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2012年 ラ・フォル・ジュルネに行ってきたよ その1…ピアノのマスタークラスを見学してきました

 すでに終了してしまいましたが、今年もラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン、つまり、東京(つか、国際フォーラム&丸の内)で開催されている、ラ・フォル・ジュルネに行ってきましたので、例年どおりレポートします。まあ、毎年、このラ・フォル・ジュルネの連載をすると…アクセスが落ちる(涙)のですが、自分の人生の記録(って、ちょっとおおげさか:笑)のために、今年も果敢にアップします。長めの連載になると思いますが、今年もお付き合いのほど、よろしくお願いします。

 さて、私が出かけた、2012年5月3日は雨でした。それもかなりの本降り。おまけに腰は痛いし(涙)。腰か痛いのは…たぶん、ダンスの練習のせい。5月1日に、ちょっと気合を入れて、オーバーターンド・ターニング・ロックの練習をして、回りすぎの、腰をヒネリすぎの…で、痛めてしまった様子。ゴム底の靴でダンスの回転系の練習をする時は、あれほど注意深くならないといけないと、以前から自分を戒めていたのにも関わらず、また、やっちまいました。翌2日は、連休の中日という事もあって、いつもよりもパワフルに働いてしまったため、3日は朝からカチコンコチンに腰が固まってしまいました。それでも、涙を流しながら、コルセットで腰をかばっての、出陣です。

 「その痛がりようは、ほとんど、ぎっくり腰だね」と妻に言われましたが、腰のネンザってわけでしょうから、ぎっくり腰とは、そんなに大きく違わないと思います。違うのは、ぎっくり腰なら、痛む筋肉はカラダの外側の筋肉なので、湿布を貼るなり、痛み止めのチールを塗るなりの対処ができますが、今回は痛むのは、カラダの奥深いところにある筋肉、つまりインナーマッスルを痛めてしまったようで、痛み止め系の対処ができません。とにかく、腰部全体で痛いんですよ。妻からは「大丈夫? 出かけられる?」と心配されましたが、とにかく、コンサート見物ですから、激しい運動をするわけでもないので、なるべく腰に負担がかからないように、ソロリソロリと歩いて移動しました。

 もっとも、私の事を心配していた妻ですが、実は彼女も、前日の2日に、息子君の合唱団のバザーの準備で、朝から晩まで、中腰で台所仕事をして、腰痛になってしまったようです。

 つまり、夫婦二人して、腰痛に悩まされての、ラ・フォル・ジュルネでした(笑涙)。ちなみに、妻は、痛む場所がアウターマッスルだったので、コルセットではなく、トルマリン・シートを腰に貼って痛みを緩和していました。トルマリン・シートは筋肉痛によく効くんですよ(マジです)。
 
 
エカテリーナ・デルジャヴィナのマスタークラス(ピアノ)

 腰痛に悩まされながらも、頑張って、朝の9時半には会場に到着した私たちでした。本当は9時に到着の予定でしたが、やっぱり、腰をかばいながらの行動では、機敏な行動は無理でした。で、なぜ、そんなに早くから行動を開始したのかと言うと、今年からルールがちょっと変わって、マスタークラスの見学希望者に対して、クラスの開始90分前に会場前で整理券を配布する事になったので、その整理券をゲットするために、早めの行動を取ったわけです。ちなみ、お目当てのマスタークラスは10時半開始でしたから、9時到着目標で頑張ったわけです。だって、マスタークラスって、毎年大人気で、いつも立ち見でしたから、今年は頑張って整理券獲得をめざしたわけです。

 30分遅れで会場に到着した私たちでしたが、やはり朝一番って事もあって、楽々整理券を奪取できました。妻曰く「今年からマスタークラスには整理券が必要って事が、まだ伝わっていないんじゃないの?」 …かもね。案外、情弱な人って多いからね。

 とりあえず、クラス開始一時間前に整理券をゲットした私たちは、その後、会場をちょっとウロウロして、コンビニでチョコバーやアラレなどを入手して(列待ち中に食べるため:笑)、30分前に会場到着、15分前に入場し、前から2列目中央なんていうベストな席をゲットしました。うむ、整理券方式は、なかなか良いかも。だって、昨年前までは、60分前に会場にやってきて列に並んでも、座れなかったりしたもんなあ。もっと早く来れば座れるのかもしれないけれど、でもそんなに長いこと並んでいたら、他の演奏が見れなくなっちゃうし…。最初の頃は、マスタークラスなんて不人気で、開始時間頃に来ても、楽々見れたのに…とりあえず私は、整理券方式を支持します。

 それはさておき、肝心のマスタークラスの話を書きます。

ラフマニノフ作曲 「コレルリの主題による変奏曲」

 生徒さんは音大卒業したての若い男性で、先生のデルジャヴィナ氏も、ほんの小娘にしか見えない、若々しい二人でマスタークラスが行われました。ちなみに、デルジャヴィナ氏は見かけは小娘ですが、音大教授でメトネルという作曲家の権威だそうだし、自らも音楽祭を主催しているそうで、中味はしっかりオバサンなんでしょうね。いわゆる、美魔女の一人かも…。そんな、美魔女とイケメン男子のクラスだったわけです。

