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フルートのコンサートに行ってきました

 この記事の話は、ちょっと前の話になります。

 私はH先生には不義理ばかりをしてきました。

 「夏合宿には来ませんか」「仕事が忙しいのでいけません」
 「フルートオーケストラに参加して下さいよ」「ちょっと遠慮しておきます」
 「今度ウチに来てフルートの調整しませんか?」「その日も仕事が忙しくて…」

 こんな事ばかりで、全く申し訳なく思ってました。だから「今度、ボクの弟子がドイツ留学から帰って来てコンサートを開くんだけれど、君、聞きに来ませんか?」と言われたら、そりゃあ「行きます」って即答するしかないよね。

 会場は某市民会館でした。ちょっと古いけれど、いい感じのホールです。

 最寄り駅は、やけに空が広く、周りの建物も平屋ばかりで、遠くにあるはずの大学病院のビルがまるで摩天楼のようにそびえ立つ…そんなところでした。どこも道が広くてスカスカで、どこの店も駐車場が広くて、自家用車前提の街づくりなので、徒歩人間の私には、珍しい光景ばかりでした。

 昼食を食べて近所を散歩してから会場に入りました。入り口で、地元の合唱団の人でしょうか? 「今度第九を歌うので聞きに来てください」と言ってチラシを配っていました。全員に配っているわけでもなく、当然、私なんかはスルーされたのですが、妻にはしっかりと手渡されていました。あれは一体、どういった基準でチラシを配布していたのかな? 音楽に興味のありそうな人だけに配ったとか? 第九を歌いそうな人(第九を歌う人って、余所の第九を結構聞きに行くんですね)だけに配ったとか? つまり、私は、音楽好きでなければ、第九好きでもないと、思われたのかな? まあ、いいけど。妻はチラシを見ながら「ここの第九を聞きに来る?」と私に尋ねたので「行かない」って即答しちゃいました。いや、別に他意はないです。

 ホールの入り口でH先生に挨拶をしてホールに入ると、まもなく演奏が始まりました。演奏会は、姉様のソロコンサートではなく、最初がピアノソロ、次がピアノ伴奏による姉様のソロ。休憩が入って弦楽四重奏があって、最後は姉様と弦楽合奏の演奏。最後が演奏者全員によるアンコールって構成になってました。

 最初のピアノソロは、シューマン作曲の「ウィーンの謝肉祭の道化」という曲。ピアノ曲に疎い私には馴染みのない曲でした。曲はよく知らなくても、クラシック音楽がいいなあと思うのは、音が楽しめる事。ピアニストさんの音が、いわゆる“ポロン”ではなく“コロン”って感じで「ピアノって打楽器なんだよぉ~」って主張されているような音だったので、音を聞いているだけで楽しめました。なんか、鐘っぽい感じで、グーッでしたよ。しかし、シューマンの音楽の美しさってのは、回りくどい美しさだね(笑)。ちなみに、このピアニストさん、H先生のお弟子さん的な立場の方なんだそうです。

 次は姉様が主役の、タクタキシヴィリ作曲「フルートとピアノのためのソナタ」という曲でした。タクタキシヴィリって誰? ですよね~。20世紀のグルジアの作曲家の方で、いわゆる現代曲って奴です。なんかもう『こんなに難しい曲を吹けるフルーティストはいるのかな?』って、あの世で作曲家がほくそ笑んでいるような、なんとも技巧的な曲でした。でも基本のメロディは民謡調なので、まったく楽しめないわけではありませんでした。いやあ、色々なフルートの技法を聞くことができました。

 姉様の音色は、フルートにしては、ちょっと変わった音色で、私のファースト・インプレッションでは“ひばりの鳴き声”です。和風な音色って感じでしょうか? 私が好きな系統の音色でしたが、妻は「これ、本当にフルートで吹いているの?」と懐疑的でした(目の前で実際に吹いていんだけど…)。どこのメーカーの楽器を使っているのでしょうか? ちょっと興味津々な私です。ああ、尋ねたいなあ…。

 休憩後の弦楽合奏は、ロッシーニの「弦楽ソナタ第四番」を演奏してくれました。コントラバスがとってもいい感じでした。普段は弦楽合奏を聞いても、コントラバスなんて耳に入らないのに、この団体のコントラバスさんは、なかなか魅惑な演奏をする人で、私はメロディそっちのけでコンバスばかり聞いていました。ロッシーニさん、ごめんね(笑)。

 この弦楽合奏団とゲストのヴィオラ奏者さんと姉様が加わって演奏したのが、ワルキエ作曲の「フルート、二つのヴァイオリン、ビオラ、チェロのための五重奏」という曲。…ワルキエって誰?

