さらに深くなってきますよ。実は、今日、ご紹介するCDは、私的には、かっこよくて、すごくいいんですが、その良さがうまく伝えられないものばかりです。と言うのも、これらのアルバムはフルートが主役ではないんですよ。あくまで、フルーティストはスーパー・サブの立場で、フルートの良さで売っているアルバムではなく、トータルのサウンドで評価されているアルバムなので、私のような初心なオッサンではうまくご紹介できないのですが、でも、良いと思ったのだから、これでいいのだ。行くよ~。
最初にご紹介するのは、ビル・エヴァンスの「ホワッツ・ニュー」です。このアルバムのフルーティストはジェレミー・スタイグです。
このアルバムを購入した動機は、笛先生からジェレミー・スタイグの話を聴いたから。彼は不自由な体(交通事故の後遺症の顔面マヒなんだそうです)だけど、すごくかっこいいフルートを吹くと聴いたので「さてどれどれ…」って感じだったのです。
フルート、シブイですね。でも、フルートだけじゃなく、ピアノもベースもドラムのシブイくってかっこいいです。ああ、これって、ジャズなんだなあ…って感じです。本当は、こういうサウンドは、私、得意じゃないですが(身も蓋もない:汗)、なんかジェレミーのフルートに惹かれて、何度も聴いているうちに、なんか体の中に入り込んでしまったというアルバムです。
ジェレミーの吹き始めのブゥ~~って音の立ち上がりが、何とも言えずに私のツボなんです。ちょっとおもしろい発音だなって思います。シブくっていいです。
ジェレミー・スタイグは「プテロダクテル(翼竜)」というソロアルバムあって、これを先日購入したばかりで、今まさにヘビーローテーション中なんですが、これが楽しくておもしろいアルバムです。これは、一昨日ご紹介した中川昌巳氏の「Magic Flute Tango」と同じ、多重録音によるワンマンバンドのフルートアンサンブルです。中川氏と違うのは、スタイグはすべてのパートをたった一人で演奏しているという事でしょうか? 私は「ホワッツ・ニュー」よりもこっちのアルバムの方が好きだな。ブォーブォーという低い音はバスフルートで、ブォンブォンというパーカッシブな音は何かの酒瓶のようです。
ちなみに、ジェレミー・スタイグは画家でもありまして、半年ほど前に近所の画廊で個展をやってました。お父さんのウィリアム・スタイグは絵本作家で、シュレックの原作者なんだって、知ってた?
次。ヒューバート・ローズは元々、クラシック系の曲を集めたベスト盤で知ってました。その時もかっこいいなあと思っていたのですが、ザ・フルートで紹介されたマッコイ・ターナーの「フライ・ウィズ・ザ・ウィンド」でローズがフルートを吹いていると知ったので、試しに買ってみたんですよ。
クラシック系の曲をやっている時(と言っても、クラシックそのままではないんですけど)とは、全然違いますね。それともこのアルバムだけかな? とにかく“吹き飛ばしている”でしょ。やたらと威勢がよくて、でもしっかり吹いている。もっとも“飛ばしている”のはローズだけでなく、バンド全体で“飛ばしている”んだから、やっぱりアルバムの性格なのかな?
骨太ですよね、フルートもバンドサウンドも。漢くさいです、そこがまたカッコいいです。
笛先生によると、ロウズはタンギングがすごいんだそうです。そばで聞くと、そのタンギングの激しさがよく分かるそうです。確かに録音を聴いていても、まるでギターの速弾きのようなフレーズがたくさん出てきて、すごいなあと思います。ああ、そうか、あれはタンギングが上手だからできる技なんだね。
ロウズのような、骨太でしっかりしたフルートの音は、一般的な癒し系のフルートのイメージとは違うかもしれないけれど、ああいうアグレッシブな音(でいいんですよね?)も私は大好きです。
次はミルト・ジャクソンの「オパス・デ・ジャズ」です。フルーティストさんはフランク・ウェスです。なんで、私はこのCDを買ったのかな? その動機を忘れてしまいましたが、購入後は結構聴いてます。たぶんヴィブラフォンの音色にやられたのかもしれません(笑)。だって、ガラス細工のようなクリスタルな音色なんですもの。もちろん、フルートのフランク・ウェスもいいですね。
笛先生に「フランク・ウェスのCDを買いましたよ~」と報告をしたら「オパス・デ・スィングですか?」と突っ込まれました。ううむ、フルート目当てなら、そっちだったのか! でも、キラキラしたヴィブラフォンの音と、しっとりしたフルートはなかなか対照的で私は好きです。
4曲入のアルバムなんですが、2曲目の「Opus Pocus」という曲だけは、フランク・ウェスはフルートではなくテナーサックスを吹いてます。同じ奏者でも、使用する楽器が変わるとだいぶ音楽の印象が変わりますね。フルートを使用している時は、癒し系の音楽ですが、サックスになると酒場の音楽になります。いやあ、不思議不思議。
チック・コリアの「ボヤージ」は、ザ・フルートの最新号で紹介されているCDですが、私がこいつを購入したのは、その雑誌の発売よりもだいぶ前なんですよ~、信じてください、お代官様~。