 生徒さんの演奏は、力強くてなかなかの演奏でした。これはこれで良しかなって私は思いましたが、先生から見ると、全然ダメ…だったみたいです。

 先生、いきなり、ラフマニノフの晩年の人生について語り始めました。実は「コレルリの主題による変奏曲」ってラフマニノフの最晩年の作品らしいのです。ラフマニノフは亡命者であって、亡命先での苦労は数知れず。だから晩年のこの曲には、希望がなく、失望と望郷の念ばかりが込められている、暗くて悪魔的な作品であり、作品自体がそのようなカラーで染められているのだから、演奏もそのようにしないといけないと言いました。「あなたの演奏は、キレイすぎる」ってわけです。「もっとロシア的な演奏をしてください」ってわけです。

 ラフマニノフのマルカート…一拍目にメロディーの強拍を置くことを、意図的に避けている事に気付こう。これが彼のロシア的な部分であり、だからこそ、全体を力強く意志的に演奏するべきです。ラフマニノフのシンコペーション…メロディーラインとベースラインが、わざとズレて、孤立しています。この孤立したベースラインを悪魔的に演奏するべきです。テンポ設定が軽い。もっと重々しい(遅いという意味では無いようです)テンポで演奏すべきです。ペダルの踏み方も軽すぎるし、音がキレイすぎる。ペダルは踏みすぎず、かと言って、常に何かの音が鳴っているように、ペダルをコントロールしていかないといけないのです。

 これらはすべて“ロシア的”な演奏をしなさいとの、具体的な指示です。“ロシア的”な演奏とは、オドロオドロしく、原始的で無骨で、どこか割り切れないものをもった演奏のように、私には思えました。一方、生徒さんが最初に演奏したものは、音楽の見晴らしが良くて健康的な演奏でしたから、確かに、先生のおっしゃる“ロシア的”な演奏とは、大きくかけ離れていたのかもしれません。生徒さんは頑張ってましたが、自分なりに仕上げてきた演奏を、急に“ロシア的”に変更するというのは、なかなか大変そうでした。

 さらにこの曲は、18世紀のイタリアの作曲家、コレルリの主題をモチーフにした変奏曲だけど、曲の中には、コレルリの主題以外にも、実に多くのラフマニノフの過去の作品から主題が引用されているそうです。生徒さんは、引用された主題が出てくるたびに、イチイチ先生から「この曲の原曲はなんですか?」と尋ねられていました。そうやって、引用されている主題は、それらが引用された元曲の雰囲気を残して弾かれるべきだそうです。しかし、コレルリの主題は、元々が無私無個性なものなので、この部分に関しては、思いっきりロシア的なモノを加えて演奏するべきなんだそうです。

 レッスンの最後の方で先生は次のように言いました。「左手は時間を、右手は人生を表しています。この二つは互いに独立しています。そして、人間は時間に対しては、何も影響を与えられないのです。つまり、人生とは孤独であり、人の孤独がこの曲のテーマなのです」

 レッスンそのものは15分ほど延長してしまうほど、熱心にやられていましたが、どうも、先生と生徒さんが、うまくかみ合っていなかったような気がします。先生は教えたい事かいっぱいあるのに、それがうまく伝わらないもどかしさと、生徒さんの方は先生から多くの事を学びたいのに、先生の言っている事かうまく消化できないというか…どうにも、先生と生徒さんの相性が、あまり良くなかったような、マスタークラスでした。
 
 
 で、朝一番のマスタークラスが終了し、会場を出ると、次のマスタークラスの整理券の配布が始まっていました。私もさっそく並びましたが、私の前の人で、整理券が終わってしまいました。残念。整理券がなくても、今から並んでいれば、立ち見で見れるそうですが…腰が痛いので、立ち見はなるべく避けたい(そうでなくても、ラ・フォル・ジュルネは立ち見が多いんですよ)ので、次のマスタークラスは諦める事にしました。
 
 
 続きは、また明日。

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コメント

  1. フミエ より:

    ラ・フォル・ジュルネの記事でアクセス数が落ちるとは意外です
    なかなか参加がむずかしい私にとっては貴重な報告なのに!!と思って
    久々に書き込みさせていただきました

    と言いつつ全く関係ないことなんですが
    誰もが知りたい(?)すとんさんのご職業・・・
    数々の趣味を全力で楽しむも、一方では謎の孤高の仕事人間

    とある重大な任務を帯びた国際的なスパイ というのが
    私には一番腑に落ちる感じですね~
    何でもよく知ってるし(そんな理由? 笑)

  2. すとん より:

    フミエさん

     そうなんですよ、ラ・フォル・ジュルネの記事はあまり人気がないんですね。でも、人気取りのためにブログを書いているわけじゃないので、アクセス数が落ちると分かっていても、平気で記事を書いてアップしちゃいます(笑)。

