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フルートの音色に材質が与える影響について考えてみた

 まず最初に業務連絡です。私、本日よりしばらく旅に出ます(笑)。ブログ記事は毎日アップされますし、皆さん方からのコメントもチェックをします(ので、オイタをしたら、即、削除しちゃうよ:笑)が、旅先なのでレスは付けられません。と言うわけで、「すとんさん、コメントの返事が遅いなあ…」と思われるでしょうが、必ずお返事はいたしますので、コメントよろしく&コメントのお返事はしばらく待っていてくださいな。

 では、本日の記事に入ります。

 フルートは管内の空気が振動して発音する楽器です。つまり、鳴っているのは管内の空気であって、管体は特に関係ありませんし、管体の素材なんて、なんだって良いはずなんです。理屈の上ではね。

 でも、フルート吹きなら誰でも感じるように、フルートって、素材ごとに音の違いがあるわけです。でも、悲しいかな、その違いは、演奏者には感じられても、観客には全く感じられない程度の違いなんです。

 これはどうした事でしょうか?

 答えは、やはり原理原則の通り、フルートは管内の空気が振動し発音する楽器であるため、管体の違いが音に与える影響はごく少しであって、その影響力は、奏者には感じられるけれど、観客には感じられない程度の違い…って事で、こんな答えじゃ何の解決にもなりませんね(笑)。

 つまり、管体の違いは“無視できるほどの小さな違い”しかないって事なんです。でも、その“無視できるほどのちいさな違い”にこだわるのが演奏者ってモノなんですよ。

 では“無視できるほどに小さな違いなのに、演奏者がついついこだわってしまう違い”って、なんでしょうね?

 その小さな違いを生み出すモノことが、フルートの管体の違いにあると、私は思います。それも素材の違いって奴です。

 フルートって、金属管と木管では、音が微妙に違うでしょ? また同じ金属管でも金属チューブから作ったフルートと、巻き管では、さらに微妙な違いがあります。あれってなぜでしょうね。

 おそらく、管壁の滑らかさの違いじゃないかなって思います。管壁が滑らかなほど、管内で乱気流の発生が抑えられるわけですから。

 いくら丁寧に削って磨いても、木管の管壁は金属管と比べれば、それほど滑らかにはなりません。また、機械で金属を伸ばして作った金属チューブの管壁と、金属板を手作業で丸めて管にした巻き管でも、やはり管壁の滑らかさが違ってくると思います。この微妙な管壁の滑らかさの違いが、管内での乱気流の発生する程度や頻度に影響を与えて、管内の空気を振動に微妙な影響を与えて、フルートの音色に微細な違いを与えるんだろうと思います。

 これは総銀フルートが錆びて、硫化銀が発生して、管内が黒くなると「音か変わった」という印象が生じるのと、おそらく同じ仕組みであって、硫化銀が管壁にコーティングされる事で、管壁の滑らかさが変わるからだと思います。

 でも管壁の滑らかさの違いなんて、ほんと、微々たる違いだよね。そんなに、演奏者にしか分からない、つーの(笑)。

 もう一つ、フルートの素材がフルートの音色に微妙な影響を与える原因があります。それは材質の比重です。

 フルートはカタチが決まっています。ですから、比重の重い材質で作られたフルートは、総重量が重くなります。楽器自体の重さって、実はとても大切な要素なんですね。

 これはオーディオの世界ではよく言われるのですが、発音体(オーディオならスピーカー、フルートなら楽器自身)の重量が重ければ重いほど、自分自身が振動しずらくなり、その結果として、発音した音がより良い音で遠くまで飛んで行く…って言うんです。ですから、オーディオの世界では、スピーカーは重ければ重いほど良いわけだし、軽いスピーカーを使用するなら、スピーカーの振動を抑えるために、スピーカーの上に重石を載せたり、スピーカーが振動しないように、周囲から押さえつけちゃったりするわけです。

 つまり、比重の違い(ってか質量の違いか?)で、伝達できる音のエネルギー量が違ってくるので、比重の重い材質で作ったフルートの方が、良い音色で遠くまで音が飛ばせるって事になります。身近な例で例えて言えば、フニャフニャの床と硬い床では硬い床の方が高く跳ねることができるし、その硬い床も、単純に硬い床と、バネのようにしなりながら硬い床では、しなりながら硬い床の方がより高く跳ねることができますって具合です。

