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アルタスフルートはやっぱり特殊?

 試奏をしているのはヴァイオリンだけではありません。フルートの試奏も相変わらず、折に触れてやっております。目的は…サブフルート(軽くてよく鳴る洋銀系が欲しいです)の選択とか、いっそアゲハをサブフルートにして、新しいメインフルート(その対象は高級総銀フルートとかゴールドフルートとかです)を買っちゃおうかと妄想につかれて、試奏しています。

 とにかくフルートを一本しか持っていないので、何かのトラブルの時に困りますから、いつでも使えるフルートが二本欲しいんです。で、試奏の旅に出向くわけです。

 試奏をするたびに、新しい事に気付いたり、おもしろい情報などを仕入れていますが、なかなか一本の記事にするほどのネタにならない(笑)のが残念です。

 今日は、そんなチマチマとやっているフルート試奏で感じた事です。

 やはり私がフルートの試奏に行くと、吹かせていただくのは、高級総銀とかゴールドフルートが、やはり中心になります。このクラスになると、どのフルートもなかなか素晴らしいです。もう良い悪いではなく、好き嫌いの世界に突入しちゃいます。で、好き嫌いの世界に突入しちゃうと、どのフルートにも触手が動かないのが最近の私です。

 だって、今の私にとって、アゲハが世界で一番美しい音色のフルートなんだもん、そりゃあ、他のどんなフルートを持ってきても、心が動かないわけです。

 ノロケても仕方ないのですが、アゲハは、実に素晴らしいフルートです。基本的にはツンデレだし、じゃじゃ馬なので、その扱いには、未だに苦労させられていますが、こちらの調子さえ良ければ、実に美しい音色で鳴るんですよ。特に、演奏方法を田中会長ご推奨のやり方に変えて以来、ほぼ無敵状態です。一時はパウエルフルートに心を奪われかけていた私ですが、今は「やっぱりパウエルよりもアルタスの方が好きだな」って思ってます。今のアゲハに不満はありません。おそらく、もしも私の心をアゲハから奪えるフルートがあるとしたら、それはアルタスPSくらいでしょう。アルタスPSは、本当にいいフルートだと思いますよ。

 そんな私ですが、それでもまだ見ぬ名器との出会いを夢見て、試奏を重ねていくわけです。

 さて、それはさておき(笑)。本題に入ります。

 私はご存じの通り、アルタス使いなので、どうしても色々な基準がアルタスフルート(具体的にはアゲハ)に置かれます。で、ここに基準を置くと、何か色々なものが見えてきます。そして思う事は「アルタスフルートって、もしかすると特殊…なのかな?」って事です。

 特殊と言っても、もちろん“悪い”と言う意味ではないし、他のフルートと違っている事を選民意識的な発想で持ち上げているわけでもなく、また『人と違ったモノを持っている事を強調して悦に入りたい』わけではありません。そうではなく、単純に“違う”って事を感じるのです。

 特にこんな感覚になってきたのは、フルートの吹き方をアルタス風に変えて以来です。他のフルートをアルタス風に吹くと、すごく違和感があるんですね。

 違和感って言うかは、ずばりはっきり書いちゃえば、アルタスフルートはアルタス風に吹くと、実にまろやかでやさしげで芯の通った充実した太い音で鳴るのです。音色だけでなく、音程も良くなるし、反応も良くなります。でも、普通のフルートは、アルタス風に吹くと、スカスカでうつろな音になっちゃいますし、音程もかなり音痴になります。当然ですが、他のフルートは、いわゆる標準的な吹き方をした方が、ずっといい音になります。でも、アルタスフルートは、標準的な吹き方では、その良さが十分に発揮できないわけです。

 ま、設計が違うんだから仕方がない、と言ってしまえば、おそらく、その通りでしょうね。その楽器の持つ良さを十分に引き出すための吹き方が、アルタスフルートと、それ以外では、違うのだと思います。なので、時々ネットで見かける「アルタスを吹いていると他のフルートが吹けなくなる」という記述は、半分ぐらい合っているような気がしています。

 それで何か問題があるのか…と言うと、別にないと思います。だってね、普通のアマチュアのフルート愛好者ならば、コレクターでない限り、自分のフルートなんて、持っていても、せいぜい1~2本程度でしょ。それくらいの数なら、それぞれの楽器に応じた、適切な吹き方でフルートを吹けばいいわけですから、どんな個性的な吹き癖のあるフルートであれ、別に問題ないし、実際、困ることはないでしょう。

 ピアニストのように、演奏場所ごとに使用楽器が異なるわけではなりません。いつでもどこでも、自分の楽器を持ち運んで、自分の楽器を演奏するのがフルート吹きですから、自分のフルートさえキレイに吹ければ何の問題もないのです。だから、奏法が多少特殊でも問題ありません。

