イギリスはロンドンにある、ロイヤル・アルバート・ホールで行われた「25周年記念公演 in ロンドン オペラ座の怪人 at the ロイヤル・アルバート・ホール」って奴を見てきました。いわゆる、映画館で上映するライブビューイング中継のミュージカル、って奴です。まだ上映している地域もありますので、詳しい事は公式ホームページをご覧ください。
今回の上映は、まず最初に、25周年特別公演の「オペラ座の怪人」を上演した後、続けざまに特別ガラコンサートが行われ、サラ・ブライトマンやマイケル・クロフォード、歴代のファントムたちが現れて特別に歌を披露してくれました。
まずは、劇場であるロイヤル・アルバート・ホールの感想から。ここはコンサートホールであって、オペラ劇場ではないので、ミュージカルを上映するには全く向かない会場なんだろうと思います。舞台は狭いし、舞台袖も緞帳もオーケストラピットもないわけで、それどころか、舞台の真横にも客が座っている(笑)し…本当はすごくやりづらい会場なんだろうと思います。舞台セットもロクになく、代わりに舞台の背面には一面にデジタルパネルが貼ってあり、このパネルが言わば、舞台の“書き割り”の役割(それもなかなかにリアルなCGによる書き割りなんですよ)を担っていました。オーケストラは舞台の奥の二階部分(おそらく普段は客席になっている部分。ちなみにオーケストラピットの下の一階部分は舞台裏的な使われ方をしていました)に鎮座ましまして、面白い配置になっていました。映画でも象徴的に使われていた、巨大なシャンデリアは…当然ありました。あれって、スワロフスキー・クリスタルで作られている、マジで贅沢なシャンデリアなんですよ。普段はどこにあるんだろ?
このミュージカルは、オペラハウスでやったわけではないので、色々と道具的には恵まれていませんでしたが、バレエダンサーやコーラスはたくさんいましたし、黙役の人もたくさんいました。これだけたくさんの人間を使ったミュージカルってのも、贅沢ですね。
ミュージカル本体は、迫力満点でした。ライブビューイングって、やっぱり、すごいね。映画版の「オペラ座の怪人」も良かったけれど、ライブビューイングは舞台の迫力をダイレクトに伝えてくれるし、役者のアップシーンも多く、直接舞台で見るよりも楽しめる部分もあるわけで、すごいすごい。また映画版を見た時は「オペラ座の怪人」そのものが初見だったので、ストーリーを追いかけるのに忙しかったけれど、今はストーリーはバッチリだし、曲も知っているので、ようやくミュージカル本体を純粋に楽しめるようになりました。やっぱり、ミュージカルはリピートしてナンボって部分はありますね。ううむ、こうなると、今度は本当に舞台で見たくなりました。まさかロンドンに行くわけにはいかないから、劇団四季のバージョンで見ることになるんだろうなあ…。
まあ、当然だけれど、舞台版は映画版とは色々と違いました。登場人物も少ないし、お話も場面が限定されるので、むしろ分かりやすい感じがしました。ファントムの心の痛々しさがより強く伝わるような気がします。
キャストは…とにかく、歌も芝居も上手で、日本のミュージカルとはレベルが全く違う事を感じました。まるでオトナと赤ん坊ほどの違いがあります。まあ、劇団四季だと、オトナと学生ぐらいの違いかもしれないけれど(そういう意味では、劇団四季って頑張っていると思うよ)。とにかくすごいね。
主役のクリスティーヌって、役の上ではコーラスガール(兼バレエダンサー)だし、最初の登場シーンでは、バレエダンサーとして踊っているわけだけれど、これが周囲にいる本職のバレエダンサーたちに少しの遜色もなく踊れているわけです。それってすごいよ。オペラの世界では、バレエの踊れる歌手なんているわけないよ、で、その上、すごい美人なんだよ。シエラ・ボーゲスという人が演じていたのだけれど、この人、すごい歌手です。
歌って踊れると言うと、脇役だけれど、メグを演じていたデイジー・メグウッドもすごい。これだけの人が脇を固めている事に、ロンドンにおけるミュージカル歌手の層の厚さを感じます。
歌手として見ると、シエラ・ボーゲスもそうだし、ファントム役のヨミン・カリムルーもラウル役のヘイドリー・フレイザーも、どの人も歌が達者なだけでなく、音域が半端なく広いです。ミュージカルだから、マイク前提で歌っているわけで、その点はオペラ歌手とは違う部分だけれど、それにしても、音域が広いです。あ、歌唱スタイルはクラシック寄りではなくポピュラー歌手のそれに近いって印象です。
