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シアタークリエに行って「レント」を見てきた

 表題にあるとおり、日比谷にあるシアタークリエに行って「レント」を見てきました。シアタークリエに行くのは始めてだけれど、ここは以前、みゆき座があった場所だよね。みゆき座(映画館)は、今は向かいにある宝塚劇場の地下に移動したけれど、昔はシアタークリエのある場所(3D的にも同じ場所)にあったのを覚えています。私はそこで「永遠のマリア・カラス」という映画を見ました。すごく混んでいて、普通席が購入できなくて、やむなく(名称は忘れてしまったけれど)リクライニング式の大きなソファーの高額席で見た覚えがあります。映画代とは別に座席代がかかって、それがすごく高かったので、今でも忘れられません(笑)。

 シアタークリエの入っているビル自体は、隣の日比谷シャンテのビルとつながっていて、なかなか便利です。劇場のロビーは狭くて、正直、居心地良くないのですが、シャンテとつながっているので、シャンテに逃げる事ができますし、シャンテで休憩とれます。なかなかいいです。

 足の便も良いですよ。有楽町駅のすぐそばだし、我々は新橋から劇場に向かったのですが、新橋からでも歩いて行けちゃったくらいですからね。宝塚劇場の向かいで、帝国ホテルの隣です。ほんと、良い場所にあります。

 さて、シアタークリエで上演されている「レント」は東宝製作のミュージカルです。東宝ミュージカルと言うと、帝国劇場で上演されているミュージカルもそうなのだけれど、テレビで見かけるような有名タレントがよくキャスティングされています。

 そういう有名タレントさんが主役や脇役にキャスティングされるのですが、そういうミュージカルって、たいていの場合、主役とモブは上手なんだけれど、脇役さんたちが今ひとつというイメージがあって、キャスティングにスキがあるなあと…と私は思っています。まあ、演技や歌にスキがあっても、彼ら彼女らの集客力はバカにできないわけで、客寄せパンダとしての役目を負わされているのだから仕方ないやと諦める事もあります。いやいや、時によって、上手なのはモブだけで、主役も脇役もパンダだったりすると、見ているのがつらい上演もあったりします。

 そういう点では、今回の「レント」も東宝製作と知った段階で、ミュージカル的には全然期待していなかったのでが、それはいい意味で裏切られました。

 いやあ、いいんですよ。モブの方々はもちろん、主役も脇役もみんな、上手いんです。全然、キャスティングにスキがなくて…まるで劇団四季のミュージカルを見ているみたい(笑)。

 もちろん、従来通り、このミュージカルにだって、客寄せのパンダさんもキャスティングされているわけです。例えば、ケミストリーの堂珍嘉邦さんや、カラオケ★バトルの宮本美季さんなども出演しているんですが、彼らがまた本当に上手なんですよ。パンダさんが上手なんですから、他のガチのミュージカル俳優の皆さんたちは、そりゃあ当然凄腕ばかりなんです。いやあ、いいパフォーマンスを見せていただきました。

 じゃあ素晴らしい舞台だったと手放しで喜べたのかと言うと…かなり辛口な感想になるけれど、ごめん、そうではなかったです。

 出演者も良くて、音楽も良くて、演出も良くて…じゃあ、どこが問題かと言うと、ストーリーと脚本に難があると思いました。

 まずはストーリーだけれど…これは日本版と言うよりも、原作にそもそも起因している問題なんだけれど、このミュージカルに登場する人物たちって、ほぼ全員、ゲイかレズかバイセクあるいはHIV患者ばかりなんです。おまけに、正直、クズ野郎ばかり。いわば、特殊な世界の特殊な人たちの話なんです。

 たいていのストーリーを受け入れる私ですら、この「レント」のストーリーに関しては、正直、若干引きます。共感できる人物が皆無なんです。共感どころか「それはナイだろ!」と思わず突っ込んでしまうような人物ばかり登場してくるんです。

 おそらく、これは私だけの問題ではなく、多くの普通に暮らしている日本人には、かなり異質な人たちの物語であって、たとえ物語であると分かっていても、それを受け入れるのは、なかなか厳しいなあって思いました。20世紀後半のアメリカ人にとって、リアリティーのあるストーリーでも、21世紀の“ミュージカルでも見に行こうか”と考える日本人にとっては、想像を絶する世界の話なんです。

 だから(ビデオ)カメラオタクで、狂言回しであるマークが普通の人に見えてしまうのです。でも客観的に見れば、マークだって、普通に変人です。ただ、アクがそんなに強くないだけの話で、彼だって、決して普通の人ではないのです。でもそんな彼が普通に見えてしまうくらいに、登場人物全員のアクが強いわけです。これはほんと、厳しいストーリーです。

