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“With コロナ”の時代のオペラはどうなるの?

 先日(と言っても、ちょっと前)、PARCO劇場で行われている、大泉洋主演の「大地」という舞台(演劇)の報道がありました。ソーシャル・ディスタンスを保ちながらの舞台という事で話題になったようです。
 私もちょっとだけテレビで見たのですが、舞台上の役者たちが、本当に近づかないのです。ケンカのシーンも殴り合いではなく、枕の投げあいで表現していました。脚本と演出は三谷幸喜で、さすがだなあ…と思った次第です。
 で、ふと思ったのは、これからのオペラ上演は、一体どうなるのだろうか?って事です。もちろん、これは日本だけの話ではなく、世界的にオペラ業界としては由々しき問題だろうと思うわけです。
 例えば、愛の二重唱を歌うシーンは、たいていソプラノとテノールが寄り添って、場合によっては抱き合って歌うのですが、ソーシャル・ディスタンスを守るなら、そりゃあ無理なわけで、じゃあ、どのように歌われるかとか、いやいや二重唱に限らず、歌手が全然互いに近づけない状況で歌っていて、芝居が成り立つのかとか…心配になります。
 オペラには合唱が付き物です。日本の舞台だと、合唱はそもそも最小限の人数で行われる事もあり、さほどの問題ではないかもしれませんが、海外の歌劇場では、めっちゃやたらと大人数の合唱団員が舞台に上がる事もあります。あんなに大勢の人間が息を揃えて、観客に向かって大声で歌って良いものでしょうか? それこそ、歌と一緒に色々なモノがお届けされてしまいそうです。こわいこわい。
 それどころか、オケピって大丈夫? オケピって、狭い場所にぎっちりとオーケストラを詰めるわけでしょ? あそこに、ソーシャル・ディスタンスを守ってオーケストラを配置するのって…無理なんじゃないの? ぎりぎり可能なのは、オーケストラの小さい、モーツァルトまでの時代のオペラで、ヴェルディとかプッチーニとかワーグナーとかって…まずオーケストラをオケピに入れる事が無理だよね。でも、オケ無しのオペラってありえないので、どうするんだろ?
 んで、そのオケピの上から歌手たちの飛沫が降ってくるんだよ…。逃げられないよ。オケの労働組合から文句は出ないのかしらね?
 もちろん、ただでさえ赤字垂れ流しのオペラ公演なのに、客席に観客を通常の1/3~1/4程度しか入れられないとなった時のチケット代金も心配です。えらく高価なチケットにならざるを得ないだろうなあ…。
 あるいは、そんなのは全部無視して、今までの演出通りに舞台で演技して、今までの慣習どおりにオケピにオーケストラを詰め込んで、観客も会場にぎっちり詰め込んで…という感じでオペラ公演をするかもしれません。で、そうやって、クラスターが発生した時、主催者はどうするんだろ?
 クラスターが発生して、観客に感染者が多数出た場合は、まだ良いのです。まあ、劇場名が社会的にさらされて、風評被害にあうくらいですから。別に感染した観客に見舞金を出したりする事は無いわけでしょ?
 問題は、出演者に感染者が出た場合の話です。今回、我が国で発生した劇場クラスターの場合、詳細は報道されないので不明ですが、当然、出演者から感染者が出た場合、出演者たち全員、感染者または濃厚接触者になるわけで、その後の仕事はキャンセルになるわけだから、その補償を主催者はできるのかしら? 日本はともかく、海外のオペラ歌手たちのギャラって、目が飛び出るぐらいに高額よ。出演者たちの(たぶん)二週間分の仕事の補償って…もし補償をする事になったら、大変な事になるよ。
 そう考えると、オペラの主催者としては、出演者にも観客にも、万全の感染予防対策ってのを行なわないと、オペラ公演ができません。
 いやいや、万全の感染予防対策を取ったとしても、オペラの観客の大半は高齢者なわけで、そもそも彼らが歌劇場に来てくれるかどうかから心配しないといけません。
 私がオペラのマネージメント関係の人間だったら、ほんと、頭の痛い話です。経済的には、なんとかオペラ公演をしなきゃいけないけれど、リスクは背負いたくないし、悪い評判も今後に響くからなるべく避けたい。必要経費だって、必要最低限に抑えたい。
 ああ、頭痛い…。
 “With コロナ”の時代、オペラ公演は、本当にどうなのでしょうか?
蛇足 メトは当初2021年シーズンを9月21日から開始する予定でしたが、それは止めて、現在のところ12月30日までの公演をキャンセルしています。12月31日に大晦日ガラをやって、元日はお休みして、2021年1月2日の「ボエーム」でシーズンを開始する予定ですが…この予定だって、またまたキャンセルされちゃう可能性があるんだよね。ほんと、オペラ業界、どうなるんだろ?

