クラシック系の歌が好きで、自分でも歌おうと思うと(私もそうだったけれど)合唱団への加入を考えます。いきなり一人で歌おうとは思わないわけだ。
器楽もそうで、楽器を学び始めると、やがて吹奏楽団とかアマオケとかの団体に加盟したくなります。そのままソリストを目指す人って、まあいないよね。
聞く方もそうで、いわゆるクラオタと呼ばれる人の大半は、オーケストラ音楽が大好きです。ベートーヴェンの交響曲は言うに及ばず、マーラーとかブルックナーとかの大編成オーケストラの音楽を嗜むようになると“上級者”ってイメージになります。交響曲は人気だけれど、同じオーケストラ音楽でも、協奏曲(ソロ楽器+オーケストラ)が好きな人ってなると、だいぶ数が減りますし、ソナタ(ソロ楽器+ピアノ)となると、もっともっと少なくなってしまいます。
例外的なのはピアノ人気で、ピアノはソロで弾いても、オーケストラと共演しても、大人気です。まあ、ピアノは底辺が広いから人気の頂上も高いんだろうなあって思います。
ポピュラー音楽の世界だって、考えてみれば「○○48」とか「○○46」とか、学校の1クラスよりも多い人数のグループの人気は高いし、そうでなくても、5~10人程度のグループはたくさんいます。私が子どもの頃は、アイドル歌手ってソロ歌手でしたが、今のアイドルはたいていグループです。いや、アイドルに限らず、いわゆるアーチストと呼ばれる人たちも、今は大半がバンドです。バンドってグループだよね。
つまり、これらの事から「日本人は音楽をするのも聞くのも、ソロは嫌いで、アンサンブル音楽が好き」という結論が出そうですが…本当にそうなの? と言うのも、ならばピアノ人気はどうやって説明する?
私が思うに「日本人は同時にたくさんの音がしているのが好き」なんじゃないかって思うのです。つまり、みっちりとした分厚い音が好きで、空間を感じさせるような音が嫌いだと推察します。
とにかく、歌でも楽器でも、同時にたくさんの音が鳴っているのが好きなんです。だからソロよりもアンサンブルが好きだし、小さな演奏団体よりも大きな演奏団体の方が好きなのです。ピアノに関して言えば、楽器も奏者も一人であっても、同時に鳴り響く音は案外多いのがピアノです。
逆に言えば、奏者が少なくて、演奏に隙間や空間が感じられるような音楽は苦手なんだろうと思います。だから、奏者の数は同じでも、電気の力で音圧を上げて隙間なく演奏できるロックは日本でも大人気ですが、音の隙間は隙間のまま演奏してしまうジャズは、さほどの人気が出なかった…と思います。
たとえ音楽と言えども、少しの隙間であっても埋めていきたい。みっちりした芳醇な音楽の世界を日本人は好む…と言えます。
ただね、これは戦後のあたりからの傾向かな?って思います。あるいは日本にいわゆる“洋楽”が入ってきたあたりかも? と言うのも、昭和の在来の音楽(歌謡曲とか演歌とかね)は、まだまだ案外、音楽に隙間があったんだよね。昭和どころかもっともっと逆上ればのぼるほど、日本の音楽には隙間がありました。江戸時代の義太夫なんて、だいぶ隙間があります。平安時代の雅楽になると…隙間だらけです。
つまり、割と最近までの日本の音楽は程度の差こそあれ、隙間のある音楽が好まれていたのに、最近になって隙間のない音楽が好かれるようになってきたというわけです。
なぜなんだろ? 日本人の音楽の好みが変わったから? それとも、本来日本人は隙間のない音楽が好きなのに、昔はそういう音楽を演奏できなかっただけで、最近はようやく隙間のない音楽を演奏できるようになったので、好みがもろに分かるようになっただけとか? 単純に西洋かぶれで欧米的な隙間のない音楽を良しとする風潮になってきたのか?
この問題については、もう少し考えてみたいと思います。
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