スポンサーリンク

ゴールドフルートは、なぜ音の遠達性が良いのか?

 今週はフルートのレッスンをお休みしたので、代わりにフルートのエッセイを書いて、お茶を濁すことにします(笑)。

 ゴールドフルートは、なぜ音の遠達性が良いのでしょうか? ザックリ言えば『なぜゴールドフルートは遠鳴りするのか?』って事です。

 実験をしたわけではありませんが、私が思うに、それは『金の金属としての比重が重いから』じゃないでしょうか?

 アルミ :2.7
 亜鉛  :7.1
 鉄   :7.9
 銅   :8.9
 ニッケル:8.9
 銀   :10.5
 金   :19.3
 プラチナ:21.4

 軽い金属の代表としてアルミの比重も記してみました。確かにアルミって軽いですね。また、身近な金属の代表として鉄の比重も記してみました。鉄って、金属の中では、やや軽い部類に属するみたいです。ちなみに、水の比重が約1ですから、これらの金属はみな、水に沈むわけです。

 比重が違うと、同じ体積のものを作った時に、質量が変わります。つまり、フルートという楽器は、スペックを揃えれば、使用する金属の違いで、楽器としての重さが変わってくるわけです。洋銀は銅と亜鉛とニッケルの合金です。いずれも銀よりも比重が軽い金属ですから、洋銀でフルートを作ると、軽くなるわけです。

 洋銀と銀では、数値の違い以上に、重さの違いを大きく感じるような気がします…というか、数値の差よりも感じる重さの差の方が大きいような気がします。

 さすれば、銀と金って、実は大きな重さの差があるんでしょうね。プラチナは金よりもずっとずっと重いんですね。

 ちなみに、木管フルートは標準的なグラナディラ素材を使い、標準的な4.1mmの肉厚で作ると、銀管の1.7倍の重さになるようで、ちょうど、銀と金の中間ぐらいの重さのフルートになるそうです。

 ここまでをまとめると、洋銀よりも、銀の方が比重が重く、銀よりも金の方が比重が重い。木管フルートは木だけれど、結構重い。プラチナは重いので、良さそうだけれど、おそらく実用的ではないので、メッキどまりなのだろう。あるいは、プラチナは十分に比重が重いので、メッキ材として使用しても、それなりの効果が見込まれる…って事かもしれません。
 
 
 なぜ、重いフルートの方が音の遠達性が良いと思ったのか、そこには二つの理由が考えられます。

 同じ素材で作ったフルートの場合、薄管よりも厚管の方が音が飛ぶという事実があります。この場合、管厚以外の条件は一緒ですから、音の遠達性は専ら、管の厚み、つまり楽器の重さに依存すると考えたからです。

 もう一つの理由は…これはオーディオの世界の常識だけれど、スピーカーでは、一般的に重いスピーカーほど良いスピーカーだとされています。それは重いスピーカーはスピーカーそのものが共振しづらく、そのため、振動エネルギーを効率よく音に変換できるから…と考えられています。ですから、小型スピーカーをよりよく鳴らすためには、スピーカーをきちんと固定し、ボディを押さえつけることが大切だったりします。

 重い楽器ほど、自分自身の重量で自分を押さえているわけです。足元をしっかりと固定して押さえつけておくのは、大切な事でしょう。乾いたグランドなら高くジャンプできる人も、ぬかるんだ地面や砂場では、それほど高く跳べないのと一緒です。

 という訳で、私は、比重の重い金属ほど、音の遠達性が良い…つまり、ゴールドフルートは比重が重いから、遠達性が良いと考えたわけです。

 もちろん、ゴールドフルートが音の遠達性が良い理由は、もう一つあります。それは『高価な楽器なので、丁寧に作られているから』です。でも、これを最初に書いたら、それで議論は終わってしまうので、最後に書いてみました。

 ちゃんちゃん。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 クラシックブログ フルートへ
にほんブログ村

コメント

  1. operazanokaijinnokaijin より:

    すとん様、時々、つまらないコメントを書き込んでおります、
    Operazanokaijinnokaijin(オペラ座の怪人の怪人)でございます。
    数日前の論争?をじっくりと拝見し、
    ブログとはなんぞや、みたいなことを考えつつ、
    しかし、なかなか深遠な問題なので、考え続け、
    いつか、書き込んでみたいと思っております。

    さて、本日の、ゴールドフルート論、
    大変に楽しく拝見しました。
    が、誠に僭越ながら、突っ込みを。

    最後の論法、
    ゴールドフルートは、丁寧に作られているから、音の遠達性が良い、
    というのは、うーん、どうなのでしょうか?

