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伴奏について、ちょっとだけ考えた

 前回の声楽レッスンで、自覚をした事があります。振り返ってみると、発表会の準備の時から感じていた事だと思います。それは歌手とピアニストの関係? そんなおおげさな事ではないけれど、でもそんな事。

 まずは自覚以前の話から始めます。

 カラオケがそうだし、合唱の伴奏もそう、そして声楽だってグループレッスンの時はそうだった。何がそうだったのかと言うと、ピアノ(伴奏)と歌の関係。まず、ピアノが弾かれ、そのピアノの上に歌がのって音楽が作られる。

 まずはピアノ(伴奏)ありき、なんですよ。ピアノで示された、テンポや調性に合わせて、ピアノに手を引かれ導かれていくような感じで歌を歌っていく。これが今までのやり方だったんです。 言葉こそ“伴奏”でしたが、内容的には“主奏”あるいは“指示奏”だったと思います。…でしょ?

 それが、前回の発表会の音合わせの頃から、どうやらそれとは違うものが、そこにあるような気がしてきました。その違和感を抱えて、しばらく過ごしていたのですが、前回のレッスンで、私が抱えていた違和感の正体を、はっきりと自覚しました。

 自覚のきっかけとなった事。それは、レッスンで始めて「Lascia Ch’io pianga」を歌った時の事。

 先生が「では、一回歌ってください」と言うので、私はボケーっとピアノのイントロが始まるのを待っていたんですよ。でも、一向に始まらない。ま、確かにこの曲、アリアから入るなら、イントロはないんです。でも、今まで(グループレッスンという意味)なら、2小節程度前から演奏してくれたり、入るタイミングを教えてくれたりしていたのです。それこそ「はい、3、4!」なんて調子です。

 ところが、今回は先生、全然動かないんですよ。そのうち先生から「待ってちゃダメだよ。歌って。いつまでもグループの感覚でいちゃダメだよ。これからは、ソロなんだから、ソロの気概をもって、ドンドンいかなきゃ」

 ……ああ、そういう事だったんだ。この前から何となく感じていた違和感って、これだったんだ。

 さっそく、自分のテンポで歌いだしました。私が歌うと、ピアノが付いてきます。私がテンポを変えれば、ピアノもテンポを変えてきます。私がリズムで遊びを加えると、ピアノも即座に反応してきます。つまり、私の歌なりにピアノが付いてきます。私が歌でひっぱっていかないと、今すぐにでもピアノが止まってしまいそうです。

 これが伴奏という奴なんだ。私が歌手であり、指揮者であり、先導者なんだ。私がすべてのテンポとリズムとタイミングを決めていかないといけないんだ。音楽を作るのは、ピアニストではなく、歌手なんだ。

 もちろん、独善的であってはいけないのだけれど、歌手とピアニスト、主導権はどちらにあるのかと言うと…歌手です。音楽的には歌手が主役で、ピアノは脇役。今、こうして文章化してみると、なんか当たり前の事を当たり前に書いてるだけのような気がします。

 でもね、今までの私は、実はそうではなかった。今までは、ピアニストに甘え、ピアニストに頼り、ピアニスト任せで歌ってきた。はっきり言っちゃえば、ピアニストに合わせてもらって、歌わせてもらって…という感じでした。『~してもらって』で過ごしてきました。まさに“おんぶにだっこ?”なんか、そんな感じ?

 それが全くダメだ、とは思いません。

 たとえば、合唱。大勢の団員が各自の音楽センスに従って、各自で好きなように歌っては、音楽になりません。誰かが主導権を握らないといけません。多くの場合は、その役は指揮者あるいはピアニストが担ってきました。その場合は、団員たちが、指揮者に合わせ、ピアノに乗って歌うことは大切なことです。そういう意味で、この場合は他人任せの演奏で良しなんです。

 でも、ソロなら、独唱なら、歌手が主人公。彼が音楽上の全責任を負って音楽作りをしないといけない。こんな当たり前のことすら、今まで、私の念頭にありませんでした。そして自覚もありませんでした。

 『独唱をする』ということは、つまるところ『自分で考えて音楽をする』事なんです。“考える”だけでなく“決定”して“実行”していくんです。決して、他人任せではいけないのです。例え、どんなにエラいピアニストさんが伴奏してくれたとしても、最後の決定権は歌手が持っているんです。

