試奏に行って楽器を買っちゃダメだとしても、試奏に行って、色々な楽器や弓に触れることは大切な事ですから…と理由をつけて、懲りもせずに、またまた試奏に行ってきました。
今回は、下倉バイオリンに行ってきました。ここはビルの2階にある弦楽器専門店ですが、総合楽器販売店の下倉楽器の1店舗なので、比較的訪ねやすい(…かな?)お店です。いわゆる老舗の風格があって、ジュータンはフカフカで…ああ、ヴァイオリンって高級な楽器なんだなあと、つくづく思い知らされるお店です。とにかく、大人な感じのお店で、こういう雰囲気のお店は、私好きです。ヴァイオリンは買ったらお終いではなく、その後も何かとお店とおつきあいするのですから、そういう事を考えると、こういう感じのお店でお買い物がしたいなあと思いました(買わないけど)。
さて、ここでは、5梃のヴァイオリンと3本の弓を試奏しました。
「ヴァイオリンを試奏したいです」と言うと、さっそく試奏室に案内されましたが、これがまたいい感じのお部屋でした。アンティークなヴァイオリンが飾られた趣味の良い部屋で、すごくよく響きます。ただ、響きすぎるので、この部屋で「良し」と思っても、自宅に持って帰ると「あれ~」って事が起こりそうです。ちょっと、この試奏室は曲者かもしれません(笑)。
予算を伝えて、試奏室を案内されると、ヴァイオリンを4梃と弓3本を持ってきてくださり、まずは店員さんがサラッと弾いてくださって「後はご自由に」という感じにしてもらえました。
最初の楽器は、ゲバのアンティークという楽器でした。これはドイツの楽器と説明されましたが、店員さんが弾くと、中国ヴァイオリンの音がしました。「これは中国のヴァイオリンですか」と尋ねたら、確かに基本的な製作は中国だけれど、最終的にはドイツの工房が責任をもって仕上げているので、ドイツヴァイオリンです、との答えでした。
ブランド的な発想で言えば、部品の調達とか、下ごしらえ(?)とかを、どこでやろうと、それは関係なく、最終的な仕上がりに関して、どこが責任を持ち、どこの会社のブランドで発売されるかが、大切なんだと思います。たとえば電化製品で、その製品をどこの国の何という会社が下請けで作ろうと、それをソニーならソニーの名前で、パナソニックならパナソニックの名前で販売すれば、それはソニーなりパナソニックなりの製品であって、もしもその製品に問題があれば、責任はソニーなりパナソニックなりが請け負うものです。
だから、ヴァイオリンだって、中国であろうと、日本であろうと、最終的なブランドとしての責任を取るところのモデルとして扱うべきだと思います。ゲバのアンティークというヴァイオリンの原形が、たとえ中国で作られたとしても、きちんとドイツで仕上げて、ドイツの会社のブランドで出ている以上、ドイツヴァイオリンとして扱ってよいと思います。
ただ、ドイツヴァイオリンのくせに、私に中国っぽさを見抜かれるようではどうなの?って事です。とにかく、中国っぽいザラっとした音は私の好みではないので、次の楽器です。
次はシモーラの#120という楽器で、このシモーラというブランドは、こちらのお店のオリジナル楽器だそうです。ドイツ製のヴァイオリンです。仕上げはすごく丁寧です。弾いた感じもなかなかグッドです。それに楽器自身から沸き上がるオーラが良い感じですし、手にしっくりと馴染みますし、とても弾きやすいです。ただ、音色がいかにもドイツ音楽って感じで、器楽っぽいんです。いわゆるオーケストラのヴァイオリンの音がします。
こういう音、私、好みじゃないです。
このシモーラの#120の上位モデルの#150も試しました。いやあ、シモーラの#150は、手に馴染みますね。#120も良い楽器だと思ったけれど、こちらは益々良い楽器のオーラが出てます。シモーラ、普通の基準で言えば、超お薦めです…けど、私的にはナシです。やっぱり音色が好みじゃないなあ。
