スポンサーリンク

吹奏楽部に混ざって、一曲演奏してきました

 春は、吹奏楽部にとって、定期演奏会の季節です。どこの学校の吹奏楽部も、地域のホールを借りたり、自校の体育館などを利用して、定期演奏会をするところが多いです。

 私が顧問をしている吹奏楽部も、例に洩れずに、定期演奏会をしました。

 定期演奏会…コンクールなどと違って、他の団体と比較されることもないし、順位も付かないし、見に来るお客は、ご父兄とかOB・OGなどの関係者ばかりなので、彼らを見つめる視線も暖かいし、そういうぬっくぬっくの環境で、ふにゃ~とした気分で楽しめる演奏会なわけです。

 で、そんなお楽しみ会的なノリのせいか、生徒たちが私のところにやってきました。それも本番の前々日(笑)。どうも、私にも演奏に加わってほしいと言うのです。

 明後日本番? それにだいたい、私は毎日、泣くほど忙しいのに、ステージに上がれだと?

 彼らが持ってきた楽譜を見ました。速くて甲高くて黒っぽい楽譜でした。

 「これくらい、初見で吹けますよね?」…なわけないだろ? 私を誰だと思っているんだい。

 あんまりにも期日の迫った話だし、これが一週間程度の猶予があっての話ならともかく、こんな面倒くさい楽譜を持ってきて、練習もさせずに、舞台に上がれだと? もちろん、即座に断りましたよ。

 生徒も、まさか断られるとは思ってみなかったらしく、きょとんとしてました。でも、出来ないものは、出来ないし、いくらなんでも話が急すぎるだろって事でした。

 で、その日はそれで終わりにしたのですが、ウチに帰ってから考えました。『たぶん、生徒たちは、演奏の出来不出来ではなく、私と一緒に演奏したかっただけなんだろうな。ただ、思いつくのが直前になっただけで、悪気はないし、オトナに甘えているだけなんだろうな』

 さらに考えました。『ソロ演奏じゃなく、吹奏楽部の合奏じゃん。別に完璧に演奏できる必要もなく、極端な話、フルートを吹いているマネだけしても、客席から分からないし、それはそれでOKじゃない。なら“練習しているヒマがない”なんて理由で出演依頼を断るのは、口実にすらならないだろうなあ…』

 さらにさらに考えました。『定期演奏会と言ったお祭りイベントでもなければ、生徒たちと同じ舞台で演奏するなんて事はありえないよな。だったら、断らずに、OKすればよかったかな…』

 翌日、部活の練習場に行って「昨日は断ったが、よくよく考えたところ、考えが変わった。舞台に出る事にするが、練習もリハーサルも無しで、ぶっつけ本番の一発勝負になるけれど、それでかまわないか?」

 ……かまわないそうです。もう、生徒たちニコニコです。ああいう、若い娘の笑顔に、今まで何度だまされてきた事か…今度も気持ちよく、だまされてやるか…。

 吹奏楽部の定期演奏会に出演すると決めたものの、仕事に追われ、まともに譜読みすらしている暇もなく、当日の本番のその時がやってきました。

 幸い、私が参加する曲は、たった一曲です。その曲は、部長の生徒が指揮をし、私を含めた顧問たちは、それぞれ楽器を持って、演奏にまわるという趣向でした。

 私はアゲハをオーバーホールに出していて、マイ楽器がなかったのですが、なにしろ、吹奏楽部の現場ですから、借り物のレンタちゃんを連れて行って、万が一の事故があっても怖いので、こういう時は、そういう荒っぽい現場に強い、プラ子を連れて行く事にしました。

 会場について、プラ子を出したら、さっそく、フルートのパートリーダーが「センセ、木管ですか!」と来ました。まあ、大のオトナが黒いつや消しで太いボディのフルートを取り出したら、普通、木管だと思うよね。そこでプラ管とは思わないよね。でも、黙っているのもアレなんで、素直に「これ、プラ管だよ」って返事しておきました。「え! プラ管…?」 どうも、生徒たちの常識だと、プラスチック製のフルートというのは、斜め上を行く展開だったみたいです。

 ともかく、私はプラ子で舞台にあがりました。

 で、肝心の演奏の方ですが…ほぼ、エアでした。エア・フルートね。つまり、吹いているフリだけをしました。ま、一応、吹けそうなところだけ、音を出しはしたので、完璧にエアではなかったのですが、吹いているようでも、フリをしている時間の方が圧倒的に長い、本当に“エア”なフルート演奏をやってきました。

