スポンサーリンク

2010秋・アルタスフルートフェアに行ってきたよ その2 音量豊かにフルートを演奏するためには… 

 アルタスフルートフェアに行った私は、楽器調整をしてくださった職人さんはもちろん、いつもの営業さんや田中会長と、色々なフルート談義をしてきました。今回の記事は、彼らとのおしゃべりの中から、おもしろそうな話のいくつかを私がダイジェストして、まとめたものです。なので、一応、文責は私すとんにあります(ここが肝心な点だよ)。内容的に、もしかするとアルタスの公式見解とは異なる事が書かれているかもしれませんが、そこはご勘弁をというわけで…始めます。

音色作りは狙った部分と偶然にそうなった部分があります

 アルタスフルートは日本製フルートとしては、ちょっと個性的な音色をしたフルートだと思います。で、そのアルタスサウンドとも言うべき、あの音色は狙って作ったのですかと尋ねたところ、狙って作っている部分と、結果として偶然そうなった部分がある…のだそうです。

 狙ったのは“豊かな高次倍音”だそうです。設計の段階で、より豊かな高次倍音が出るように考えて作られたので、それゆえに明るい音色の楽器となっています。しかし、狙ったのは高次倍音だけで、低次倍音については特に考慮しなかったそうです。ただ、豊かな高次倍音がよく出るよう設計したため、低次倍音もそれに伴って、よく出るようになったのではないでしょうか? また、少しでもいい楽器を作ろうと、現場で丁寧に製作しているために、結果として、上も下も豊かな倍音が出て、明るくて深みのある音色になったそうです。

フルートの音色はあくまで奏者次第という部分があります

 そうやって、豊かな倍音が出るように作られたアルタスフルートですが、それはあくまで「出るように作られた」だけであって「誰でも出せるのか」と言うと、そうでもないのが、アルタスフルートのおもしろいところです。

 他のメーカーの楽器だと、誰が吹いても、ある程度の音質・音量が保証されているフルートが(特に廉価モデルでは)大半ですが、アルタスフルートは、そのいずれもが最初から保証されていると、私は思いません。

 私がフルートの調整をしていただいた時間帯って、お店が混雑している時間帯でしたし、今回の調整は丁寧にやっていただき、かなり時間がかかったと言うこともあり(感謝です)、実に多くの人が入れ代わり立ち代わりフルートの試奏をしているのを、聞くともなく聞いてしまいました。

 いや、本当に、アルタスフルートって、演奏する人を選ぶと言うか、演奏する人によって、全然違う楽器になりますね。いやあ、驚いた。

 思わす、うっとり聞きほれてしまうような、それこそ、ヴェルヴェット・ヴォイスとしか言えないような、とろける様な音色で試奏する人もいれば、祭り囃子の和笛のような音の人もいたし、ガラス細工を思わせるような澄んだ音色の人もいたし、安っぽいトランペットのような音で鳴らす人もいたし、濁った響きの壊れた音で吹いている人もしました。実に奏者なりに鳴る楽器なんです。(壊れた大きな音で吹いていた人は、アルタスを絶賛していましたが、ああいう音が好みなんですね。ほんと、人それぞれです)。

 アルタスフルートって、惚れる人はゾッコンに惚れる一方、敬遠したり毛嫌いする人も少なからずいますが、その理由が分かったような気がします。

 ほんと、あれだけ人によって音色が違うなら、アルタスフルートを吹いても、イヤな音色でしか鳴らせない人もいるでしょう。そういう人は、当然ですが、アルタスフルートに対してダメを出すわけで、それくらい、人と楽器との間に、激しい相性があるみたいです。そういう意味では万人向けの楽器ってわけじゃないですし、だからこそ、試奏した方が良いフルートメーカーだと思います(ってか、試奏せずに買うのは危険なメーカーかもしれません)。

 売場では、いくらアルタス関係者が販促に立っていたとしても、相性が合わない人にはアルタスを薦める事はしないのだそうです。ある意味当たり前ですが、正直なモンです。

 でもね。ほんと、相性が合えば、天国のような音色で演奏できるんですよ。しかし、合わないと…ね、こりゃ大変だよ。だからこそ、最初のフルートとしてはどうかと思うものの、二本目のフルートとしては、ぜひトライしてみる価値のある楽器じゃないかなって思います。