とにかく「オペラ座の怪人」というミュージカルの上演そのものが良かったです。
で、本体部分のカーテンコールが終わったあたりから、今度は25周年記念特別公演が始まりした。作曲家のスピーチもあった(ロイド・ウェーバーがすごいジイサンになっていてビックリしました)けれど、過去の出演者たちもたくさんゲストで来ていて、なかなかに良かったです。サラ・ブライトマンが登場しましたが、彼女は歌もボディも貫祿たっぷりですごかったですよ(笑)。でも、現役のクリスティーヌ役のシエラ・ボーグスと無意識に比較してしまうと、ちょっぴり残念かな。歌唱は立派だけれど、声がすっかりオバサンになっている事が分かっちゃいました…クリスティーヌって娘役だから、オバサン声で歌っちゃダメだよね~。ちなみに、オリジナル・キャスト版(1987年)の時はまだサラは娘声(ってか本人も20代だったし:笑)だったので、サラの歌唱でクリスティーヌを楽しむなら、昔のCDに限ります。
サラの歌の後は、5人のファントム(カナダ初演キャストのコルム・ウィルキンソン、オーストラリア初演キャストのアンソニー・ウォーロウ、現在のロンドン公演キャストのジョン・オーウェン・ジョーンズ、次期のロンドン公演キャストのピーター・ジョバックと、今回のファントムのラミン・カリムルー)がタイトル曲の「オペラ座の怪人」をリレー形式で歌って、そりゃあ、圧巻でした。しかし、ファントムって、色々な声の人が演じるんですね。バリトンの人もいたし、テノールの人もいた。バリトンの人は、高い音の部分は三度下げて歌っていたので、トゥッティになると、ファントム同士でハモっているのが面白かったですよ。ま、ミュージカルと言うのは、歌芝居とは言え、歌ばかりが良くてもダメで、演技とか容姿も大切な要素だから、となると役に合わない声の歌手でもやっちゃうわけなんだろうね。なにしろ、ファントムは存在感がある役者がやらないと、どうにもならない役だからね(笑)。
ミュージカル本体も素晴らしかったけれど、こっちのガラコンサートの方もよかったです。ううむ、これ、DVDにならないかな? なったら、買っちゃうかも。
とにかく、このライブビューイングを見て、気合が入りました。ガラコンサートに向けて、頑張ろうって思えるようになりました。しかし、三時間を越える上映時間だし、おそらくオリジナルのライブビューイングでは途中に休憩が入っていたはずだけれど、日本語版は、なぜか休憩時間がカットされてたのが、キビシイですね。私は一幕が終わったところで、すぐにトイレに向かったけれど、二幕の前奏曲の最初の部分を聞き逃しちゃいました。30分とは言わないですが、せめて10分程度の休憩が欲しいなあって思いました。ここだけは残念でしたよ。
さあ、次は劇団四季版で、ナマの舞台を一度見てみるか!
コメント
「レ・ミゼラブル」も素晴らしいですよ!
コルム・ウィルキンソンが初代ジャン・バルジャンですね。
彼のために作られたというナンバー「Bring him home」など名曲揃いです。
歌重視のミュージカルなだけに、CDなどでも立派な歌がきけます。
ロンドンに旅行に行ったときにたまたま舞台で観たのですが、
あまりに音楽が素晴らしいので涙が出ました。
ライブビューイングも、そんな気持ちになれそうですね。いいですね。
椎茸さん
レ・ミゼラブルは昨年、全国各地の映画館で、ロンドン公演のライブ・ビューイングをやったんですよ。私は気付くのが遅くて、見逃してしまったのです。残念。
もっとも、私は不勉強なので、ミュージカル「レ・ミゼラブル」って、まだ見てないんですよ。なかなかチャンスが無くてね。なので「レ・ミゼラブル」について語れないのが残念です。一応、原作は知ってますよ。映画もいくつかは見てますから、ストーリーは大丈夫なんですけれどね。
>歌重視のミュージカルなだけに、CDなどでも立派な歌がきけます。
そうそう、結局、ミュージカルは音楽なんですよ。歌なんですよね。CDも良いのですが、最近は値段的に変わらないので、DVDでも買ってしまおうかと思ってます。やっぱ、知らないとまずいだろうねえ…ミュージカルの「レ・ミゼラブル」は。