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発表会で歌ってきた[音源付き] その2

 1曲目の「君なんかもう」を手堅く歌い終えた私は、ある意味、油断していたのかもしれません。いい気になっていたのかもしれません。

 少しのインターバルを挟んで、2曲目のプッチーニ作曲「トスカ」より「E lucevan le stelle/星は光りぬ」となりました。ピアニストさんは、しっとりといい感じでピアノを弾きだしてくれましたが、どうも私とは歌い出しから、ちょっとチグハグしていたのかもしれません。無意識に私が舞い上がっていたのかもしれません。

 どうも、オペラアリアを歌うと、自分を見失ってしまう私でした。

 音源を聞いてもらうと分かりますが、歌いだして、すぐに冷静さを失っている私がいます。冷静さを失っているというか、自分を見失っていると言うか、なので、曲の途中で、声を使い切り、最後の最後の肝心なところは…怒鳴ってますね…明らかに。これはもはや歌ではないかもしれません。いくら出そうもないからって、勢いでどうにかしようなんて、キング門下時代の悪い癖が出ちゃいました。ああ、Y先生からは「絶対にやっちゃダメ!」とキツく言われていたのに…穴があったら入りたい気分ですが、世界的に恥をさらすのもいい経験ですから、あえてアップしちゃいます。笑ってやってください。

 まあ、練習でも最後のAが決まる事は滅多になかったわけだし、ある意味、想定の範囲内の出来事ですね。以前は「本番に強いすとんさん」と言われた私ですが、もはや、そのフタツナは返上しないといけないかもしれません。

 もっとも、Y先生に言わせれば「本番で、練習以上の力を発揮をできるのは、歌を始めて2~3年ぐらいまでの間ね。それくらいのキャリアだと、練習で出来なかった事を本番でヒョイとやっちゃう事がありますが、それ以上になってくると、練習どおりできないのが本番なわけで、練習の8割程度できれば上出来なんです」との事だから、私の本番の状態が練習以下であっても、ある意味、当たり前なんですね。

 いやあ、悔しいです。本番で確実に出すためには、その前の練習の時に、百発百中でないとダメなんですねえ…そういう意味では、全然練習が足りないのです。

 ひとまず、音源は付けておきますが…この音源はかなり怖いですから、聞く時は、きちんと覚悟してから聞いてくださいね。気分が悪くなっても…それは自己責任ってことで(笑)。

 で、これでひとまず、第一部の出番を終えた私です。ちなみに、こんな分かりやすい撃沈をしたのは、Y門下では、私、ただ一人でございます(えっへん)。どこに行っても、きちんと撃沈する私は、ある意味、ブレない撃沈王と言えるでしょう。

 次の出番は第二部の頭ですから、それまでの時間は他の生徒さんの歌を会場で聞き、第一部の最後の方の時に、またまた舞台袖に行きました。今度は、小道具を持って舞台袖に行ったため、飲み物とかを持ち込めませんでした。ああ、数分前の反省を生かしきれない私でした(涙)。

 さて、第二部は、私たち夫婦が歌う、ヴェルディ作曲「椿姫」より「Libiamo,  ne’lieti calici/友よ、さあ飲みあかそう(乾杯の歌)」で始まります。

 妻がピアニストさんと一緒に舞台に登場して、挨拶をします。で、イントロが流れる中、私が登場するのですが、なんと私、登場のタイミングが分からなくなっていました。どうやら「星は光りぬ」の失敗をまだ引きづっていたようです。ああ、小心者だなあ…。音楽は耳に聞こえるのだけれど、それを頭の中でちゃんと処理できていないようです。とにかく、ブレイクまでに舞台中央に行かなければいけない…それだけを考えて舞台に登場して…歌い出しを間違えました(汗)。

 あああ~、やっちゃったよ。一瞬、頭は真っ白になりました。この曲に関しては、今までのリハーサルで、常にヘマるのは妻で、私は無事にこなしていたのに、本番では妻はオーライで、私がドジるとは…。いやあ、舞台って、何が起こるか分かりません。いや、失敗した私だって、まさか、こんなところでドジるとは、夢にも思っていなかったからです。

