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シネマ歌舞伎で「ヤマトタケル」を見てきました

 今年から隣町の映画館でシネマ歌舞伎を上映するようになったので、時折見に出かけている私です。シネマ歌舞伎は月イチで上映します。今月は、スーパー歌舞伎の「ヤマトタケル」を上映していました。

 スーパー歌舞伎とは何かと言うと、新作歌舞伎の一種で、歌舞伎の約束事ばかりにとらわれず、ミュージカルやストレートプレイの良い所も取り入れた“今っぽい歌舞伎”ってヤツです。演出も今っぽいし、セリフも現代語ですから、歌舞伎に慣れていない私なんかは、通常の歌舞伎上演よりも親しみやすかったりします。

 私が見てきたのは最初のスーパー歌舞伎である「ヤマトタケル」でした。初演は1986年でしたが、2012年に新橋演舞場で演じられたものを見ました。

 ストーリーとしてはヤマトタケル伝説を舞台化したもので、なかなか面白かったですよ。もちろん、歌舞伎なんだけれど、よく出来た日本語ミュージカルでもありました。芝居も衣装も化粧も派手で、全然リアルじゃなくて、そこがすごく夢々しくてよかったです。
 脚本と演出は、先代の市川猿之助こと二代目市川猿翁で、スーパー歌舞伎を考えて作り出した張本人さんです。

 主役のヤマトタケルこと小碓命(おうすのみこと)を演じたのは、四代目市川猿之助(昔の亀治郎)で、小碓命の兄である大碓命(おおうすのみこと)も演じていたので、一人二役であり、第一幕の小碓命と大碓命の乱闘シーンは、影武者との入れ替わりやら早着替えやらの連続で、なかなかおもしろかったです。あと、最後の最後に、お約束の宙乗りがあります(やっぱ、猿之助と言えば宙乗りだものね)。

 帝を演じていたのが、香川照之こと九代目市川中車でした。ちなみに映画の冒頭で、市川猿之助と市川中車の舞台挨拶(たぶん襲名披露)の映像が付いてました。

 私が特に目を見張ったのは、兄橘姫(えたちばなひめ)と、みやず姫の二役を演じた市川笑也です。この人、女形なんですが、私が今まで生の歌舞伎の舞台で見た女形や、シネマ歌舞伎で見た女形とは、ちょっと違うんです。

 女形というのは、男性俳優が女性役を演じるもので、男が女を演じるわけですから、色々と無理があるわけで、その無理さが歌舞伎鑑賞で大きな妨げになると私は思っています。

 私もこれまで、あまり数は多くないのですが歌舞伎を見ていて、芝居に夢中になっていても、女形が出てくると、途端に気持ちがスーーーと引いてしまっていました。だって女形って、違和感バリバリなんだもん、不気味なんだもん、気味悪いんだもん。いくら女の衣装を身につけて、所作を女っぽくしても、見た目はどうしても男性だし、声も男性だし、何をどうしても男性なのに、それを女性として認識しろって、そりゃあ無理だよね。でも、その無理を強いられるのが歌舞伎なんだと諦めていました。

 ところが兄橘姫を演じていた市川笑也は全然違うんですよ。映像の中の彼女は、女形ではなく、すっごい大柄な女性(笑)に見えるんですよね。なので最初は、普通の歌舞伎ではなく、スーパー歌舞伎だから、女優さんを使っているのかな?と思ってしまったくらいです。まあ、映画ですからアップのシーンがあって、その時に首筋を見た時に、女の首筋ではなく男の首筋だったので「ああ、やっぱり女形が演じているんだ」と思ったものですが、舞台などでアップで見られない状況だったら、最後の最後まで疑心暗鬼にかられたまま「女形なの? 女優なの?」と悩んでいたかもしれません。それくらい、女性に見えたんですね。

 なぜ、そう思ったのか? それはおそらく、声です。演じている時の声が、男性のファルセットでもなく、甲高い男の声でもなく、オカマの声でもなく、本物の女性の声のように聞こえました。男性でも、女性ホルモンを投与すると、こんな感じの声になるわけですが…まさか、女性ホルモンを投与しているとか(笑)。まあ、それくらい、耳で聞くと女性だったわけです。声が女性だったので、カラダつきが男性っぽくて、所作が女形女形していても、女性に見えちゃったわけなんです。

 演技にとって、声って大切なんだな。

 このスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」は、もうすぐ上映が終わってしまいますが、先代であり、この演目の脚本&演出家である三代目市川猿之助が主演したモノがDVD化されていますので、興味がある方は、そちらでご覧になれます。

 四代目と三代目、演じ方がどう違うのか、私も興味があります。

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