実はキング先生に声楽を習うずっと前、私は一人の先生について声楽の個人レッスンを受けていたことがあります。その先生の名前を仮にT先生と呼びましょう。T先生はメゾソプラノでした。日本と東欧の歌劇場を行ったり来たりして活躍していた、オペラが本職の方でした。
私が今よりもずっと音楽的な実力が低く、私が習い始めて1年くらいで、T先生は生徒さんたちに教えるのを止めてしまわれたので、私はあまり多くのことをこの先生からは習えませんでした。
それでも色々な事を覚えています。
この先生はレッスンの時に「天使が空から降りてくるように歌いましょう」とよく言っておられました。
私はこの天使を呼ぶのが大変苦手で、一回のレッスンで一度も呼べないことも結構ありました。でも天使が降りてくると、とても歌うのが楽しかったです。
天使が降りてきている時は、たとえ歌っているのが私一人であっても、私の頭上で天使が柔らかく高い声で一緒に歌ってくれるのがよく聞こえました。
おそらく天使の正体は“倍音”って奴だと思います。
天使を呼ぶのによく「引っ張って~」とか「飲み込んで~」とか言ってました。そうやって倍音を豊かに出すことを身につけさせようとなさった先生でした。でも結局、私は身につかなかった(汗)。どうやって天使を呼んでいたのか、もうすっかり忘れてしまいました。
今の先生であるキング先生は、あまり倍音のことをおっしゃらない先生なので(と言うより、私の今のレベルでは倍音うんぬんのレベルではないと判断されているのだろうと思うけれど)、レッスンの時も、自宅練習の時も、天使がやってくることは、まずありません。
それでも今のレベルでは良いのだろうけれど、なんか寂しいです。天使がやって来ると、歌うのが本当に楽しくなるんですねよ。やって来ないかな…天使さん。
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