マールの#5というヴァイオリンも弾きました。これもドイツヴァイオリンだそうです。マールはシモーラよりもドライな音色です。私はウェットな音が好みなので、これもナシだなって思いました。
なので、一通り弾き比べて、店員さんから、いかがですか? と尋ねられた時、「私は、こういう音ではなく、もっと華やかなで柔らかい音が好みなんです。こちらのお店で出していただいた楽器は、どれもベートーヴェンっぽいです。私はヴェルディの音が欲しいのです」と言ったら「オペラのような音ですか…それはこの価格帯では難しいです」と、あっさりと言われました。
どうやら、ここのお店にも、リリコソプラノっぽい音色のヴァイオリンはあるにはあるようですが、その手の音色の楽器は、どれもお高いのだそうです。私の提示した予算では、到底、手に届かないのだそうです。どうも私は、カネも出せないのに、高価な楽器の音を求めていたようです。
とは言え、お店の人も、私を一刀両断にして、お終いと言うのではなく、なるべく予算に近づけて、それっぽいヴァイオリンを、一生懸命探してくださいました。
そこで持ってきてくださったのが、シモーラの#180でしたが、たしかに、この#180は、#120や#150と比べると声楽っぽい音になってますが…イタリアオペラじゃなくって、ドイツリートになっちゃっているんですよねえ…。残念。
おそらく、シモーラというブランドが目指す音色の方向性と、私の好みの音色は、全く違うのだろうと思いました。しかし、このシモーラブランド、楽器としての造りはとても良いし、音色に目をつぶれば、とても私好みの楽器なんですが、音色だけがお好みでなく、そこはやはり譲れないかなって気がしました。
弓も試しました。ブランド名は忘れてしまいましたが、6万円のものと、7万円のものと、8万円のものを試しました。値段を気にせずに試して、好きな順番に並べてみたら、値段順になってました(笑)。弓は高い方が良いというのが、何となく分かりましたが…でも、弓に8万円も出せないって(笑)。
まとめ。ここのお店の楽器は、どれも造りが良いですし、店の雰囲気は私ごのみなので、ぜひここでマイヴァイオリンを買いたいと思いましたが、好みの音色の楽器がありませんでした。だって、どれもこれも、ドイツっぽい音のヴァイオリンなんですもの。私の好むイタリアオペラっぽい音の楽器は、このお店では高級品になってしまうので、手が出ません。この店に、20万円程度でイタリアオペラっぽい音色のヴァイオリンが入荷したら、ぜひ買いたいのですが…無理だろうなあ。
それと言うのも、ちょっと前の日本のクラシック界って、ベートーヴェン命だったわけで、このお店は老舗で、その頃の雰囲気をあちらこちらに残していて、それで出てくる楽器がみんな、ベートーヴェンっぽいのだなあと思いました。老舗ゆえのドイツしばりって感じです。つまり、ここって、クラシック系のヴァイオリン屋さんってことなんです。
お店自体は私好みなので、とても残念でした。
コメント
ヴァイオリンの下倉 老舗ですね。
私も ここでカールヘフナーのヴィオラ買ったことあります。
斜向かいの黒澤ではボヘミヤのオールドとイタリアの新作
買いました。
昨日レッスンがありまして、鈴木の第1巻 終わりました、
発表会で足踏みしましたが。
すとんさんも「ウサギさん」になって、追い越してください。
「カメさん」でがんばりながら待ってます。
・・・・・・と背中をおしてみました!
すとんさんは普通に言う初心者ではないんですよね。
音楽を知り、楽しむ素養は身に付いているからです。
技術的なことは、努力と時に適切なアドバイスを受けること。
たぶんここまでの条件はすとんさんに揃っていると思います。後は時間の使い方ですねえ。一日が短すぎる・・・
バイオリンを弾いている気持ちでフルートを吹く・・・これが出来たらなあと思います。
すとんさんはパールマンの弾く音色は好みですか?音色が甘すぎますか?
