前回「なんちゃってジャズ講座」と銘打った笛先生のジャズ初心者講座は、今回から「なんちゃってジャズピアノ講座」と名前を変えて、みんなでジャズピアノの初歩の初歩を学んじゃおうって事になりました。そしてそれは、ジャズピアノの初歩を学びながら、ジャズの初歩を学んじゃおうって事です。
ま、「ジャズ講座」と言うと、具体的ではないという声があったそうで、それで名称変更、路線もちょっとだけ変更って事になったそうです。
確かに楽器が明確になっていた方が、取っつきやすいというか、ターゲットを絞りやすいという事は事実です。で、最初はどの楽器にしようかと悩まれたそうですが、だからと言って「ジャズフルート講座」では、笛先生的には「なんちゃって~」にはならない(真剣になっちゃうそうです)ですし「ジャズヴァイオリン講座」では、入り口としての楽器が難しすぎるので「ジャズピアノ講座」になったそうです。ジャズピアノだって極めていけば、すごく難しいのですが、まあ、そこらへんはご勘弁を…って感じだと思います。
私は別にピアノが弾きたいわけでもないし、弾けるようになりたいわけでもないのですが、ジャズについて勉強がしたいので、今回も参加しました。ま、ジャズピアノがちょっとでも弾けるようになったら、そりゃあ、うれしいよね…という下心がないわけじゃあないです(笑)。
さて、今回は、マイナー(短調)のお勉強です。最初の課題曲は、バイオリンのレッスンでもやった、ラインハルトの「Minor Swing」です。今回は、この曲のピアノを弾けるようにしましょうって事です。ピアノで弾ける…と言っても、ピアノソロをやるわけではなく、あくまでもバッキングができるように…という事です。メロディーやアドリブの部分は、笛先生がフルートで吹いたり、ヒイロ先生がヴァイオリンで弾いたり、(なんと)私がフルートで吹いたりしました。
「Minor Swing」のバッキングというのは、言葉にすれば、実に簡単です。1stテーマは全員ユニゾンなので、メロディーを弾く。ソロの部分から先は、リズムに合わせてコードを叩く。それだけ。でも、ピアノが弾けない人間には、これが結構難しい。
今回、我ながら思い知った事は、私は演奏行為というか、演奏運動の制御に、脳の処理能力の大半が注ぎ込まれてしまうらしい事です。具体的にどういう事かと言うと、「Minor Swing」はジャズ曲ですから、基本的に譜面は見ないで演奏します。ですから、演奏前にみんなで暗譜をするわけです。私はヴァイオリンのレッスンでやったばかりですから、とりあえず暗譜はしています。だから「この曲のコード進行は?」と尋ねられてもスラスラと答えられます。
…なのに! 実際にピアノを弾き始めると、頭が真っ白になって、次のコードが全然思い出せない(汗)。これは私の脳がピアノを演奏する(腕を動かす)という行為の処理にその大半が使われてしまい、コードを思い出すと言った行為にまで脳の処理が追いつかないからです。いやはや、情けないです。ヒイロ先生からは「曲をしっかり覚える事」と釘を刺されました。なにしろ、いくら口でペラペラとコード進行が言えても、ピアノの前で真っ白になってしまうなら、それは覚えていない事と同じことですからね(涙)。
曲を暗譜するという事は、とても大切な事なんだそうです。ミュージシャンの現場では、たった一回の歌の伴奏のためであっても、プロミュージシャンたちは、真剣に暗譜して演奏に臨むのだそうです。それが、ポピュラーの世界では常識なんだそうです。もちろん、人間ですから、一度で完璧に暗譜できるわけではないのですが、今までに多くの曲を暗譜してきた人なら、たとえ忘れてしまっても、そこは今までの蓄積でどうにかなるものなんだそうです。だから、曲を暗譜することは大切なんだそうです。
暗譜は…課題…だな。
おそらく私の場合、クラシック曲を練習するように、何度も何度も繰り返して練習していけば、自然と曲が体に染み込んで暗譜できるのだろうけれど、ポピュラーの世界では、そんなにのんびりした事は許されないわけで、即暗記、即プレイですからね。初見力ならぬ初暗譜力を身に付けないといけないわけです。
さて、ジャズピアノの奏法の基本を習いました。それは「鍵盤を叩く時、決して指は動かさない。腕の力で鍵盤を叩く事」 これはクラシックのピアノとは違う奏法ですね。とにかくジャズでは、ピアノは打楽器のようです。
そのためには、まずはピアノを叩くための筋肉を養わないといけないので、メトロノームを鳴らしたまま(速度は120が標準だけれど、その人のできる一番早い速度で結構だそうです)、それに合わせて、同じ音をピアノを弾いていくという練習が必要なんだそうです。それも黒鍵を。毎日五分でもいいからこれをやると指がだいぶ強くなるそうです。最初は各指一本ずつ、まずは片手の五本を。次は両手で同じ動きを同時に、次は両手の動きを半拍ずらしてやってみる。最後はそれを倍速でやってみる…。指一本ずつが終わったら、今度は同じことをコードでやってみる。12の調を全部やってみる。確かに五分もあれば終わりますが…結構、シンドイです。
