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高音は、天使の翼を広げて吹くべし!

 私が得たもの…正しい音程、大きめな音量。
 私が失ったもの…美しい音色。

 フルートの頭部管の向きをメーカーの推奨に変えたことで、正しい音程と大きめな音量を手に入れた私ですが、同時に、これまで2年弱かけて育ててきた音色を無くしてしまいました。正しい音程と大きめな音量を手に入れたことは、うれしいけれど、なんか楽しくないです。やっぱりフルートは、美しい音で奏でてこその楽器だと思いました。

 さて、フルートのレッスンに行ってきました。

 今回も、私の壊れた音の修繕レッスンです。前回、低すぎる音程と高すぎる音程の修正方法を学んだので、今回は、スカスカになった第三オクターブの修繕です。

 私が高音を吹いている姿をじっくり観察していた笛先生、ふと、私があまり背中を使わずにフルートを吹いている事に気づきました。そこで私に“背中を十分に使うよう”に指示を出します。

 背中の使い方…先生は色々とおっしゃってくださいましたが、最終的に私自身が感じたイメージではこうなります。

 “背中を使う”とは“背中の上半分の中央部を外側に広げること”、イメージ的には『背中に生えた天使の羽根を思いっきり広げる』感じにします。分かりますか? そして、音が高いところに行くに連れ、天使の羽根をドンドンと広げていく感じになります。つまり、音の支えをお腹ではなく、羽根を広げる力で支えていく感じになります。そうすると、高い音がとても楽に吹けるようになります。

 天使の羽根を広げて演奏すると、自分的には高音域が楽に吹けるだけなんだけれど、第三者がその音を聞くと、音色がかなり変わって聞こえるそうです。もちろん、私の場合は、良い方向に変わるわけなので、高い音程(第三オクターブなど)を吹く時は、背中を使ってフルートを吹くように癖をつけた方が良いでしょうと言われました。

 さらに美音クリニックは続きます。

 私のフルートの音がスカスカになっている理由は、どうやら大きな音を出しすぎるからだそうです。と言っても、別に、私が望んで大きな音を出しているわけではありません。普通に吹いているつもりで、大きめの音が出てしまう状態なのです。ちなみにどれくらい大きな音なのかと言うと、自分のフルートの音が骨伝導で内耳に振動が伝わり、頭の中がむずかゆくて仕方がないくらいの音量です。ですから、かなりの音量ですね。今なら、吹奏楽団に入っても、音量だけなら、結構イケるかもしれません(請われても入りませんが…だいたい誘われることなどありえませんし:笑)。

 で、普通に吹いて、これだけ大きな音が出てしまう状態は、まさに『音が壊れている』状態なのだそうです。なので、音が壊れたら、すぐに直さないと、壊れたままの状態が普通の状態になってしまうのだそうです。ああ、恐ろしい。

 いつぞやのオープンスペースでのフルート試奏会で、私以外の方々の演奏音がやけに大きくて、私はちっとも自分の音が聞こえずに腐ってしまった事がありましたが、ああ、あの時の、あの人たちの音は、壊れてしまってどうにもならなくなってしまった音だったんだなあと、今さら気づきました。たしかに、音量ばかりあって、全然美しくなかった。楽音ではなく、まるで騒音として、嫌悪感すら感じたのですが、今、自分の音が楽音ではなく、騒音になりつつあるのかと思うと、愕然としますね。早急に、どうにかしないと…。

 とにかく、息の使用量を減らして、音量を落としてみましょうと言われました。すこしずつ息を減らしていくと、ある所を境に、クイッっと別の次元に入るのが分かります。“フルートを鳴らしている”のではなく“フルートが鳴っている感じ”になります。ああ、そうそう、この音がアゲハの美音なんだね。

 フルートは乱暴に扱うとすぐに音が壊れてしまう楽器なんだそうです。乱暴と言うのは、指にばかり気をとられて、音色のことを忘れて演奏してしまう事なんだそうです。あるいは、怨霊、いや音量ばかりに気を取られて音作りをサボっていると壊れてしまうのだそうです。笛先生ご自身もライブのあとは、音が壊れしまうそうです。なので、音が壊れたら、すぐに直し、直しても壊れたら、また直し…の繰り返しなんだそうです。