このアルバムでフルートを吹いているのは、スティーブ・クジャラです。で、このフルート。なんか変なんですよ。地味に個性的なんですよ。クジャラのフルートってヒュードロドロドロみたいな音を使うんですよ。あるは、ウッヒョ~~ヒョイヒョイヒョイみたいな音というか、フルル~~ホイホイホイホイみたいな音というか。全部分かりづらい表現ですね(汗)。なんか、ヴィブラートとも違うし、ギターで言うところのチョーキングみたいな音をバンバン使うのね。それも地味に(笑)。とにかく、変なんです。で、それが気になると、結構耳に残るんですね。たぶん、これがこの人の味なんですね。
この人の演奏を聴いていると「クロマチックの練習をしなきゃいけないなあ…」となんとなく思ってしまいます。この演奏はかっこいいかと言われると、正直“?”なんですが、すごく心に残ります。気になります。不思議なフルートなんです、私にとっては。
彼のフルートに関して言える事は、こんな初心者に毛の生えたようなオッサンでも、けっこうおもしろい(興味深いという意味です、念のため)フルートを吹く、という事です。とにかく、フルートの音程が平均律の中に収まっていないと言うか、1オクターブを絶対に12個以上に分けて使って吹いているというか、とにかく、音程的に面白い演奏をします。
なんて書くと「じゃ、スティーブ・クジャラって、下手くそなフルーティストじゃないの?」って誤解されそうですが、それは全然違う。むしろ、テクニシャンの方かもしれない。きっとこの人、上手すぎて、どっか逝っちゃっているんだと思う。そういうのって、クラシック系のミュージシャンにはいないタイプでおもしろいですね。
さて、ここまで色々なフルーティストさんのCDを紹介してきました。私が一番美しい音色のフルーティストさんだと認めているのが、エミリー・バイノンで、演奏スタイルに憧れるのが、イアン・アンダーソンだと書きましたが、では、一番愛しているフルーティストさんはと言うと…明日は、その方について書いてみたいと思いますので、お楽しみに~。
コメント
>フルートの音程が平均律の中に収まっていないと言うか、1オクターブを絶対に12個以上に分けて使って吹いているというか
amazonでは、視聴出来なかったのです。。
要するに、尺八とか、笙とか、おばけ笛(って名前かな?)みたいな音ですか(笑
西洋楽器だったら、トロンボーン?
おばけ笛:スライドフォィッスルって名前だった
(汗
先で「音」と書いたけど、、無音階的な、連続tone?
オハーです。
お目が高い、ビル・エヴァンスの「ホワッツ・ニュー」、フルーティストはジェレミー・スタイグ。
今年になってからまだ、フルートを吹いておりません。(泣)
フルートよりテナーの練習をせねばならんのです。
で、昨年の19日にチョロト練習しただけで9日(土)のリハ一発で本番なので、で、如何すんの!(汗)
9日(土)の報告は別途!(笑)
>ととさん
試聴ですか? 所詮フルートは脇役だからなあ…。ピアノの試聴なら、iTUNEストアでできますが、フルートの変態的な個所は当然聞けません。1曲目の「Mallorrca」の試聴で、フルートの出だしの部分だけ聞けますが、ここはあんまり変態度が高くないです(残念)。
テクニック的な事は分かりませんが(おそらく、音曲げを基本技とし、それに加え、リングキーの穴で何かやっているかもしれません)、音程の動く範囲はそれほど広くないので、トロンボーンをイメージするとだいぶ違います。
ととさんが上げた中では、音色的に近いのが“おばけ笛(スライドホィッスル?)”かな? 無音階的と言うよりも、連続toneかな? やっぱりギターのチョーキングとか、シンセのベンドに近い感じです。それを確認するために、演奏を聴きながら、このコメント書いてますが、やっぱキモヘンタイだわ~、クジャラって。この人、どこに行っても、こんな変態な演奏ばかりやっているのかしら?
>はっチャンさん
いやいや、まだまだ初学者なので、単に基本というか王道を押さえにかかっているだけですよ。当たり前というか、メインストリームをきちんと知らないまま、変態の森に行っちゃうとヤバいでしょ(笑)。
でも、マジでスタイグにはハマリそうでこわいです(笑)。
テナーサックス! うわ~、かっこいい。とにかく本番が迫っているなら、フルートを横においても、まずはそいつをやっつけるのが先決ですよね。頑張ってください、報告を心待ちにしています。
その4は、スーパーサブですか。
なるほど、そういう風にきいたことがなかったので、おもしろいと思いました。
ジャズフルートは、少数と言われてましたが、持ち替えの方も含めると聞いたことがない方はまだまだいるのだなあと思いました。
それも、とても個性的な方ばかりですよね。
ジェレミー・スタイグのために特殊な何かをほどこしたフルートというのは、サンキョウなんですか。
ちょっとうれしい情報ですね。
中川昌三さんは、私のイメージでは、「ルパン三世」の石川五右衛門のテーマの方です。
今度見るときは注意してきいてみてください。
>アリサさん
そうなんですね、スタイグの愛笛はサンキョウなんですね。日本の会社が困っているミュージシャンに手をさしのべたという事実は知ると、日本人として、なんか背筋がピンとしますね。私も困っている人に何かができる人になってみたい、何かをしてあげたい、と思います。
私もサンキョウフルートさんを見直してます。
「石川五右衛門のテーマ」と聞いても、ピンとこない(涙)。今度の週末に、レンタル屋に行って、チェックしまーす。