 ちなみに、客席から見ていた妻は、私がエアフルートをしているとは、気付かず、練習なんてせずに初見であれだけ吹いていて、すごいなあ…と感心していたようです。うむ、エアフルートをしていても、全然バレなかったみたいです。さすがに、隣に座ってたフルートのパートリーダの子は「センセ、吹いてましたか?」と聞いてきたので「んなわけ、ないだろ」と答えておきました。

 いやあ、合奏だから、ほとんど演奏できないままに、なんかエラそうな顔をして、演奏のマネをしてきました。ソロだとこうはいかないでしょう。こういう“エア・プレイ”も合奏ならでの楽しみだね(邪道な楽しみかもしれませんが)。ともかく、教え子たちと一緒の舞台に乗りました…という、心温まる話(ほんと?)でした。

 ま、最後だし、良い想い出になりました。

 おまけ。この日、ウチに帰って歌の練習をしたら、高音が不思議なくらいに楽々出ちゃって、なんか変な気分。発声練習じゃあ、Hi-Dまで出ちゃうし(普段は高いAが出るか出ないかなんだけれどね)、もしかするとその先まで出ちゃったかもしれないし。どの曲も楽々歌えて、マリンコニアなんて、鼻唄レベルで歌えちゃいました。あら不思議、カラダがあっちこっち、開きっぱなしになっているみたい。

 生徒たちを喜ばしたので、音楽の神様がお礼をくださったのかもしれませんね。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 クラシックブログ フルートへ
にほんブログ村

コメント

  1. operazanokaijinnokaijin より:

    すとん様が教えておられるのは、
    高校でしたっけ?
    中学でしたっけ?
    いずれにせよ、生徒、というか、子供、というか、
    >>>本番の前々日(笑)
    >>> 「これくらい、初見で吹けますよね?」…
    いやあ、大人とは、全然違う発想をするのですね。
    ( ̄□ ̄;)!!

    エアフルートでの共演、生徒たちには、
    いい思い出になったことでしょう。
    すとん様、お疲れ様でした。
    (⌒∇⌒)ノ”

  2. wasabin より:

    ふふふっ~[E:wink]
    大人なすとんさんでしたね~♪

    良い一日が生徒さんの思い出に残るとおもいますよ~

    歌手の口パクは賛否両論ですがね・・・><

  3. 椎茸 より:

    すとん先生かっこいい(*^o^*)
    子ども達にもいい思い出になりますね。
    ムチャな依頼といえば、以前入っていた合唱団に、地元の高校の器楽系音楽部から、一緒に歌って欲しいというお話がありました。
    曲自体は超有名なのですが、楽譜(手書き)の書き方が間違っていたり、人間の歌えない音域になっていたり、で ズコーっでした。
    顧問の先生が見てあげたりしなかったのかなあ。すみません、余談でした。

  4. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

     人と言うものは、自分を基準にして往々に考えてしまいがちな存在です。そりゃあ、学生さんたちは若いし、部活しかやってないし、時間なら有り余っているし、カラダもまだまだ若いので、少々難し目の楽譜だって力業でなんとかしちゃうのでしょうが、オッサンは、そういうわけにはいかないって事に、想像が及ばないわけです。

     とにかく、オトナと言うものは、子どもよりも、何事にも時間がかかるってのを、子どもたちは知らなさ過ぎるのです。昔、小学生たちをスキー教室に引率した時、私も子どもたちもスキー初心者だったので、現地のコーチにスキーを教えてもらったのですが、子どものペースに合わせた指導だったので、私、光速で落ちこぼれました。そんなモンです。

  5. すとん より:

    wasabinさん

     ソロでの口パク等は御法度だと思いますが、合唱合奏では、口パクとかエア演奏などは、薦められる事ではありませんが、そういうメンバーがいるのは日常ですし、ご本人にその気がなくても、結果として、そうなってしまう事も度々あります。

     学校などでは少ないのですが、市民合唱団や吹奏楽団などでは、歌えないまま、演奏できないまま、舞台に上がるなんて、よくある話です。事前に、パートリーダー等から個別に、音を出して良い個所と出してはいけない個所を指定されるメンバーだっています。そうしないと、多くのメンバーと一緒に本番を迎えられないし、そうしないと、本番演奏がガタガタになってしまうからです。

     でもね、不思議なもので、自分はエア演奏で、ロクに音を出していないにも関わらず、演奏が終わると、不思議と充実感やら達成感やらは感じるんですよ。これって、すごく不思議ですね。