 間違えた瞬間、ピアノを聞きました。ピアノは和音を変えていません…よし!、と一瞬の判断で、歌を途中で切って、再度歌い直しをしちゃいました。…キング門下なら考えられない所業ですね、だって、あそこのピアニストさんなら躊躇なく前進しますから(爆)。いや、笛先生でも許してくれないでしょう。音楽を止めたり戻したりするのを、何より禁忌としていた先生でしたから。

 ああ、先生方&音楽の神様、ごめんなさい…と思いつつ、ピアニストさんが音楽的に動いていないことを確認して、とっさに歌い直しちゃいました。後でピアニストさんに尋ねたところ「ちゃんと入ってほしいところで入ってきてくれたので、助かった~」と言ってくれましたが、いえいえ助かったのはこちらです。それにしても、声楽って、アンサンブルだなあ…ピアニストさんって最後の味方なんだよなあ…。

 失敗は失敗として、ひとまず置いて、その後は懸命に舞台に取り組みました。舞台の右や左、手前、ピアノの裏側までと、結構動き回りながら歌った「乾杯」でした。こういう小芝居付きの音楽も楽しいでしょ? ちなみに、ここの門下で、こんな小芝居をしながら歌ったのも、私たちだけです(えっへん)。

 音楽的には、出をトチったため、そこから先は結構ヒドい事になってます。ただでさえヴェルディは大変なのに、ヘマってキョドってしまったので、あっと言う間に声を使い切ってしまった私です。最後の最後は、ほぼ絶叫…ですね。いやあ、録音して、音だけを冷静になって聞くと、結構耐えられない仕上がりですなあ…。ライブの演奏を録音して販売するプロの方々のすごさを改めて知りました。感服つかまりましたでござる。

 とにもかくにも、やっちゃったモノは仕方がない。まあ、私なんて、この程度のアマチュア歌手でございます。本当はまだまだ他人に聞かせられるような腕ではないのですが、私の歌を聞いちゃった方は、自分でプレイボタンを押したわけですから、夜、うなされたとしても、当方に苦情は無しよ(笑)。聞いちゃったあなたもつらいでしょうが、アップしちゃった私もつらいんですからね。

 さて、自分たちの出番が終わると、後は、気楽な気分で他の生徒さんの歌が聞けます。

 聞きながら思ったのですが、やっぱり門下の特徴ってあるなあって思いました。Y門下は…上手な人が多いなあって思いました。ってか、上手い人は本当に上手い。半端無く上手い。ほぼ、プロと見紛うばかりに上手な方々が結構いらっしゃる。聞きながら「なに、この人」って思ったものです。この門下にいると「私って、ほんと、まだまだだな」って思うし、逆に「まだまだ上手になれるんだな」とも思いました。

 それと、ここの門下では、誰もが楽に歌っているのが分かります。苦しそうに歌っている人がいない。いかにも、歌は楽しいです…ってオーラを出しながら歌っているの分かります。楽しく歌えるって、アマチュアには大切なことですね。

 それにしても、80歳を過ぎている(とおぼしき)方でも、オペラアリアをサラっと歌っちゃうのには驚きました。オペラアリアどころか、愛唱歌を独唱するのだって「どうなの?」というほどにお姉様なのに(声こそは年齢相当の音質ですが)実に立派にサラっとオペラアリアを歌う姿を見ると「私は、ここではまだまだヒヨっ子だな」って思い知らされました。

 ちなみに我が地元には、65歳を過ぎないと参加できないコンクールがあるんですって。そこに行くと、もうお元気なお姉様お兄様ばかりがいらっしゃるので、年を取ってもいてもウカウカできないんだってね。そんな世界があるなんて、知りませんでした。

