゃうという手もありですね。
要検討事項って奴ですね。
本当は、絵がうまければ、側板のところとか、つる草がウネウネしているイラストとか入れたいくらいなんですよ(願)
絵心もないのですよ、私は。
とても品のいい暖かい色に仕上げられたようですし、ミヤマという名前も暖かい感じです、手のかかった子ほどかわいいと言います<すとんさんの愛の手をいっぱいかけてもらったバイオリンかな。
フルートはたしかに金属加工ですから素人にはおいそれと作れませんね。でもたしかに調整ならできそうですね。私も機会があったら挑戦してみたいです。
>ダリアさん
ミヤマは、客観的に見れば、たいした楽器ではないでしょう。でも、思っていた以上に、良い楽器に仕上がったと思ってます。なので、ちょっと欲が出てきてます。
フルートもメンテナンス講習会などに参加して、自分でフルートの調整ができるようになりたいです。ミヤマの作成も、きっかけは近所の楽器屋で開催されたヴァイオリンのメンテナンス講習会だったんです。それで一通りのヴァイオリンの調整方法を習ったので、習った事を深めるために、作成に踏み切ったわけです。フルートを作成するつもりはありませんが、フルートのメンテナンス講習会に参加できたら、自分でフルートの調整ができるようになるはずですし、そうなりたいんですよ。
でも、なかなかフルートのメンテナンス講習会って開催されないし、たまに開催される講習会も、仕事の都合で参加できないんです。残念ですよ。
ガイゲ製作記録をアップしました。
どちらの記事にTBしようか迷ったのですが、総まとめ編のこちらにしました。といっても、TBなんて久しくやっていなかったので、出来てるのかどうかよく分かりません(汗
>もりさん
トラックバックは届いてましたよ。安心してください。でも、なぜか「公開保留」になってました。どうでもいいトラックバックは、すぐに公開するココログなのに、なぜに友人からのトラックバックを「公開保留」にするのか、理解できません(笑)。
もりさんのブログを拝見しましたが、素晴らしい出来ですね。ウチのミヤマとは、出来上がりのクオリティが全く違う(汗)。あれなら、黙っていれば、誰も“キット・ヴァイオリン”とは思いませんよ。もっとも、ウチのミヤマも、黙っていると、稚拙な塗装が幸いして、オールド・ヴァイオリンに見えるようですし、弾いてみると、ひなびた音がするので、余計オールドだと思われるんですよ。大笑いでしょ、キット・ヴァイオリンなのに。