 ワルキエって人は、19世紀前半のフランスで活躍したフルート奏者兼作曲家の方で、ロッシーニのお弟子さんの一人だったそうです。フルート曲だけで100曲以上の作品があるとか(知ってる?)。一応、ロマン派の曲なので、知らない曲でしたが、それなりに楽しめました。コントラバスさんもよかったのですが、ヴィオラさんも魅力的な演奏をする方で、フルート、コントラバス、ヴィオラの三つの音を中心に聞きました。それにしても、フルートと弦楽合奏ってのは、合うねえ…。弦の上にフルートの音を乗せると、まるでチーズケーキの上にマシュマロを乗せた様な感じです(誰? 悪趣味って言ったのは:笑)。

 最後のアンコールは全員参加で、レハールの「メリー・ウィドウ・ワルツ」でした。いい感じの演奏でしたが、最初のテーマだけを演奏してお終い。「え? その続きは!」と思ってしまうのは、悲しきペラキチのサガって奴ですね。

 今回のコンサートは、おそらく動員をかけられなければ行かないタイプのコンサートだったと思います。だって、ウチからは遠くだし、知らない曲ばかりだもん。タクタキシヴィリとかワルキエなんて作曲家の作品には興味無いし…。しかし、フルートの悲しいところは、そこなんですよ。だってね、ピアノはシューマン、弦楽合奏はロッシーニだよ。いかにフルートという楽器が、当時の一流の作曲家たち(とりわけロマン派の作曲家たち)から、軽くシカトされていたのかって事でしょう。なんか悲しいねえ。シューマンとかブラームスあたりがフルートのオリジナル曲を書いていてくれたら、フルートの世界もグッと違っていただろうなあって思います。

 コンサートの終わりに、ガラコンサート会場の候補に上がっている音楽ホールの下見に行きました。楽屋周りに若干の問題がありますが、それ以外は色々な意味でOKです。歌いやすそうだし、門下の皆さんたちのお住まいの場所から、交通の便もそんなに悪くないし。要検討物件ですわ(笑)。

コメント

  1. プリロゼ より:

    久々に見たらテンプレートが秋になってる~っ!!

    うっ、うーん・・・ 演目だけ見たらワタクシも行かない演奏会かも[E:coldsweats01]
    本当は選り好みせずにいろいろ聴いた方がいいんだろうけれど、
    睡眠学習になっちゃうから(笑)

    でも、なまっていいわよねぇ[E:heart01]

    そうそう、ワルキエさんの楽譜、見たことあるわぁ。
    なんだか音符がやたらと多かったような気がするの・・・。
    うん、チョイスしない作曲家だわ[E:gawk]

  2. すとん より:

    プリロゼさん

     でもね、フルートの演奏会って、どれもこれも演目だけ見たらパスしたくなるようなモノばかりだよ。フルートには誰もが知っている有名曲って、あんまりないからね。だから「知らない曲だ、聞きに行こう!」くらいの、ノリノリな気持ちが必要かも。

     とは言え、睡眠学習は避けたいですね…。せっかく、コンサートに行っても、寝ている間にコンサートが終わっちゃうと…悲しいですからね。

     何でもそうかもしれないけれど、フルートもナマとCDでは全然違うね。音の輝きが全然違う。たとえ演目が???でも、たまにはきちんと上手な人のナマを味わう事が、フルート耳を作るためにも必要なんだろうなあと思います。

  3. おざっち より:

    フルートのコンサートの演目というのは、たいがい知らない曲が多いですね。有名な曲もありありますが、(フルーティストに限らず)プロの演奏家としてはそういうメジャーな曲はあえて避けて、ちょっとマイナーな曲をやる方が、やりがいがあるのでしょうか。なんとなくその心理というのは分かるような気もします。

    モーツァルトが言っているように、当時のフルートというのは「我慢がならない楽器」だったようですね。音程が悪かったからでしょうか。ベーム式になって、格段に進化したフルートですが、現在のフルートの演奏を聞いたら、モーツァルトもバッハも、もっとたくさんのフルート曲を書いてくれたんじゃないかと残念でなりません。

    ゴールウェイの大阪マスタークラスは、すでにチケットが完売でした(涙)。

  4. すとん より:

    おざっちさん

    >現在のフルートの演奏を聞いたら、モーツァルトもバッハも、もっとたくさんのフルート曲を書いてくれたんじゃないかと残念でなりません。

     少なくとも、モーツァルトはフルート嫌いにならなかったでしょうね。もっとも、ワーグナーはベーム式フルートが大嫌いだったそうですが…。

     それでも、バッハやモーツァルトは数が少ないとは言え、フルートの曲を書いてくれているからいいんですよ。問題は、クラシックの王道であるロマン派の連中です。この連中、フルート曲なんて、ロクに書いてないじゃないですか!