 そんな事が一瞬で頭の中を走りました。ソリストとしての気概をもって、これからは歌っていきます。

 私は、フルートだって、合奏でなく、独奏で学んでいるから、いずれ同じ局面に立つことになるんだろうあ。

追記 以上は私の伴奏に関する考えです。キング先生ご自身は、私とはまた別な考えをお持ちです。キング先生の伴奏に関するお考えを知りたい方はこちらへどうぞ。

コメント

  1. めいぷる より:

    …そーなんですよね。
    上手なピアニストと合わせて、初心者の頃困ってしまった事。

    ピアニストは、フルーティストの微妙な揺れ、音色変化、体の動き、、、そー言うものから「次はこうしたいんだな」と察知されて弾かれています。 この意思表示が出来ない、、、というか、不本意にやってしまった頃、ピアニストとあわせるのが難しく感じました。

    当時はかえって上手ではないピアニストの方が気軽に吹ける…こちらがそれに乗っかるだけで良いんですから(爆)

    アンサンブルも同じで、ベース担当がどう主導するか、旋律担当がそこに乗っかってどう歌い広げるか、ハーモニーはどう吹けば
    はまるか、、、一種のバトルですね(笑)、楽しいですよ(^^)

  2. Cecilia より:

    今でもですが、身内でないピアニスト、それも有能なピアニストと合わせるのはなかなか緊張感があります。
    声楽をやっていると発声のことばかり考えがちで音楽面での研究がおろそかになるし、伸ばす音は感性まかせだし、楽譜をきっちり読めてないことが多いので、楽譜をしっかり研究する癖のついたピアニストに対して実に恥ずかしい指示しか出せないことが多いです。
    こういう状態から脱するためには自分自身がもっと音楽作りに対して貪欲にならなければならないし、勉強する必要があると思っています。
    身内が伴奏の場合は偉そうに指示を出すのですけれどね・・・。(苦笑)

  3. すとん より:

    >めいぷるさん

    >当時はかえって上手ではないピアニストの方が気軽に吹ける…こちらがそれに乗っかるだけで良いんですから(爆)

     そうそう、なまじ、きちんと伴奏のできるピアニストさんに頼むよりも、素人に毛の生えた程度(失礼)のピアニストさんの方が気楽で気楽で…。でも、いつまでも、それじゃあいけないことは、当然の話で、キング先生はその辺の自覚を持たせようとしてくださったというわけなんです。

     要は、音楽は生きた人間同士が対話をしながら作っていくものある…ということでしょうね。カラオケやパソコンとばかり練習していては、そこのところがどうにもダメなんですよ(笑)。

  4. すとん より:

    >Ceciliaさん

     上手なピアニストさんって、実にきちんと譜面を読んできますよね。それは見事なくらい(笑)。

    >楽譜をしっかり研究する癖のついたピアニストに対して実に恥ずかしい指示しか出せないことが多いです。

     はい、とても身につまされます。何しろ、私はきちんと譜面が読めませんから、ピアニストさんから何か言われても「???」だったりしますし(汗)。それでも、こちらに確たるものがあれば、分かって貰えると信じていますが…。

     とにかく、他人任せにしてはいけないという事なんだと思います。

    >身内が伴奏の場合は偉そうに指示を出すのですけれどね・・・。(苦笑)

     ああ、身内に伴奏できる人間がいればなあ…。

  5. chiko より:

    ソロの伴奏をするピアノ弾きをパンフレットで、昔は「伴奏」と表記されてましたけど、今は「ピアニスト」って表記されてますよね。それはとても良いことだと思っています。
    伴奏は、ソロよりずっと難しいんです。もう、ノイローゼになるくらい。はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

    今、息子達のピアノの先生から、連弾しませんかっていわれてるんですけど、それって、遊びでもいいんですけど、月謝払うんですかねえ。はぁぁぁ。

  6. テツ より:

    自宅で1人で練習するときには、伴奏のみの音源を聞きながらやっていたので、昨年の発表会の前のピアノとの合わせの時に、ピアノをリードしてください、と言われた時には困りました。

    いつもピアノに合わせて吹いているので安心して吹けるのですが、逆にピアノをリードするって・・・

    どうやったらいいのですか?と聞くと、自分の意思を表現してくださいというようなお答えでした。

    その時には2回ほど通しで練習しましたが、表現が悪かったのか、思っているような感じにはできませんでした・・・

  7. 発表会で、伴奏はいつもフルートの先生がつけてくださいます。
    最初のころは練習から本番までずっとピアノに引っ張って貰って吹いていました。

    いつのころからか、「KOMOさんはどう吹きたいですか?示してくださいね」って言われることも出てきて。
    どう吹くかだなんて、何もなくて・・・とても、困惑しました。