 あと、楽譜ガン見の方が結構多い発表会でしたが、これも楽屋で話を聞いてみると、曲を決めたのが二カ月位前(プログラムの印刷直前って事だね)で、本番までのレッスンも2回程度しかなかったなんて人が、結構いるんですよ。どうやら、発表会に向かって盛り上がって準備していく…のではなく、ここの門下は、発表会が近づいてきたので、今歌える歌の中から、適当な曲を選んで歌ってみる…というスタンスで発表会に臨むんですね。なので、暗譜をしている余裕がないまま、舞台に立っちゃうわけです。

 ま、人生色々、門下も色々です。

 さあ、頭を切り換えて、次の準備にかからないと。九月には、後輩君とのフルートの二重奏の本番が、十月には地元のクラシック・コンサートがあって、またまた声楽の本番が控えているわけです。まあ、今年は第九に出ないので、これで終わりの予定ですが…ああ、忙しい。フルートもクラシック・コンサートも、まだどちらも譜読みすらしてません。それどころか、新しいパソコンの環境設定すら終わってません。ああ、忙しい(笑)。

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コメント

  1. すずめおばさん より:

    本番に強いと思ってた、すとんさんが・・・すとんさんが・・・・・(汗)

    やっちゃいましたね(^0^;)!!
    でも、すごいなあと思います。
    なにがすごいって、失敗を堂々とさらけ出せる潔さ!!
    見習いたいです!

    80歳をすぎてもオペラアリアを歌われる方がいらっしゃるんですね♪
    私の残りの人生に希望がもてます。
    私もがんばりまーす!!

  2. 椎茸 より:

    おつかれさまでした!

    ☆は、確かに最後はやってしまった感じですけども、途中までは1曲目と同じく、良い傾向が表れているように思いました。
    乾杯の歌も楽しく聴かせていただきました。

    キャリアがある程度になってくると…というY先生のお話、かなり同感です。私も最近、そのことを実感しています。でも、だからこそ逆に日々の練習が楽しく、大切に思えてきます。
    もっといい歌を歌えるように、おたがいがんばりましょう^-^

  3. ちまきんぐ より:

    初めまして。以前からすとんさんのブログはこっそり拝読していたので、これまたこっそり発表会を聴かせて頂きました。

    すとんさんの明るいテノールの声、素晴らしいですね。私は低めのバリトンなのであんな輝きは出せないです。また、堂々とした歌いっぷりも流石だなと思いました。他の方達の歌も聴いて、全体的な感想ですが、皆さんもう少しカヴァーした声が使えると、明るさの中に深みが加わるのではと感じました。

    私は声楽はまだ二年目のヒヨッコなので、すとんさんの声楽記事は勉強になり、楽しみにしています◎

  4. フミエ より:

    すとんさん、お疲れ様でした(それとお久しぶりです)

    歌い出しをやり直したのは大きなミスではあるけれど、結果的には一番傷が浅くすんだのではないでしょうか
    私も明日、本業のピアノでヴァイオリンと合わせて人前で演奏するのですが、ソリストさんに最後の味方だと思ってもらえるように頑張ろうと思いました  
     さあもうひとがんばり練習だ!

  5. すとん より:

    すずめおばさん

     いや、だから私が本番に強いと言うのは錯覚なんだってば(笑)。決して、本番に強いわけではないです。もうすでに、アドレナリンが出たからと言って、どうにかなるレベルではないと言う、うれしいんだか、うれしくないだかのレベルになってしまったと言うわけです。

    >なにがすごいって、失敗を堂々とさらけ出せる潔さ!!

     いや、別に、失うモノが無いからねえ。全世界に私の歌の下手ッぴさを顕かにしても、世界は「ふーん、それで?」ってモンでしょ。なら、話の流れで、口先で「発表会を失敗しました」と書くよりも、音源アップして「こんな事になっちゃいました」の方が分かりやすいというものです。そんだけの事です。

    >80歳をすぎてもオペラアリアを歌われる方がいらっしゃるんですね♪

     そうなんです、それも相当に立派に歌われるんです。未来に希望が見えますよね。以前の門下では「歌は五十歳まで。それ以上になると上達しない」とはっきり言われてましたからね。それはある意味、正しい言葉なんだろうけれど、でもそれじゃあ、すでに五十歳を過ぎている身にとっては、死刑宣告でしかないし、向上心を根底から否定されるわけで、正直、やってられません。

