声楽のレッスンの続きです。私の歌う「Che gelida mania/冷たい手」ですが、歌い出しを何度もやりました。
前曲の二重唱の最後で、ロドルフォがミミの手を握るわけですが、そこから約10拍の無言の後にアリアを歌い出すわけです。この無限の間、ピアノはAの音を一回叩いて、それをペダルで伸ばしているだけなのです。だから、ついついすぐに歌い出してしまうわけなのだけれど、それではダメなので、何度かやり直しをしました。ここは、この無言の緊張感が必要なのです。なにしろ、“Boy meets Girl”のシーンなのですから、いわば一瞬、時が止まり、すべては止め絵になってしまうのです。その緊張感に耐えなければいけないのです。いやあ、頑張りましたよ。
もちろん、手は歌い始めても、しばらくは握り続けないといけません。どこまで握りっぱなしにするかは、演技の都合なので、これはこれで考えないといけないのですが、今回は、ひとまず、8小節間、握ってみました(笑)。
この後は、ひたすらテンポの操作を練習しました。とにかく、この曲をインテンポで歌う人はプロでもいないわけです。そんな事をしたら、歌が破綻し、歌手が死んでしまうからです。だから、あるところはゆったりと歌い、あるところは端折って歌うわけで、それを一つ一つ決めながら歌ってみました。
本来は、そんな事は、指揮者が考えて、リードすれば良い話なのですが、我々の舞台には指揮者はいませんので、事前に歌手とピアニストとで、どんなテンポの変化で歌うのかを、合わせておかなければいけないのです。ううむ、厄介です。当日の気分でテンポの変化を変えちゃうのは、ちょっと危険かもしれません。
途中、4拍子が3拍子になるところがあるのですが、そこはテンポもググっと変わる所でして、私、上手く歌えませんでした。テンポもリズムも変わるのに、ピアニストに分かるように、歌手は上手くリズムを取って歌わないといけないのですが…それはなかなか難しく、ピアノも当然合いませんでした。反省です。次回まではに、テンポは変化しながらも、三拍子のリズムをきちんと取って歌えるようにしないとね。ちなみに、この箇所、プロの皆さんは、テンポ指示は指揮者に任せてしまい、自分はたいてい歌い崩してしまい、三拍子の跡形もない歌唱が多いので、プロの歌唱はあまり参考になりません。
“l’anima ho milionaria”の箇所が上手く歌えません。リズムに歌詞がうまくはまらなくて…しくしく(涙)。ちなみに、この箇所もプロの皆さんは、たいてい歌い崩しているので、全然参考になりません。この箇所といい、3/4の箇所といい、難しくて他人の歌唱を参考にしたい箇所に限って、プロの皆さんは歌い崩しをしているので、ほんと、参考になりません。素人さんの歌唱音源があれば、それが参考になりますよ…と先生からアドヴァイスをいただきました…が、このアリア、素人が歌えるようなアリアじゃないんだよね。一応、YouTubeを漁ってはみたものの、なかなか水準に達している歌唱はないんだよね。
やっぱり自分なりに歌うしかないか…。
とにかく、インテンポでは歌わない事。メロディーのスキマがあれば、そこでは必ずたっぷり休むこと。急がない事。声を出し過ぎない事等々を注意されて、ひとまずこのアリアのレッスンは終了です。
次は妻の「私の名はミミ」でしたので、立ったまま休憩となりました。
で、妻のアリアが終わったところで、最後の二重唱「O soave fanciulla/ああ、うるわしの乙女よ」となりました。
音符が詰まっていて楽譜が黒くなっているところは、決して乱暴に歌わない事。一つ一つの音符をしっかり踏みしめながら、テンポを上げて歌う事が肝心なのです。
バンバン歌っていく曲なので、ブレスの位置を決めていきます。特に、この曲での最高音を含んだフレーズである“Fremon gia neli’anima”は、前のフレーズがノンブレスで突入して歌うことにしました(その方が緊張感が高まって、カッコいいからです)。
キスシーンの直前のフレーズは、ピアノが止まって、ミミとロドルフォだけが歌っているので、ここはあえてインテンポでは歌わずに、遊び心を持って、大胆にテンポを揺らして歌って下さいと言われました。で、大胆にテンポを揺らして…キス…するわけですな(笑)。まあ、実際の舞台では、キスの真似っこをするだけだし、キスの直後にロドルフォはミミに拒絶されちゃうんだけれどね(残念)。
拒絶されながも、しっとりしたシーンが続くので、歌もピアノも、それに合わせて、しっとり歌わないといけません。これが実に難しい。