    いまだに、先生のピアノ伴奏にのっかって吹いていることのほうが多いです。(^_^;)

  8. すとん より:

    >chikoさん

     最近は、おっしゃる通り“伴奏者”ではなく“ピアニスト”と表記するところが増えてきましたね。私も良いことだと思います。やっている事は確かに“伴奏”なんですが、“伴奏”の“伴”の字のイメージがあまり良くないのだと思います。なんか、付属物とかオマケみたいなイメージが“伴”って字にはあるものね。

    >伴奏は、ソロよりずっと難しいんです。

     そう思います。伴奏というか、アンサンブルって、ソロとはまた違った難しさがあると思います。ピアノはなまじ完全楽器なので、一人ッきりでも音楽できちゃうんですよね。だから、アンサンブルの経験は積極的にしないとなりませんので、難しいのだと思います。

     ところで、息子さんたちと連弾ですか。家族だと、練習の場所や時間に融通がききますからね。他人と連弾するよりも、ずっと色々な面で楽だと思いますよ。ぜひ、やってみてください。月謝の件は…私には分かりません(笑)。

  9. すとん より:

    >テツさん

     先日は、ども。

     私も普段は、カラオケを伴奏にして練習することが多いです。カラオケに慣れてしまうと、生身の人間と合わせるのが難しくなりますよね。なにしろ、人って、色々な事をしてくれるので、先を読むのが難しくて(笑)。

     ええと、今だから告白します。先日、私とテツさんとヴァイオリンさんの三人でアンサンブルをした時、私は途中で、うっかりテツさんのパートを吹いてました(笑)。あの時、テツさんは「ええ?」って感じでしたが、はい、間違えてたのは私です。テツさんじゃありません。ま、そういうこともアリです。ごめんなさい。

     それくらい、人と合わせるのって、難しいですね。ましてや、自分がリードしなければならない場面だと、なおさらだと思います。

  10. すとん より:

    >E-KOMOさん

     伴奏者と面識があって、一緒に練習ができるのっていいですね。できれば、いつも同じ人の伴奏で練習&本番ができるといいですね。伴奏者と気心がしれているって、安心ですから。

     だって、気心がしれている人なら「どう吹きたいんですか?」って尋ねられたら「いつもの通りです」って答えられるじゃない(私なら絶対そう答える)。だけど、そうでないと、色々と大変ですもの。そういう意味では、専属の伴奏者って、欲しいなあと常々思ってます。いないですけれど(汗)。

     KOMOさんも、今度「どう吹きたいのですか?」って尋ねられたら、一度「いつも通りです」と答えてみるとおもしろいかもしれない。もっとも「いつも通りのいつもって、どんな感じ?」とか切り返されたら……知らないっと。

  11. chiko より:

    いえいえ、先生と連弾です。
    息子達とだったら、レッスンの時間のうちでしょうけど。
    もちろん、息子達との連弾は、たくらみ中です。

  12. 橘深雪 より:

    音を合わせるというのは、とても大変ですよね。
    相手が変われば、またイチから組立直しですし。
    そこが面白いのかもしれませんけど(笑)

  13. すとん より:

    >chikoさん

     ええ? 先生と? 私の理解が間違っていたら、アレですか、ピアノを習っているは息子さんたちで、chikoさんではないのですよね? なのに、連弾ですか? それは、プレッシャーでしょうが、良い提案ではないでしょうか? むしろ、ラッキー? やっちゃえ、やっちゃえ…って感じじゃないですか。

     ぜひ、頑張ってください。

  14. すとん より:

    >橘さん

     アンサンブルは音楽の楽しみの大きな要素だと思います。声楽は無伴奏独唱というのは、ほとんどないので、常にアンサンブルなんですよ。そこが歌のおもしろいところだと思います。つるむピアニストが変われば、当然、歌も変わります。確かに、そこはとてもおもしろい点だと思います。

  15. Cecilia より:

    キング先生の記事も拝見させていただきました。
    (読むのが楽しみです。)

  16. みるて より:

    ドイツリートは声とピアノが対等なんですよ。
    なので、伴奏という表現はうちの門下は使いません。
    ピアニスト、もしくはアンサンブルピアニストと呼んでいます。
    声もピアノも
    「お互いの音楽に合わせる」のではなく
    「おのおのの音楽があう場所があるからそこを探す」ことが合わせなんだと思っています。
    ピアニストさんは絶対うまい人のほうがいいですよ。
    自分の音楽への理解力と楽譜の読解力が格段に上がります(経験者は語る)
    どんなに窮屈でもすてきなピアニストさんの伴奏で歌えるといいですね。