 音は振動ですから、フルートの材質がその振動のエネルギーに負けてしまうと、音に影響してしまうと思います。軽い材質と重い材質では、やはり振動のエネルギーにどれだけ耐えられるか…の違いがあるんだと思います。

 同じ事は、比重だけの問題ではなく、同じ材質でも、厚管薄管の違いにも通じると思います。

 楽器素材の材質の比重/質量の違いは、色々な場所で色々な楽器を吹いてきた演奏なら、その違いも分かるのだろうけれど、特定の機会に特定の場所で特定の奏者の演奏を聞いている観客にとっては、その違いなんて、演奏者の個性の一部でしかないんだよね。つまり、そういう事。

 と言うわけで、フルートでも、材質の違いが(観客には分からない程度に)音に微妙な影響を与えているわけで、ですから、頭部管と管体でバランスの取れた音が欲しいなら、同一素材がいいだろうし、管体をきっちり鳴らしたいなら、頭部管の方が強くてもいいんだと思います。でも、あまりに頭部管と管体が違いすぎると、うまくいかないのかなって思います。

 でもね、やっぱりね、フルートの音色に影響を与える要素として、管体の素材の違いを考えるよりも、頭部管のカットの違いに着目した方が良いかなって、実は思ってます。だって、フルートって、頭部管のカットの違いで、面白いように音が変わるし、だから頭部管だけをコレクションする人がいるわけだしね。

 フルートの材質にこだわるよりも、頭部管のカットにこだわった方が、フルートの音色により効果が表れやすいと思います。それでも、その違いが観客に分かるかと言うと…やっぱり微妙かも。

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コメント

  1. tetsu より:

    こんばんは。

    > ヲタクの引きこもり

    ひとことに反応してしまいました。こちらも夢はヒッキー(ひきこもり)です。ただ住んでいるところが汚くなるし、掃除の邪魔なので、仕事(?)で外出するようにはしています。

    > フルートって、金属管と木管では、音が微妙に違うでしょ?

    某国営放送局の交響楽団の首席フルート奏者が某ブランドの木のフルートをお使いのようです。TV放送できいただけですが、ブッチャケ木のフルートらしい音色と感じたことはありません。最近の木のフルートは金属的な響きがしているような感じです。

    木のベーム式フルートというとガレス・モリス Gareth Morrisの演奏のイメージがあって、クレジットは少ないですが当時の演奏を集めたこともありました。当時、周囲では金属管も当然あったはずですが、CDだけで聞いた範囲では最近のようにキンキンしていないように感じます。

    個人的に試した感じでは、最近の木のフルートはかなり金属的な音がするように感じています。材質のほかに管厚、重さとか比重、歌口のカットとかの要因があるようにおもいます。

  2. たまごっち より:

    新しいフルート、ほしいほしいなぁと思いながら、未だに試すことすらできていません。
    「全部の音階を綺麗に吹けたら、他のフルートも吹いてみよう♬(*◔‿◔)」と思ってから、早10数年・・・予定では、この半分の年数のハズだったのですが;;

    ここまでくると、可愛いわが子を手放すなんて考えられなくなってしまいました(;´Д`)
    それに安いフルートって、気を遣わないでガンガン使えるし。。。

    ちいさいものはちょこちょこ買う癖に、大きな買い物ができない性分です。
    でも、そろそろオーバーホールはしないといけないかなぁ。買った金額に対して、ちともったいないので躊躇してしまうんですよね。

    私、持ち方も分からない状態で笛を買ったので、店員さんに吹いてもらったんですよ。
    洋銀・頭部管のみ銀・管体銀と。ずっと後になって、総銀と金の吹き比べも耳にしましたが、たしかに材質が変わると人が変わるように変化して聞こえたのを覚えています。

    でも、至近距離で聴くと違いはよく分かるのですが、これがホールとか、ちょっと離れた場所だったら・・・分かる自信ないです;いえ、絶対分からないと思います。

    ちょっと離れたとこから聞くと、何故か”その人のもつ音”が全面に聞こえる気がします。その人の音が見えてくるというか。万華鏡のようで不思議ですね。
    アマチュアの中に、たまにハッとするような綺麗な音が演奏中にポロッとでる人っていますよね。プロは均一に綺麗な音ですが、その”たまに”の音は本当に綺麗なので、無性に好きです。