音量豊かにフルートを演奏するためには…

 フルートは基本的に小音量楽器です。何をどうやってもラッパや太鼓に音量では勝てません。しかし、そんな小音量楽器であるフルートも、吹き方次第では、吹奏楽などのような大音量楽器に囲まれても、きちんと客席まで音を届かせる事できるわけです。そのためには…。

 1)管体を豊かに鳴らす事
 2)ニュアンスを込めて発音する事 …の二点が大切だそうです。

 大音量楽器の中にいて、しっかりとその音を観客席まで響かせるためには、物理的に大きな音量が必要だと思われがちだし、最終的には、やはり物理的に大きな音量が必要なのだけれど、実は大きな音量を求めるよりも先に、耳に残るような発音を心掛けることで、絶対的な音量は少なくとも、観客の耳に届きやすく、心にも残りやすい演奏になるのだそうです。分かりやすく言えばピッコロがいい例です。あれって物理的にはそれほど大きい音ではありませんが、音色&音域に特徴がありすぎる(笑)ので、人の耳によく届くわけです。人の耳に届きやすい音色で吹けば、結果として音量豊かに聞こえるわけです。

 先の二つのポイントは、物理的な音量を増やすというのではなく、人の耳に届きやすい音を出しましょうという、そんな観点からの注意です。

 「1)管体を豊かに鳴らす事」ですが、これはメトロポリタン歌劇場管弦楽団[世界の一流オーケストラの一つです]の首席フルート奏者のブリヤコフ氏の演奏を聞くと、よく分かるそうですよ。氏の演奏音は、決して大音量ではないそうですが、メトロポリタン歌劇場という、極めて大きな会場の中で、それもオペラ歌手や大合唱団と一緒に合奏しても、氏の演奏は客席によく届きます。それは、氏のフルートの管体がすごくよく鳴り響いているからであります。そして、いかにも“管体が鳴り響いている音”であるからこそ、より観客の耳をそばだてさせるのだそうです。

 そう言えば、どこかのコンクールで、ブリヤコフ氏の演奏を評して「管体を鳴らしすぎ。あれだけのパワーがあるのに、なぜゴールドフルートを使用しないのか」と言った審査員がいたそうですが、その事を思い出しました。しかし、日本人プロは大抵ゴールドを使いますが、あちらのプロ奏者って、案外シルバーを使い続ける人が大勢いらっしゃるんですよね。ブリヤコフ氏も、シルバーにこだわっているのかしら?

 さて閑話休題。あれだけ管体を豊かに鳴らすために、ブリヤコフ氏がたくさんの息を激しくフルートに入れているかと言うと、それは違うのだそうです。適量の息を適切なポイントから適当な速度で楽に入れてあげる事で、フルートはおもしろい具合に振動して鳴るのだそうです。決して、力付くで管体を鳴らしているわけではないそうです。

 いやむしろ、アルタスフルートの場合、息を入れすぎると逆に管体が鳴らなくなるだそうですよ。ですから、大きな音量が欲しい(=管体を豊かに鳴らしたい)時は、むしろ息を少なめに入れ、やさしく吹いてあげるのがコツのようです。力付くじゃあ、むしろ逆効果なんだそうですよ。

 このあたりは、声楽で声量豊かに歌うためのコツと通じるところがあります。声楽でも、大きな声量を求めて、息をたくさん使ったり、ノドをグイっと絞めたり、胸を張ったり、腹に力を入れてググっと歌ったところで、声量は増しません。むしろ、声が荒れて、怒鳴り声のようになるだけで、ちっとも美しくありません。適量な息を適切なポイントを通して歌うことで体内の共鳴腔を最大限に利用して、豊かな声量を確保します。

 フルートと声楽には、共通するテクニックがたくさんありますが、このあたりも同じような感じなんでしょうね。

 もちろん、このやり方がすべてのメーカーのフルートに通用するわけではありません。例えば、ベルリンフィルのパユ氏(ブランネンを使用していますね)は、巧みなブレスコントロールで、物理的に音量を増やす方向で演奏しているそうですが、あの吹き方は、アルタスのフルートだと適切とは言えないのだそうです。なぜなら、ブランネンとアルタスでは、フルートの目指す方向がちょっと違うため、おのずと楽器の特徴と、それを最大限に引き出すためのベストな奏法が違っているからだそうです。