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コメント

  1. ドロシー より:

    別にスケールの大きな作品ばかりが名作だとも限らないと思うのです。
    こういう時こそ、登場人物の少ない無名の作品をどんどん発掘して公演すれば良いのにと思います。
    確かに抱き合うシーンは難しいかもしれませんが、演出を工夫するか、無理なら演奏会形式でも良いと思います。

  2. すとん より:

    ドロシーさん
     「奥様女中」のような規模が小さくて面白くて客が呼べるオペラって、どれだけあるんだろ? ま、そこは私が心配しても仕方がないのですが、そういう作品があれば、良いんだろうなあと思います。そこはプロの劇場支配人さんに期待ですね。これがきっかけで新しいブームが起きたら、それは怪我の功名になるわけだしね。
    >無理なら演奏会形式でも良いと思います。
     ううむ、私はオペラに関しては、音楽も好きだけれど、お芝居の側面も大好きなので、演奏会形式なら、よほどの大物歌手が出演しない限り、見に行きません。だって、演奏会形式って、つまんないんだもの。だったら、人形劇やアニメに声を当てて歌っている方が楽しめるんじゃないかって思います。たしか、そういう上演方法のオペラもあったと思います。

  3. ドロシー より:

    >「奥様女中」のような規模が小さくて面白くて客が呼べるオペラって、どれだけあるんだろ? 
    なかなか公演はされないけど、登場人物が2~3人、合唱なし、という作品は実は結構あります。
    芝居は、う~ん、国内の舞台でよく歌以上に芝居を一生懸命やる人いるけど、なんだか「歌の稚拙さをごまかそうとしているな・・・」という人もよくいるので・・・
    サザーランドとかパヴァロッティとか一昔前の名歌手のビデオなんかは皆直立不動ですけどね。よく「オペラ」といえば、みぞおちの前で手を組んで大きく口を開く仕草する人いましたよね。
    コロナだからオペラは全部ダ~メ、食エナ~イ、じゃなくて、ピンチをチャンスに変えるような視点が関係者から出ても良いではないかと思うのですよ。生演奏+人形劇か紙芝居またはアニメというアイディアもアリですね。

  4. すとん より:

    ドロシーさん
    >芝居は、う~ん、国内の舞台でよく歌以上に芝居を一生懸命やる人いるけど、なんだか「歌の稚拙さをごまかそうとしているな・・・」という人もよくいるので・・・
     いるいる、確かにいますね。あまり好感持てません。そんな臭い芝居をするなら、ちゃんと歌えよと思います。で、日本のオペラ界は、申し訳ないけれど、歌のレベルは海外並になりつつあるけれど、演技は全然ダメですね。だったら、演奏会形式でもいいやとは、確かに思います。下手な芝居なら無い方がマシです。
     今どきの海外の一流の歌劇場は、歌も芝居も素晴らしいですね。ぜひ、日本のあのレベルになってほしいものだと思います。
    >コロナだからオペラは全部ダ~メ、食エナ~イ、じゃなくて、ピンチをチャンスに変えるような視点が関係者から出ても良いではないかと思うのですよ。
     確かにその通り。そういう人たちが出てきたら、全力で応援したいです。私も新しいオペラ、見たいもの。

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