まず、音痴と言っても、ジャイアンのような音痴は、少なくとも音楽愛好家の中にはいません。だって、あんな音感じゃあ、音楽そのものが楽しめないでしょ? ああいう人は、音楽ではなく、他の趣味に走って音楽には興味関心を向けません。
音楽愛好家からアマチュア音楽家になるような人は、音楽が大好きだし、音楽を聞いて楽しむ事ができますし、音楽のイメージもしっかり自分の脳内に作る事のできる人です。つまり、音楽のインプット系には問題ないし、それを理解したり暗記したり楽しんだりする事に関しても問題ありません。
問題はアウトプット系ですね。つまり、自分がイメージした音の通りの声が出せないから、音程が不安定なのですね。
これを如実に感じたのは、ヴァイオリンを弾いている時ですね。
ヴァイオリンって、実は音程のちょっとした違いが聞きやすい楽器なんですよ。ですから、初心者であっても、ヴァイオリンを弾いていて、音程の違いに気づきやすいのです。ちなみにシズカちゃんレベルのヴァイオリンは、ジャイアン並にどうにもならないと思います。ヴァイオリンって、あそこまでひどい音程では弾けませんって。
ヴァイオリンって、弾いていて、音程の問題を感じやすいのです。だから、ある程度弾けるようになると、左手で音程を修正しながら演奏します。と言うのも、音程が正しい音って美しいんですよ。だから、一番美しい音になるように弾いていくと、自然と音程的に正しい音楽になるのです。
細かい話だけれど、ヴァイオリンで一番美しい音を拾って演奏していくと、ピアノの音(平均律)とはちょっとズレてしまうのですね。正直、ピアノと合わせていると、気持ち悪く感じる事すらあります。やはり、ヴァイオリンはヴァイオリン同士、あるいは弦楽器同士で合わせるのが快感です。
フルートはヴァイオリンほど音程の違いが分かりやすい楽器ではありませんが、それでも正しい音程の音って、とても美しいのです。ですから、音の美しさを求めて吹いていくと、自ずと音程正しく吹けます。フルートの場合は、管体を回す事で音程の微調整ができます。
歌は、そこへ行くと、音程の違いが実に分かりづらい楽器だなあと思います。演奏しながら自分の音を聞くのが難しい楽器だと思います。
理由は色々あるのでしょうか、私が個人的に思うに、骨伝導音と空気伝達音の違いがあるのではないかと思ってます。骨伝導音とは、声帯で作られた声が頭蓋骨に響いて、そこから耳小骨等を経由して聞こえる音で、簡単に言っちゃえば、体内で響いている音です。一方、空気伝達音とは、声帯で作られた声が口腔内で響いてクチから外に出て、空気の振動として他人に聞こえる音です。つまり、普通の音の事です。
歌の場合、特に初心者は、自分の声を骨伝導音で聞きがちです。でも、お客さんたちは、その歌声を空気伝達音で聞くわけです。骨伝達音と空気伝達音はかなり違います。音色も違えば、音程も変わります。
よく録音された自分の声を聞いて「これは私の声ではない」と言う方が多いようですが、そりゃあそうですよ。録音された声は空気伝達音ですからね。日頃聞いている自分の声は骨伝導音ですから、そりゃあ全然違う声にしか聞こえません。
同じ事が歌でも起こります。
だから歌手は、歌う時に、骨伝導音を意識から外して、空気伝達音を聞かないといけません。そういう意味では、ポピュラー歌手たちが使っている、モニタースピーカーとかインカムとかは歌手の助けになると思います。
クラシック系の人は、日頃から広いホールで歌える環境にあれば、空気伝達音も聞きやすくて良いのですか、狭いレッスン室で閉じ籠もって歌ってばかりいると、どうしても骨伝導音ばかりを聞く羽目になります。特にレッスン室が防音仕様になっていると、最悪ですね。空気伝達音なんてロクに聞こえません。
楽器同様で、自分の声に対して、正しいフィードバックができなければ、正しい音程で歌うのは難しいです。絶対音感でも持っていれば、フィードバックは不要なのかもしれませんが、多くのアマチュア歌手たちは絶対音感なんて持っていません。ただ、自分の心の中にある音のイメージに従って歌っていくわけですから、フィードバックが難しいと、イメージと自分の声との調整に困難を感じて、ちゃんとした音程で歌えなくなっても仕方ないです。
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コメント
すとん様、更新、ありがとうございます。
毎朝、一番で、すとん様のブログを見ている私としては、
本日(2021/9/15/水)、更新されておらず、
よっぽど、昨日(2021/9/14/火)の記事へのコメントで、
「更新されていないよ~」と書き込もうかと思っていました。
と、グズグズ書いてしまったことをお許しください。
本日の「音痴」ネタに関しまして、
岩城宏之さんのエッセイに曰く、
山本直純さんは音楽の天才なのに、
歌が物凄く下手だった、とか。
誇張しているのかもしれませんが。
オーボエの宮本文昭さんが
ドイツに留学したての頃、
当時の大枚をはたいて、
テープレコーダーを購入して、
来る日も来る日も自分の演奏を録音して、
それを再生して、自分の音を確かめていた、とか。
自分にとっても最大最高の師はテープレコーダーだった、と、
音楽雑誌で書いておられました。
上記2つ(=山本直純さん+宮本文昭さん)に関して、
「だから、何?」と問われると、答えられず。
ただ、すとん様の記事に触発されて、
ちょっと書いてみただけのこと、
お許しください。
<(_ _)> <(_ _)> <(_ _)>
おしまい
オペラ座の怪人の怪人さん
昔の日本の音楽家たちの逸話に「実は歌が下手だった/歌えなかった」というのは、案外あります。それは日本の音楽教育が楽器の演奏が中心だった事と、長らく歌は邦楽の影響が強かった事の2点が関係しているのかな?と思います。
今でも、外国人演奏家がやってきて日本人の音大生相手に公開レッスンをしていると「もっと歌って!」とか「そのフレーズを声に出して!」とか言っているのをよく見聞きします(で、全然歌えなくて、講師ががっかりするのがお決まりのパターンです)。あちらでは音楽の基礎に歌があるんだなあと思うし、令和の時代の音大生であっても、まだまだあちらのレベルには到達していないのだなあと思うわけです。
まあ、クラシック音楽は彼らのモノであって、日本人にとっては所詮真似事でしかない…と言わざるを得ないのでしょうね。
テープレコーダーの件に関しては、すごく共感します。なんであれ、学習にとってフィードバックは大切です。反省するから前進できるわけです。全く全く納得です。ガッテン!