私が住んでいる湘南地方は、土地柄、サーフィン関係者がウヨウヨしている地域でございまして、日頃から、サーフィン関係者によるイベントなども、多々開催されております。そこで、先日、プロサーファー氏によるワークショップって奴を受講してまいりました。お題は「正しい姿勢」。姿勢と言っても、サーフィンですから“立ち姿”の話です。なにしろ、サーフィンってスポーツは、要は“板の上に上手に立つスポーツ”なわけで、正しく立てないと、上手な波乗りは出来ないってわけで、まずは立ち方って奴を見直してみましょうよ、という感じのワークショップだったわけです。
ちなみに、正しい立ち方とは、アウターマッスルではなく、インナーマッスルを正しく使った、どんな動きにも対応できる、楽な立ち姿勢の事なんだそうです。
都会人は、普段は運動らしい運動もせず、たまに動いても、それはスポーツだったりするのです。スポーツで使う筋肉は、主にアウターマッスルと呼ばれる、私たちのカラダの外側に付いていて、外部に働きかける時に使う筋肉であって、いわゆるパワーを生み出す筋肉たちです。ボディービルで鍛えるのが、このアウターマッスルで、これを鍛えると、筋肉ムキムキになるわけです。
一方、筋肉には、インナーマッスルと呼ばれる筋肉があります。こちらは、私たちのカラダの内側で働く筋肉で、私たちのカラダを支えるために使われる筋肉だそうです。つまり、立ったり、座ったり、息したり、寝ころんだり、と言った基本動作をするために使われる筋肉であって、およそパワーとは無縁な、日頃はその存在を意識すらしない筋肉たちの事です。
このアウターマッスルとインナーマッスルの一番の違いは、使うと疲れるのがアウターマッスルであって、使っているという自覚のないのがインナーマッスルなんだそうです。
さて、正しく立つとは、カラダの軸を真っ直ぐにして、楽に立つ事なんだそうです。
しかし、いくら“カラダの軸を真っ直ぐに”と言っても、これをいわゆる“気をつけ”の姿勢でやってしまうと、それはマチガイなんだそうです。いわゆる“気をつけ”はアウターマッスルを緊張させて、真っ直ぐに立っている姿であって、あの姿勢では疲れてしまう…というわけです。だって、アウターマッスルは、使えば使うほど、疲れてしまう筋肉だからです。
では、楽に立つにはどうするか言うと…なるべくアウターマッスルは使わずに、インナーマッスルを使って立つわけです。
インナーマッスルを使って、楽に立ってみると、その立ち姿は“気をつけ”の姿勢とはだいぶ違うことに気づきます。
…ヒザをゆるめ、腰を(へっぴり腰気味に)後ろに出して、腹を引っ込めて、みぞおちのあたりがやや前に出るような感じで、しかし肩は軽く後ろに引いて、頭はその上に自然と乗せる…という姿勢であって、これって、さっきまでヨツバイで歩いていたサルが、スクっと立ち上がった姿…そう、まるでサルの立ち姿のようです(笑)。
こんなサルっぽい感じで、ポカーンって感じで立つと、アウターマッスルの力が程良く抜けて、インナーマッスルを使って、バランス良く立っている感じになります。これが楽な立ち方で、無理のない立ち方なんです。で、実際、この姿勢って、確かに楽なんです。
ヨツバイから立ち上がったサルの姿…などと失礼な書き方をしてますが、でも、実際にやってみると、そんな感じになります。サルに限らず、動物って奴は、小細工をしないので、彼らの所作って、たいてい無駄のない合理的なモノが多いのですが、この立ち方だって、実はそんなモノなんだと思います。
ですから、インナーマッスルを使った、バランスの良い理想的な立ち方が、まるでサルの立ち姿のようになってしまうのも、ある意味、当然なのかもしれません。そして、このサル姿が、ある意味、人間を含めた哺乳類にとって、自然な二足歩行に適した立ち方なのかもしれません
あと、私が思うに、サル姿で立つと、背骨のS字カーブに無理のない姿勢で立つ事になるんじゃないかしら。
しかし、この無理の無い楽な立ち方ですが、受講生の皆さんには、なかなか難しかったようです。やはり脱力して立つってのは、難しいんですね。
でも、このサル姿で立っていると、実にバランスが良いのです。それが分かるのは、この姿勢で立っている時に、仙骨(腰骨)あたりを他人に軽く押されると、不思議と、スーって感じでカラダが前に出て、歩きだしてしまうって事です。それも“歩いている”と言うよりも“自然にカラダが前に進んでしまう”って感じになります。軽い力で働きかけるだけで、歩ける…どころでなく、これをやられて「誰か、止めて!」と叫んじゃった人がいるくらい、楽々と速歩で歩けてしまうようです。カラダの各部位のバランスが良いから、このような事になるんだと思います。