  3. 中年ハチ公 より:

    頭部管のカット
    同感です。
    カットの少ないものほど
    ツンデレ傾向にあるのではないではないでしょうか
    すとんさんのフルート研究の記事は
    本当に面白い!!
    一晩中。話していたい。(すとんさんは嫌かもしれないけど)。

  4. すとん より:

    tetsuさん

    >個人的に試した感じでは、最近の木のフルートはかなり金属的な音がするように感じています。

     私もそう思います。近くで聞くと、いかにも木管的な柔らかい音であっても、すこし離れると、金属管とほぼ同じ音になってしまうと思います。おそらく、現代的なフルートの音って、材質がなんであれ、金属的な音になるようにチューニングされているんだろうと思います。

     古い木管楽器なら、木管的な音色となるのでしょうが…古い楽器はピッチに問題がある事が多くて(頭部管を切り落としてしまえば話は別ですが、そのままの状態では)楽器としては実用的とは言えません。痛し痒しですね。

  5. すとん より:

    たまごっちさん

    >ちいさいものはちょこちょこ買う癖に、大きな買い物ができない性分です。

     私も一緒です。でも財布が軽いのに大きな買い物が出来ちゃう人って、借金体質なんだろうなあって思います。『借金は悪だ』とは思いませんが、借金をする勇気がない人なので、まあ仕方ない…と思ってます。やはり『いつもニコニコ、現金払い』が体質的に合っているようですから(笑)。

    >ちょっと離れたとこから聞くと、何故か”その人のもつ音”が全面に聞こえる気がします。

     私もそうです。どんな楽器を使って吹いていても、結局は演奏者の音として聞こえてしまうわけです。この事実に目覚めてしまうと、新しい楽器の購入よりも、自分の腕を磨く…というか「音作りの練習を頑張らないと…」と思ってしまうわけです。で、余計に、新しい楽器の購入が遠のく…と(笑)。

     とは言え、楽器が違えば、音色はともかくとして、あれこれ違ってくるのは当然です。やはり、どこかで楽器の買い替えってのは、必要になってくるんだろうとは思いますが、やはり借金が出来ない体質なので、なかなか次のフルートが買えません…ってか、私の場合、次に購入するのはゴールドフルートって事になるんでしょうが、この私にゴールドは必要なんでしょうかね?

  6. すとん より:

    中年ハチ公さん

    >一晩中。話していたい。(すとんさんは嫌かもしれないけど)。

     イヤです(笑)。だって私は、夜はしっかり眠りたいタイプの人なんです。「夜更かし? ダメ、絶対」です(大笑)。

     とは言え、私の身近にはフルート談義のできる人は皆無なので、実際にそんな場面に出くわしたら、夜明けまで話してしまいそうです(笑い)。私、基本的には無口なんですが、ヲタクの常として、自分の関心事には極めて雄弁になりますからね(爆)…だからヲタクは嫌われるんだけれどなあ(遠い目)。

    >カットの少ないものほど、ツンデレ傾向にあるのではないではないでしょうか

     私もそれは感じます。それは頭部管の進化って、発音の容易さと音量の増大の2つを獲得するために頑張ってきたからだろうと思います。そのため犠牲になってきたのが、従来のフルートの音色ってヤツです。まあ、音色ってヤツは、時代によって好まれる傾向が変わってきますから、現代フルートには現代フルートにふさわしい音色が備わっていればいいわけで、それは必ずしも従来のフルートの音色である必要はないわけですから、現代フルートの進化は、楽器の進化としては正しい進化をしてきたと思います。

     それに音色は、楽器の持つ音色も大切ですが、最終的には奏者の音色が一番ですから、フルートの進化に音色があまり考慮に入れられなくても、当然と言っちゃえば当然なのかもしれません。

     そういう意味では、ツンデレ傾向のある楽器を選択する必要って、たぶん無いんです。少なくとも、プロ奏者の場合は、ありえないでしょうね。

     なのに、ツンデレな楽器を製作しつづけるアルタスというフルートメーカーは、ある意味、立派ですね。自分の首を締め続ける事で、他とは異なった自社の個性を打ち出しているわけですからね。そういうちょっぴり自虐的な部分が、いかにも日本的だなって思ったりする私です。