 「2)ニュアンスを込めて発音する事」ですが、これは“棒吹き禁止”と同じ事です。ただ単にピーと吹いた棒吹きの音では、金管楽器の音に埋もれてかき消されてしまうそうです。だからと言って、物理的な音量で金管楽器に勝つことは、フルートでは無理です。そのために、発音、とりたてて、音の出だしの部分に神経を払い、この部分に魂を込めて、ほんの少しのニュアンス(具体的には、適切なタンギングと音程のゆらぎ)を加えてあげる事で、フルートの音が、すぅ~っと立ち上がり、観客の耳にフルートの演奏音がすんなりと届くようになります。これは楽器の性能と言うよりも、奏者の腕前に依存しますが、このほんのちょっとの演奏技術の向上で、フルートの音が観客席に届くなら、積極的に取り組むべき事柄です。

 豊かな音量が欲しければ、強い息を吐き出す練習をするよりも、アンブシュアのコントロールと、タンギングや音曲げの練習を毎日たっぷりやる事の方が大切なんだろうと思います。
 
 
音量と音色は両立しないものではない

 よく「音量と音質は両立しないもので、どちらかを求めると、もう一つは犠牲にならざるを得ないので、あきらめるしかない」という事を言う人がいますし、私もつい最近までは、その言葉を信用していましたが、これは間違いだそうです。単純に「音量と音質の両立は、奏者の腕次第で可能である」というのが正しい答えです。

 これは、上に書いた「管体を豊かに鳴らす事」は、もちろんだけれど、フルートの音を飽和させないギリギリまで息を追い込んで吹き込む事で、音色の良いフルートであっても、かなりの音量が出せます。これを簡単に「音量と音質は両立しない」と言い切っちゃう人は、私も含めて、単に腕前が未熟なだけなんです。

 それゆえに、楽器選びのポイントとして「大きな音が出る楽器」という基準はあまり意味がありません。どんな楽器でも、奏者の腕次第でかなりの音量が出せるからです。

 ここからは、すとんの私見ですが、フルートの中には「腕が悪くても音量が出るように設計された楽器」というのがあります。「音量の大きな楽器」と言うのは、えてしてこの手の楽器の事です。そういう楽器は、往々にして、音量優先で、音色には重きをおかれていませんので、一見「音量と音質は両立しない」と思われがちなのです。そういう事です。

 つまり、管体を豊かに鳴らせないレベルの奏者が、音量重視の楽器を使用すると「音量と音質が両立しない」結果になります。それを回避するためには、まずは奏者の側が変わるべきで、管体を豊かに鳴らせるようにテクニックを磨くことが大切でしょう。そうすれば、楽器を買い換える際には、その選択基準もおのずから変わってくるはです。

 フルート選びのポイントは「その楽器が持っている、素の音色はどんなものか」と「自分がそのフルートからどれだけ美しい音色が出せるのか」の二点に絞って、選ぶべきであって、音量の大きさで選ぶと後悔するかもしれませんよ。
 
 
 おまけ フルートフェア、楽しかったです。行けば、必ず、物心両面で多くのモノが得られます。だから、年中行事化しちゃうんだな。ところで、自分へのお土産として、ガーシュンウィンの歌本、田中千香士さんのご著書「五本の柱」、ヴァイオリンの予備弦(ヴィジョン)を楽器屋さんで買ったよ。これで約一万円。音楽関係のモノは何でも高価だからイケないね。ああ、これで今月の小遣いが、もう残りわずかだよ(涙)。

コメント

  1. より:

     愛器のメーカーのフェア、いいですね。
     私もいろいろなフェア、出かけてみたいものです・・・。
     どれも気に入ってしまいそうです・・・。

     以前にもコメントのとおり私の場合、きりっとした音がしました。
     私の個性にはもう少しやわらかい響きのほうがよいみたいで、
     チョイスには入っていないのですが・・・
     これは好みや相性なのでしょう。
     あとは縁なのかな。

     本当にフルートは、メーカーよりもその人の個性に追う部分も
     すごく多いみたいですね。
     同じ楽器でも違う音がでて・・・。
     機会があれば、一度聴いて批評していただきたいものですよ!

