日曜日ですが、お盆関係の記事が書きたまり、それらをたてつづけにアップしている最中なので、ダイエット記事は今週もお休みをして、どんどん溜まっている記事のアップをします。…というわけで、少しインターバルを入れましたが、ヴァイオリン製作日記の番外編です。
ひとまず、ミヤマは完成しました。完成したところで、色々と考えてみました。
(私基準で)良いヴァイオリンが手に入ったので、当然、次は、良い弓が欲しくなりました。先生から借りている弓に不満はないのだけれど、某弦楽器店で弾いた、オールドフレンチの感触が忘れられなくて…。
ま、あんな高いものは買えませんが、安くて良い品で、あんな感じの弓があったら欲しいなあ…と思いました。なにしろ、今持っているのは、先生から借りている弓が二本(一本はレギュラーで使ってます。もう一本はサブですが、これはまず毛替えをしないといけないみたいです)と、自分のモノが一本。この自分のモノと言うのが、ミヤマ付属の弓(価格不明、中国製のおそらくは1000円程度の弓)です。ま、この弓、全然使えないわけではありません。それどころか、先生に「普通の練習用の弓ですね」と言われるレベルの弓なんですが、巻き線の金属がほどけてしまって、やむなく、ビニールテープで止めている程度の粗悪品なんです。
ヴァイオリンに限らず、私の人生訓の一つに「マンマシンインターフェイスにはお金をかけろ」と言うのがあります。パソコン関係で言えば、マウスとキーボードは高級品を使います。文房具で言えば、筆記具やハサミやナイフには、結構凝ります。人間が直接手にして使う道具には、少しでも良いものを使うべきだという考え方です。
元々、そういう考え方の人間だし、ヴァイオリン弾きの皆さんにも「楽器を買う前に弓を買え」と言われていたし、良い弓があれば欲しいなあ…という気持ちもあり、そういうモヤモヤした気持ちを持ったまま、東京に行くチャンスがあって、ヴァイオリン屋さんに入ってしまったので「ええい!」と(半ば衝動買いで)弓を買ってしまいました(笑)。
何を買ったのかと言うと、アメリカのCoda Bow(コーダボウ)社の“DIAMOND GX(ダイアモンドGX)”を買いました。
はい、大量生産品です。はい、ヘルナンブーコ弓ではなく、カーボン弓です。そんなものを、私は、大枚はたいて買ちゃいました。15万円の品です(たった15万円かよ~と言わない事。世間常識では15万円は大金でしょ)。15万円あれば、洋銀フルートやニューヴォイスフルートが買えちゃう値段でしょ。それなのに、楽器であるヴァイオリンじゃなくて、楽器の付属品であるヴァイオリン弓を衝動買いしたわけで…。
なんか、すごいね、私。…え、そうでもない? それともバカ?
