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声を頭の上に通して後ろから回すようにして出す

 このやり方って、正しい発声法として、よく言われますし、ネットでも見かけます。多くの指導者や学習者が似たような事を、言ったり書いたりしているところをみても、おそらく正解だろうと思うし、私も正解の一つだと思っています。

 じゃあ、この言葉通りの事ができるのかと言われると、即答で「否!」です。だって、そりゃあ解剖学的に考えて、無理だもの。声を頭の上に通すって、そんな道、人体には無いよ! 後ろから回すって“後ろ”ってどこよ? “回す”ってどこの筋肉をどう動かすのよ?

 と、まあ…厳密には出来るわけ無い事を言っているわけだけれど、それでも、そういう“イメージ”で発声しているつもりではいます。

 「無理なのに、そういうイメージで発声って…どーゆーこと?」

 それは…いわゆるオカルトって奴だね。つまり、非科学的な表現で、根拠も裏付けもないけれど、盲目的に信仰して実施するって事だよ。

 「声を頭の上を通して後ろから回すようにして出す」なんて、いかにもオカルトな表現だけれど、これを多少なりとも科学的な言い方に翻訳するなら「しっかり上アゴを開いて歌いましょう」って事でしょ? あ、上アゴという表現もオカルトだね、そんな器官はあるようで無いから。ならば、口腔内の容量を増やして、口蓋垂をしっかり開けて、声が鼻腔にもしっかり響くようにして、腹圧を高めて、声帯を楽に振動させて歌いましょう…と言うべきかな? いや、そんな回りくどい言い方をせずに「声を頭の上に…」と言った方が、何となくイメージしやすいでしょ?

 結局、声楽の学習において、オカルトな表現が多様されがちなのは、目では見えないし、確認できないカラダの内部の感覚や動きを、何とか言語化して弟子たちに伝えようとする先生方の苦労の賜物なのだと、私は理解しています。で、表現的には、割とむちゃくちゃでデタラメちっくなオカルト表現だけれど、ある一定以上の効果を発揮してきたから、21世紀の今でも、無くならずに使われている…って事だと思うわけです。

 何でもかんでも、科学的に正しい表現が有効ってわけではないのだと思います。無論、論理的で実証可能な表現の方が受け入れられるという人がいる一方で、「難しい事を言われても分からないよ」なんていう人には、科学的に正しくなくても、イメージしやすい言葉の方が、通りが良いというわけなのです。

 音楽をやる人の全員が、論理的で優秀な人ってわけでは無いのです。オカルト表現の方が結果的に良かったりするわけです。

 だから、声を頭の上に通して後ろから回すようにして出す…って言い方は、今でも十分有効なわけです。

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