     でも、今の門下なら、年を取っていても、上達は望めそうだし(無論、その上達速度は若い人の比ではないのは当然)、楽しみ方も色々と教えてもらえそうだし、それと記事には書かなかったけれど、皆さん(アマチュアレベルではあるけれど)あっちこっちで活躍されている人も多いので、そういう人脈を得られたというのも、うれしい事です。

     ますます声楽が好きになった私です。

  6. すとん より:

    椎茸さん

    >☆は、確かに最後はやってしまった感じですけども、途中までは1曲目と同じく、良い傾向が表れているように思いました。

     そこから分かる事は、オペラアリアなどの登場人物になりきって歌う事に危険性ですね。特に私のような憑依型の人間は危険だという事を、今回、身に沁みて感じました。以前、おぷーさんが教えてくれたけれど、自分とは別の自分を通して、外から自分を観察する…という冷静さを常に持ち合わせていないとダメなんだろうと痛感しました。

     ピアニストさんにも言われたけれど、冷静さが、何よりも必要なんだなあ…。

     それにしても、今までオペラアリアを人前で歌って、一度もきちんと歌えた事がないのは、オペラアリアそのものが難しいという事もあるけれど、冷静さを失って、自分を見失って…というスタイルが、オペラアリアを歌えなくさせる原因なのかもしれないなあって思いました。

     オペラは好きだけれど、歌手としては、歌曲向きなのかな? 私は…。

     まあ、その辺も含めて、今回の発表会からは、たくさん学ばないといけない事があります。じっくりと反省をして、この経験を今後に生かしていきたいと思います。

  7. すとん より:

    ちまきんぐさん

    >これまたこっそり発表会を聴かせて頂きました。

     感謝です。リアルに発表会を見聞きすると、録音とはまた印象が違っていて面白いでしょ? それにリアルだと、失敗しても、すぐに忘れてもらえますが、録音だと何度も失敗を繰り返して聞かれてしまうので、本当は皆さんにリアルに聞いてもらって終了、ってしたいくらいです。

    >全体的な感想ですが、皆さんもう少しカヴァーした声が使えると、明るさの中に深みが加わるのではと感じました。

     皆さん、多かれ少なかれ緊張しているので、緊張すると何かを忘れるわけで、それで声が浅くなってしまった…のかなって思います。あと、バリトンの方も、ソプラノの方も、あの門下の人は、声の明るい人が多いんですよ。特にバリトンの方々は、キング門下なら「あなたはテノールです」って先生に言われるくらいの声でしょ。ハイバリトン? ま、それでももっと深みがあった方がいいと言うのは(自分のことを棚に上げちゃうけれど)同感です。

    >すとんさんの声楽記事は勉強になり、楽しみにしています◎

     おぉ、励まされちゃうなあ。うれしいなあ。ブログをもっと頑張ろうって気持ちになりました、感謝です。ありがとう。

  8. すとん より:

    フミエさん、お久しぶり。

    >ソリストさんに最後の味方だと思ってもらえるように頑張ろうと思いました  

     お願いします。ほんと、ソリストにとっては、最後の最後に頼れるのは、それまで指導してくださった先生ではなく、ましてや自分でもなく、ピアニストさんなんですよ。

     今回は、失敗した部分だけでなく、本当にたくさんたくさんピアニストさんに支えられたと思ってます。

     皆さんにお誉めいただいた(そして自分でも満更な気分になっている)「君なんかもう」の音楽的な出来に関しては、半分以上はピアニストさんのおかげだと思ってます。音楽的な表現にせよ、楽な発声にせよ、あれはすべて、ピアニストさんによって導かれたもの(あるいは、仕組まれたもの:笑)なんです。私はただピアニストさんのピアノに乗っかって歌っただけなんです。それくらいピアニストさんの力って大きいと思います。今回もピアニストさんが違ったら、結果は大きく違っていたと思います。

     明日の本番、頑張ってください。お祈りしてます。

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