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音楽関係の本は、なぜ電子書籍化しないの?

 実は、かねてからずっと不思議に思っている事です。

 最近の私は、楽譜以外の紙の書籍を買わない事にしています。と言うのも、家の中が本だらけで、足の踏み場もないし、本が生活空間を圧迫しているので、もうこれ以上、本を増やすわけにはいかないからです。

 でも、本は読みたいのです。そこで、電子書籍なんです。電子書籍はデーターですから、場所を取りません。何万冊あっても、すべてiPadの中に収まってしまいます。ほんと、収納場所を必要としません。おまけに拡大が自由自在ですから、老眼な私にとっては、大型活字本にも匹敵するほど、目に優しいので、大変便利にしています。場所的な問題と、老眼的な問題の二つから、私は電子書籍だけを読むことにしているのです。

 でも、世の中の本のすべてが電子書籍化されているわけではありません。電子書籍化されていないモノについては…読むのを諦めることにしました。最初から、この世に存在しないモノと考える事にしました。だって「この本、電子書籍になっていないから、紙の本を買いました」なんて事を繰り返していたら、今までの生活と、何にも変わらないからね。

 なので、本屋に行って、書棚を眺めて、読みたい本を見つけたら、その場で買わずに(ごめんなさい>本屋さん)、電子書籍版を探して、それで購入するようにしていますが、以前は、電子書籍として販売されている書籍は限られていましたので、多くの本を諦めていた私ですが、最近の新刊は、大抵、電子書籍版も同時に販売しているので、読みたい本を諦めるという事は、あまりしなくて済むようになりました。なにしろ昨今は、雑誌だって、電子書籍で販売しているくらいですよ。

 もちろん、その一方で、今でも電子書籍としては販売されず、紙の本のみで販売されているモノがあります。

 その代表的なのが、音楽関係の書籍です。音楽関係の書籍って、ほんと、電子書籍化されませんね。声楽系の本も、合唱系の本も、発声系の本も、フルート系の本も、音楽家のエッセイ本も、音楽雑誌も、本当に電子書籍化されません。

 ちょっと調べたところ、音楽之友社の場合、ほんの数点の書籍のみ電子書籍化されているようです。だいたい、昨年の6月から月1冊のペースで、ちょぼちょぼと出てます。ほとんど“焼け石に水”状態です。他の音楽系の出版社について調べたところ、やはり同じような感じで、どの出版社も、電子書籍化されている書籍は、指で数えるほどしかありません。

 大半の音楽関係の書籍が電子書籍化されないので、購入したくてもできないし、読みたくても読めません。

 まあ、私に残された人生の時間も短いので、音楽関係の書籍を読めなくても、他に読みたい本は、ヤマのようにあるので、別に困らないと言えば、全然困らないし、平気なんだけれど、可哀想なのは、本当だったら私が購入をしたはずの本を発行している出版社だよね。売れるはずの一冊が、売れなかったわけだから。

 私は、本を古本屋、とりわけ“新古書店”で買うことをポリシーとして避けています。本は必ず新品を街の本屋で買っていました。ただし、絶版本のみは、さすがに旧来の古書店(たいていの場合は、古書専門店に行きました)で購入するというやり方をせざるをえなかったです。で、街の本屋で購入していた本を、ネットの電子書籍を購入する…に変えたわけです。

 まあ、私のような人は、まだまだ少数派だとは思うけれど、世の中には確実にいるし、少しずつ数を増やしていると思うんですよ。

 昔の本は、活字を拾って版を組んで印刷していたわけで、そんなものを電子化するには、一度印刷したものを、1ページ1ページごとにスキャンしなければいけなかったので、その手間ひまが大変な事は想像できますし、古い本を簡単に「電子書籍化しろ!」とも言えなかったと思いますが、最近の書籍は、大半が電子入稿ですから、スキャンの必要もなく、電子データを紙に印刷するか、電子書籍データに変換するかの違いぐらいしかないはずなので、実は電子書籍化するのは、そんなに手間なんて掛からないはずなんです。

 ただ確かに、今まで紙の本で出版していたモノを電子書籍化することで、傾く業界はあります。

 具体的に言えば、印刷業界ですね。印刷屋とか製紙会社とかインク会社とかは、紙で本を印刷しなくなったら、商売あがったりです。

 しかし、肝心の出版会社は、直接印刷をするわけじゃないですから、別に電子書籍にしたところで、何か困ることがあるかと言えば…特にないはずです。むしろ、電子書籍の方が、書籍化のコストは(印刷のみならず、流通の経費も不要ですから)低いはずで、価格を同じにすれば、それだけ利益が増えるし、電子書籍の方を安い定価で販売したとしても、やはりマージンを多めに取ることで、利益を若干多めに確保できるわけだし、何より、私のように「紙の本は買わない」って決めている人でも電子書籍なら購入してもらえるわけだから、電子書籍にしない手はないはずなのです。

 それもあって、多くの出版社では、紙の本と同時に電子書籍も販売しているわけです。

 もう一つ傾く業界が、街の本屋さんですね。これに関しては、本当に申し訳ないと思ってます。今まで散々お世話になっていたわけですが、それを電子書籍購入へ切り替えたために、街の本屋さんからネット書店へ購入先を変えてしまったわけですからね。