彼の奏でるベートーベンのソナタ「春」の香りをフルートで吹けたら・・・天国的な目標です。
>ももねこさん
下倉は、感じの良いお店ですね。今回は、私の予算の問題で、ここのお店はあきらめざるを得ませんでしたが、潤沢な予算が用意できたら、この店も良いかもしれません(って、私の場合、潤沢な予算をヴァイオリンに注ぐことは、たぶんないと思うけど:笑)。
いやあ、記事本文にも書きましたが、この店に来ると、ほんと、ヴァイオリンって高級なセレブな楽器で、庶民は手を出すどころか、近寄ってもいけません、って感じます。まあ、その一方で、庶民的な楽器屋さんでも、ヴァイオリンって扱っているわけだから、私のような庶民は、そういう庶民向けのお店にいけばいいだけの話なんですが(笑)。
スズキの1巻、終了ですか。おめでとうございます。私は後から、エッチラオッチラと付いていきます。入門編終了みたいな感じですよね。
ところで、全然関係ないのですが、ヴァイオリンの場合、どれくらいになれば、初級者卒業なんでしょうね。どれくらいって言うのは、どの教本の何巻を終了したらとか、どのくらいの曲が弾けるようになったらという、まあ、大雑把な話なんですが…。
と言うのも、スズキって、たぶん2巻に入っても、まだまだ初級者のような気がするもので(違う?)。
>河童さん
たぶん、私はいわゆるヴァイオリン初心者ではないと思いますが、初級者ですよ。あるいは、耳年増って奴かな? 聞きかじりの知識ばかり多くて、実践はからっきしダメってパターンの人間です。一番、手に負えない、生意気で、いやらしいタイプですね(笑)。
イツァーク・パールマンに関しては、多く語るべきものは持ち合わせていません。知らないわけではないし、CDも数枚持ってますが、今までの私は、ヴァイオリン曲に関しては、曲をじっくりと聞いても、演奏をじっくりと聞くことはありませんでした。
だから、奏者の違いとか聞き比べなどの勉強(?)はこれからですが、でも、たぶん、大好きです。と言うのは、私、ベートーヴェンのロマンス(有名なのが二曲ありましたよね、どっちだかよく覚えてません:笑)が好きなんですが、これって“パールマンに限る”と思ってますから(笑)。
いや、実際、パールマンの演奏する、ベートーヴェンのロマンス(さて、どっちでしょう?)は大好きです。よく、友人から「BGM集を作ってよ」って頼まれると、ほぼ確実に入れます(!)。
何だかすとんさんはいずれ楽器を買ってしまうような気がします……(暗示(笑))
下倉楽器……雰囲気が怖くて入ったことがありません。が、日記を拝見して行ってみたくなりました!!
中国の楽器、産地が分かったって凄い!!
ドイツ楽器の音、っていうのも、やっぱりあるみたいですね。
北ドイツ放送響とかみたいな? いかにもソリッドな音。私は結構好きですが、キラキラ&とろっとろ(ひどい表現……)のイタリアっぽい音が、ヴァイオリンとしては最高の音のような気もします(モーツァルトの頃までは、間違いなくイタリアこそ欧州の音楽の中心地だったのですし)。
私が弾いてる楽器はスウェーデン製(マイナー……)で、凄い安物なのですが、フィドルの先生は「やっぱりスカンジナヴィアらしい音」と言います(悲鳴のような高音と無骨な低音?)。職人さんが聴いて育った音楽とか、風土とか、やはり楽器に反映されるでしょうから、お国柄ってあって当然なのかも知れません。
ともあれ、ご予算内で良い楽器が見つかりますように!!
私もそろそろ試奏の旅に出ようと思います!!
>Yukiさん、いらっしゃい。
ヴァイオリンは買いたいんです。今、借りている楽器に不満はないのですが、それなりにちゃんとやりたいと思った以上、借り物ではなく、自分のもの、たとえ安物でも、自分のパートナーが欲しいじゃないですか。だから、いづれは買いますが、今は、何を買ったら良いのか、楽しく考えている最中なんです。
ヴァイオリンって、やはり楽器による音の違いってありますね。もっとも、音は違いますが、それが良いか悪いは別問題で、基本的には好きか嫌いかって話になると思うし、演奏形態によっては、どれだけ音色を重視するかって変わると思います。ソロ志向の人にとっては、音色は死活問題ですが、合奏を主にやっている人にとっては、音色よりももっと大切なことがたくさんあると思うし、ポピュラー系の人は…エレキの方がいいかもしれないです。
しかし、上手だなあ。イタリア系のヴァイオリンの音を「キラキラ&とろっとろ」という表現。確かにそうなんですよ、“キラキラ&とろっとろ”なんですね。で、私はその“キラキラ&とろっとろ”が大好きだから、たまらない(笑)。
私の相棒になる楽器は、いったい、どんな楽器なのかな? ま、価格的には、中国生まれの子になりそうな予感がします(別に中国系ヴァイオリンに偏見はもっていないつもりですが、ザラっとした音はかなり苦手なだけです)。
>私もそろそろ試奏の旅に出ようと思います!!
