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2010年 ラ・フォル・ジュルネに行ってきたよ その5…シューマンは狂気の人だからね

 エンゲラーさんの演奏でお腹一杯になった私ですが、だからと言って、店じまいにするわけにも行かず、次のプログラムに向かう事にしました。
 
 
マスタークラス(ヴァイオリン)

 やっぱり、ラ・フォル・ジュルネと言えば、マスタークラスでしょう。今回のマスタークラスはヴァイオリンです。先生は、レシス・パスキエ氏、曲はシューマン作曲「ヴァイオリンソナタ第1番第一楽章」です。

 本当は余裕で入れるはずの時間で計画していたのですが、エンゲラーさんがたっぷりアンコールをしてくださったおかげで、マスタークラスの入場制限にひっかかってしまいました。会場に着いた時点で、すでに入場待ちになってしまいました。それも私の前には10人以上の入場待ちの客がいるんです。『中から人が出てきたら、その人と交代して入れます』って事だったけれど、始まる前に退席する人なんていないので『こりゃあダメだな』と半ばあきらめたものの、最後まで何が起こるか分からないのがこの世なので『曲の演奏が始まるまでに入れなかったら、あきらめましょう』と決めて、しばらく待っていました。

 もちろん、誰も開始前に退席する人はいなかったのですが、今回の会場誘導の係員のお兄さんはかなり有能な人でした。なんと、満員の会場で、すでに中にいるお客さんたちにお願いして、10人以上の人が入れるようにしてくれました。もちろん、私も開始ギリギリになってしまいましたが、無事に会場入りできました。ありがと>会場誘導のお兄さん。

 先生と生徒さんと通訳さんが入場されて、すぐに演奏が始まりました。シューマンのヴァイオリンソナタ第1番…私は、この曲、好きかもしれない。

 演奏が終わると、さっそく先生の指導が始まりました。マスタークラスにやってくる先生にも色々なタイプがいますが、今回のパスキエ先生は、観客の前で見せる授業だという事をとても意識していたようです。言葉も、生徒さんに向かって語る言葉もあったけれど、直接観客に向かって語っていた言葉もたくさんありました。

 さて、例によって、私の心に残った言葉を以下に列記していきます。

・音楽を演奏する人には、イマジネーションを表現する権利が与えられています。だから、自分自身の中からわき出るイマジネーションを大切にして、それを表現しないといけません。

・シューマンは高音域が好きではない作曲家です。

・“弓使い”は“息使い”です。

・シューマンはもっとソステヌートで演奏しないと、シューマンの音楽になりません。

・ピアノとヴァイオリンでは音量差があります。ヴァイオリンはよりパワフルに演奏しないといけないし、デュナーミクもより大きくつけないとピアノに負けます。

・ヴァイオリンでは、エモーションはヴィブラートで表現するものです。

・シューマンは狂気の人だから、演奏家も、その狂気につきあわないといけません。

・ヴァイオリンはピアノを、ピアノはヴァイオリンをよく聞き、問題点を分かち合わないといけません。

・弓の中央部で弾く時は、音が弱くなりがちだけれど、そこはきちんと手を使って、弱くならないように弾かないといけない。それはまるで、息をキープしながら歌い続ける歌手と同じです。

・ヴァイオリニストは、歌手と同じような存在であることを自覚しないといけません。

・シューマンを理解するためには、彼の歌曲を聞かないといけません。シューマンのすべては歌曲にあります。だから、シューマンを演奏する人は、歌曲を聞き込まないといけません。

・作曲家の人生について知ることはとても大切な事です。彼らは作曲家である前に一人の人間だからです。彼らの人間性を理解することで、より曲の理解が深まります。
 
 
 このパスキエ先生は、生徒さんを実にたくさん誉めてました。誉めて育てるタイプの先生だと思います。それと、自分のスタイルを生徒に押しつけない先生でもあります。生徒のやりたい方向を見極めて、その方向に向かってのアドヴァイスをする先生です。

 それにしても、ヴァイオリンって、いい音色のする楽器ですね。ああ、うらやましい。

 マスタークラスが終了しました。時刻はちょうどお昼でしたが、昼食を食べている余裕がありません。次のプログラムは…丸ビルに移動して「ショパン展」です。そこで、朝の東京駅で購入したサンドウィッチをつまみながら、丸ビルに移動することにしました。
 
 
ショパン展

 食べながらの移動です。はっきり言って、お行儀悪いです。とても子連れじゃできません(笑)。でも、とっても時間の節約にはなるんですね。国際フォーラムを出てから、つまみ始めて、丸ビルに到着する前には食べ終わってました。それにしても、サンドウィッチの美味しい事。屋台村の食事とはまるで違いました。

 ショパン展、ホームページはこちらです。こちらの目玉はなんと言っても、ショパンの「マズルカ 6-2」の自筆草稿譜面が見れる事です。ショパンの肉筆が見れるんですねえ。お好きな方にはたまらない展示会です。私は、それほどでもないので「ほー、これがショパンの自筆譜ね。ま、モーツァルトほどじゃないけれど、見やすい譜面かな?」程度でした。いやあ、ありがたみの分からない奴でごめんなさい。

 会場には、この自筆譜以外にも、自筆譜のコピーがあったり(これが実によくできたコピーでした)、初版譜があったり、自筆譜と印刷譜が並べてあったり、それなりに興味深い展示会でした。なによりも、この展示会が無料っての、うれしいですね。

 さて、丸ビルを出た私たちは、国際フォーラムに戻るかと思えば、そこを素通りして、別の場所に向かいしました。果たしてそこは…続く(笑)。

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