「よりによって、なんでカーボン弓を買ったの?」と尋ねられそうですね。
一応、色々と弓を出してもらって、その中から、なんとなくオールドフレンチの感触に近くて(もちろん当社比)、一番しっくりする奴にしたんですよ。そしたら、こいつだったと…とまあ、ザックリ言っちゃえば、そうなんですけれど…。
木の弓という選択肢がなかったわけじゃないけれど、木の弓でしっくりする奴と出会わなかったんです。「良い弓の最低条件、ヘルナンブーコで作られている事」なんて書いてある本やサイトが、山のようにある事は承知しています。でもね、ヘルナンブーコ製の弓って、弾きづらくねえ? もちろん、リアルに300万円以上のオールドフレンチ弓だと、案外しっくりするのも何本かはあるんでしょうが、そういう高級品は、現実的な選択肢じゃないし、自分の買える範囲で、いい感じのヘルナンブーコ弓ってのが無くてね。で、材質にこだわらなければ、これが一番と言うか、材質にこだわっても、やっぱりこれが一番と言うか…。まあ、そんな感じだったんですよ。
これでも、一応、弓を買う時は、お店のハシゴをしたんですよ(笑)。で、ハシゴの結果が、これです。
ま、上手な人が選ぶと、また結果は違うのかもしれませんが、今の私では、この弓が一番よかったんです。確かにカーボン弓だけど、この弓、なかなか弾きやすいと思うんですよ。弓がヴァイオリンにペタって引っついて、無駄に跳ねないのがいいです。もちろん、跳ねさせると、ピョンピョン跳ねますが(笑)。あと、音のふるえやガリガリってのも、だいぶ減りました(私的には「ほぼ無し」って状態です)。何より、無駄に弓が暴れる事がないし、私の言う事も(割とよく)聞いてくれるんですよ。それに弓を持っても、全然持った感じがしないんです。たぶん、バランスがいいんだと思います。弓で弾いているというよりも、指をウンと伸ばして弾いているような感じがします。道具を使っているという感覚が比較的薄いんですよ。だから、この弓を持つと、自分がすごく上手くなったような気がするんですよ、マジで。
ま、妄想半分、自己満足半分、かもしれませんが、それで私が幸せなら、それはそれで良いではないですか。
後から思えば、工業製品で品質が安定してるカーボン弓を買って正解だったと思います。木の弓は、当たりハズれが多いし、実際、私が弾いた弓は(おそらく店に私の)足元を見られて、ハズればかりを出されたのかもしれません。それなのに、弓の材料にこだわってカスをつかんでも…それじゃあ、悲しいでしょ。
ま、素晴らしいヘルナンブーコ弓は、私がうんと上達して、もっともっと弓の善し悪しがきちんと分かるようになったら、その時に購入するという事で(笑)。なにしろ、ヘルナンブーコ弓の、安くて良い弓って、一見の客には、なかなか見せてもらえないみたいだし…(この世界が、そういう世界だと言う事も、少しずつ分かるようになりました)。
それにしても、普通、ヴァイオリンの弓と言うのは、楽器の1/3~1/5の値段のものを買うと良いそうですが、私の場合、弓の値段は、楽器(ミヤマ)の約20倍です(爆)。すっげ~、贅沢をしちゃったわけです。贅沢と言うか、楽器と弓のバランスが悪い? まあ、いいか。
でも、まあ、これで、50万円程度までのヴァイオリンに対応できる弓を買ったと言う事ですね(そんな50万円もする高価なヴァイオリンなんて、絶対買わないけれど…)。
あ、名前がないと不便なので(笑)、カヅノと名付けました。漢字表記だと「鹿角」です。ミヤマの相棒なので、カヅノです。クワガタのオオアゴは、諸外国では「鹿の角」に例えられるそうなので、ならば、そのまま「鹿の角」でカヅノにしました。ちなみに、ミヤマとカヅノの、ボディの茶色と黒の組み合わせバランスはほとんど同じです。そういう意味でも、この二つはまさに良きペアでしょう。
クラシックの人は、オールドイタリアンの楽器と、オールドフレンチの弓を使うのが標準(?)みたいですね。でも、私はちょっとマネできません。手作りキットのヴァイオリンに、カーボン弓の組み合わせって、すごくリーズナブルでいいでしょ。いかにも私らしいでしょ。これなら、フルートの神様にも、きっと叱られません(笑)。
…それでも、一応、20万円近く出費しているんですよ(笑)。
