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初心者を満喫する

 時間は逆さまに流れない。初心者はいずれ初心者でなくなる。上達して、中級者になるか、上達せずに初学者のままであるかは分からないが、いずれ初心者でなくなる。

 初心者とは、その世界の新参者であり、彼にとっては、その世界の住民たちにとって、既知であり日常である事柄が、新鮮で美しく見えるものである。見るもの、聞くもののすべてが、新しくて珍しいものなのである。いわば、彼にとって、まさに世界は光り輝いてる時なのである。

 初心者とは一過性の存在だ。

 幸か不幸か、私はフルートの初心者である。一応、声楽も十分初心者なのだが、声楽は隣接領域である合唱界にいたせいか、全くの初心者とは違うかもしれない。しかしフルートは、本当に全くの初心者である。

 スーパーのチラシの売り文句ではないが、毎日が新鮮。見るもの、聞くもの、みんな知らないことばかり、できないことばかり。この歳で、知らないことやできないことがあるってことが、まず楽しい驚き。

 ほんの一年前の私は、フルートがどんな材料でできているかなど、興味になかった。おそらく当時の私に質問したら「フルートが何でできているかって? あれは一応、金属だよね。鉄? アルミ? ああ、分かった、チタンだ!」って答えるね。何しろ、私、チタン萌えな人だから(笑)。(ところでなぜ、チタンのフルートってないんだろ? フルートの材料としては、なかなかのモノだと思うのだけれどね…。硬いのが欠点かな?)

 クラオタなのに、フルート奏者の名前も知らなかったよ。フルートの曲は…かろうじて、モーツァルトの協奏曲とかビゼーの小曲とかは知っていた。だいたい、日本にこんなに笛吹きさんがいるなんて、予想もしていなかったし(笑)。

 知らないことはいずれ知る。できない事は努力次第でできるようになる。一度知ってしまえば、もう知らなかった昔には戻れない。できてしまえば、できなかった自分とはおさらばだ。

 そう、初心者は一過性の存在。だから今、初心者である、この状況を、私はたっぷり楽しみたいと思う、二度と来ない、この初心者の日々を。おそらく、後から振り返った時、この時間がとてもまばゆく思えるに違いないだろうから。

コメント

  1. 橘深雪 より:

    初心者を満喫するって、とても大事な事だと思います
    とある方(初心者)がフルート普及の為に努力されていたのですが
    間違った方向に行っていたのを指摘しても聞く耳持たない方がいました
    正直、中学時代も入れれば私は中級者扱いになってしまうのでしょうが
    実力から言えばまだまだ初心者です
    いつまでもおごることなく、色んな物を吸収できる人こそ本当の上級者ではないでしょうか?
    って勝手に思っている時点でいけないかもですけど(笑)

  2. すとん より:

    >橘さん

     初級者、中級者、上級者の区別って、定義がそれぞれで難しい上に、こっちとそっちでその定義が違っていて、うまくコミュニケーションが取れないで困りました…みたいなことってよくありますよね。

     私が勝手に思う、その区別とは…。

    初級者…先生に師事をして修行中。まだ半人前。
    中級者…先生の手から離れ、仲間と一緒に音楽を作り出す。いわば現役時代。
    上級者…自らが先生となり、後進を育成する責任を果たす。

     こんな感じかな?

  3. たかさん より:

    すとんさんの初級者・中級者・上級者の区別は、非常にわかりやすいですね。そうすると、私なんかは上級者ということになるんでしょうが(もちろんその責任は十分感じています)、常に「初心忘るべからず」のつもりでやっています。すとんさんや、他の方のブログから学ぶことも多いですし…。

  4. すとん より:

    >たかさん

     上級者でご不満ですか(笑)。

     ま、私の区別も一つの私案であって、絶対的なものではありませんし、現役バリバリの奏者を『中級者』扱いしているところが問題と言えば問題でしょうが、現役バリバリでも自分に手一杯の人と、演奏しながらも後進の育成をしている人を分けたかったので、こんな区分を考えてみました。

     あと、中級者になったら何も学ばなくていいとは思ってません。ただ「先生におんぶに抱っこ」ではなくなるのが中級者なのであって、中級者になると、先生以外の多くの仲間たちから色々なことを学びながら成長していくのに対して、初級者はまだ監督者の元、一貫したカリキュラムの中で、ある意味、保護を受けながら学んでいるって感じでしょうか。

     と言うわけで、私はまだまだ、立派な初級者でございます。

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