  17. すとん より:

    >Ceciliaさん

     キング先生はさすがにプロの歌手だけあって、私のような素人さんとは考えるところが違うわけで、そこがまた尊敬に値するところだったりします。いいでしょ、キング先生って。

  18. すとん より:

    >みるてさん

     今日は色々な方からコメントをいただく中で『伴奏』という言葉、そして『伴奏者』という言葉について、考えさせられました。そして“伴”という字の持つネガティブイメージについても。言語習慣というものは簡単には変われないのですが、せめて思考習慣だけでも改めていきたいなあと思いました。

    >ピアニストさんは絶対うまい人のほうがいいですよ。

     それは分かるのですが…自分の実力と相談すると、上手いピアニストさんは…とっても怖いです。怖くて怖くて…たまりません。これって子どもから見た、大人の怖さにも通じるものかなあと思います。

  19. sakura より:

    前回の発表会では先生があわせてくださいました。
    練習の段階から毎回レッスンで伴奏してくださっていたので、私のブレスの間など熟知してもらっていて本番でも私にあわせていただいて、とても気持ちがラクでした。
    が、どうも先生が伴奏をしてくださるのは教室に入ってすぐの初心者だけみたいで、次回からはピアニストさんにお願いすることになりそうです。
    (先生がやってくださったのはほんの数名でしたので)

    娘がフルート、私が伴奏の時は、やっぱり親子なので息があってとてもやりやすく楽しかったです。

  20. すとん より:

    >sakuraさん

     息が合う…普通の方はこの表現を象徴的に使いますが、(おそらくフルートも同様だと思いますが)声楽では、ピアニストさんは文字通り“息を合”わせてきます。歌手と息を合わせることで、色々なタイミングなどを合わせるのだそうです。

     ですから、合わせられる側が、確固たる自信を持って“息”をしないと演奏がグダグダになるのですが…そんな確固たる自信を持って呼吸なんてできますか? 曲に追われ、色々なところを余裕なくやって、とても呼吸まで神経が行き届かない…でしょ。それなのに、息を合わせられると…うわあ、こりゃ大変だー! になります。

     かくの如く、息一つ取っても、合わせものって難しいと思います。はあ。

     次回からピアニストさんの伴奏ですか…。がんばってください。その点、子どもは怖いもの知らずだからなあ…うらやましいです。特に親子で演奏だと、親の方が息以外のシグナルにも反応できるので、それこそ“息がバッチリ合”って演奏しやすいだろうなあ…。

  21. chiko より:

    はい、今ピアノを習っているのは息子達です、でも私はおねえちゃんがレッスンを受けているとき、発表会で連弾をしたことがあるのです。まあ、ちょっとは弾けるってかんじですか。
    で、先生と連弾?ちょっとわくわくしますけど、もっとどきどき。ああそうか、先生は先生なのだから、恥さらしてもいいんだ。
    子供にはチャレンジャーであれと言うのに、私自身がチャレンジャーでなくてははいけませんよね。

  22. すとん より:

    >chikoさん

    >子供にはチャレンジャーであれと言うのに、私自身がチャレンジャーでなくてはいけませんよね。

     そうそう、それにきっと、お子さんたちも喜びますよ。あと、年をとった時(笑)に良い思い出になりますしね。ぜひ、チャレンジしてみてください。

  23. chiko より:

    「息が合う」ということの象徴的な例があります。
    レ・フレールは、息を合わせようとしているのではなく、息が合ってしまうのです。
    ピアノを弾いているときだけではなく、椅子に座る、お弁当を食べる、お茶を飲む、意識しないで同じタイミングで動くのです。
    それがあの演奏につながっているのでしょうか。他にも、双子で連弾をしている方もいらっしゃいますけどね。ああ、双葉は大学の友達ですね。
    どれだけの信頼感かって事でしょうか。んんんんん・・・・先生との連弾、しんぱいになってきたあああああああ。

  24. すとん より:

    >chikoさん

     レ・フレールとか双葉とか、特殊な事例を取り上げて、それを一般化しちゃダメだよ。

     大丈夫、世の中の連弾は、ほとんどが他人同士の組み合わせ。なんとか頑張って息を合わせていくんだから。先生との連弾、相手はプロなんだから、きちんと導いてくれるって。安心して任せて大丈夫だから、そんなに心配しちゃダメですよ。

     とにかく「当たって砕けろ」です。それに、砕けて散ってしまったとしても、それもまた楽しい思い出になりますよ。

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