さて、カヅノを買って、上手くなった気がするのは良いのですが、相変わらず、ミヤマを弾くと左手は痛いです。その理由は、やっぱりミヤマの弦高が高すぎるからだと思います。実際、駒のオーベルト君は、デフォルトチューンのままでは、背が高めなんですよね。これからもずっと痛いのが続くと思ったら、いやな気持ちになってきたので、やっぱりミヤマの弦高を低くすることにしました。
まずは、ナットの溝を削り直す事にしました。最初にナットの溝を削った時は、精密ヤスリを使用したのですが、これだと溝が結構大きめに削れてしまい、あまりちゃんとした溝にならないのです。そこで、今回は新兵器を導入する事にしました。その名は“両刃ヤスリ”です。一本千円しますが、背に腹は変えられません。さっそく購入して、ナットの溝を削ってみました。
実に簡単にキレイに削れるものですね(笑)。
ナットの溝がキレイに削れたので、次は駒も削る事にしました。
ヘマをするのが怖いので、新しい駒を買ってきて削りました。今度の駒は、同じオーベルト君ですが、横浜で購入したので、数枚の中からチョイスする事ができました。ちゃんとヘッド側は縦の木目で、テールピース側は点々の木目が入っている上物をチョイスしてきました(笑)。さあ、これで、削りに失敗しても、今の駒が使えるので、大胆に削っていきましょう。
駒を削る手順と方針は、以前考えた線をベースにして、こんな感じでいきました。
1)まずは背の高さを現行の駒よりも6mm程度低くする。現行の駒は付属していた駒よりも3mmほど高かったけれど、その最初に付属していた駒そのものも、かなり背が高かったので、そういう事も考え合わせて、いっその事、6mm削ってみる事にしました。→もちろん、音量は下がるだろうけれど、指の痛みを軽減するために、それは諦める事にしました。
2)駒の背を低くするために、駒の上辺部分をザックリ削ってしまうので、せっかくメーカー側で駒の上辺を細く加工してあるのが台無しになってしまいます。駒の背を低くしたら、改めて上辺部分を丁寧に仕上げて、弦が乗る部分の最終的な厚さを1mm程度にするため、上辺部分だけを、斜めに丁寧に削る事にします。
3)オーベルトの駒って、全体的に分厚いので、少しだけ削って(1mm程度)少し薄く仕上げます。本当は優しい音が好きなので、駒の厚みは削らなくてもいいのだけれど、音量が多少とも下がる分、音を少し硬くした方が良いかなという判断をしました。駒が薄い方が音が硬くなるそうです。しかし削りすぎると、せっかくの「偽フレンチ」な音色の味が減るので、そこは要注意要注意ですよ。
4)両刃ヤスリで弦の溝を彫る。
5)E線の食い込みを防ぐために、その部分に(革の代わりに)メンディングテープを貼る。
6)ヴァイオリンにジャスフィットさせるために、ヴァイオリンの形に合わせて、脚を削る。
7)駒の足に石鹸をたっぷりとなすり付ける。理由はよく分からないけれど、良い駒にするためのオマジナイらしいです。
4)~6)は、ごく普通の駒削りの手順ですね。実は、この駒削り、すごく時間がかかるかと思ってましたが、実はあっさりと終了しました。所要時間は、たぶん、一時間もかかってません(笑)。駒の調整は…案外、簡単です。
出来上がった駒は、ちょっとばかり、小さくなってしまいました。
新しい駒に交換したところ、ミヤマの音量は小さくなったかもしれませんけれど、弾いていて分かるほどの音量減少はしていないようです。私的には、音量については変化なしって感じてます。音質の方は、明らかに、ちょっとばかり、まろやかさが失われました。いや、別に硬い音になったわけではなく、やっぱり丸くて優しい音なんですが、背の高い駒を使っていた時と比べると、少し普通っぽい音に近づいたような気がします。
つまり、それだけ、駒で音って、変わるって事ですね。
で、駒を新調して、一週間ほどはウキウキしてました。で、そして、ふと気づきました。「もしかして、弦、曲がってねえ?」
そうなんですよ、弦がどうも、真っ直ぐ張られていないのです。具体的に言うと、弦全体が低音側に寄っているんです。なんかバランスが悪い。
これは悩みましたね…。どうすればいいんだろ? やっぱり、ミヤマはダメな子?