     私の職業ですか? MI6勤務の国際スパイでは、もちろんありません。公安勤務…でもありません。

     プロフィールにちょこっと書いてますが、元教師で、現在は某教育系研究所でしがない研究員をやってます。いわゆる“現場叩き上げの研究者”って奴です。ただ、研究や教員指導ばかりをやっていると行き詰まるので、上司に願い出て、関係学校で(ほんの少しですが)授業を持たせてもらってます。吹奏楽部の顧問をしてますが、これも関係学校の校長から直接頼まれて、異例中の異例という事で引き受けました。なにせ、部活の顧問も、この職業に就いてからは(当然ですが)ずっとやっていませんでしたので、本当に久しぶり(10年以上、部活顧問ってやってない)なんですよ。

    >何でもよく知ってるし(そんな理由? 笑)

     これは簡単。私は知っている事しか語らないから(笑)です。知らない事は話題にしなければ、賢い人に見られる…んですよ。常に自分の得意な土俵でしか勝負をしない、そんだけ(爆)。

  3. おざっち より:

    びわ湖ホールでのラフォルジュルネもすでに終わってしまいましたが、私としましては、よそのラフォルジュルネって、どんなんかな?という興味がありますから、すとんさんのブログは興味深く読ませていただきました。
    ただ、今年はロシア音楽ということで、それもピアノが中心だったので、やや私の興味が遠のいた感はありましたが、吹奏楽や歌曲を中心に聞きに行きました。
    今年は天気が良かったせいもありますが、過去最大の入場者数だったようで、このイベントが成功していることを裏づけているようです。クラシックに興味がないような感じの方も多数おられたみたいですが、なにはともあれ、これをきっかけに興味を持っていただけたら、と思いました。
    続編を楽しみにしております。

  4. すとん より:

    おざっちさん

     東京は…規模が大きいですよぉ(笑)。有料コンサートだけでも、会場の東京国際フォーラム自体がホールを5つも持っている上に、隣のよみうりホールも使ってますし、普段は会議室として使っている部屋も、室内楽専用のコンサートホールとして2つ使っているし、営業が終わった後の相田みつを美術館もコンサート会場になってます。有料コンサートだけで9箇所もあるわけです。さらに、無料公演用の演奏会場が、国際フォーラムの地上に一つ、地下に一つあります。

     また、会場に入っている企業ブースでも、あっちこっちでミニコンサートをやっていますし、同じ時期に、丸の内界隈を中心として、あちらこちらの企業さんのホールなどで“周辺エリアコンサート”ってのをやってます。ざっと数えたら、周辺エリアコンサートだけで、15箇所で同時開催です。

     主催者発表では、今年の東京は36万人の人がやってきたそうです。大勢で賑わったわけですが、数年前は100万人を突破したというニュースが流れましたから、全盛期と比べると、東京のラ・フォル・ジュルネの集客力も1/3に減ったわけです。

     東京でのラ・フォル・ジュルネの継続は、資金面の問題もあり、検討課題のようです。丸の内界隈の企業さんたちの景気が回復しない限り、あと2~3年(つまり最初の年から10年ですね)で終了予定だという噂もあります(噂ですけどね)。

     私にとっては、一年で一番楽しくて忙しいお祭りなので、なんとか継続してもらえたらなあ…って思ってます。東京では、個人協賛制度を来年から開始するそうなので、私もラ・フォル・ジュルネのタニマチになって、資金的に支えちゃおうかなって考えている最中です。

     そうそう、来年は、フランス&スペイン音楽がテーマになるそうですよ。『ビゼーからピエール・ブーレーズまで』だそうです。となると…フルート音楽、てんこ盛りっですぜ(驚)! ああ、楽しみ、楽しみ。

  5. おざっち より:

    「オラが田舎が一番じゃ!」って思ってましたが、さすが東京は規模が違いますね。参りました。
    となると、事前に何を聞くのかというリサーチと当日の動線が、ラフォルジュルネをどれだけ楽しめるかのカギを握ることになりますね。

    来年のラフォルジュルネ、楽しみです。

  6. すとん より:

    おざっちさん

     東京は…規模が大きくて当たり前。世界を代表する大都市の一つなんですから。ここと比較しちゃいけません。ただ、規模が大きい分、動くお金も大きいし、関わる人間も多くて、色々な人の思惑がうごめくのだと思います。

    >事前に何を聞くのかというリサーチと当日の動線が、ラフォルジュルネをどれだけ楽しめるかのカギを握ることになりますね。

     それはその通りで、実はあれだけたくさんのコンサートが開催されているにも関わらず、当日券で入場できるものには限度があります。私が行っているような室内楽の有料コンサートは、チケット入手が難しいものが多いです。

     同時開催されているコンサートも多いので、事前の計画が大切です。私もそうですが、多くの人が、当日の計画表を作っていて、それを見ながら、それこそ分刻みのスケジュールで動いていてます。主催者側も、そこはよく分かっているので、それぞれのコンサートを時間内におさめるべく、一生懸命に運営しているんですよ。ただ、アーチストの皆さんは、お客さんを喜ばせようと、しばしば時間オーバーをしてしまうので、そこはうれしいのですが、困ったところです。

    >来年のラフォルジュルネ、楽しみです。

     ほんと、私も楽しみです。

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