  7. たまごっち より:

    出張おつかれさまでした。ゆっくり休まれてください(。´•ㅅ•。)

    以前、先生が自分の笛を吹いた時があるんですが、そのとき笛が「いたい、痛い!これ以上は無理だ!」って悲鳴あげてました。どういった経緯だったかは忘れましたが、これだけ鳴るから・・・ってことを言ってたような気がします。
    その時感じたのは、”まだまだ鳴るんだ”より、”奏者の力が楽器より上だと、こんな状態になるんだ”でした。戻ってきた自分の笛が、ちょっと可哀想なくらいで(,,・_・,,)

    今のところ、私が吹く私のフルートは、まだまだ余裕な雰囲気です(,,•﹏•,,)
    道具として私も完全燃焼させてやりたいですが、もう少し楽器のグレードを上げたほうが、上達しやすいかなぁ?・・・と、最近うっすら考えています。でも、そう思いつつ、やっぱり今のフルートを手にとるんですが。

    金のフルート、前にすとんさんの先生が金が合ってるって仰ってませんでしたっけ?
    金の笛が合う音色をお持ちって良いですね!いいなぁ。金が合いそうな人と銀が合いそうな人っていますね。
    どちらの音色も素敵ですが、金だと銀も選べるわけで、笛を選ぶ悩みが発生しますね。吹いてみるとか・・・?欲しくなっちゃいますかね(*´▽`*)

  8. すとん より:

    たまごっちさん

    >金のフルート、前にすとんさんの先生が金が合ってるって仰ってませんでしたっけ?

     そうです。H先生は私にゴールドフルートを薦めますが、同時に「購入はまだ早い」とも言ってます。もっと上達して、良い時になったら、先生から購入許可が降りるので、それまで今の笛で頑張れとも言われていますが…購入許可が出たからといって、おいそれと買えないのがゴールドフルートですから(笑)。

     私には10Kあたりがお似合いだと先生はおっしゃいますが、どうせゴールド買うなら、10Kではなく、18Kぐらいの方がいいんだけれど…そうなると、お値段は4倍ぐらいになっちゃうんだよね(笑)。

    >以前、先生が自分の笛を吹いた時があるんですが、そのとき笛が「いたい、痛い!これ以上は無理だ!」って悲鳴あげてました。

     あ、それ分かります。フルートって、本当に上手な人が吹くと、限界超えて鳴るんですよね。私も以前使っていたチャイナ娘を当時の先生に吹いてもらった時が、そんな感じでした。それはもう、ビックリするくらいに鳴り出すわけです。

     自分のフルートの鳴りが限界を超えた時が、次のフルートの買い頃だと聞きました。だとするなら、私は銀のフルートを卒業することは、当分なさそうです。

  9. chako より:

    10Kだと銀の含有率高いので総銀と音色あまり変わらないとうちの先生言ってました
    ゴールドなら14K以上500万ですか(笑)

    私なら頭部管コレクションしますかね
    高村さんの木管、各メーカー銀管
    象牙の反射板、クリスタルの反射板
    象牙のリッププレートとか

    音色楽しめるかな(*⌒▽⌒*)

  10. すとん より:

    chakoさん

     10Kだと、金よりもその他のいわゆる“混ぜ物”の方が含有率が高くなるので、ゴールドフルートと呼ぶには、個人的には躊躇しています。それに混ぜ物だって、フルートに使われている10Kの場合は、金色を出すために、実は銅が多く含まれているんですよ。そう、我々が“金色”と思っている色は、実は“銅+銀”で作られた色なんですよ。なので、10Kは金のフルートというよりも、銅製のフルートだという認識を私はしております。

     それに10Kは錆びるし、総銀よりも楽に吹けるそうだし、やっぱりゴールドフルート購入なら、少々高価でも14K以上かなって…今は思ってます(明日になると考えが変わるかもしれませんが)。

     なんて事もあって、H先生からは10Kのフルートを薦められていますが、全く乗り気になれないのはそういう事もあります。でも、14K以上のフルートは、高価ですからねえ…。簡単には買えません。

     それに今のフルートを結構気に入っているので、買い換えるつもりもないし、結局、フルート以外のモノに散財している私です。

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