  6. すとん より:

    椎茸さん

    >楽譜(手書き)の書き方が間違っていたり、人間の歌えない音域になっていたり、で ズコーっでした。顧問の先生が見てあげたりしなかったのかなあ。

     似たような話をたまに聞きます。部活で音楽をやっている子は、楽譜を読めるようなふりをしていても、実際は耳コピ中心で楽譜はメモ代わりに使っている子も多いので、実はきちんと楽譜が読めず、当然、きちんと楽譜を書けなかったりします。最近は、音楽の授業でも楽典をやらなかったりするので、不思議ではありませんが。

     また、楽器の子って、歌えない子がとても多いので、人間の音域に関しても、無頓着な子は多いでしょうし、学校の顧問とて、決して音楽が分かる人ばかりが顧問をやっているわけじゃないです。全然分からない人がやっている場合もあるし、ある程度分かっていても、そのジャンルに関しては素人同然だったりするケースもたくさんあります。

     よく耳にするのは、音楽の新任先生が吹奏楽部の顧問をやるパターンですが、音楽の先生って、ピアノと声楽ぐらいしか分からないんですよ。だから、合唱部の顧問ならともかく、吹奏楽部の顧問になると「???」ってなるそうです。案外、音大出の先生って、管楽器が苦手だったりするんですよ。また、自分自身が吹奏楽経験者であっても、自分の楽器しか知らなくて、例えばフルートの人の場合、金管とか打楽器については、よく知らない上に、指揮だってやったことがなくて、とっても苦労しているケースもよく見ます。

     と言うのも、学校の部活って、教職員が顧問をするのですが、先生は、授業のプロであっても、部活指導は素人のケースがほとんどですからね。部活に多くを求めてはいけません。

  7. su_zan より:

    ご苦労様でした。
    うちの中学の先生はトロンボーンでしたから中学時代はコンクール三昧でしたね。
    自由曲が邦人ばかりでして、当時、珍しかったのではないかしら。
    今の吹きやすい邦人とは違い、現代音楽と呼ばれる方でしたから。
    高校時代は受験勉強のフルートでした。ケーラー暗譜しました。
    エチュード、かなりやった時代です。
    部活って先生できまりますもんね。ある学校が全国に出ていましたが、先生が変わったらBの部で銅賞でびっくりしました。

    さてさて、昨日はアルタス調整会。
    担当がいい人でしたから良かったです。
    すとんさんもご存知のかただと思います。
    とりあえず、問題なし。
    帰りに歩いていたら、工藤重典さんに遭遇。
    なんかすごく嬉しかったです。お話しましたよ。

  8. ひょっとこ より:

    これくらい、初音ミク?!

  9. すとん より:

    su_zanさん

     そうなんですよ、部活って、顧問次第なんですよ。凄腕の顧問が担当すれば、全国制覇も夢ではなく、素人顧問が担当すれば、銅賞レギュラーになってしまいます。こう言ってはアレですが、部活を強くしたければ、子どもたちが努力するのではなく、管理職が頑張って、有能な教員を余所から引っこ抜いてくるしかないんですよ。まずは優秀な教員、それがあってこそ、子どもたちの頑張りが実を結ぶわけで、その順番を間違えちゃいけないんです。

     どの部活でも言える事かもしれませんが、吹奏楽は、とりわけ、それが顕著だと思います。

    >工藤重典さんに遭遇。

     おぉ、でも、うらやましくない(笑)。私は年に一度は工藤氏のコンサートに行く人だから。また、今年も彼のコンサートをどこかで聞くことになるはずですから、ちょっともうらやましくない。本当にうらやましくない。うらやましくないんだぞぉ~ったら、うらやましくないんだから(涙)。

  10. すとん より:

    ひょっとこさん

     ごめん、今回は分かりませんでした(涙)。

  11. ひょっとこ より:

    あまり深く考えてなかったけどあえて言うなら、
    >「これくらい、初見で吹けますよね?」
    に対して書いたわけだけど。

    譜面ってある意味再現プログラム用のデータなわけでしょ。
    譜面(データ)通りに難なく再現するボーカロイド(プログラム)の
    初音ミクに掛けてみたわけで…
    人の気持が入ることで何かの味(作用)があるわけで。
    全く譜面通りにやるのだったら、
    別に人じゃないほうがいいのかもしれないっていうアイロニー。

  12. すとん より:

    ひょっとこさん

     いや~、ごめんなさい。せっかくのコメントに解説させちゃって…。ほんと、解説つけたら、オシャレな気分も吹っ飛んで、台無しだよね。いや、ほんと、ゴメンゴメン。

     初音ミクも、丁寧にパラメーターのコントロールをすると、それなりに聞けますが、そういうのを抜きにして、単純に設定すると、ほんと、味気ない。この味気なさはどこかで聞いたことあるなあ…と思ったら、これ(吹奏楽部とは限らないけれど)子どもの演奏に感じが似ているなあと思いました。もっとも、子どもはミスするし、テンポキープ出来ないけれど、ミクちゃんはそこはちゃんとしているので、子どもよりもきちんとした演奏をしているんだけれどね。

    >人の気持が入ることで何かの味(作用)があるわけで。

     そうですね…。いくら下手くそでも、オジサンの演奏には人生の重みって奴がありますからね。伊達に苦労してきたわけじゃないんだよね。昭和の人間、ナメンナヨ~って言いたくなる時あります。

     でも、まずは音楽の味付けよりも先に、楽譜通りに演奏できる事を優先しないと、負け犬の遠吠えに聞こえるから、オジサンと言えども、腕を磨かないとダメだな。

  13. su_zan より:

    >うらやましくないんだぞぉ~ったら、うらやましくないんだから(涙)。

    ごめんなさい。そんなつもりではなかったのよ。
    だって道歩いてたらおられたんだもん。びっくりでしょ?
    関東だったらあるはなしだけど、関西だとねえ。
    アルタスの調整会、工藤さん、フルートな日でした。

    >吹奏楽は、とりわけ、それが顕著だと思います。
    昔は全国行きたかったけど、全国行くバンドがうまいかというと違うような気がします。
    音楽が稀薄な感じを受けますよ。最近のコンクール、同じ音がします。

  14. すとん より:

    su_zanさん

    >関東だったらあるはなしだけど、関西だとねえ。

     関東でも、湘南だと無い話ですって(笑)。関東と言っても東京、それも上野とか銀座とか新宿あたりなら、ある話かもしれませんが、いくら有名人だから言って、そうそう見かけるモンじゃないですって(爆)。

    >全国行くバンドがうまいかというと違うような気がします。

     私は、やっぱり上手いと思いますし、その裏で流された汗や涙を考えると、関係者の方々にはアタマが下がります。ただ“上手い演奏”と“感動的な演奏”は違うと思います。いくら上手でも、魂に響かない演奏ってのはあるわけだし、勝つ事を目指した音楽は、往々につまらないものです。

    >最近のコンクール、同じ音がします。

     勝てる演奏って、パターンが決まっているからでしょうね。…ってか、演奏者の顔が見えるような演奏をしていたら、負けちゃうからだと思いますよ。

     コンクールはコンクールであって、コンサートとは違うものなんだと、最近は思うようにしています。コンサートに求めるような事をコンクールで求めちゃいけないんだって思うし、コンクール向けの音楽とコンサート向けの音楽は、全然別モノなんだと思うようにもなりました。

  15. su_zan より:

    >コンクールはコンクールであって
    そうですよねえ。
    ちなみに神戸国際がはじまります。土曜日にいってまいりますよ。
    一次予選だったか?500円なんですって。電車代の方が高いわ。汗

  16. すとん より:

    su_zanさん

     文句言わないの(笑)。500円なんて、いいじゃないの。

     『神戸国際』って『神戸国際フルートコンクール』の事でしょ? 国際コンクールを1日500円で見れるなんて、幸せですよ。半端なく上手な演奏をたっぷり聞けるなんて、なかなかのもんですよ。でも、あんまり上手すぎて、退屈になっちゃうかもね。

     私も行けるものなら行きたいけれど、さすがに遠すぎる(笑)。

  17. su_zan より:

    >さすがに遠すぎる(笑)。
    わたしにとっとの関東がそうなんです。
    バスもつらいなあって。
    Y楽器いきたいなあ。

    神戸国際フルートコンクール、実は生ははじめて。
    一次だから無伴奏みたいね。勉強してきます。

  18. すとん より:

    su_zanさん

    >バスもつらいなあって。

     バスって深夜バスですか? 私は『水曜どうでしょう』を見て以来、深夜バスに乗りたくないなあ…って思うようになりました。遠距離移動なら、少々高くなっても、電車や飛行機で行きたいです。いやあ、テレビの影響って大きいね。

     コンクール、楽しんできてください。

タイトルとURLをコピーしました