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“歌う”ということについて、考えてみた

 声楽のレッスンに行ってきました…が、特に何もなかった(笑)です。

 と言うのも、レッスンの時間を目一杯使って、先生と打ち合わせをしちゃったからです。

 何の打ち合わせかをしたのかと言うと、間近に迫っているガラコンサートの打ち合わせとか、12月の歌劇団の自主公演の打ち合わせとか、まあ、その手の細々とした打ち合わせを色々と…。ガラコンサートも歌劇団の公演も、主催は歌劇団だし、私、その歌劇団の団長さんですから、先生(指導者)と私(団長)の間で、色々と事務的な話が積もり積もっていたりするわけです。

 でも、なんにせよ、かんにせよ、さすがにレッスンなのに、何もしなかったと言うのは良くないね。次回からは、お互い気をつけて、せめて発声練習だけでもやるようにしましょう(笑)。

 と言うわけで、いつものレッスン記録は…まさか、打ち合わせ内容をブログにも書く訳にはいかないので、それは今回はパスと言うことで、代わりに、声楽関係(いや、むしろフルート関係かな?)のエッセイを書きます。
 
 
 ある時、キング先生から「すとんさんの伴奏は、ピアニストに余裕がないと厳しいねえ…」と言われたことがあります。つまり、ざっくり言っちゃうと、私は“伴奏が難しいタイプの歌手”って事らしいです。ま、“難しい”と言っても、言葉どおりの“難しさ”ではなく“厄介だ/面倒だ”ぐらいの意味でしょう。でも、楽に伴奏合わせができる歌手ではないとは、自覚はしています。

 と言うのも、私の歌は、思いっきり揺れるからです。

 もちろん、勉強し始めたばかりの、音取り段階の曲では、さほど揺れませんよ。勉強を進めて行って、ドンドン仕上がってくると、曲が揺れ始めます。

 曲が揺れる…とは、曲のテンポが曲想に応じてダイナミックに変化していく事です。つまり、私は曲の最初から最後までを、インテンポでは歌わない人…なんです。ある部分はゆっくりと歌い、ある部分はバンバン歌いとばし、少しずつテンポアップして歌っていく箇所もあれば、徐々にスローダウンしていく箇所もあります。そういう、変化に富んだ歌い方をするのが、私なんです。

 さらに言えば、それらテンポの揺れは、完成度が上がるにつれて、一定の方向に収まってくるとは言うものの、具体的なテンポ感覚は最後まで数量的な決定はせず、ある程度仕上がったとしても、その日その時の気分で、テンポの揺れ具合が変わり続ける…そんな歌い方をするので、私の歌を伴奏する伴奏者さんは、いつも私の歌をよく聞いて、私のテンポチェンジについて来ないといけないわけで『楽譜どおり間違えずにピアノを弾く事』に一生懸命なピアニストさんだと、私の歌の伴奏は、かなり厳しいってわけです。

 だいたい、ピアノ合わせをしても、本番ではピアノ合わせとは違った事を(もちろんある程度の範囲内ですが)平気でやっちゃう、かなり自分本位で、気分屋で、ワガママな歌手なんですよ、私って。で、こんなワガママ勝手な奴の伴奏は、難しいって事なんです。
 
 
 ま、たしかに、私は歌になると、結構ワガママですが、本来、歌手って、ワガママでいいんじゃないかって思ってます。もちろん、ある程度の想定の範囲内でのワガママという、大枠の約束を守るという前提があった上での、ワガママなんですが…ね。

 だって、歌手ってソリストでしょ? 自分の音楽は自分で作って、自分で歌って表現していかないとといけないわけでしょ? 自分の音楽ならば、そこには、どうしても“自分”という奴が入り込んでくるわけです。その“自分”をきちんと開放して、歌の中で表現していけば、他人から見ればワガママに見える事もあるわけです。

 激しい音楽は激しく、優しい音楽は優しく、愛の歌には愛を込め、怒りの歌には激情に身を任せて、歌いたいのです。
 
 
 話は少し変わりますが、例えば、ここに、4/4拍子で四分音符が四つ並んでいるフレーズがあったとします。それをどう歌うか? 楽典どおりに行けば、それぞれの四分音符はみな同じ長さですから、それぞれの音符の長さを、1:1:1:1の長さで歌うのが正解です。でも、それを、1.005:0.998:1.003:0.994の長さで歌ったら…変ですか?