色々考えました。「テールピースが曲がっている」「テールガットが不揃い」「指板が曲がっている」「そもそもヴァイオリンが曲がっている」「アジャスターを二つも使っているので、弦のバランスがおかしい」
ふと、ひらめいたのが「駒の取り付け位置が微妙にズレている?」です。さっそく、弦を緩めて、駒を全体に高音側に移動してみました。
バッチリです。正解でした。これで、弦の張りもまっすぐになりました
弓を新調して、ナットを削り直して、駒を交換して、弦もきちんとまっすぐに張って…。さらにミヤマはグッドなヴァイオリンになりました。ああ、うれしいなあ。
コメント
この展開でその値段の弓が出てきたことにびっくりしましたが、「インターフェースに金かけろ」は真実だと思います。だって弾きやすさぜんぜん違うもん。
ピアノの試弾会で、ベヒシュタインとか弾くと「うっとり」して気分よく弾けますが、別に弾けない曲がそのピアノだと弾けるとかって、ないじゃないですか。バイオリンだと、いい弓使うとこれまで弾けなかったところが弾けちゃうんだから、大人は弓買わなきゃ。
まともなカーボン弓は、弾きやすさの点ではなんの問題もないと思います。劣るところがあるとすれば微妙な響きの違いとか…そのへん詰めるよりまず音合わせろよ!! といわれそうな段階では気にすることはないでしょうね。私も「おぉっ」と思ったオールド弓があったけど見送りましたよ…あんまり弓に申し訳ないからね(^^;;
「これなら、フルートの神様にも、きっと叱られません(笑)。」…そう来ますか。。
あー私は、フルートの神様に怒られそうだなぁ。総銀製フルートを死蔵してるから。
>アンダンテさん
>この展開でその値段の弓が出てきたことにびっくりしました
はい、私自身もびっくりしました。ま、これも一種の衝動買い、神様のお導きだと信じてます。直感で行動する事は、案外、いい結果を生むという事を私は経験則で知ってますので、後悔はしてませんよ。でも、かなり、懐は痛いですが(笑)。
>総銀製フルートを死蔵してるから。
総銀なら、オーバーホールさえすれば、いつでも復活できる、一生ものの楽器ですから「死蔵」とはならないと思います。もっとも、これが洋銀の楽器だと、そのまま錆びて腐ってしまいますから、要注意ですね。
アンダンテさんは、ピアノとヴァイオリンの人だと思っていましたが、フルートも総銀を持っているほどの人だったんですね。尊敬します(尊敬する理由は、自分でもよく分かりませんが:笑)。
弦の高さは指板の端(駒寄りの方)で見ますが、各弦ごとに標準的な高さがあるようです。もちろん、他のパーツとの兼ね合いなので、駒の削り方に決まりがある訳ではなさそうですが、ちょっと低いのではという心配をしています。低すぎると、ハイポジションで弾きにくくなりそうですので。
コーダのGX、よく話題に出る弓ですね。これを明らかに上回る弓は、かなり高い物になるでしょう。アルシェなら最も上のものか次のものあたりです。
>エルネスト・アントルメさん
>各弦ごとに標準的な高さがあるようです
ん? 考えてみれば、それは当然の話ですね。特に考えていませんでしたので、さっそくググってみたところ
バイオリン (ADGナイロン)
1弦 E(ミ) 2.3mm
4弦 G(ソ) 3.7mm
だそうです。あ、こちら(http://www.geocities.jp/motowork/piyoyo_gakki//faq/change_strings.html)のページに載っていた情報です。第三オクターブでの弦高(弦と指板の距離)だそうですが、ミヤマは削り直したところ、1弦で2mm強、4弦で4mm弱でした。まあ、結果オーライのいい感じになっていると思います。
とは言え、私はそんなにシビアなところを求めているわけでなく、弾きやすさが重視してますので、本音で言えば、もう少し低くてもいいかなって思ってます。第三オクターブは使う予定がないですから(笑)。
>アルシェなら最も上のものか次のものあたりです。
ググりました。価格にすると、100万円~60万円程度ですか? オールドフレンチ弓ほどではないですが、かなりの高級弓って事になりますね。そんなにコーダのGXって、良い弓なんですか? ならば、私は知らずに「お得なお買い物」をしたわけですね。ちょっぴりうれしいです。