    全く同じ素材、金でも、銀でもよいのですが、
    金製1番:手作りで、丁寧に、丁寧に。
    金製2番:3次元プリンターで簡単に。(ま、一種の例え話です、汗)

    銀製1番:手作りで、丁寧に、丁寧に。
    銀製2番:3次元プリンターで簡単に。(ま、一種の例え話です、汗)

    金製でも、銀製でも、
    3次元プリンター製の2番よりも、
    手作り丁寧な1番の方が、音の遠達性が、必ず、良い、ということは、
    言えるのでしょうか???

    ああ、つまらない突っ込みを入れてしまった私を、
    どうか、すとん様、叱ってください。

    おしまい

  2. 河童 より:

    なかなか論理的な答えが見いだせない課題ですが
    ちょっと斜に構えて考えると

    遠達性・・・・ホールの遠くでもしっかりと聞き分けられる?

    これをオーケストラの場面で考えると
    1)他の楽器の音に埋もれない、音色が浮いていて、溶け込んでいない
    ->悪く言えば協調していない
    ソロの場面で考えると
    1)人の耳に聞こえやすい周波数帯と倍音がしっかり出る
    2)ホールが共鳴しやすい
    ->必ずしも美音とは限らない

    ここは楽器の先入観のない子供に聞き比べていただくとどうでしょうか?
    1)どっちが大きく聞こえる?
    2)どっちの音色が好き?

    そもそもフルートの音色とは?

  3. YK より:

    比重の件、本当だと思います。
    私は比重の違う材質のフルート(ゴールド、木管など)を試奏したことがありませんが[E:bleah]、いつも14Kを使っている私の先生がオーバーホール中に9Kを使っていたとき、やはり音の飛びが違いました。また、安物メーカーの管体銀のフルートから村松SRに買い替えたとき、音の飛びが格段に変わった(音色も)事は確かです。ただ、そこはメーカーの違いも結構あると思います。私は息を沢山吹き込んでガンガンフルートを鳴らすタイプなので、息が全部音になってくれるSRにしました。パールのオペラやアルタスも良かったのですが、少し息を抑えた吹き方でないといけない上に、「言うこと聞いて!」という感じで、一番鳴って、応えてくれたのがSRでした。でも、うまく吹けば、パールも、アルタスも、遠鳴りはするのでしょうね。(・_・;
    あとは、吹き手の違いもあると思います。私の先生曰く、ランパルさんのコンサートのリハーサルに行った時、ランパルさんは「なんでこんなに手を抜いて吹いているのだろう」と思ってしまうほど脱力していて、でも音はとても遠くまで良く聞こえたそうです。ゴールウェイさんは、近くでも、遠くでもすごい音量らしいです。
    その辺の違いを含めて考えると、フルートの『鳴り』は奥深いものですね。

  4. ひょっとこ より:

    そういう分析も含めて趣味ではあるのだけど…
    いや、なんだか、腕磨いたほうがいいと思う
    今日このごろでした。

  5. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

     記事では“丁寧”のひと言で済ませてしまいましたが、実際のところは、高価な楽器は頭部管の作りが違うんだそうです。もちろん、作っている職人の腕も違いますが、高価な楽器は、遠鳴りするように作る(笑)んです。これは、高価な楽器はプロ奏者の使用を前提としていて、ホールでの演奏を念頭において作るそうです。これは、某フルート職人から直接聞いたので、たぶんホントです。

     なので、

     金製1番>銀製1番>>>>>>>>>>[金製2番&銀製2番]

     ぐらいになるんじゃないかな? だって、意図的にそういうようになるように作っているわけだからね。

     しかし、三次元プリンターでフルートって作れるのかな? 頭部管って、職人さんの技術の粋を集めて繊細に作られているわけで、現在の三次元プリンター程度の程度じゃ、ちゃんとした頭部管なんて作れないんじゃないかしら?…と邪推しております。

  6. ぼー より:

    物理的にだけ考えると…
    1)音の大きさは距離の二乗に反比例
    2)高周波成分ほど吸収されやすい
    という原則になりますね。
    基音に比べ倍音成分は元々弱い上に吸収されやすいわけで、どれだけ基音が鳴っているかが遠達性のキモだと思います。そしてゴールドやプラチナはオーバーブローしにくく、、基音を大きく鳴ら「せるので、結果遠達性が高いのではないかな、と思います。側鳴りは基音に比べ倍音成分が多いのでは…とも思います。
    ちなみに木管は実感としてオーバーブローしにくい印象があり、発音の段階で倍音成分が少ないため、吹いている本人は小さく聞こえるけど、遠くではしっかり聞こえるのではないか…とも考えます。

