はい、またも行ってきました、東京日比谷のみゆき座! 先週にひきつづき、二週連続で、お出かけでした。は~、疲れた疲れた。
今回の演目は、ヴェルディ作曲の「ファルスタッフ」です。ヴェルディ最後のオペラですが、主役はバリトンですし、これと言った有名なアリアもないし、面白いオペラだとは思うものの、地味なオペラです。だいたい、テノールの活躍する場がないんだもの(笑)、ライブビューイングでもないと、なかなか見ないタイプのオペラなので、こういう演目を取り上げてくれるのは、うれしいですね。
とりあえず、このパリオペラ座のライブビューイングなんですが、今回もあまりライブ感はありませんでした。それどころか、よくできた舞台中継だなあって思いました。まるで、NHKで作った番組みたい。もしかすると、このパリオペラ座のライブビューイングって、本当はライブビューイングじゃなくて、テレビ番組なんじゃないの? って思うほど、NHKの舞台中継と同じような感じを受けました。
まあ、確かにライブ感覚はないのですが、舞台中継としては、よくできていたと思います。
それにしても、公用語がフランス語と言うのは、厳しくないですか? この映画の中では、舞台のオペラ上演以外の場面で使われている言語はフランス語なんですが、歌手たちは、フランス語がさほど得意ではないようなんですね。フランス人歌手(ページ夫人こと、メグを歌っていた人が唯一のフランス人歌手だったそうです)は、いいのですが、そうでない歌手は、インタビューアーとのやりとりにとても苦労していて、フランス語が全く分からない私が見ても「ああ、この人のフランス語は、実にたどたどしいなあ…」と思えるほどに、見ていて厳しいものを感じました。
どうしても、ライブビューイングという事で、メトと比べてしまいますが、メトの公用語は英語で、どこの国の歌手たちも、英語はペラペラなので、インタビューには困りませんが、こちらの公用語はフランス語で、フランス語に堪能な歌手は少ないので、ほんと、インタビューは苦労しているみたいです。
だいたい、主役たちにインタビュー無し…って、どうかと思うよ、きっと、彼らはフランス語が話せないんだろうと思うけれど。
さて、オペラそのものなんですが、とても良い公演だったと思います。ファルスタッフとクイックリー夫人は、声的にも立派だし、二人ともデブだけれど、実にかわいげのあるデブを演じていました。ウインザーの女性たちも、若くて美人で、声も歌も素晴らしかったです。難を言うと、アリーチェとナンネッタは親子のはずですが、どう見ても、同年配にしか見えないのは、演劇的にどうかと思いました。もちろん、恋の主役はアリーチェですから、こちらを若々しく見せないといけませんが、娘のナンネッタだって、もう一組の若いカップルを演じるわけだから、子ども子どもしていてはいけません。アリーチェもナンネッタも若々しく、しかしナンネッタが子どもに見えてはダメだし、アリーチェがオバサンオバサンしていてもダメで、そこら辺の演出が難しく、この公演は、ビジュアル的に良すぎて、そこは上手くいっていないなあって思いました。
そうそう、この公演では、時代と場所がオリジナルから変更されているように思えました。時代は…約百年前? いわゆるクラシックカーが現役で、蓄音機がまだゼンマイ式だった頃の時代です。場所は…アメリカかな? 昔のシカゴとかデトロイトとか、そのあたりが舞台になっているような気がしました。オリジナルとはだいぶ違ってましたが、これはこれで分かりやすくなっていて、私はOKです。だって、オリジナルは、16世紀のイギリスでしょ。現代に生きる日本人には、あまりに無縁な時代と場所だから、だったら100年前のアメリカの方が親しみやすいってもんです。
ちなみに、ファルスタッフの原作は、シェークスピアの戯曲「ウィンザーの陽気な女房たち」です。なので、英語原作の戯曲をイタリア語に訳してオペラ台本にしたものを、現代のフランス人たちが楽しむ…ってわけで、我々東洋の片隅で暮らしている日本人にとっては、ヨーロッパ生まれのオペラをヨーロッパ人たちが楽しんでいると思いがちですが、実はそんなに単純な話でもないみたいですね。いくらヨーロッパであっても、やはり言語の壁ってのは(我々ほどには高くないにせよ)きちんと存在しているようですからね。
それにしても、ファルスタッフというオペラ、あつかましいデブの老人をからかう喜劇なんですが、そもそも、なぜこのデブ老人があつかましいのかと言うと、このオペラの女性たちが尻軽だからでしょ? デブ老人のくせに、人妻といい仲になれると思って行動するのだけれど、女性からみれば、それがすごくあつかましいわけで、だから、からかわれるわけです。おそらくファルスタッフがデブ老人でなく、若いイケメンのアンチャンなら、女たちも受け入れていたんでしょうね。
