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“初老”という言葉について思うこと

 年齢の別称として、割と有名…と言うか、よく使われるものに、以下のようなものがあります。

 60歳 還暦(かんれき)
 70歳 古稀(こき)
 77歳 喜寿(きじゅ)
 80歳 傘寿(さんじゅ)
 88歳 米寿(べいじゅ)
 90歳 卒寿(そつじゅ)
 99歳 白寿(はくじゅ)

 これらの年齢の別称が有名なのは“賀の祝い”と連動しているからであって、昔はこれらの年齢になった時にお祝いをし、そのお祝いをこのように呼んだ事から、年齢の別称として定着したのだと思われます。

 “賀の祝い”とは、一定の年齢になった事を祝う儀式の事で、現代での有名な賀の祝いとしては、成人になった時に行う“成人式”があります。この“成人式”は、昔は“元服”とか“裳着”とか言ったようですが、それらが姿と形を変えて“成人式”になったわけです。もっとも現在では18歳で成人となると法律が改正されたため、従来の“成人式”は自治体ごとに名称を変更したりしなかったりとしているようです。例えば「はたちのつどい」とかね。だったら、そのお祝いを18歳でしてあげればいいし、賀の祝いの主旨的には、その方がずっといいのになあ…と思ったりします。まあ、いいや。

 昔は年齢も数えだったので、誕生日を祝う習慣もなく、お正月を迎えると、一斉に年を取ったものですから、お正月を迎える事を“賀正”と呼んだのでしょうね。

 ちなみに、私は60歳になった時に、還暦だったのに、何のお祝いもなかったなあ…。なんか、寂しいです。

 閑話休題。これらはまあ良いとして、少し前から気になる言葉の一つとして“初老”という言葉があります。“初老”というのは、あまり有名ではないのかもしれませんが、年齢の別称のひとつで40歳を指します。今は行われませんが、昔々は“賀の祝い”の一つとして、40歳になった時に“初老”のお祝いをしたそうです。

 まあ、今どきは40歳なんて、誰でも当たり前のように迎えるから、わざわざお祝いなんてしなくなってしまっただけの話なのです。そういう意味では、そのうち、還暦も(私のように)祝われなくなるのかもしれません。

 とにかく、初老は40歳を指す言葉です。まあ、40代を指す言葉と言ってもいいかもしれません。それから波及して…。

 少年 20歳以前
 青年 20~29歳
 中年 30~39歳
 初老 40~49歳
 中老 50~59歳
 老年 60歳以降

 …と呼ぶと言う人もいます。ってか本来の言葉の意味で言えば、こうなりますって話です。

 40歳が初老ならば、言葉の定義上、そうなるのかもしれません。実際、中年とは、青年と老年の間の年代と定義するならば、30歳代とされる事に私も同意しますが、中老という言葉に落ち着きの無さも感じます。まあ、この言葉は、人々の多くが40代とか50代で死んでいた時代の呼び方なんですよ。そもそも暦が60年周期なのは、人が60歳を超えることは滅多に無いという大前提があったからです。

 さて現在、法律用語としての“老人”は“高齢者”に置き換わっています。では、高齢者とは何歳の事を指すのかと言えば、介護保険法によれば…。

 前期高齢者 65~74歳
 後期高齢者 75歳以上

 となっています。まあ、WHOの高齢者(Old Age)の定義も65歳以上だから、このあたりが21世紀の人の感覚なのかもしれません。なので、この前期高齢者を指して“初老”と誤用する人が出てきても不思議ではありませんが“初老”という言葉には40歳という定義がある以上、前期高齢者は前期高齢者であって、決して“初老”では無いのです。

 おそらく前期高齢者を“初老”と呼ぶ人の感覚では、老人というのは、75歳以上の後期高齢者を指しているのだろうと思われます。そしてその理由として「65~74歳は初老であって、老人ではない」と言い張りたいのかもしれません。でも、前期と後期の違いこそあれ、高齢者は高齢者であって、高齢者とは老人の言い換えに過ぎないのだから、21世紀であっても、65歳以上は老人なんだと思います。

 いやむしろ、私的には、65歳以上が老人ならば、60~64歳は還暦過ぎているのに老人ではないのか?という、なんともモヤモヤした気分になっちゃいます。60歳で定年退職する人(私のことだよ)なんて、まだ老人になっていないのに「もうお年寄りだから定年退職してね」ってわけで、これまたモヤモヤした気分になるわけです。

 65歳以上が高齢者なら、60~64歳は“プレ高齢者”扱いなのかね? なんか納得いきません。私個人的には、WHOはどうであれ、日本人的には「還暦すぎたら老人」と言い切ってくれた方が、気持ちがラクになります。実際、年金だって希望すれば60歳からもらえるわけだしね(私はもらわないけれど)。

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コメント

  1. tetsu より:

    >“初老”という言葉について思うこと

    御存知かとおもいますが、長谷川町子による「サザエさん」の磯野波平(磯野家の大黒柱で、3姉弟(サザエ、カツオ、ワカメ)の父)の設定は54歳です。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%B6%E3%82%A8%E3%81%95%E3%82%93

    こちらは還暦すぎましたが、10代に読んだ本を再読したい今日この頃です。
    関心のあるところはあまり変わっていないのにビックリです。
    失礼しました。

  2. すとん より:

    tetsuさん

     波平さんは54歳ですか? 若いなあ…。ちなみに、バカボンのパパは41歳ですね、こちらも若い若い。

     サザエさんというと、今はアニメのイメージが強いですが、私にとっては、最初に見た、江利チエミのサザエさんが一番印象深いです。たぶん、アニメ版よりも江利チエミ版の方が古いんだと思います(ウィキペディアを見ても、江利チエミ版の方が古いみたいですね)。

     アニメにせよ、小説にせよ、昔のキャラクターって、年寄設定でも、今の視点で見ると、案外そうでもなかったりして、時代のギャップを感じます。

     最近読んだ、太宰の小説に“老夫人”と呼ばれる人が登場するのですが、この人の年齢が、なんと54歳なんですよ。波平さんと一緒です。太宰の晩年とサザエさんの連載開始時って、ほぼ同時代なんですよね。あの頃は、54歳というと、立派な爺婆だったんでしょう。今どきの54歳の紳士淑女の皆さんに、そんな事を言ったら、はっ倒されるかもしれません(笑)。

  3. tetsu より:

    こんばんは。

    >バカボンのパパ

    以前フルートレッスンに通ったころ、「スケールはどこまでさらうの」、と聞いたとき師匠曰く「納得するまで」。
    当時納得という言葉もわかっておらず、使っていたモイーズの480は冒頭で挫折しました。

    先日のTV放送で
    「納得って?」
    「『これでいいのだ』って」
    @木工を習う子と教えるおじさん

    バカボンのパパは放送時はあまり気にしていませんでしたが、今になるとスゴスギです。
    再開した今日この頃です。

  4. すとん より:

    tetsuさん

     バカボンって、裏モチーフとして仏教があるんだそうです。

     例えば、バカボンの漢字表記は“薄伽梵”であり、つまりお釈迦様の事を指す…とかね。もちろん「これでいいのだ」もすべてを肯定する、涅槃の境地を表す…とかね。その他の登場人物や決め台詞にも仏教的な意味を持つものが多々あるとか?

     まあ私は、当時は(今も?)そんな事を考えずに「天才バカボン」を楽しんでいますが(笑)

     これでいいのだ。

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