 閑話休題。ほんと音楽関係の書籍って、見事なくらいに電子書籍化してくれないので、私、全然音楽関係の書籍を購入することができてません。これ、本当に残念なんです。

 音楽関係の書籍って、出版しているのが、音楽関係の専門出版社ばかりであるって事と関係あるかなって思います。専門出版社であるため、そもそも商売の規模が小さく、会社自体も小さいため、電子書籍化に必要な人員を割くことが難しいので、電子書籍化が後手後手にまわっているのかもしれません。

 世の中、すでにちらほらと、流通やコストの関係もあって、電子書籍だけの出版で、紙の本は販売されません…なんて本も出始めたのに、未だに紙の本に固執している(固執せざるをえない?)音楽専門出版社って、商売的にはかなりマズイんじゃないかなって…他人事ながら、ちょっぴり心配しちゃいます。おそらく、もっと商売がジリ貧になって、にっちもさっちも行かなくなるまでは、本格的に電子書籍化の方向には舵を切らないんじゃないかなあ…って思ってます。

 電子書籍化が遅れれば遅れるほど、潜在的読者を失っているんです。それが商売のジリ貧につながっていく事に…おそらくはすでに気づいているのでしょうが、効果的な手が打てないのだろうと思います。そこは会社規模が小さいがための、余裕の無さってヤツなんだろうと思います。

 頑張れ、音楽関係専門出版社のみなさん!

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コメント

  1. とも より:

    タブレット楽譜で歌っていた外国人ソリストに出会ったことがあります。
    隣で歌っていたソリストと譜面をめくる手つきが違うなと見ていたのですが、タブレットだと気づいた時には驚きました。
    オペラか、ソロ付交響曲かも覚えていないのですが…

    譜面、重いですから便利ですよね。

  2. ドロシー より:

    すとんさん、こんにちは。

    印刷業は、最近は広告業化しているところが多いのではないかと思います。例えばチラシを印刷していたことろは、ネット広告も絡めた提案をしたり、配布まで代行したり、「売上に繋がるチラシの作り方のアドバイスをして固定客を取り込もうとしたり・・・
    本屋は本当に気の毒ですね。近くの本屋で立ち読みしてアマゾンで購入する、という消費者も沢山いますしね。

    身近にもタブレット持って演奏している指揮者や歌手がいます。
    確かに、紙の本を持たないのは、スペースが便利だけど、細かい字を書き込めないし、途中で電池切れになった時のリスクを考えると、楽譜は、もう少し待ってからです。

    マンガ本なら電子書籍でも大丈夫だと思います。
    ドリルか塗り絵か、書き込みが必要なものならマダマダですね。

  3. すとん より:

    ともさん

     私もたまに見かけます、タブレット楽譜の演奏者の方。たいてい、外国人ですけれど。

    >オペラか、ソロ付交響曲かも覚えていないのですが…

     オペラは原則暗譜で歌うものだし、暗譜するくらい練習しないと、プロでもなかなか歌えるものではありませんから、オペラではないと思いますよ。

    >譜面、重いですから便利ですよね。

     これ、曲によるんじゃないかなって思います。まず、タブレットって案外重いですよ。確かに楽譜も重い楽譜がありますが、所詮は紙ですから、そんなに重くないと思います。あと、器楽の人は、楽譜は譜面台に置いちゃうから、重さ関係ないし。

     タブレットは1ページずつしか見れない(紙なら見開き2ページ見れる)し、紙の楽譜ほど広くない(日本の楽譜は大きくてもA4程度ですが、輸入譜はもっと大きな楽譜がゴロゴロしています)ので、視認性は劣るし…。ただ、タブレットの方が圧倒的に便利なのは、フットスイッチを併用することで、足で譜面がめくれる事! 器楽の人には垂涎の機能だと思いますし、実際にフットスイッチを使って譜めくりをしている人(弦楽四重奏楽団でした)は快適そうでしたよ。

  4. すとん より:

    ドロシーさん

     広告業界は頑張ってると思います。いや、頑張れなかった所は、とっくに廃業して、頑張った所だけが生き残っているというべきかな? 実は私、以前、印刷業界に転職しようかなって思っていた時期があるんで、ちょっと業界についてアレコレ調べてみた事あります。結局は、想像を絶する斜陽産業だったので止めたのですが(笑)。

     本屋さんは、本当に気の毒だと思います。ネット通販と勝負できるのは、ネットに負けないぐらいの在庫量を誇る大型書店ぐらいでしょ? もちろん、足の利便性を確保した上です。ほそぼそと雑誌を売っていた街の本屋さんは、コンビニ&ネット通販の襲来で、ほぼ死滅状態ですね。実際、雑誌しか買わない多くの人達にとっては、町の本屋さんよりも、近くのコンビニの方が有り難いですからね。

     タブレット楽譜は…私も書き込めないので、使う気になれません。あと、視認性の悪さかな? 紙の楽譜よりも、一回りも二回りも小さく表現されちゃうし(これ、老眼には大問題です)、一度の1ページずつしか見れないのは、やはり不便です。かと言って、それらを克服するために大型タブレットが販売されたとしても、大きい上に重くて、きっと使い物にならないと思いますし…。電池ももたないだろうし…。なので、楽譜だけは、電子書籍に移行できない私でした。

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