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音大卒業しているからピアノが弾けるとは限らない…みたいですね

 クラシック声楽を趣味として学び始めてから、色々と知った事があります。今回の記事は、そんな事柄の一つを記事にしてみました。

 私たち一般人は、音大を卒業した人を“音楽の達人”であると認識しています。おそらく、その誤解を与える原因の一つが、学校の音楽の先生でしょうね。

 音楽の先生って、ピアノも弾けば、歌も歌うし、合唱指導もやっちゃうわけで、それを小学生とか中学生とかの子どもの目で見れば“音楽の先生=スーパーマン”とか思っちゃうわけです。で、そんなすごい音楽の先生は、他の先生たちとは違っていて、音大なる学校を卒業しているわけで、そこから『音大を卒業していると、音楽はなんでもできる』とか思っちゃうわけなんです。…誤解なんですけれどね。

 でも、現実は、ちょっと違うわけです。確かに、音大を卒業して、音楽に関する事なら何でもOKな人もいますが、音大の卒業資格を持っているにも関わらず、歌も歌えなければ、ピアノもロクに弾けない…という人も少なからずいるんですね。この現実を知った時は、私、驚いたものです。

 でも、ちょっと考えてみれば分かるわけです。音大なんて、たかが大学なんですよね。例えば、大学の法学部を卒業したからと言って、全員が全員、六法全書を暗記しているわけでもないし、みんながみんな、法曹界で活躍できるわけではないのです。中には、やっとの思いで大学を卒業した人だっているだろうし、自分の適性の無さを思い知って、早々に別の道に進路変更した人だっているわけで、でも、そんな人でも法学部出身だったりするわけです。また、大学にもレベルの違いって奴があるわけで、多くの司法試験合格者を出す学校もあれば、結果の芳しくない学校だってあるわけです。

 音大だって、実は似たようなもので、やっとの思いで卒業した人もいるだろうし、適性の無さを思い知って、早々に別の道に進みだしてしまった人もいるでしょう。また、学校のレベルの差だってあるわけです。

 音大を卒業して、バリバリの演奏家として活躍している人もいる一方、バイトをしながら音楽活動をしていたり、レッスンプロで生計を立てていたり、一般的な仕事をしながら趣味やボランティア的に音楽活動をしている人もいるわけです。まあ、ピンきりなんです。

 でも、そんな事実は、我々一般人は知らないのですから、そういう人を見るたびにビックリしたりしなかったりするわけです。

 で、私が驚いたのは、バイトをしながら音楽活動をしている、あるピアニストさん。

 正直な話、いくらプロの音楽家と言っても、なかなか音楽活動だけで生活を成り立たせるのは大変です。特に、キャリアもなければ人脈もまだまだな若い人だと、実力があっても、音楽活動だけで生活を成り立たせるのは困難です。

 具体的な話は避けますが、そんな若手のピアニストさん(もちろん、某音大のご卒業の方です)に伴奏系の仕事を依頼したと思って下さい。事前に、その日演奏する曲の楽譜は送っておきましたので、とりあえずは、ひと通りの演奏をしてもらいましたが、その演奏が実にあんまり上手ではないのです。あっちでボロボロ、こっちでボロボロ、音を落としたり、和音を間違えたりするんです。人間は機械ではありませんから、ある程度間違えるのは仕方ないですが、それでも限度があります。さらに、移調をお願いすれば、さらにボロボロな演奏になってしまうし、テンポの変更をお願いしても、最初のうちだけは指定のテンポで弾いていても、やがて元のテンポに戻ってしまったりとか、ちょっとアレアレな演奏をするんですね。これでも一応、ツテを頼って紹介してもらって仕事を依頼したはずなんですが…。

 私は甘い人間だし、紹介してくれた人の顔をたてる意味もあったので、そのピアニストさんには、出来る範囲で頑張ってもらう事にしました。でも思った事は「この程度で、ピアノが弾けると言えるのか? この程度の技量なのに、ピアニストとして仕事を引き受けるか!」って事です。

 いやあ、参りました。もちろん、その方に二度と仕事を依頼することはありませんでした。でも、実はそんな事は、そのピアニストさんだけの話ではなく、その後も、依頼したピアニストさんが同じようなタイプの方だった事が何度もありました。私も慣れてしまったので「また、弾けないピアニストを雇っちまったよ…」とやさぐれるようになりました。

 おそらく、一番の問題はギャラなのかなって思いました。ピアニストさんには、その団体の規定どおりのギャラでお願いしたのですが、そのギャラが、私個人から見ると、破格に安いんですよ。こんな安いギャラで来てくれる人なんているのかな?と思っちゃうくらいに安かったんですね。結局、安いギャラで仕事の依頼をかけると、その程度のギャラでも仕事を引き受けてくれる人(つまり、自分を安売りする人)しか仕事を引き受けてくれなかったんだと思います。

 ギャラって大切ですね。でも、それはそれ。これはこれです。でもでも、そんな事があって以来、私は音大卒という肩書を信用しなくなりました。

 今、私が個人的に依頼しているピアニストさんはアマチュアで、音大なんか卒業していませんが、これらのピアニストさんと比べるのが失礼なくらい、ちゃんと普通にピアノを弾いてくれます。音大を卒業していなくても、音大卒業生以上にピアノが弾けるアマチュア・ピアニストさんもいるわけで、そうなってくると、音大という教育機関の存在意義って何? とか思ってしまったりします。

 …てな話を、先日の声楽の勉強会の後、その日のピアニストさんを捕まえて、グダグダと語ったわけです(オジサンってイヤね)。そうしたら「すいません、それは私達の力不足です」って謝られてしまいました。あちゃー、そう言えば、この日のピアニストさん、音大の先生だった(汗)。