このサル姿でちゃんと立っているかどうかを確認するために、まるでシーソーのような感じになった、台座の上に載せた、不安定なサーフボードの上に立ってみました。ボードの上に立って、サーフボードを揺らされると、サル姿できちんと立てているかどうかが、よく分かります。
見かけ上はサル姿であっても、インナーマッスルではなく、アウターマッスルを使って立っている人は、ボードを揺らされると、思わずカラダに力が入り、バランスを崩して、あっと言う間にボードから落ちます。ところが、ちゃんとインナーマッスルを使って立っている人は、どんなに激しくボードが揺れても、まるでカラダがボードに貼りついたかのように感じられて、絶対に落ちることはありません。足元が激しく動いても、頭の空間的な位置は微動だにしません。なぜなら、サル姿で立っていると、実にカラダのあっちこっちのバランスがいいので、無理なくユレに対応できるからです。
私もサーフボードの上に立ってみました。もちろん、カラダはボードに貼り付いて、どんなにボードを揺らされても、落ちる事はありませんでした。
ボードを揺らされながら思った事は…このサル姿の立ち方、どこかでやった事があるなあ…と思いました。まず最初に思いついたのが“乗馬”。乗馬では、馬がどんなに激しく動いても、騎手はその動きに逆らわずに、馬をちゃんと乗りこなさなければいけないわけです。そんな騎手の動きと、このサル姿は共通点があるなあって思いました。
さらに思った事は、これってワルツやタンゴの立ち姿にも似ているんじゃないのって、思いました。どんなにカラダは激しく踊っても、頭の空間的な高さは変えないじゃないですか? あれと通じるものがあるなあって思いました。私と一緒に受講していた人は「相撲の動きに近いなあ」と感想を述べていました。確かに、腰を落として、頭の高さを変えずに一直線に動く姿など、通じるものがあるかもしれません。私はそれを聞いて、柔道の自然体も、どこか通じる部分があるかもしれないって思いました。陸上経験者の方は、古式走法に似ていると言ってました。
そして、このサル姿の立ち方、Y先生が推奨する声楽の立ち方にも、かなり近いです。声楽バージョンでは、おサルさんよりも、多少進化して(笑)、もう少し背筋が伸びますが、これはかなり近いです。
サーフィン、乗馬、社交ダンス、相撲、柔道、古式走法、声楽…これらの基本フォームに、サル姿、つまりインナーマッスルを使って、バランスよく立つ事が共通しています。これらに共通するのは、事あらば、瞬時にカラダの筋肉(アウターマッスル)を動かさないといけないモノばかりです。瞬時にカラダを動かすために、基本フォームは脱力しているのです。
つまり、脱力とは、本当に力が抜けているのではなく『インターマッスルでバランスの良いフォームを作り、いつでもアウターマッスルを動かして、必要な動作をするための準備ができている事』を言うのだと理解しました。これはダンスでも声楽でも、おそらくフルートでも同じ事です。
私も、ちょっと、サルを意識して、歌ってみたり、踊ってみたりしようかな? 『声楽における理想的な立ち方とは…』などと悩みながら歌うよりも『サルになって歌おう』ってイメージした方が簡単だし(笑)。それにサル姿の方がお腹もたくさん後ろに引けるし、腹筋もたやすくグルンと引っ張れる。問題があるとすると、サル姿だと、美しくない事と、全般的に重力に負け気味な事があるかな。そのために、多少なりとも、カラダを上に引っ張り上げる意識が必要かもしれません。
ちなみに、腰痛って、脱力せずに、カラダのバランスが悪いまま行動した結果、なってしまう怪我なんだそうです。怪我をしたくなければ、脱力をして、バランス良くカラダを動かせばいいわけで…ならば、私もバランスに気をつけて、ぎっくり腰にならないように気をつけないとね。
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コメント
インナーマッスル、色々なところで大事ですよね♪
自分、三十路で始めたスノボも15年@2級になりますが、立ち方はやはり脱力・猿系で、外力に対して素早く対応するためです。
見かけからして、サーフィンに似ていますからね。
普段では、電車内でやはり脱力(変な人に見られない程度でw)して、バランス感覚を養うようにしています。最近はフラつきまくりで…(涙)
ぼーさん
そうですね、スノボやスキーなども基本、脱力サル系の立ち方ですよ。ああ、やっぱり汎用性が高いなあ、サル姿。私も、頑張って、自然体でサル姿が取れるようにに、意識付けをしないと…。でも、電車通勤だと、サル姿の練習が出来ていいなあ(笑)。私は徒歩通勤だから、その練習できません。