 私自身で言うと、頭部管の向きを急に変えた上に、アルテの練習で指の事ばかり考えて、指優先でフルートを吹いていたツケが、一挙にここに出たみたいです。

 フルートは、まず美音重視の音色優先で行かないとダメですね。もちろん、ある程度の音量も必要だし、指が細かくまわる事も必要だし、音程が正しいことだって必要ですが、やはり優先順位で言うと、美音が一番先。音が美しければ、音量が小さかろうが、指が多少転び気味であろうが、音程が若干甘かろうが、なんとかなるものです。

 ま、もっともそれは私がソロでやっているからだし、笛先生もソリストだから「美音が一番!」って言うのだけれど、これが合奏メインでやっていると、話はちょっと違うかもしれません。合奏だと、一番優先されるのは音程、つまりピッチでしょうね。次は指の運動性。そして音量。音色は、合奏の形態が大きくなればなるほど、個々の楽器の音が聞こえなくなってくるので、さほど重要視されなくなってしまうかもしれません。とにかくTPOが大切ってことですね。念のため。

 とりあえず、フルートを吹く時は、耳をダンボにして、息を少なめ、音量も少なめで、注意深く音出しをしていく事が肝心です。指の練習も必要だけれど、それよりも私の場合、何よりも音作りを優先していかないと…そう思いました。

 「息を吸ったら、なるべく吐かないこと」と言われました。つまり、息の使用量を減らすこと。息はたくさん吸って、吸ったままで我慢して、ちょっとずつ息を使っていくようにする。当然、苦しいけれど、それは我慢我慢。…これって、声楽で言うところの『息に溺れる』という状態ですよね…。「苦しいですよね…」「そう、苦しいかもしれませんね…」 訓練あるのみってところですか。たしかに苦しいけれど、これで良い音色が手に入るなら、頑張んないとダメですね。

 本日の結論、息を減らして、背中の羽根を広げて演奏すると、いい感じの音色になります。

 さて、アルテもやりましたよ。アルテの12課の7番は合格。8番(旋律練習)は不合格。私の予定通りです(笑)。ちなみに、7番のような課題は音を壊す練習なので、今の私にとって、本来なら、やるべき練習ではないそうです(それどころか、アルテ自体がいけないそうですが…そこはちょっと目をつぶっていただきましょう:笑)。

 12課の8番は目下、譜読みが終わり、指の動きを体に染み込ませている最中です。家ではメトロノーム70の速度で練習しておりますが、なかなか、ちゃんと最後まで通りません。目標の84までは、道は険しいです。

 ところで、ゴールデン・ウィークの話を先生としました。「私のゴールデン・ウィークはショパン漬けです」と答えたところ、それは良い事だと言われました。ボサノヴァの創始者のカルロス・ジョビンはショパンの強い影響下にある人で、ボサノヴァという音楽も、ショパンの音楽が下敷きになっている部分があるんだそうです。だから、ボサノヴァをやるためにも、ショパンをたっぷりと聞いておくのは、良い事なんだそうです。実際、ショパンのフレーズがたくさん体に入っていると、ボサノヴァをやる時に便利なんだそうです。

 へー、知らなかったよ。ためになるなあ。ならば、気合を入れて、ちょっくら、ショパン漬けになってみるのも、悪くないね。

 ショパンのCDって、それなりに持っていますが、ラ・フォル・ジュネで聴けるようなマイナーな曲のCDは持っていなかったので、この機会にショパンのコンプリート・ボックスを買っちゃいました。しかしショパン39年の仕事がたったCD16枚とは…ショパンって寡作な作曲家だったんだなあ…。

 さて、次回のレッスンまでに、12課の8番の旋律練習を、音が壊れないように気をつけながら、やっつけてくるか。がんばっていきましょう。

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