読めない本は存在しないに等しいです。例えば、絶版本で入手困難な本は読めません。かつてこの世に存在していたのかもしれませんが、今現在、流通していない書物は、個人的には、存在していないと言っても良いと思います。
ただし、そんな絶版本でも、図書館等に収蔵されているモノに関しては、存在しないと言っては可哀想かもしれませんね。だって、読めますもの。そういう意味では、商業的に絶版が避けられない本にとって、図書館収蔵というのは、大切な事かもしれません。
とは言え、国会図書館などの特別な図書館を除いた、ごく一般的な街の図書館を対象にした限りでは、毎年図書館に収蔵される本なんて、出版された本のうち、ごくわずかな一部ですし、それらの本のすべてが常に閲覧可能というわけではありません。閉架図書や倉庫に移動するモノはまだマシで、毎年、廃棄されてしまう本もそれなりにあります。
新しい本が出版される一方で、古い本が次々と廃棄されてしまうのは、ある意味仕方ないですし、そうやって図書館の蔵書も更新されていくわけです。それにたとえ廃棄されてしまうにせよ、一時だけでも図書館に収蔵される本はラッキーなのです。と言うのも、最初から図書館に収蔵されないタイプの本もあるからです。
その、図書館には収蔵されないタイプの本、いわゆる消耗品扱いの本、例えばマンガ等は、日本の出版界で大きな存在にも関わらず、現在市場に出回っているのがすべてで、絶版になってしまえば、そのまま世の中から消えてしまいます。大きな利益を出して会社の屋台骨を支えているにも関わらず、本としての扱いは案外軽いのです。そして、ちょっと売上が落ちると、あっという間に絶版になってしまうのもマンガです。マンガにとって、売れる事だけがレゾンデートルなんです。
大半の一般書籍は、マンガほどには売れません。それでも図書館に収蔵されれば、読者の手に届くわけで、本としての寿命は永らえます。図書館利用者からは著作権料は取れませんが、そもそも一般の人って本を購入しませんからね。もしも本が図書館に収蔵される(つまりは図書館に購入される)前提がなければ、多くの本は出版すらされないわけですから、そういう意味での、図書館の役割ってすごいですね。
マンガは…本としての寿命は短いです。なにしろ消耗品扱いですからね。
マンガも図書館に収蔵されたり、マンガ専門図書館が全国にあれば、話は別でしょうが、おそらくそうはなりません。だって、マンガは黙っていても売れます。わざわざ図書館に収蔵されなくても、出版社は十分に利益が得られます。
売れない本なら図書館収蔵はありがたいですが、売れる本に関しては図書館はありがたくないです。図書館に収蔵されてしまえば、むしろ、本来の売上が減ってしまう可能性が大なのです。現在だって、安売り専門の古書店で安価にマンガの新古本が流通しているために、出版業界はそれなりの痛手を負っていると言いますもの。これが新刊マンガ本が全国的に図書館に収蔵されるようになったら、大変な話になるでしょ? それこそ、安売り専門の古書店どころの騒ぎじゃないです。
それもあって、マンガは大量に作られて、大量に販売されて、多大な利益を生んで、大量に破棄されて、売れなくなれば絶版になるのです。やっぱり消耗品だね。
マンガの中にも、優れた内容の作品や時代とリンクした作品はあります。そういう意味では、小説等と同じで、もはや我々の文化の一部になっていると言えますが…消耗品である以上、図書館に収蔵される一般書籍のような形で保存していく事は難しいです。
マンガは、どうやって残して、伝えていくべきなんでしょうね。それとも、消耗品として潔く、消えていき、忘れられていくもの…なのでしょうか?
私が子どもの頃は「のらくろ」に夢中になったものです。あの“布張りの単行本”は、多くのウチにあったと思いますが、今やその大半が廃棄されているでしょう。もちろん、マンガですから図書館にはありません。流通もしていません。一部の古書店では高値で取引されていますが、そんな高価なモノはもはや本ではなく骨董品です。一部の好事家のものです。
今の若い世代は「のらくろ」を知りません。それでいいんだとも言えますが、私は「なんかなあ…」って思うんですよ。「のらくろ」って、当時の子どもたちに読まれ、その次の世代にまで影響を及ぼした、時代とリンクしていた作品だと思いますよ。このまま消えてしまうのかな? せめて電子化されれば、読めるんだけれどなあ…。
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