  2. すとん より:

    >かさん

     フルートにはそのフルート固有の音というのがある一方、奏者の音というものもあります。私も、少しずつですが、その「奏者の音」っぽいモノが出てくるようになり、正直、以前ほど、フルートのモデルごとに違いを感じづらくなってきました。良いことなのか、悪い事なのか、分かりませんが、ちょっと寂しい気がします。

     とは言え、ベテランさんから見れば、まだまだでしょうね。「すとんさんも、なに、生意気な事を言っているだ~!」と思っている方もいらっしゃるでしょうが、生意気な事やエラそうな事を平気で堂々言えるのが、オジサンの特性だと思っているので、あえて生意気を言わせてもらってます(笑)。

     メーカーの特性と、個人の特性。それらが合わさって、フルートの音色が作られると思うと、フルートって、結構、個性的な楽器なんだと思います。

  3. もり より:

    「音量豊かにフルートを吹くために」を大変興味深く読ませていただきました。
    なんだか歌の先生に言われていることとよく似ています。

    夜の女王のアリアは、ものすごく高い音域で、音量自体はそんなに出ないし響きは細くなるけど、フレクエンツが豊かだから、オケにも負けないでホール中に届く声なのだと言われます(そこら辺、まだ良く分かっていませんが)。
    確かにあの音域は、力を抜いて息を細く使わないと出ませんし。

    フルートも適量の息を鋭く使って吹くと、フレクエンツが豊かになるのでしょうか?
    フルートの練習すると、歌の練習になりそうですね。

    そう言えば、フルートもピッコロも、ソプラノと同じ音域ですよね?

  4. すとん より:

    >もりさん

    >そう言えば、フルートもピッコロも、ソプラノと同じ音域ですよね?

     フルートは中央ハ音から上に三オクターブというのが、その音域です。ピッコロは音域の広さはそのままに全体的に一オクターブ上の音を担当しています。いずれも真ん中のオクターブを主に使いますので、ソプラノと同じ音域なのはフルートの方です。ピッコロの音域はあまりに甲高く、あえて言えば、コロラチューラ・ソプラノかな?って気がしますが、やはりあの音域は、人の声と言うよりも、鳥の声だと思います(笑)。

    >なんだか歌の先生に言われていることとよく似ています。

     そうですね、私もそう思います。そして、それを言っているのが、フルート製作者だってのが、おもしろいです。こういう考えを持っている人の手でフルートが作られているんですね。

    >フルートも適量の息を鋭く使って吹くと、フレクエンツが豊かになるのでしょうか?

     ごめんなさい、不勉強なのか「フレクエンツ」という言葉の意味が分かりません。もし「倍音」とか「響き」って意味なら、たぶんそうだと思います。

     管楽器と声楽って、やればやるほど、共通のテクニックがあって、両方を行き来する事で、それぞれをより深く学べるものだなあと思います。もちろん、テクニック的に違う部分もありますので、何でもかんでも一緒にできないし、違う部分は意識していかないといけないのですが、それでもテクニックが共通している部分は、学ぶのが楽でいいです(笑)。

  5. いつりん より:

    はじめまして。お邪魔いたします。
    ひゃらりさんのブログから飛んできました…といっても実は過去に何度かお邪魔させていただいております。

    私もアルタスを吹いているので、すとんさんのブログは
    大変!ものすごく!超!!参考になります。
    知識の豊富さにいつも驚きながら、いろいろ勉強させていただいております。

    >アルタスフルートの場合、息を入れすぎると逆に管体が鳴らなくなるだそうです

    これを最近痛感しています。
    息をたくさん入れて吹くと、自分では満足感?があるので鳴っているような錯覚をするのですが、遠くで聴くとまるで響いてない。
    いかに少ない息でポイントを射て吹けるかが課題です。

    アルタスのフェアに行けたり、グローバルの方や技術者の方とお話できる機会があるといいのですが、地方在住のためなかなか…(T_T)
    こちらで、これからも勉強させていただきます!!