    以上、聞こえやすい音域とか音色とか感覚的なことを無視した私的な邪推でした…失礼しました(汗)

  7. すとん より:

    河童さん

     これは某プロオケプレイヤー(フルートじゃないです)に尋ねた事があるけれど、オーケストラの中で演奏するときは、正しいピッチで倍音豊かな音で演奏するそうです。一方、曲の中でソロパートを演奏する時は、わざとピッチをうわずらせて、オケの音に埋もれない、溶けない音で演奏するんだそうです。

     H先生と話していると、フルートの音の遠達性は、専らソロを演奏している時に要求されるもので、合奏をしている時は「フルートの音は聞こえなくても仕方ない」と思っているようです。まあ、集団で攻めて来る弦楽器や、猛烈な金管楽器たちとは、最初っから勝負をするつもりなんて無いようですから。

    >そもそもフルートの音色とは?

     奏者の息の音色です。私はそう思ってます。だって、フルートって、楽器が鳴るんじゃなくて、楽器の中の空気(つまり息)が鳴るンです。楽器は、その息の音に味付けをしてくれるもの…と思ってます。だから、フルートの音色って、人の息の音色なんだと思います。

  8. すとん より:

    YKさん

     ゴールウェイは一度だけ生で聞いた事がありますが、爆裂的な音で吹いてました。それもリラックスしたまま…。あのすごさはCDではなかなか伝わらないなあって思いました(ま、それはどの奏者もそうでしょうが)。

    >そこはメーカーの違いも結構あると思います。

     ムラマツはなんだかんだ言って、プロ奏者を相手に商売しているメーカーですからね、楽器もプロ仕様なんでしょう。パールやアルタスは、別にプロを無視してアマチュア向けに作っている…わけではないでしょうが、楽器を作る方向性が、現役プロの使用を前提としているムラマツとは違います。私が思うに、どちらのメーカーも、ビンテージ楽器の音色を現代楽器で再現しようとしているように思われます。ビンテージ楽器の再現が目的なら…そりゃあ、そんなに鳴りませんよ。鳴らないからビンテージ楽器は、現代楽器に進化したわけですから。

    >うまく吹けば、パールも、アルタスも、遠鳴りはするのでしょうね。(・_・;

     少なくともアルタスは、メジャーオーケストラの首席奏者たちも使ってますから、腕さえあれば、実用十分なくらい遠鳴りするんだと思います。…問題は、アルタスの場合は、腕なのかもしれません。

  9. すとん より:

    ひょっとこさん

     その通り、結局フルートって、楽器じゃなくて、腕なんだと思います。ただ、楽器の助けがあれば、より腕がふるえるわけで、だから、上手な人は楽器を吟味するわけです。私程度じゃ、何を使っても同じかもしれません(それも悲しい話です)。

     悲しくならないためには、やっばり、腕みがくしかないんだな。うん。

  10. すとん より:

    ぼーさん

     なるほど、それには納得です。確かにぼーさんのおっしゃる通りかもしれない。大切なのは…基音。うむ、そうなんだな。

    >側鳴りは基音に比べ倍音成分が多いのでは…とも思います。

     歌で考えてみると、確かにそうかもしれない。側鳴りの声ってカツーンって感じがないんですよね。むしろ、やかましい? だから、ぼーさんのおっしゃる通りかもしれないです。

  11. 河童 より:

    倍音の話はおもしろいですね。
    倍音でも偶数倍音が多いとシットリした感じで、奇数倍音が多いとシャリシャリした感じになりますし。
    手元にあるゴールドの頭部管は少し厚い(薄管の銀並み)ですが、どっしりとした音でオーバーブローしにくいことは確かです。

  12. すとん より:

    河童さん

     フーウム、金って、そんなにオーバーブローしにくいのですか…。私は銀で常にオーバーブローに注意しています。もしも、金管にかしたら、オーバーブローを気にしなくてもよくなる…んだとしたら、金管に買替えてもいいかも。でも、問題は、今の銀管にラブって事なんだな。

  13. ぼー より:

    再コメ失礼します…

    先日、Galwayモデルの頭部管(銀製、リップ14K、ライザープラチナ)も購入しました。すとんさんは、以前「吹きづらい」と書いておられました・店員曰く「Galwayは前へと息を飛ばすので、アルタスのような内吹き派にはかなり辛いそうです。

