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シズカがおねだりをするんです

 シズカは素赤琉金です。金魚専門店で売られていたA級金魚なので、ウチの水槽にいる他の子たちとは、あれこれ格が違います。実際、見事な体色&体型をしています。パっと見、図鑑などに載っている子のような立派な金魚だったりします。

 でも、よく見ると、右側の尾びれの下半分が無かったりするんですけれど…ね。でも、それを除けば、大きな欠点の無い、立派な金魚だったりします。

 なので、実に美しい金魚なのです。

 我が家の金魚のツートップはヤヨイとシズカなのですが、あえて言うと、私はヤヨイ派で、妻はシズカ派であり、妻はシズカを実に可愛がっています。シズカもよく妻とコミュニケーションを取っています。コミュニケーションと言っても、アイコンタクトとか、ちょっとした指遊びとかなんですが…。まあ、シズカは人間大好きな金魚なので、妻とシズカのやりとりを見ていると、なんともほのぼのとした気持ちになります。

 そんな“可愛い”シズカが、最近、妻を無視するようになり、なぜか私とコミュニケーションを取りたがるようになりました。妻がシズカを見ると、視線をそらすようになり、指を出すと逃げるようになりました。その代わり、私の方をじっと見つめていて、私が視線をくれてやると、喜んで反応するようになりました。

 面白くないのは妻です。自分が可愛がっているシズカに反抗されているようで、なんとも面白くないわけです。

 よくよく見れば、私に視線をくれるのは、シズカだけでなく、ヤヨイもベルもそうなのです。みんな私を、ウルウルした瞳で見つめるのです。あの、人間には興味のなさそうなヤヨイですら、たまに、本当にごくたまに、私をウルウルした瞳で見つめるのです。

 一体、何があったのでしょうか?

 金魚の考える事なんて、ちっとも分かりませんが、もしも理由があるとしたら、ただ1つです。それは、メダカの投入…かな?

 エサ用のメダカを入れる前に、さんざん金魚たちにメダカを見せて、じらしてから入れたのですが、それをやったのが私なんです。私がメダカを見せて、じらしたんです。ですから、私がメダカを水槽に入れた途端に、金魚たちは飛びつくようにメダカに突入していったわけです。

 なので、私は金魚たちに「メダカを入れてくれる人」という認識のされかたをしているのかな?と思うわけです。なので、金魚のウルウルした瞳は、別に私の事が好きとかそういうのではなく、単純に「メダカ食べたい、もっと入れて欲しい」という要求なだけなのかもしれません。

 いや、きっと、そうなんだろうなあ。

 まあ、理由はなんであれ、金魚たちの熱いまなざしを浴びるのは、悪い気分じゃありません。

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