結局、ピアノは、筋力と集中力です。あ、別にピアノに限らず、歌でも、フルートでも、ヴァイオリンでも同じことか。
それと、ピアノは楽器としては、反応が遅い方の楽器なので、音楽に対して、常に早めのタイミングでアクションを起していかないと、ドンドン音楽が遅れてしまうので、そこを注意するように言われました。反応が遅い…と言っても、1/100秒程度の時間なんですが、メカ部分が多いために、鍵盤を叩いてから音が鳴るまでに、多少の時間がかかるのです。そこを計算して演奏しないといけません。
歌もフルートもヴァイオリンもギターも…私のやってきた楽器はいずれも反応が早い楽器(チャイナ娘は反応の遅いフルートでした:笑)ばかりなので、なんとなくピアノに感じていた違和感って、これだったのかもしれない。納得です。
さて、休憩後は、曲がガーシュウィンの「Summertime」に変わりました。この曲のコード進行は…
Am/Am/Am/Am//Dm/Dm/E7/E7//Am/Am/Am/Am//C/D/Am/(E7)//
…です。これをまずは暗譜します。で、演奏なんですが、この曲は“モダンジャズ”なので、このコード進行のまま演奏してはいけないのです。
と言うのも、コードにテンションノートを付け加えて演奏しないと、モダンジャズとして、さまになりません。テンションノートとは…9thの事です。つまり、Amと書いてあっても、実際の演奏ではAm9にして演奏するわけです。同様にDmをDm9に、CをC9に、DをD9にします。ただし、E7はE9ではなく、E-9にします。ここがちょっとしたポイントですね。これはEの9thであるF#は、Amのスケールにない音なので、9thのF#を-9のFに置き換えることで、調性の統一をしているわけです。
で、9thですが、実際の演奏では、9thではなく、右手のルート音をはぶいて、代わりに2ndを加える事で演奏します。つまり、Amならば、左手がAで、右手がACEの三音を弾くことでAmを鳴らしますが、これを、左手がAで、右手をBCEとして、ルート音であるAをはぶき、2ndであるB(英米式)を加えることで、Am9を実現するわけです。これでルート音のダブりが避けられるし、なによりも「(移動ドで)ドミソ」から脱却することを意味します。この、すべての和音にテンションノート(9th)を付け加えると、サウンドがグッとジャジーになります。
このやり方は、かなりの応用が聞きまして、講師演奏で「アゲイン」と「枯葉」を9thコードでやっていただきましたが、普通のコード進行ではなく、9thコードで演奏すると、かなりかっこ良い演奏になります。
また、ソロを取る時も、9th(2nd)を加えることで、ソロの幅も広がります。だって、移動ドで言えば、ドレミソシの音が使えるんだよ。いや、逆に言えば、ファとラに気をつければ良い訳だし、気をつけるべきファとラだって、経過音的に扱えば、普通に、スケールでアドリブができるわけで、それってややこしいこと無しになるわけじゃないですか。
そして、コードにテンションを加え、さらにリズムもジャジーにする(三連符のリズムを入れる)と、もっと雰囲気がよくなります。
この曲もピアノでバッキングをやったり、フルートでアドリブをやったりと、いっぱい遊んでもらいました。
ジャズピアノ講座、次回が楽しみでが、あまりピアノのレベルが上がっていくと、ついて行かれなくなるので、それだけが心配です。
コメント
初めまして、八ヶ岳は清里で、退職後の楽しみにフルートを吹いている山栗と申します。
フルート関係のブログを検索していて、寄せていただきました。
さすが、、研究職と言われるだけあって、凄い文章力ですね。私ならこれだけの書こうとすれば、半日はかかってしましそうですえ。
しかし、声楽に、ヴァイオリンに、フルートとは精力的な音楽活動ですね。感心しました。
私などはフルートだけでもてこずってしまて、なかなか前へ進まないのが悩みです。
ま、好きでやっているものだし、生活の糧になるものでもないので、気楽に楽しんでいます。
また寄せていただきます。
>山栗さん、いらっしゃいませ。
清里はいいですね。この時期は紅葉の季節でしょうか? まだまだ海辺は暑くで辟易してますが、もう山はすっかり秋の景色なんでしょうね。
声楽、フルート、ヴァイオリン…確かに欲張りすぎていますね。ただ、自分なりに楽しんでやっているつもりなので、大変と言えば大変ですが、それなりに充実した趣味生活となってます。…ただ、やはり、前に進まないという点は、進みませんねえ(汗)。
もっとも、前に進むのが目的ではないですし、人の縁もあって、これだけ趣味生活が広がってきたという部分もあり、マイペースで、決して、心を亡くすことなく、適当に手を広げつつ、やっていきたいと思ってます。
しかし、ほんの数年前まで、私がジャズに手を染めるなんて事はありえないと思っていたのに、なぜか今、ジャズの門前に立っているのが不思議でありません。
また、良かったら、いらっしゃってください。