 でも、音楽は実に絶品なんだよ、これが。だから世界中で大ヒットしているんだよね。
 日本版の場合、さらに脚本の問題がここに加わります。

 日本版の脚本…正直、厳しいなあ…と言うのも、舞台を聞いていて、役者の皆さんたちが一体何が言いたいのか、聞き取れないのですよ。

 最初は彼らが下手くそで、そのために聞き取れないのかと思ったのですが、いやいやいやいや、役者さんたちは頑張ってますよ。うまく伝わらないセリフを頑張って客に伝えようとしています。

 つまり、そもそもの脚本があまりうまく出来ていないのだと思いました。

 まず、音楽に言葉を詰め込み過ぎだと思いました。そのため、役者の歌がすごい早口になっているんです。

 そもそも日本語と英語では、同じ音節に込められる言葉の意味の量が違います。同じ音節なら、英語の方がたくさんの意味が入ってます。だから、英語の歌を日本語に翻訳する時は、言葉を選んで、少ない言葉数でも、的確に芝居の内容を伝えられるような歌詞を書いていかなければいけないのですが、今回の「レント」の歌詞は、言葉の厳選がうまく出来てなくて、とにかく言葉が多すぎます。歌詞の言葉が多いので、歌の中で、言葉が上滑りするんですよね。

 さらに英語そのままのセリフもたくさんあります。たとえ元が英語であっても、すでに日本語化している外来語になり、発音も日本語のアクセントであるなら問題は無いのですが、全然英語のままのセリフもたくさんありました。それもちゃんとした英語発音で話されるんです。つまり、日本語と英語のチャンポンなセリフが多くて、まるで、頭の悪い帰国子女の子と話しているような気分になります。彼らのセリフを聞きながら「日本人はそういう言い方しねーよー」というツッコミをバンバン入れたくなりました。

 どうにも、脚本のローカライズと言うか、日本語への翻訳がうまくいっていない…と言うか、未完成な感じというか、翻訳途中なんですって感じの脚本だったのです。ほんと、耳で聞いて理解するには、かなりのハードルの高い脚本だったと思います。

 ほんと、聞いているだけでは何が話されているのか分からないのです。字幕…欲しいなあ。

 それでも私は、そもそもの「レント」のストーリーもセリフも知ってますから、舞台の言葉が聞き取れなくても、全然問題ないのですが、そうでない人たちもたくさん観劇に来ているわけで、そういう人たちがとても困っている姿をたくさんみました。幕間の客席の混乱具合を脚本家さんは知っているのかしら?

 もっと言葉を選んで、少ない言葉で的確に芝居を伝えられるような脚本だったらいいのになあ。

 ミュージカル「レント」は、オペラ「ラ・ボエーム」のミュージカル・リブートです。かつてのオペラを元ネタとして新作ミュージカルを作るわけです。有名な例だと、ミュージカル「ミス・サイゴン」はオペラ「蝶々夫人」のミュージカル・リブートだし、劇団四季で上演する「アイーダ」はオペラではなく、ミュージカルとして作られた「アイーダ」です。まだまだ他にもあるかもしれません。

 ミュージカル「レント」は、オペラ「ラ・ボエーム」のミュージカル・リブートです。ただし、ボエームのミミに相当するのは、レントではミミではなく、実はエンジェルです。背負っているエピソード的には、エンジェルはボエームのショナールのそれを数多く引き継いでいるけれど、キャラクターの立ち位置的にはミミだと言えるでしょう。

 そして、ボエームのムゼッタは、レントではモーリーンになります。ではレントのミミは…と言うと、ボエームのミミとムゼッタの両方の性格を引き継いでいると思われる。つまり、ボエームのミミとムゼッタの二人は、レントでは、エンジェルとミミとモーリーンの3人に振り分けられているわけで、レントのミミは、その中ではボエームのミミであり、ムゼッタであり、そのどちらとも違う、レントのオリジナル色の極めて強いキャラクターと言えるでしょう。ラストシーンで、死にかけて生き返っちゃうシーンなどは、私はコメディであり、アメリカ的なハッピーエンドなんだろうと思ってます。実にアメリカ的な味付けの濃いキャラであると言えるでしょう…日本人的には、、、台無しって感じのキャラなんですが(苦笑)。。

 まあ、言いたいことは山のようにあるけれど、それでもやっぱり、面白くて素晴らしいミュージカルでした。気に入ったからこそ、文句も言いたくなるわけで…2年後にまた上演するようですが、次もまた見に行きたいかもなあ…。

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