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日本の合唱は今、危機に面している?

 震災から一カ月以上の月日が経過し、首都圏もひとまず計画停電が中断しております。

 私が見聞きする小さな範囲の話だけかもしれませんが、混声合唱団および男性合唱団の活動状況が、かなりマズイ状況に陥っている所が多々ある、という話をチラホラうかがっております。おそらくは、関東周辺は、みな同じような状況なのではないかと推測します。

 何がどうマズイのかと言うと…練習場所が確保できないため、やむをえず活動中止状態になっている所が少なからずあるという話なのです。

 合唱団と言うのは、練習場所を選ぶ団体です。まずは、それなりの音量が出ますので、部屋に防音設備が必要です。伴奏のためのピアノも必要です。さらに人が大勢集まりますので、ある程度の広さが必要ですし、窓を閉め切るため、冷暖房は必須です。で、これらの設備が備わっている場所を安価に借り受けないといけないわけで、そうなると、公共の音楽施設で練習をする事になります。

 確かに震災直後は、直接被災していないとは言え、建物の安全点検が必要だったり、停電が続き、停電時間帯の施設の貸し出しが中止されていたり、節電のために夜間の施設使用が取りやめになったりと、色々あったようです。そのため、多くの合唱団が活動できなくなってしまいました。

 震災から一カ月がたちました。一部の施設では、夜間の音楽施設の貸し出しを再開しはじめた所もあるようですが、依然として、節電のため、夜間貸し出しを中止したままの施設もあります。また救援物資の集配所として、または、震災ボランティア活動のために、大部屋(合唱団体が使う音楽施設は大抵大部屋です)を使用し、音楽団体への貸し出しができない地区もあるようです。さらには、被災者の受入れをしている地域では、大部屋が被災者の避難所になってしまうケースもあり、当然、合唱団体への貸し出しができない状態になっているところも多々あるそうです。

 事情が事情ですから、やむをえない話です。しかし、このため、以前から定期的に使用していた施設が使えなくなり、練習場所ジプシーになってしまい、震災後一カ月たった今でも、練習場所が確保できなくて困っている団体があるという話です。

 我が歌劇団は小規模な音楽団体ですが、それでも人数的な規模なら、小さな合唱団程度あります(音量的には数倍あるだろうなあ…)。やはり、この一カ月間、練習場所では迷走しました。幸い、練習自体が月に一回ですから、毎週あるところと違って、余裕をもって対応できたのですが、それでも今回、やはり練習場所に関しては、二転三転して苦労しました(歌劇団の記事はただ今執筆中で、水曜か木曜にはアップします)。

 最初に確保していた練習場所(震災前に予約)は、夜間貸し出し中止措置のため、貸りる事ができなくなりました。

 その頃は、まだ夜間貸し出しをしてくれる他の施設もなかったために、時間を昼間にズラし(普段は夜活動しています)て、別の施設を予約したのですが、そこでも「一応お貸ししますが、当日、停電になってしまったら、たとえ昼間であっても、貸せません」という約束で確保。

 ところが調べてみたら、練習時間と計画停電の時間とぶつかる予定でした。それにやはり練習時間が普段とは違う時間になってしまうと、練習に参加しづらいメンバーも出てくるので、一度は練習会場として押さえたものの、やはり代案を用意する必要があるだろうという判断で、夜間の使用が可能で、万が一、停電になっても貸し出してくれる民間施設も合わせて予約して、しばらく様子を見る事にしました。

 やがて、夜間貸し出しを再開する公共施設が出始め、計画停電がしばらく無い事になったので、割と良く使用している施設に改めて夜間の時間帯に予約を入れて、そこで練習をした…と言葉で書くと、なんかよく分からなくなるくらいに、アレコレとアタフタしたものです。

 私たちのような団体ですから、こんな感じですから、もっと規模の大きなところは、そんなに簡単にはいかない事が、容易に想像できます。

 こんな風に苦労しているのは、フルタイムで働いてる人が多く所属している団体のようです。現役世代の男性は大抵フルタイムで働いてしますし、今の時代、会社勤めの女性だって大勢います。なので、混声/男声合唱団などの団体が練習場所に苦労しているようです。

 そこへ行くと、専業主婦およびパートタイマーで、比較的時間が自由に使える、お母さんコーラス団体では、その手の話はあまり聞きません。

 これはおそらく、お母さんコーラスの場合、元々、練習そのものが、ご主人が仕事に行っていたり、子どもたちが学校に行っている、昼間の時間帯だからでしょう。昼間の時間ならば、今も以前と変わらずに、公共の音楽施設は貸してもらえます。また、いつもの場所が震災関係で使用されていても、昼間なら、活動できる場所に余裕がありますから、比較的容易に新しい場所探しもできるようです。

 もちろん、個々のメンバー的には色々とあり、人数の集まりそのものは、震災後は芳しくないところもあるようですが、それでも多くのお母さんコーラス団体は、震災以前と変わらずに練習に励むことができるようです。

 その点は、フルタイムで働いている現役世代のメンバーが大勢いる混声/男声合唱団の場合、どうしても練習時間が仕事終了後の夜間の時間帯になりがちなので、練習場所を確保するのが、まだまだ難しいところがあるようです。公共の音楽施設を夜間の時間で借りるのが難しいため、練習回数を減らしたり、狭いところで無理やりに練習したり、ツテを頼って、お寺や教会、幼稚園などを臨時に借りて練習しているところもあるようです。皆さん、苦労しているようです。

 「合唱なんか、どうせ趣味なんだから、自粛しろ!」 そんな声が聞こえないわけじゃありません。

 今、日本の混声/男声合唱団って、おおげさな話でなく、その多くが衰退の道を歩んでいます。合唱人口の減少と高齢化がその原因なんですが、現在、タダでさえ元気のない、これらの団体に、長期間に渡って練習場所ジプシーを強いると、それが痛手となって、団体休止/廃止へとつながる危険があります。今の日本では自粛の風が吹き荒れていますが、そんな自粛など、するつもりがなくても、合唱の灯が消えてしまうかもしれません。

 合唱というのは、一人では練習すらできません。まあ、音取り程度はできたとしても、やはり人数が揃って、声を合わせて、ハーモニーを作っていかないと、どうにもならないと言った部分があります。趣味とは言え、遊びとは言え、このままでは、日本から、一つの文化の伝統が立ち消えそうで、寂しいです。

 私の耳には入ってきませんが、アマチュア・オーケストラや市民吹奏楽団も、おそらく同様な状況に置かれていると思います。ただ、これらの団体は、混声/男声合唱団とは違い、団員の平均年齢も若く体力もあるので、練習場所ジプシーが続こうが、長期に渡る活動停止期間があったとしても、おそらく元気に復活できるでしょうが、混声/男声合唱団には、それらの団体ほどの体力も時間も正直ありません。

 気がつくと、日本のアマチュア合唱は、専業主婦を中心に構成されている、お母さん合唱団だけになってしまうかもしれません。おおげさな話のように思われるかもしれませんが、全く無い話ではないと、私は思います。

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