  6. すとん より:

    >いつりんさん、いらっしゃいませ。

     アルタスフルートは、思想を持って作られた楽器なので、色々と他のフルートにはない特徴もあり、その性能を十分に発揮させるためには、ちょっとしたコツが必要…みたいです。ですから、アルタスフルート特有の性質を理解して吹くと、より一層、よい演奏ができるみたいです。

     もちろん、その前提には、普通にフルートが上手に吹けるという事が必要ですが(笑)。

     アルタスの場合は、たくさん息をいれると、側鳴りになるようです。奏者には大きな音を出しているような錯覚を与えますが、実はたいした事はないそうです。少ない息で軽く吹いてあげる方が遠鳴りの音が出るそうですが…これは奏者的にははなはだ不安ですよね。それに、どうやら、遠鳴りをするポイントは、それほど広くないみたいなので、そのポイントにうまく当ててあげると、ピャーって感じで鳴るのですが、私はまだまだ腕が未熟なので、いつもいつも、そこに息が当てられるわけじゃないのが残念です。

    >アルタスのフェアに行けたり、グローバルの方や技術者の方とお話できる機会があるといいのですが

     私も地方在住ですよ。ただ、東京に電車ですぐ出られるほどの、近くの地方ってだけの話です。この“距離”のアドヴァンテージは確かにありますね。だから休日なら東京にいけます。色々なイベントにも参加できます。でも東京の人ではないので、平日の夜などはには行けません。だから、東京で行われる平日のイベントやコンサートとかは、なかなか行けません。

     グローバルの方との話は…どなたでもフェアなどに参加すれば、話はできますよ。どなたも気さくで優しい方々なので、マナーを守って話しかければOKです。もっとも、これはアルタスに限らず、他のメーカーの方も、だいたいそうです。少なくとも、パールとヤマハの技術者の方々は(直接話した事がありますが)人当たりが優しい方々でしたよ。

    >こちらで、これからも勉強させていただきます!!

     私自身がまだまだ勉強中です。お互いに切磋琢磨していきましょう。こちらこそ、よろしくお願いします。

  7. Sonore より:

    はじめまして。

    kan-nazukiさんのところからお邪魔しました。
    音量と音色のお話をとても興味深く拝読いたしました。

    かねがね、誰がどういう風に吹くのか?の要素抜きでの「音量の出る楽器」「音色重視の楽器」のような論評には意味がないと思っていましたので、すとんさんの明快な語り口に惚れ惚れしてしまいました。

    一点、すとんさんの言いたいことが判断できにくかったことについてご質問させていただきたくお願いいたします。

    管体を豊かに鳴らす とは

    「管体そのものを振動させること」、それとも「管体内の気柱を振動させること」

    どちらでしょうか?またはどちらでもなく他の意味合いがあるのでしょうか?

  8. すとん より:

    >Sonoreさん、いらっしゃいませ。

     まず、最初に私は専門家ではありません。単なるフルート初心者のオッチャンです。なので、あくまで私の意見で書きます。情報の信憑性に関しては保証しません(笑)し、アルタス&フルート関係者が見れば「それ、違う!」って事を書いちゃうかもしれません。…とまあ、前置き(言い訳?)しておきます。

    >管体を豊かに鳴らす とは、「管体そのものを振動させること」、それとも「管体内の気柱を振動させること」のどちらでしょうか? またはどちらでもなく他の意味合いがあるのでしょうか?

     結局、両方だと思いますが、我々には“管体内の気柱の振動”を感知する術がありません。“管体そのものの振動”を感知して、間接的に“管体内の気柱の振動”を感知するのだと思います。

     だから、あえて「どちらですか?」と尋ねられれば「管体そのものの振動」です、とお答えしておきます。

     さらに付け加えます。

     フルートはエアリードの楽器であって“管体内の気柱の振動”によって発音しているのは事実です。しかし“管体内の気柱の振動”さえあれば十分なのかと言うと、おそらくそれは違うのではないかと思ってます。あくまでメインとなるものは“管体内の気柱の振動”でありますが、“管体そのものの振動”によって、付け加えられる音も含めてのフルートの音色ではないかと私は思います。と言うのも“管体内の気柱の振動”だけがフルートの音を構成する要素ならば、フルートの材質とフルートの音には何の関係もない事になりますが、実際は材質による音色の差というのは存在します。その材質による音色の違いの一つの要素が“管体そのものの振動”から与えられるのではないかと考えます。

     なので“管体内の気柱の振動”によって生まれた音に“管体そのものの振動”が加わって、始めて“フルートが豊かに鳴っている”と言えるのではないでしょうか?