と言うのも、このオペラでは、山羊やら鹿やらがの角の生えた動物たちが、象徴的に出てくるけれど、これら角の生えた動物って(ヨーロッパでは)寝取られ男の象徴なんだって。
フォードが怒り狂うのだって、自分が寝取られ男になりそうだから、怒り狂うわけだし。夫が目を離した隙に、妻たちが男をつまみ食いする…なんかそういう、女性のビッチぶりが見え隠れして、私には理解できません。…ってか、ファルスタッフに限らず、ヨーロッパの貴族ものの映画やら小説やらを見ていると、ほんと、あっちの当時の女性って、結婚までは身持ちが堅いのに、結婚した途端、恋愛に自由になるわけで、結婚を境にガラっと変わるのが、私には分かりません。結婚前は、何人の男性と遊ぼうとも、結婚後は貞淑であるべき…と考える私は、オペラの世界の人々と、価値観が違いすぎるみたいです。
で、さっきから、オペラの話をしているにも関わらず、役名で話していて、歌手の名前が出て来ない事に気づかれましたでしょうか? そうなんです、実は誰がどの役をやっている歌手で、なんという名前なのかが、私にはちっとも分からないので、役名で書いているわけなんです。
つまり、いわゆる(私にとって)有名なスター歌手はこのオペラ公演には出演していないため、顔をみても名前が思いつかないし、メトのように、ホームページ上に必要な情報がアップされていたり、劇場で(ペら紙一枚だけれど)上映や出演者の情報の書かれたものを配布するとかしないので、一応、映画の中でキャストロールは流れるけれど、それをメモするわけにはいかないし、私のボケた頭では記憶も難しいので、、このブログでは歌手名が出て来ないのです。
公式ブログに残されたわずかな情報を私がググった結果、今回の出演者は、おそらく…
ファルスタッフ(バリトン):アンブロージョ・マエストリ
フォード(バリトン):アルトゥール・ルチンスキ
フェントン(テノール):パオロ・ファナーレ
だと思います。あと、ラウール・ヒメネス(テノール)も出演しているはずですが、どの役をやっていたのか…分かりません。残ったテノールの役は、カイウス医師と赤鼻のバルドルフォですが、どちらも風貌が違いすぎるような…。ヒメネスはどっちの役をやっていたのでしょうか? あと、女性陣の名前が全然分かりません。ああ、公式ホームページは情報不足だあ~。
そうそう、劇場はガラガラでした。上演回数が多いから、ガラガラなんでしょうが、パリオペラ座のライブビューイング、来年もやっていただけるのかしら? 来年もやっていただくために、私ももう一回ぐらいは見に行って、このライブビューイングの応援したいと思ってます。
パリオペラ座が終わると、次はメトライブビューイングのアンコール公演だね。今年は何を見ようかな。
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コメント
昨日から、10月11日まで、アンコール上映をしているとのことで、観てきました。
インタビューされたのは3人でしたが、フランス人の1人をのぞいてお二人とも、フランス語が大変そうでしたね。でも英語ではインタビューしない! というのがオペラ座たるゆえんでしょうか。
ファルスタッフの表情が実に良かったです。
歌も、みなさんよかったと思います。若いテノールの方が良かったなあ。
ライブビューイングに行くのは初めてでしたが、安く楽しめていいですね。
また行こうと思います。
椎茸さん
あら、ほんとにアンコール上映してる。私、その情報知りませんでした、感謝。以後気をつけてみます。でも、アンコール上映しているオペラ三作品、私が見た奴だな(笑)。
でも、ファルスタッフ、よかったでしょ? メトと比べると、アメリカとフランスの経済力の差もあって、あっちこっち貧相なのは仕方ないけれど、矜持の高さはなかなかのもんです。でも、たぶん、こっちの方が本来のオペラなんだと思います。メトはエンタメすぎると思いますよ。
>でも英語ではインタビューしない! というのがオペラ座たるゆえんでしょうか。
でしょうね、お高くとまっているんでしょうが、そこがまた、あそこの味なんだと思います。その姿勢は貫いた方がいいと個人的に思ってます。
>ライブビューイングに行くのは初めてでしたが、安く楽しめていいですね。また行こうと思います。
でしょ? ライブビューイングは一流の劇場の良質な芝居を安価で楽しめるのが良い点です。もちろん、本物の生にはかないませんが、アップ画像もあれば舞台裏のインタビューもあって、生にはない楽しみ方もありまして、これはこれでなかなか捨てがたいものがあります。私もライブビューイング、好きですよ。