で、ミミの腕を取って、舞台からハケて、最後にハモってお終いなんだけれど、例によって、このハモリが難しい。油断していた事もあったのだけれど、私、音をはずしてしまったよ。で、一度外してしまうと、なんかうまくいかないのだよね。ああ、意識してなきゃ、別にハモリの箇所もなんとかなるのだけれど、一度意識しちゃうと…ハモリは苦手です。
とにかく、最後のハモリのシーンは、私、自宅で要特訓だそうです。頑張んないとなあ…。
と言うわけで、最初から最後まで、止めながら合わせていったら、それで時間一杯となりました。先生にお礼を言って、レッスンはお終いです。
帰りに、ピアニストさんも一緒に、横浜で天ぷら食べました。いやあ、やっぱり天ぷらは店で食べるのに限りますね。ネタがいいのはもちろん、あんなにキレイに、コロモも薄く、カラッとあげる事なんて、家庭じゃ無理だよね。適温にした大量の油がないと、こんなふうにはあげられないわけで、ほんと、美味しい天ぷらは、自宅じゃ食べれませんよ。
それに天ぷらは、量が少なくても腹持ちが良いので、私、大好きです。
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コメント
すとんさんこんにちは。
ピアニストさんと合わせるの本当に難しいですね。
三拍子の参考にはならなさそうですが、下記のリンクのような動画がありました!今ムゼッタを歌っていて動画を探していたら発見しました。
もうご存知かもしれないですが念のため貼り付けます。
https://youtu.be/jE32o8hB7_Q
チューリップさん
動画、感謝。でも、これはHi-Cの出し方のレッスンで、私が悩んでいる“テンポを揺らしながら三拍子のリズムを取る”の箇所ではありません。まあ、この動画は有名な動画(私はテレビ放送で見ました)なんですがね。
この箇所でやっているHi-Cの部分ですが、私は今回、回避するんですよ。つまり、Hi-Cは歌わないのです。だって、この動画のプロの人だって、Hi-Cをちゃんとは歌えていないでしょ? 何度もトライしてHi-Cが出てもダメでしょ? 常に出せる、せめて、きっと出せる…と思う程度に確率を上げてからでないと、本番では使えません。この歌手君だって、この程度じゃあ、まだまだ本番では使えないよね。
私もHi-Cが出ないわけじゃないけれど、あまりに確率が悪すぎるので、今回は勇気を持って回避するんですよん。実際、私は高いAまでが実用音域だから、それ以上は、出ないわけじゃないけれど、かなりの博打になるわけです。
まあ、凡才ですからね、テノールとしては(涙)。
すとんさん
すみません><なんだかかなり的外れでした~
しかもリアルタイムでご覧になるなんてさすがすとんさん。
高い声がでないソプラノ、high F のでるメゾがいるように
高い声がないテノールもいて当然だと思います!
音域を伸ばすのって大事ですがある程度生まれ持った声帯で決まっていますし今持っている音を美しくした方が良いのかなあと最近思っています。
私はまだ声楽歴2年と5か月の初心者なのですが偉そうにすみません^^;
チューリップさん
>高い声がないテノールもいて当然だと思います!
いやいやいやいや。高いAが出るなら、もう十分なんですよ。すでにテノールとしては、標準的な声だと思います。高い声がないテノールと言うのは、せいぜい五線の上に引っかかっているFとか、五線に載っかっているGまでしか出ないテノールの事を言います。
実際、邦楽合唱曲のテノールなんて、そこらへんが高音の上限だったりするんですよ。
同じ高音歌手とは言え、テノールって、ソプラノほど高い声が出るわけじゃないんですよ。だって、テノールは裏声なんて使わずに、地声であの高音を歌うんだよ。ほぼ、裏声で歌うソプラノとは、かなり事情が違うんです。
Hi-Cなんて、プロのテノールでも出ない人は、ゴロゴロいますし、Hi-Cが出ないのは、テノールとして恥じゃないです。いやむしろ、Hi-Cが出るなら、食うに困らないほどに恵まれた才能であって、テノールとしては凄いことなんです。ほぼ、化物クラスになります。だから私が今回Hi-Cを回避しても、それは全然恥ずかしい事じゃないんですよ(残念な事ではあるけれどね)。
普通のテノールはHi-Cなんて出ませんよ。だから、Hi-Cが安定して出る歌手は、世界をまたにかけて活躍して、億万長者になったり、お城を買ったりするんです。それくらいの才能なのね、テノールにとってのHi-Cってのは。だから動画の彼も頑張ったわけです。でも、たぶん、彼がHi-Cを出せたのは、あの一瞬だけでしょうね。翌日はもう、出せなくなっていたと思いますよ。
そうなのですね。勉強になりました。ソプラノ以外の知識は著しく欠落しています。