     以上が私の考えです。事実と違うかもしれませんが、そこはご勘弁ください…ね。

  9. Sonore より:

    すとんさん、さっそくお答えいただきありがとうございます。

    エアリードであるが管体も振動している。

    これはその通りだと思っています。しかし、

    >“管体内の気柱の振動”を感知する術がありません。
    >“管体そのものの振動”を感知して、間接的に“管体内の気柱の振動”を感知する

    これは本当でしょうか?
    あくまでも気柱音が主体でそれは耳で聞いている音のかなりの部分を占めるのではないでしょうか?
    もちろん、管体内の気柱の振動と、管体そのもの振動を明確に分離して聞くことは出来ないが、楽器に接している手指、唇、アゴなどが管体から受ける振動は感知できる。
    ということなのでは?

    僕もアマチュアのおじさんなので、あまり議論してもすばらしい結論が導き出せるかどうかは怪しいのですが・・・・(笑)

    フルートを演奏する時、管体そのものをいきなり振動させられるわけではなく、管体内の気柱の振動によって管体も振動する。これは意見が一致していますね。

    では振動する管体内で振動する気柱は管体振動の影響をどう受けるか?

    僕は気柱振動音+管体振動音、まるまるプラスになるとは限らないのではないかと想像しています。ひょっとすると周波数帯にもよるかもしれないが、マイナス要素もあるのでは?とです。

    最初の質問にすとんさんからお答えいただいたことは、

    「管体が振動して気柱音を寄り一層豊かにするほど、気柱を振動させる」ということでしょうか?

    それとも吹き方の違いにより、気柱音の振動(振幅)をそれほど増大させなくても管体が振動させることが出来るのでしょうか?

  10. すとん より:

    >Sonoreさん

    >これは本当でしょうか?

     いいえ、本当の話とは断言できません。あえて言えば“信仰”と言うべきかな? 本当かどうかは、再現可能な実験的な手法によって確かめられなければ言えない事だと思ってます。なので、アマチュアのオッサンの頭の中でコネ繰り回した理屈は、たとえどんなにそれが真実に近くても、事実であるとか、本当の事であるとか、言ってはいけないと思います。

     なので「本当でしょうか?」と尋ねられたなら「いいえ」と答えるしかありません。しかし、私はそれを“真実に近いもの”だと信じていますので、客観的には“本当”ではないかもしれませんので、私にとっての事実なので“信仰”です、とお答えしておきます。

     それこそ屁理屈でごめんなさい。でも、真面目に真実を追い求めるのならば、議論などをせずに、実験をするべきだと思います。それこそ、百聞は一見にしかずです。で、科学的に解明できないけれど、それを真実と信じているならば、それはその人にとっての“信仰”です。…と言うのが、私のスタンスです。

     さて…

    >楽器に接している手指、唇、アゴなどが管体から受ける振動は感知できる。ということなのでは?

     誤読をしていたらごめんなさい。楽器に接している身体から受ける振動は“管体内の気柱の振動”ではなく、“管体そのものの振動”だと思ってます。“管体内の気柱の振動”とは、Sonoreさんもおっしゃる通り、フルートの楽音(の大部分)の事です。しかし、これを耳で確認するのは、実は容易なことではありません。

     フルートは、奏者と楽器が一体になって音を奏でる楽器です。つまり、奏者も楽器の一部なのです。それゆえ、奏者には自分が出している音をきちんと把握することは難しいのです。これは弦楽器、あるいは電子楽器などの、楽器と奏者が明らかに別物な楽器と比較してみればよく分かります。