試奏は、ちょっぴり勇気はいりますが、とっても楽しいですよ。
おはようございます ごぶさたいたしております(ず~と、よませていただいてますがw)
背中オシか、バケツ水か、どっちになるかわからないですが、、、、、、いっそのこと、「ひいろ」さんに、いまの「ばよりん」と「弓」譲っていただいたらどうなんでしょう? 「借り物に、惚れて愛着わきました」とか、言ってみたらどうでしょう :)
>ととさん
ヒイロさんとは近いうちに会います(ってか、彼のライブに行くんだけどね)し、それ以外でも顔を合わせるチャンスがあるので、いつまで借りっぱなしのままで良いのかも含めて、相談してみます。
借りているヴァイオリンは結構、気に入ってます。不満は(まだ)ありません。でも、試奏をして、世の中には、もっと私の心を捕らえるヴァイオリンがある/あるかもしれませんので、やっぱり、ちょっとでも上を見たいという思いはあるんです。
私が「ヴァイオリンの予算は20万円」と言っている理由の一つに、今借りているヴァイオリンがセットで10万円弱くらいなので、その倍の値段のものが欲しいなあ…という思いがあります。
はじめまして。バイオリン初心者です。バイオリン購入にこの記事がとても役に立ちました!。シモーラ#150を買いました!ありがとうございます。GEWAはホントに中国の音がしました。。。
>マイリーさん、いらっしゃいませ。
そうですか、シモーラ#150をご購入されましたか、あれは良いヴァイオリンだと思いますよ。この記事を書いた時の私の好みとは違っていましたので、辛口記事を書きましたが、今、自分の(安物ですが)楽器を持っているので、持ち替え楽器として考えるなら(つまり、違う音色の傾向を持つ楽器として購入するなら)、シモーラ#150を買っちゃうかもしれないなあ。だって、音色の好みが違っただけで、あとは大変気に入った楽器でしたから。
良い楽器を買われましたね。あとは…練習ですね。私もヴァイオリンの練習をしないとな。
私は楽器について話し相手がいないので、ここにおじゃまします。
Shimoraで検索したら1ページ目でこのブログと出会うことになりました。
2010年の場所なのでコメントと言うより私のひとりごとです。
私は音楽の専門教育を受けたことがありません。高校の時の科目が最後です。
ですが52歳でバイオリンを始めました。なぜこの歳でかと言うと、私は高校の教師を
していて今の高校に異動したとき無理やり音楽部の顧問にさせられたのがきっかけです。生徒が練習をしているのを見ているのだけではつまらないので始めました。
部室には安物のバイオリン5挺、他にビオラやチェロが数挺ありました。
いい歳をしてバイオリンに興味を持ちましたが長続きする自信が無いのでShimoraの#120を購入しました。御茶ノ水の下倉バイオリンで店員さんにおまかせで選びました。今もそれを弾いています。学校の部室にあるのより良い音だと思いますが最初から満足できる音色ではありませんでした。値段からしてこんなものなのだろうと思っています。毎日1時間、休日で2時間の練習ではある程度以上は上達しません。おまけに我流です。練習場所にも困ります。家では近所迷惑だと妻に叱られ、仕方なく休日は公園で練習します。当然いろいろな人に見られます。去年あたりから中国人らしい観光客も増えて勝手に間近で写真も撮られます。自分の持っているバイオリンがどの程度のものなのかわかりませんでしたがブログを読ませていただいてそんなに悪いものではないのかなと思い安心しました。でも来春定年退職なので退職祝いにもう少し高いバイオリンを買おうかなと思っています。もちろん妻には内緒で。でも試奏だけのためにお店に入る勇気はありません。お店との付き合い方もブログを読ませていただいて参考になりました。
Shorin Binshinさん、いらっしゃいませ。
楽器は良いものがいいですね。所有しているだけで、心がウキウキしてきます。
以前、師匠が言ってましたが、ヴァイオリンの値段というのは、その音色ではなく、その音量を評価して付けられているんだそうです。つまり、高い楽器ほど、大きな音量で鳴る…と言うか、ppからffまでの音量の幅が広い…と言えるようです。
なので、当時の私はジャズヴァイオリンをやっていましたので、当然、マイクが前提なので、音量の大きな楽器は不要でした。ですので、値段を気にせずに楽器を選ぶように言われました。音色は、本当に、楽器によって千差万別ですからね。
で、結局は、ホワイトヴァイオリンを購入して、自分好みに仕上げてしまったわけなんですが(笑)。ですから、音色は大好きですが、音量は小さめです。
ヴァイオリンかあ…今も私のすぐそばのスタンドにかけてありますが、もう長いこと弾いてません。ペグのあたりには、うっすらとホコリも積もってます。たまにはヴァイオリンも弾いてやらないといけませんね。