なんだか不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
チューリップさん
別に不快な思いなんてしてないので、安心してください。それに自分の声種以外の事は、よく知らないのは、当たり前です。まあ、そんなもんです。
ちなみにテノールは、少数派で希少種ですから、その性質をなかなか理解してもらえない事には慣れています。実際、テノールって少ないしね。
市民合唱団などでテノールを歌っている人も、実は真正なテノールって少ないそうですよ。多くの場合、高い声の出るバリトンさんがテノールのパートを歌っている事も多々あります。それくらいに、テノールって、数が少ないのよ。
すとんさん
ご気分を害されたかと思いましたがそれを聞いて安心いたしました。
男性はほとんどバリトンと言われていると聞いたことがありますが、ただの噂でもないのですね。
ソプラノも本物のレッジェーロはなかなかいないと言われていますがそれと同じなのでしょうか。だいたい皆様リリコレッジェーロの部類にはいると私の先生はおっしゃっていました。コロラトゥーラ=レッジェーロとは限らないと。
テノールも少ないのですね。地声でHigh Cはのどにかなりきそうですね。そういえばパバロッティもhigh Cを本番でミスったことがあると聞きますしやはり超人的な技なのですね。
チューリップさん
>男性はほとんどバリトンと言われていると聞いたことがありますが、ただの噂でもないのですね。
男性はほとんどバリトンですよ。市民合唱団にいらっしゃる、バリトンの人がバリトンなのは当然として、テノールとかバスとか言っている人も、実際の声はバリトンさんが大半なのです。それくらい、日本の男性の声は、ほぼバリトンと言えます。
まあ、これは女性がほとんどソプラノってのと同じかもしれません。いや、女性のソプラノ率よりも、男性のバリトン率の方が、圧倒的に高いか(笑)。
>コロラトゥーラ=レッジェーロとは限らないと。
確かにそうなのかもしれませんね。コロラトゥーラとは、声を転がす技法の事を言うわけで、別に高い声であるとは限りません。実際、メゾのコロラトゥーラもいますからね。でも、声種としてのコロラトゥーラは、限りなく高い声で歌いますから、レッジェーロのイメージが強いのだと思います。
>そういえばパバロッティもhigh Cを本番でミスったことがあると聞きますしやはり超人的な技なのですね。
おそらく、パパロッティは驚異的にミスの少ない人なんだと思います。プロでもHi-Cは普通にミスります。いや、Hi-Cどころか、その下のHとかBとかでも、プロのテノールでさえ、普通にミスりますよ(笑)。
結局、男声が通常の声で歌える上限が高いAなんですよ。そこから上のBとかHとかHi-Cとか、もっと上とかは、超人の範疇であったり、奇跡のような出来事であったりするわけです。レコードやテレビで、テノールが華麗にHi-Cを決めていますが、あれは失敗したモノは収録したり放送したりしないだけです。普通のプロテノールの生のコンサートに行くと、歌うのはたいてい高いAまでの曲で、その上の音程を含む曲は、コンサートで1曲か、せいぜいが2曲までしか歌いませんし、それも高音が成功するとは限らないのです。
テノールって、人間業じゃないことに、日々チャレンジしている、お馬鹿さんの事を言うのですよ。
すとんさん
ソプラノよりバリトンが多いなんてかなり多いですね。
そうですね。声質よりも高い声が出ることが条件なのでしょうがやっぱり軽い声の方の方が高音をもっていますね。有名なエディタグルベローヴァもコロラトゥーラソプラノと呼ばれていますが実際専門家が見るとリリコレッジェーロからリリコの声質だそうです。
恐るべしテノールのHigh Cです。
すごいことなんですね。テノールの皆さんは体張ってチャレンジしていらっしゃるのですねwだからテノールの方は陽気で明るい方がおおいのでしょうかww声質ごとの性格の傾向ってのもありますよね。
チューリップさん
>恐るべしテノールのHigh Cです。
そうなんですよ、それをご理解いただけると、テノール一同、涙を流して喜ぶものと思われます。
>声質ごとの性格の傾向ってのもありますよね。
ありますね。テノールはよく“馬鹿”と言われます。だって、人間業じゃない事にチャレンジし続けているんですから、そりぁあ“馬鹿”じゃなきゃできない事です。おまけに歌だって、高音が出たか出ないかしか考えないわけだし(笑)、歌ってそんなもんじゃないでしょ…と他の声種の方に言われても「??」だったりするわけで、やっぱり馬鹿だよね。まあ、愛すべき馬鹿モノというのが、テノールの立ち位置なのかなって、私は思ってます。