     フルートの場合、奏者にとって「大きくて立派」に聞こえる音は、本当に「大きくて立派」な音の場合もあるでしょう。しかし、音が奏者の体内ばかりで鳴り響いているならば、確かに、その音は奏者にとっては「大きくて立派な」音でしょうが、観客にとっては「小さくて貧弱な音」でしかありません。この区別は奏者が楽器の一部となっている以上、奏者自身には判別できません。

     それゆえに、フルートを豊かに鳴らすことの確認を、奏者の耳に頼るのはちょっと危険かなって思います。

     理想は、広い会場で演奏し、壁からの反響音で、自分の演奏音を確認すると良いのだと思います。でも、それは色々と難しいので、フルートがよく鳴っている時の状態をカラダのあちらこちらの感覚を用いて、覚えることが大切で、その感覚の一つに“楽器に接している身体から受ける振動”で確認するというのがあると思います。

    >では振動する管体内で振動する気柱は管体振動の影響をどう受けるか?

     お互いに干渉しあいます。当然マイナス要素もあるでしょう。それに管体の厚みだって楽器によって違うし、同じ楽器でも部位によって管体の厚みが均等とは限りません。よく鳴る周波数と、それほど鳴らない周波数の違いだって当然あるでしょう。その当たりはいわゆる“味”って奴なのかなあと思います。

    >「管体が振動して気柱音を寄り一層豊かにするほど、気柱を振動させる」ということでしょうか? それとも吹き方の違いにより、気柱音の振動(振幅)をそれほど増大させなくても管体が振動させることが出来るのでしょうか?

     後者です。もちろん、息をたくさん吹き込んで、気柱音をエネルギッシュにしていけば、管体もより振動しやすくなります。でも、息は本当に少しでも、管体はよく鳴りますし、私はいつもそうなるように心掛けています。どんなに小さなppでも、常に管体が振動しているような吹き方を心掛けています(ポイントは“心掛けている”であって“している”ではないのです:汗)。

     真面目に答えたつもりですが、いかがでしょうか? ただ、この手の議論には、盲人が盲人の手引きをしているのではないかという恐れが、私の中には、あります。

  11. Sonore より:

    丁寧にありがとうございました。
    決して議論を戦わせるつもりではないことをご理解ください。

    一番最後の「息は本当に少しでも、管体はよく鳴りますし、私はいつもそうなるように心掛けています。」で納得がゆきました。楽器へのアプローチがうまく行っていないのを、息の勢いだけで解決しようとする傾向が見受けられますが、そういう意味ではないのが確認できました。

    >楽器に接している身体から受ける振動は“管体内の気柱の振動”ではなく、“管体そのものの振動”

    僕の文章がまずいのであって、当然こちらの意味合いで申し上げました。

    >フルートを豊かに鳴らすことの確認を、奏者の耳に頼るのはちょっと危険

    この部分に関してのみ考えが違うようですね。僕は奏者は耳を使うことがすべてだと。
    もちろん、おっしゃるような難しさはありますし、直接音ではなく返りの音を聴かなくてはなりません。ただ、結果がうまくゆくのであれば、あまり方法論や理屈は言い合っていても建設的ではないと思います。

    フルートというと、とかく材質のお話ばかりなのに、管体の振動にまで話が及ぶことが意外に少ないので、ついしつこくお聞きしてしまいました。お手数をおかけいたしました。

  12. すとん より:

    >Sonoreさん

     私は、フルートでは、自分の耳を信用していません。と言うのも、外で鳴っている音と、自分のカラダの中で鳴っている音が、たとえ同じ音が鳴っていても、それは決して同じピッチに聞こえない事をカラダで知っているからです。体内で聞く音は、外で他人が聞いている音よりも低く、その低さは体調次第でコロコロ変わるのです。

     さらに体内は外よりも音が伝わりにくいので、外と同じように聞こうと思ったら、かなりのエネルギーで体内に向かって使用しないとバランスが取れません。これも体験済みです。

     一応、屁理屈で言えば、音は空気中に広がる時と比べ、水中ではピッチが下がって伝導され、おまけに音の減衰が激しいからです。

     私たちのカラダの構成要素の大半は水です。ですから、自分のフルートの音を聞くと言うのは、水中でフルートの音を聞くのにかなり近い状況に置かれていると思います。さらに水中では減衰も激しいので、外と比べて、体内に多くの音を入れないと、外と同じ大きさの音にはなりません。