 それにアルタス使いの人は、次のフルートも同じアルタスを購入するケースが多いみたい(あくまで印象です)なので、やっぱり特に問題ないでしょう。

 なので、普通に演奏している分には、何の問題もありませんが、試奏を重ねていくと、やはり「アルタスって特殊なのかな?」って思うようになりました。

 ちなみに、アルタス風に吹いても、キレイに鳴る、他社フルートって皆無じゃないんです。実はヤマハのビジューは、普通に吹くよりも、アルタス風に吹いた時に、結構キレイに鳴るような気がします。ビジューって難しい楽器だと、一部のアマチュアフルート吹きさんたちに言われてますが、実は難しいのではなく、こいつも単純に癖の強い楽器に過ぎないのかもしれません。

 なので、ヤマハの高級フルートって言うと、以前はメルヴェイユにばかり心を奪われていた私ですし、今でもメルヴェイユは大好きなフルートなんですが、最近はビジューもなかなかに好きなフルートだなあと思うようになりました。

 ああ、それにしても、ビンテージ系のフルートを吹いてみたいなあ。ああいう古いフルートは、現代フルートとは色々と癖が違うはずなので、案外、アルタス風に吹くといいのではないかと推測しますが…こればかりはなかなか試せません。残念です。

 それにしても、アルタスフルートの音色って、私は大好きです。吹き方は多少コツがいるかもしれないし、音量的にちょっと寂しいのかもしれないけれど、多くのフルート吹きさんたちに、ぜひトライしてもらいたいなあ…なんて思います。別に、アルタスフルートの話をしているからと言って、オカネなんかもらってないからね(笑)。…くれるなら拒まないけれど(大笑)。

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コメント

  1. ももねこ より:

    やっぱり そうですか
    私もアルタスばかり使ってますが、
    他のメーカーの物は音が出始めるのに時間がかかるのです。
    これは私が初心者だからと思ってました。
    それとも、すとんさんが私と同じぐらい、初心者なのかも。
    使ってるのはPSにH足管特注したの付けたのと
    AFLという、銀色でも全然錆びたりしないやつです。

  2. すとん より:

    >ももねこさん

     他社製フルートは、標準的な組み立て方、あるいはやや外向きぐらいの方が鳴りやすいものがほとんどだと思います。試奏に行くと、店員さんが標準的な組み立て方をして渡してくれるので、まずはそれで吹いてみて、次にアルタス風に組み直してみて「ああ、やっぱりね」と確認したら、今度は標準~外向きでいいポイントを探す。…という手順をまず最初に踏むようになりました。

     と言うのも、なるべくなら、アゲハと違和感なく持ち替えられる楽器の方が、サブ(またはメイン)として使うときに、色々と便利だろうなあと思って確認しています。

    >すとんさんが私と同じぐらい、初心者なのかも。

     ももねこさんと同じくらいかは別として、私は自信を持って言いますが、初級者(残念ながらフルート歴が2年あるので初心者とは言えない…)です。だからこそ、楽器を腕力でねじ伏せられないので、その違いが身にしみるわけです。

     ももねこさんはPSですか? ああ~、うらやましいなあ。それとAFLって何でしょうか? ググってみたら、アルトフルートをAFLと表記するそうですが、たぶん、これの事ではないですよね?

     プラチナメッキは銀色で錆びませんが、それならPTG(PTP)になりますものね。

  3. 河童 より:

    外国の楽器店のホームページを見ていたら、’Arista’というメーカーの頭部管はアルタスに相性が良いと出ていました。たぶん欧米には同じ設計思想の現役のフルート制作者が結構いるのかもしれません。
    外国から日本に入っているメーカーはほんのわずかなブランドものですから当然でしょうが・・・。日本ならば相原さん、秋山さん、桜井さんみたいな方が多数おられるようですね。
    やはり個性を重んじる風土でしょうね。

  4. しーちゃん より:

     軽くてよく鳴る洋銀フルート!私愛用のA907 はいかがですか[E:happy01]
    すとんさんもご存知の通り、お値段以上の良い楽器です[E:heart01]
    メカは洋銀なので、銀に比べたらあまり狂いも生じないかと思います。

     私は先日の30分点検の際、15分くらいリペアの方とお話ししたり、実際に吹いていただいたリして点検の残り時間がわずかになってしまい焦りました。
    が、どこも調整の必要がなく、「綺麗に大事に使っていただいてますね。良い楽器です。」
    と言われましたよ[E:coldsweats01](アルタスさん、自画自賛?)
     
     ぜひご検討を!(って私もアルタスの回し者ではありません(*^-^)

  5. すとん より:

    >河童さん

     おそらく、フルートの設計にも色々な流れというか、タイプというか、カテゴリーのようなものがあるんだと思います。日本のフルートメーカーのほとんどは、ムラマツから暖簾分けしてできたところが多いので、どうしてもムラマツ流のフルートが多くなってしまい、ムラマツと距離のあるアルタスなどは、ちょっと変わった印象になってしまうのでしょうね。

     それにしてもアリスタですか。ググってみたら、アルタスのボディにアリスタの頭部管という組み合わせは、かなり無敵なようですね。もっとも、アリスタも三種類あるそうですから、どれを選ぶかでまた違うようですが。

     アリスタ…アルタス使いは、覚えておいて損はないメーカーですね。

  6. すとん より:

    >しーちゃんさん

     当然、サブフルート候補として、A807とかA907は、ターゲットに入ってます。実際、これらのフルートは価格以上に素晴らしく、コストパフォーマンスは絶大だと思ってます。特に、廉価なフルートにもかかわらず、インラインリング式の選択肢があるのは、素晴らしいと思ってます。で、対抗馬はヤマハのYFL281なんです。悩みますね。あと、廉価なアメリカンフルートもいいかなって思ってます。

     メインもサブもアルタスと揃えたいと思う一方で、アルタス以外のフルートも我が手中におさめたいという二つの気持ちに、いつも心が引き裂かれています。

  7. 紫水 碧 より:

    私はA1407というハンダ付けのやつ使ってます。サブではサンキョウのエチュードを使ってますけど、なかなか良いですよ。アルタス風に吹けるかは人によりますが、ポイントを見つければ少々内吹きでも結構綺麗に鳴りますよ。ただ、息を吹き込んだだけ鳴ってしまうのがネックですが…
    すとんさんはランクの高い楽器の試奏がメインだと書いてありますが、あまり大きな声では言えませんけどサンキョウのそのランクはアルタスに慣れると、スカスカして微妙です。現に知り合いの音大生の友人がピュアシルバーを使っているそうですが、かなりスカスカいうみたいです。ただ、エチュードは良く鳴ると言っていたので、もしかしたら高ランクのものとスタンダードの感じは少し感じが違うかのもしれません。
    もう一つ言っておくと、今までサンキョウのエチュードを使っていたから、サンキョウが合うだろうと思ってサンキョウのハンドメイドを試奏して「あれ?」ってなった先輩が居ました。なので、たまにはランクを変えてみるのも良いかもしれませんね。

  8. すとん より:

    >紫水 碧さん

     実は私、サンキョウとは縁が薄いんですねえ…。試奏に行っても、なぜかあまりサンキョウは吹かないんです。別に毛嫌いしているわけではないのですけれど(笑)。

     私の印象では、サンキョウって、スカスカとまでは言いませんが、あまり“倍音豊か”ってイメージがないんです。ただ、プロ奏者でサンキョウを愛用している人もいるし、アラン・マリオン(大好きです)のようにふくよかな音色で吹く人もいるので、おそらく奏者を選ぶ楽器なんだと思います。きっと、サンキョウのフルートは、サンキョウ風(って、どんな風?)に吹かないと良い音で鳴らないのだと思います。

     それと、アルタスは、上から下まで、基本的に同じもの作っていますが、サンキョウあたりだと、楽器のランクごとに、想定する使用対象者を変えていて、そのために楽器の仕様も少しずつ変えている可能性もありますね。ならば、楽器のランクを変えると、アレ?ってなっても不思議じゃありません。

     サンキョウは…コーカスウッドの木管がありましたよね。私の中では、あのフルートの印象って、めっちゃめっちゃ良いんですよ。あれはたしか限定品なんですよね。高価な楽器なので、なかなか買えませんが、ああいうフルートをサラっと作っちゃうサンキョウって、すごいなあって思います。

     …アルタスは木管フルート、作んないもんなあ。

  9. 河童 より:

    すとんさんは既にご存じだったかもしれませんが
    山野楽器のホームページをみたら
    オール樹脂製のフルートがあるではありませんか!!
    New Voice Flute
    という製品ですがどんな音色なんでしょう
    山野楽器ですからあるレベル以上だと思いますが?

  10. すとん より:

    >河童さん

    >オール樹脂製のフルートがあるではありませんか!! New Voice Fluteという製品ですがどんな音色なんでしょう

     たまたま、さっき、グレーのC管を吹いてきました(笑)。私はこの音、好きですよ。洋銀フルートと変わらない値段で、こんな深い音色の音なら、買いだなと思いました。実際、妻のストップがかからなければ、衝動買いしていたと思います。

     お店の人に尋ねたら、結構、右から左へと売れているそうです。プロ奏者の方々も購入されているそうですから、そのうち、このプラ菅フルートでコンサートをやる人が出てくるかもしれませんね。

  11. 河童 より:

    なんとN響の菅原氏が本番に使用していました
    jurassicさんのホームページに解説されています
    http://www.ne.jp/asahi/jurassic/page/kindan/kindan.htm
    プロが使用しているんですからこの樹脂製フルートは優れものですね。
    欲しくなりました。

  12. すとん より:

    >河童さん

     実際のプロ奏者の使用例のブログ紹介、感謝です。ニューヴォイスフルートって、音質的にはバッチリですが、音量的にどうなの?って思ってました。プロの方が、オケで、それも「マーラーの6番」で使用? もう、全然、問題ないどころか、上物ですよ、この楽器。

     この価格の楽器をプロが本番で使用するなんて、まずないでしょ。それでいて、洋銀フルートと同じか、むしろ安いくらいの楽器ですからね。

     …これから、数年は、この楽器のブームがやってくる? かもしれませんね。やっぱり私も買っちゃえば良かったかな…。

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