    で、こいつがやはりオーバーブローしないのです。見た目も目立たず良いのですが、いかんせんこれだけでもゴールドの音がしちゃいます。もう一つ言えば、付属の頭部管はライザーだけ14Kなのですが、こちらはきっちりオーバーブローします。音色はほぼ銀です。少々論点がずれましたが、遠鳴りするような音色にはリップ以上に比重の大きい材質を用いるのがよいのかな…という気がします。

    ちなみに自分もやはり、銀ラブなので、普段は付属のモノを使い、人前ではGalwayモデル…みたいに使い分けたいと思います。(グラナディラの頭部管も注文…半年後だそうなw)

  14. すとん より:

    ぼーさん

    >店員曰く「Galwayは前へと息を飛ばすので、アルタスのような内吹き派にはかなり辛いそうです。

     なるほど。確かにゴールウェイって、吹き方が他の人たちとはちょっと違うのは感じていました。他の人ってのは、ベネットとかワイとかね。確か、この三人は兄弟弟子だか仲間だかじゃなかったかな?(誤解してたらゴメン)。ベネットとワイには共通項を感じますが、ゴールウェイは異質なモノを感じるのですが、そうか、根本的な奏法に違いがあったか…。

    >Galwayモデルの頭部管(銀製、リップ14K、ライザープラチナ)

     銀製とは言え、この頭部管は、かなり高価なんでしょうね。さすがにゴールウェイはプロですから、これくらいのスペックでも使用しちゃうんでしょうね。私は…オーバーブローしないのは気になりますが、さすがに高スペックすぎて躊躇しちゃいますわ。

    >遠鳴りするような音色にはリップ以上に比重の大きい材質を用いるのがよいのかな…という気がします。

     つまり、リッププレートとかライザーを金とかプラチナなどを使用するとオーバーブローしづらくなるって事ですね。うむ、頭の片隅で記憶しておきましょう(フルート買替えの際の豆知識として)。

  15. 河童 より:

    アルテスのはじめの方に
    「低音は下向きに、高音はアンブシュアをエッジに近づけてやや上向きに吹く」、だけど「高音は上ずりやすいので注意を」なんてことが書かれています。
    ゴールウェイのマスタークラスでも頭部管だけでの音出し練習で同じ吹き方していますね。
    ただ低音は上っているので下向きに息を吹き込むようにとのことですが。
    ですので、ゴールウェイが特別な吹き方でもなさそうです。

  16. 河童 より:

    ゴールウェイのマスタークラスです
    http://www.youtube.com/watch?v=VQg0vScnQ8E

  17. ぼー より:

    自分も低音は下向きに~と習いました。高音は時計の12時方向、低音は6時方向に~と。その通りですね。多分Galwayも同じでしょう♪
    想像するに、違うのは、水平面に対する歌口の角度…内向きか外向きかでしょうね。店員さん曰く、アルタスで大音量出すにはブリアコフくらい「吹き込む」必要があるけど、難しいですね。と。Galwayは息を流す、Bouriakovは息を入れる…ってことでしょうかね??

    にしても、頭部管だけでも美しい音色ですね♪~でも英語は苦手です(汗)

  18. すとん より:

    河童さん

     おっしゃる通り、ゴールウェイの方が多数派、と言うか、現在のフルート界の頂点はゴールウェイでしょうから、ゴールウェイのやり方の方が正しくて、いわゆるアルタス的な吹き方は少数派なんだろうと思います。

     そう言えば、私は頭部管にどういうふうに息を当てているかなんて、あまり気にしたことないし、興味もありませんでした。だから、こうやって考えてみると…???って感じになるかな?

     私の場合、フルートをクチに当てて息を吐くと音になるから、悩んだ事ないです。でも、そういう人って珍しいんでしょうね。その代わり、私は口笛吹けませんよ。フルートが吹ける人は口笛が吹けず、口笛が上手な人はフルート吹けない…という話を聞きました。本当かどうかはさだかではありませんが。

  19. すとん より:

    ぼーさん

    >アルタスで大音量出すにはブリアコフくらい「吹き込む」必要があるけど、難しいですね。

     ん? そうか、吹き込む必要があるのか? 私はライザーに息を軽く当てる感覚で吹いてますが、だから楽器がちゃんと鳴らないのかな?

     ゴールウェイってすごいプロだと思います。プロ奏者は、どなたもすごいのですが、ゴールウェイはすごすぎる、すごいプロだと思います。あんまりすごいので、マネをする気にもなりませんよ。

タイトルとURLをコピーしました