     つまり、自分の耳を信用すると、ピッチがぶら下がる上に、側鳴りになると言いたいのです。これは私の経験則から得られた結果です。

     なので、耳を信じると、ロクな事がありません。少なくとも、私はそう信じています。これも私の信仰です(笑)。

     ちなみに、ヴァイオリンは、カラダの中に音があまり入ってこないので、耳を信用してOKです。ですから、ヴァイオリン奏者は耳を使うことがすべてかもしれません。しかし、フルート奏者は、耳で聞いた音に修正をかけないとダメだと思います。その修正をかけるために、カラダのその他の感覚器で得られた情報をフルに使って修正していかないと間に合わないと思ってます。

     おそらく、Sonoreさんは、無意識にフルートの音に修正をかけているのだと思われます。私から見れば、それはとてもうらやましい事です。

  13. Sonore より:

    いろいろありがとうございました。

    mixiにもIDをお持ちなのですね?
    僕もこのまんまのニックネームでmixiに日記をアップしております。

    新潟市の領事館問題、県内在住の者として、また日本全体の問題として心痛めております。

  14. すとん より:

    >Sonoreさん

     こちらこそ、色々とありがとうございました。

     mixiでは活動と言うよりも、mixiでしか会えない人もいるので、席を置いている程度です。ブログもmixiも…とはなかなかいきませんよ。

  15. みみみ より:

    はじめまして、フルート好きな仲間でアンサンブルを作って吹いているおばさんです。
    仲間の音に比べて、私の音は小さいような気がするので、じっくり読ませていただきました。
    ぜひ参考にして練習したいと思います。
    ちなみに私のフルートもアルタスで、仲間内で一番ボリュームのある音を出す人もアルタスです。

  16. すとん より:

    みみみさん、いらっしゃいませ。

     フルートは自分で聞こえる音と、他人が聞こえる音は違いますし、ステージの上で聞こえる音と、客席で聞こえる音は違いますので、ご自分の音が小さいと決めつけるのは、早急かもしれませんよ。アンサンブルのお仲間に尋ねると、また違う答えが返って来るかもしれませんよ。

     それはともかく、アンサンブルの中で、一番大きな音と、一番小さな音(と目される)がともに同じメーカーというのは、おもしろいです。まさに「フルートの音量は楽器じゃなくて、奏者次第」って事をよく現していますね。

     奏者次第…これは、奏者が変われば、演奏がガラっと変わるって意味です。つまり、みみみさんの頑張り次第で、これからドンドン良い方向に変わるってわけで…とても楽しみですね。

  17. みみみ より:

    アンサンブル演奏を録音したものを聴くと、明らかに小さい音なのです。
    旋律を吹くとき以外は小さめに吹いている、ということと、
    他のメンバーはppが苦手ということもあるのかもしれませんが。

    ここ数年は簡単な曲を週に1回、アンサンブルで吹くだけだったのが、
    ちょっとやる気のでることがありまして、基礎から練習しなおしているところです。
    ですので、すとんさんのブログが色々参考になります。
    ありがとうございます。

  18. すとん より:

    みみみさん

    >アンサンブル演奏を録音したものを聴くと、明らかに小さい音なのです。

     録音は嘘をつきませんから、ならば小さい音なのかもしれません。でも…

    >旋律を吹くとき以外は小さめに吹いている、ということと、
    >他のメンバーはppが苦手ということもあるのかもしれませんが。

     ありがちですね。そのアンサンブルに指揮者とか指導者とかはいないのでしょうか? もしいらっしゃるなら、練習の時に音量バランスに気を払ってくださるはずですから、その指示に従えばいいし、演奏者しかいないアンサンブルならば、それこそ今回のように、録音を参考にして、音量バランスを整えるようにすればいいでしょ。その時には、小さな音の方には頑張ってもらって、音量をあげてもらうと同時に、大きな音の方には少々我慢してもらって、音量を下げてもらってバランスを取るようにするとよいでしょうね。

    >ですので、すとんさんのブログが色々参考になります。

     そう言っていただくのは、何よりの励みにあります。こちらこそありがとうございます。

タイトルとURLをコピーしました