 つまり、本来は、みな同じ長さのはずの四分音符を(色々な理由はあるにせよ)少しずつその長さを変えて歌っては、変ですか?って事です。

 私の歌って、つまりそういう事で、本来の音符の長さを、感情を付け加える事で、少しずつ変えて歌っているので、全体としてテンポが揺れているように感じるのです。いや、実際に揺れているのです。

 もちろん、私の場合は、例に出したような“微妙な長さの変化”ではなく、結構大胆に音符の長さを恣意的に変えて歌ってます。なので、しばしば「やりすぎ」「下品」って言われるし、自分でも「あざといなあ~」「くさいなあ~」と思う時、あります(汗)。

 まあ、アッチェレランドやルバートやリタルダンドが、あっちこっちに書かれまくっている譜面で歌っているような感じ、と考えていただけるとイメージしやすいでしょう。

 確かに私の場合、やりすぎのキライはあるけれど、でも、それが(稚拙な歌い方だろうけれど)歌ってモンじゃないのかな? って思ってます。

 このテンポを自在に操るという操作は…本来的には指揮者の仕事だと思います。でも、私は歌手で、ソリストだから、自分自身を指揮して、テンポをコントロールして、歌うわけです。

 歌詞に魂を入れて、自分を載せて、歌っていけば、大切な言葉は力を入れてゆっくりと歌いたいし、そうでもない部分は軽くスウ~っと流して歌いたくなります。うれしい歌詞なら、多少メロディもハネてしまうし、気持ちが高ぶれば、興奮気味にテンポも上がって歌いたくなります。

 歌詞を読み取り、そこに自分の感情を反映させて歌えば、テンポが揺れるのが、自然、じゃないですか?

 私はそれが“歌う”って事なんじゃないかなって思ってます。 …違っているかな?
 
 
 今回、私はテンポについて書いてみましたが、おそらく、音程に関しても、同様な事が言えるんじゃないかなって思います。気分が上向きなら音程も上向き、気分がダウンしているなら音程も下向きに取っていくんだろうと思いますが…私は音程コントロールがそんなに上手じゃない(ってか、むしろ下手)なので、意図的に音程をいじる事はしていません。もっと上手くなれば、音程も意図的に操作しながら歌っていくんじゃないかなって思ってます。

 またデュナーミクについても同様で、強い意志を表現するなら音量は大きくなっていきますし、気持ちが内向きならば、音量は小さめにならざるをえないでしょう。

 もっともっと、色々な細かいコントロールを巧みに行える歌手、歌を上手に歌える歌手になりたいです。でも最近は、自分の能力の限界を感じる事も多くて、すべてを投げ捨ててしまいたくなる事もたまにあります。でも、まだ、もう少し、頑張るつもりです。
 
 
 ええと、歌の場合は、曲に歌詞があるから感情を載せて歌いやすいですが、フルート曲などの器楽曲の場合は、当然歌詞がないわけで、歌の曲と比べて、歌いやすいとは言えないかなって思います。

 でも、その曲の元曲が歌の曲ならば、オリジナルに逆上って歌詞を調べてみれば、どんな風に感情を入れていけばいいのかが、分かると思います。また、純粋器楽曲の場合でも、作曲家は、歌詞の代わりに、自分の感情や意図を、曲のメロディやサウンドに込めて作曲しているものと、私は信じています。だから、歌詞を読み解くほど簡単ではないかもしれないけれど、たとえ器楽曲でも、その曲のメロディを読み取り、そこにどんな感情が込められているかを察して、その上で、演奏者である自分の感情を反映させて演奏すれば、器楽曲でも歌って演奏する事ができる…んじゃないかなって思います。

 要は、楽しい曲は楽しく、悲しい曲は悲しく吹けば、自然とフルートで歌っている事になるんじゃないかな?

 私は、無伴奏曲であるミニヨン・エチュードを練習している時、それぞれの曲の、それぞれの部分に、漠然とした色のイメージを感じてます。で、そのイメージに少しでも近づけようと思って吹いてます。赤いイメージの部分は、赤いイメージの音で赤くなるような吹き方を心掛けます。青いイメージなら青く、ピンクのイメージの時はピンクにね。時々、私が練習してきた曲のイメージが間違っていて、先生に訂正される事もあります(まだまだ未熟ですから…)。でも、たとえ私のイメージが間違っていたとしても、曲を単なる音符の羅列として演奏する事は避け、音のつながりで私の感じているイメージを表現しようと思って、フルート吹いてます。

 私の問題は、そのイメージを具体化するためのテクニックが、極端に足りないって事なんです。ああ、フルート、上手くなりたい…。

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コメント

  1. 椎茸 より:

    揺れる歌いかたが自然にできるのがすてきで、うらやましいです。
    わたしは真逆で、淡々と歌ってしまい、それが発声上も表現上も課題を生んでます…
    ソリスト魂を育てたいと思います。

  2. すとん より:

    椎茸さん

     たぶん、歌が揺れる理由の一つとして、私は言葉をしゃべろうとしている…んじゃないかなって、自己分析をしています。言葉をしゃべりすぎると、音楽としてのフレーズは途切れ途切れになりますが、音楽のフレーズを優先すると、言葉が上滑りになるような気がします。

     そのちょうど良い妥協点を見つけるのがポイントではないかな、なんて思ってます。

    >ソリスト魂を育てたいと思います。

     私もまだまだです。もっと図太いソリスト魂が欲しいです、お互い頑張っていきましょう。

  3. operazanokaijinnokaijino より:

    すとん様のような、高尚なお話ではありませんが、
    某、高級カラオケ店に行った時、
    通常の機械カラオケタイムと、ピアノの生伴奏タイムが
    ありまして、ピアノの生伴奏タイムの時、同僚から、
    「歌えよ、歌いなよ。」と言われ、
    「あ、いや、生伴奏はちょっと、、、
     機械カラオケタイムになったら歌うから。」と答えたら、
    「何言ってんだ?おんなじだよ。」と言われ、
    言われた私は、すっごくビックリしました。
    え?機械のカラオケと、ピアノの生伴奏、って、
    全然違うじゃん。そんなこともわからないの?
    などと思う私が間違っているのかしら?
    でも、たかが、カラオケのお店とはいえ、
    機械のカラオケ伴奏で、歌うこっちは勝手気ままなのと、
    ピアニストさんのアルバイトとは言え、生ピアノの伴奏だと、
    それなりに、気を使う、大げさにいえば、お互いにあわせるのとは、
    全然違うのに、と思いつつ、、、、、
    なんちゃって。
    すみません、高尚でないお話で。
    ( ̄▽ ̄;)
    おしまい

  4. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

    >機械カラオケタイムになったら歌うから。」と答えたら、

     あ、私なら逆。むしろ、ピアノの生伴奏の時に歌っちゃう。だって、生ピの伴奏で歌うチャンスなんて、そんなにたくさん無いでしょ? ヒイロ先生がまだこっちにいた頃、時々、彼のピアノで遊んでもらった事がありましたが、やっぱ生ピは気持ちいいです。

     ってか…ピアノの生伴奏タイムのあるカラオケ店なんて行った事ない。ってか、そんな店、たぶん湘南には無い(笑)。あったら、通っちゃうかもしれません(爆)。

     そうそう、機械と生伴奏じゃあ、全然違う。生伴奏なら、何をやっても、ついてきてくれる安心感があるので、思いっきりハメを外して歌えます。と同時に、おっしゃるとおり、ピアニストさんに気を使う(汗)のも確か。私もこれで遠慮深い人間なんです(大笑)。でも、やっぱり、生伴奏の魅力には勝てない…かな。

  5. YOSHIE より:

    ども…です。私はニューエイジとかアセンションとか…一歩退いてしまうのですが…最近…C=528Hzに興味をもっていて…(A=440HzだとC=523.3Hzです)

    以下のような感じなんですが…
    ★『ジョン・レノンを殺した凶気の調律A=440Hz 人間をコントロールする「国際標準音」に隠された謀略』 (超知ライブラリー 73)レオナルド・ホロウィッツ著
    http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4198633436/ref=mem_taf_books_d?qid=1337565407&sr=8-4&uid=NULLGWDOCOMO

    ★528Hzをいつも微かに鳴らすには http://blog.livedoor.jp/godchild_jp/archives/51810527.html

    ★528Hzのこと 2011.4.22http://ameblo.jp/velico/
    ★528Hz1時間連続http://www.youtube.com/watch?v=MxA_4CdYrlg&sns=em

    (携帯のURLなので飛べないかも…です…いつもすみません、汗)

    で…何が言いたいか?というと、結局鼻唄でもいいから(でも、すとんさんのブログ記事によるとハミングはとても大切のようですよね)
    『歌う』ことが大切みたいです。
    (C=528Hzは動画等の音源に合わせて自分でハモると良いみたい…)

    ちなみに厳密には C=528.1Hz A=444Hz だそうです。
    すとんさ、楽器はA=442Hzですか?(私は442です)

  6. YOSHIE より:

    字数的に貼れなかったので…

    オイゲン・キケロ
    『Sunny』
    http://www.youtube.com/watch?v=YDby2iGoT5g&sns=em

    揺れてる?なんだかゴキゲンな感じでいいです(バッハも…)
    キケロさんって知らなかったんですけど、アマゾンで検索していたら勧められちゃいました(笑)

  7. すとん より:

    YOSHIEさん

     C=528Hzの話、面白かったです。リンク先は、アマゾン以外は普通のサイトに跳びました。アマゾンだけは携帯サイトだったので、改めてググっちゃいました(笑)。アマゾンサイトにあった解説を読んで、だいたいの状況が飲み込めました。いわゆる、オカルト科学に属する事でしょうが、オカルトにも一部の真実があると信じている私なので「へえ~、そうなんだあ~」って思いました。

     まあ、A=440であろうが、A=444(C=528になるわけですね)であろうと、それを判別できるほど高性能の耳を持ち合わせていない私には、どっちでもいいような気がします(ちょっと、乱暴?)

    >すとんさん、楽器はA=442Hzですか?(私は442です)

     これが難しいですねえ…。フルートとヴァイオリンは442ですが、ギターとエレピは440です。歌は音叉もエレピも440ですから、自宅では440です。だいたい、クラシック系の世界ではA=442Hzですが、ポピュラー系の世界ではA=440Hzだと思います。

     確か、ウィーンフィル(や、カラヤン時代のベルリンフィル)は、A=444Hzなんだよね。その理由って、もしかして、これ??

     私のヴァイオリンをA=444Hzで調律してみようかな? そうすると、毎日の音階練習の時にC=528Hzの音が聞けるわけで(笑)。合奏をするなら、そんな勝手な事できないけれど、どうせ自宅で一人で練習しているだけだし、A=444Hzにして困る人もいないし。

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