 でもまあ、音大卒業しているからピアノが弾けるとは限らない…みたいですね。

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コメント

  1. おぷー より:

    私の先生、トム・ボレン先生は、半音の変調でもバシバシ弾かれる方でした。
    (伴奏専門のピアニストで、ピアノの先生であり、曲の解釈の授業もされてました。)
    その先生が、「今年入ってきた生徒たちで、変調させた曲をぱっと弾けるのは、
    1人しかいなかった。」と仰ってましたから、やはり変調してぱっと弾いたりするのは、
    難しい事なんだと分かった次第です。
    声楽家は、半音変調したものをぱっと歌うのは何でもない事なので、全然平気ですが、
    ピアノはそうは行かないらしい。
    今まで弾いてくれたピアニストさんで、波長が合ったのは、1人か2人です。
    ピアノを弾く妹に言わせると、「声楽家が一番ワガママで伴奏しにくい。」んだそうです。
    ピアニストにとっても、声楽家って面倒なのかもしれませんです。

  2. 名無し より:

    音大出てるから上手なんだって、本当にこちらの思い込みですね!
    いろんな方がいます。
    私が某男声合唱団で歌ってた時、バリトンの方と雑談していて、その方が有名音大
    声楽科の卒業と聞き、思わず「えっ」言ってしまいました。その方、中学校の音楽の先生だったのですけどね。その方の歌には音大声楽科卒のかけらも見出せませんでした。発声は悪いは棒歌いだし、はっきり言って私よりはるかに下手。
    ご本人もそのことは自覚していたみたいで「驚くでしょう」と言われました。
    これでよく卒業できたねーと思いましたね。
    私の歌の先生にそのことを話したら、大学も商売だからの一言でした。
    ちなみに私の先生も同じ音大卒でした。

  3. Yokusia より:

    素朴な疑問ですが、音大のピアノ科で移調の実技演習とかあるのでしょうか。
    技術的な問題はともかく、実際に瞬時の移調が必要になるのは、歌手の方と弾く場合
    だけですよね。器楽なら譜面どおりに弾けばいいし・・・。

    そう言えば以前、私の先生が、「歌や器楽の伴奏をする場合、うまく弾ければソリストが
    褒められ、下手だと伴奏者が責められる」とおっしゃっていました(笑)
    この辺は通訳や翻訳家と似てますね。

    「室内楽や伴奏で楽譜を見るのは、他の奏者が小節を飛ばしたり、へまをやった時、
    フォローするため」という話も聞きました。
    伴奏ピアニストに必要とされるのは、ソリストがどう転んでもしっかりついていく柔軟な
    演奏技術なのでしょうね。

    その場合、移調はもちろん、一部即興でごまかさなければならないことすらありそうだし、
    案外、ジャズとかやっている人の方が融通がきく・・・なんてこともあるかもしれません。

  4. すとん より:

    おぷーさん

    >やはり変調してぱっと弾いたりするのは、難しい事なんだと分かった次第です。

     そうなんですね。私も最近知ったばかりです。今まで私が出会ったピアノさん(子どもやアマチュアも含む)は、皆さん、簡単に移調してましたので、移調して弾けるのは当然の事だと思ってました。まあ、そんな簡単じゃなかったってわけですね。

    >声楽家が一番ワガママで伴奏しにくい

     …と言うか、住んでいる世界が違うんだろうって思います。世界が違うから常識が違うわけで、だから理解不能でワガママに思えるって事なんだろうと思います。

     とにかく、きちんと伴奏していただけるピアニストさんたちには、感謝をしないといけませんって事です。

  5. すとん より:

    名無しさん

     お名前をアップされていなかったので、仮に「名無し」さんと呼ばせてください。

     私も音大を卒業されているにも関わらず、その技量に???を感じる方って、やっぱり少ないと思います。私も、記事で書いた以外の方で身近な方だと二名ぐらいしかいないかな? やはり、お一人はガッコの音楽のセンセでして、もうお一人はOLさんです。たいていの音大卒の方は、皆さん、スーパーマンやスーパーウーマンだったりします。だから、たまに例外がいるわけですね。でも、それは世の常なのかもしれません。

    >大学も商売だからの一言でした。

     まあ、そうかもしれないし、入学させてしまった以上、力がないからと言って退学させるわけにも、日本の大学だと、なかなかできないって事もあると思います。じゃあ入学させなきゃいいじゃんって思いますが、実力なんて、入学試験だけで分かるものじゃないですから、うっかり入学しちゃう人もいると思います。

     どの道でも言えますが、学校を卒業しただけでは、やっと半人前で、まだままだ一人前には程遠い事を、我々一般人も知るべきだって事なんだと思います。

  6. すとん より:

    Yokusiaさん

    >音大のピアノ科で移調の実技演習とかあるのでしょうか。

     私は音大卒業じゃないですから知りません。何人かの知人(もちろん音大卒の人)からは「移調で伴奏するのは、やったよ」と言ってました。もっとも授業とか実技演習でやったどうかまでは知りませんし、すべての音大でやっているかどうかも知りません。

     で、私は音大卒業じゃないです(一般大学の卒業です)が、大学の音楽の授業でピアノの移調演奏はやりました…ってか、試験に出ましたね。ちなみに、私はボロボロでしたが、学友たちは結構スムーズにやってました。一般大学の一般教養の音楽でやっているんですから、音大では言わずもがなだと私は思っていました、違うのかな?

    >案外、ジャズとかやっている人の方が融通がきく・・・なんてこともあるかもしれません。

     ジャズでは、楽譜と実際に演奏するキーが違うと言うのは、珍しくないですね。Fで書かれた譜面を渡しながら「Gでお願いします」なんて事、たまにあるみたいですよ。

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