     例えば、この時代、素晴らしいヴァイオリン協奏曲が山のようにありますが、それらを書き上げた作曲家の一人でも二人でも、ヴァイオリンでなくフルートの協奏曲を書いてくれたら! パガニーニやクライスラーがヴァイオリンでなくフルート奏者だったら! いやいや、オーケストラの弦セクションが、フルートアンサンブルだったら!

     結局、クラシック音楽はヴァイオリンを中心に回っているって事なんです。フルートはある意味、ヴァイオリンのライバルになれなかったわけで…、まあそれは残念だけれど、歴史は変えられないので、受け入れるしかないです。

     それでも、現代音楽やポピュラー音楽でフルートが大活躍ならいいんですが、そういうわけでもなく、色々とイマイチなんですが、私はそれでもフルートが好きですよ。

    >ゴールウェイの大阪マスタークラスは、すでにチケットが完売でした(涙)。

     あら~、東京はスカスカだったのに、残念ですね。

  5. エーダ より:

    うーん・・・タクタキシヴィリとかワルキエなんて作曲家は私も初耳です。
    ぜんぜん聞いたことない名前だし、もちろん曲も知りません。
    学校の音楽史で習う範囲くらいしか知識がないから、教科書に出て来なければ
    そりゃあ知らないのも当たり前なんですけれどね。。。

    ヴィオラ、コントラバス、ピアノ、フルートといった楽器は、好きな音色ですねえ。
    私も聞いてみたかったなあ・・・。

    「フルートオーケストラに参加して下さい」とか言われてみたいなあ。
    今の私のレベルじゃあ、あと10年はかかりそうだけど!

  6. すとん より:

    エーダさん

    >今の私のレベルじゃあ、あと10年はかかりそうだけど!

     10年どころか、今すぐOKだよ(笑)。ただ、それでエーダさん自身が満足できるかどうかは疑問だけれどね。

     フルートオーケストラに限らず、吹奏楽であっても、合唱であっても、いわゆる“合奏もの”と言うのは、各パートが出来上がっていれば良いわけで、個々の奏者が出来上がっているかどうかは、実は問題ではありません。もちろん、理想は“すべての奏者が完璧な演奏をする事”なんだけれど、合奏奏者はソリストではありませんから、どんな団体でも、パート全体が仕上がっていれば、個々の奏者がどんな演奏をしていても無問題なんですよ[ま、個々の奏者に対して、完璧である事を、一応/建前として、求めますが…]。

     分かりやすく言うと「自分が自信を持って吹けるところだけ吹いてみる」「楽譜の黒いところは自主休憩」「とりあえず拍頭の音だけ吹いてみる」でもOKだし、そのくらいの力量の奏者の方がたくさん合奏にはいます。逆に言うと、そのくらいの力量でも楽しめるのが、合奏なんです。

     ただし、同じ合奏ものでも、オーケストラは違います。オーケストラは個々の奏者が完璧でないといけません。つまり、オーケストラの奏者はソリストと同様なレベルでないと勤まりません。でも、これは例外ね。

     だから、エーダさんに限らず、初級を卒業した程度の腕前があれば、合奏を楽しむ事は、とりあえずOKです。

     逆に言うと、合奏に参加できない人って、演奏技術がないとか、キャリアが少ないとかではなく、別の要因を抱えているために、合奏には参加できないのです。それは…

     「使っている楽器が極めて音痴」「使っている楽器がやたらと大音量/超美音」「チャレンジ精神が豊富で、自分には吹けないフレーズも頑張ってトライして、結局グダグダにしちゃう」「指揮が読めない/リズム感がダメ」「出たがり/でしゃばり/ソリスト指向な人」…なんか、書いてて胸が痛いです(涙)。

     ええと、まとめて言えば、合奏に参加できない人ってのは「フルートが下手」なのではなく「ハモリの邪魔」になる人です。

     だから、エーダさんは十分、フルートオーケストラに参加できます。ただし、それであなたは満足…できるかな?

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