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ヴァイオリンの試奏に行ってきました その8 勇気を出して、弦楽器屋さんに行ってみたよ

 お盆進行もあったので、話は前後してしまいますが、この話はミヤマが完成する前の話です。

 路面店については何となく把握できたかな…という気になってきたので、ここで試奏の旅も次の段階に入らなきゃいけないだろうなあ…と思って、勇気を出して弦楽器屋さんに行ってきました。

 まずは、全然知らない店というわけにもいかないので、最初はヒイロ先生御用達のお店に行くことにしました。もちろん、先生の名前をジャカスカ出してもいいですという許可をいただいているので、ちょっとだけ気持ちを大きく持って行ってきました。

 そのお店は…東京のちょっと交通の不便なところにあって、新品は一切扱わず、すべて海外オークションで入手した中古、モダン、オールドなどの一品ものばかりを扱っているこじんまりとした店なので、今回は店と弾いたヴァイオリンの名前を伏せます。あしからず。

 店内に入って、例によって20万円までという予算を伝えて、色々とアドヴァイスをしてもらいました。さすがに、この値段の楽器となると、ワケあり楽器がウヨウヨです。出てきたのは、ノーラベル(ラベルが貼っていないんです:驚)のいかにも古そうな楽器とか、ラベルに「ストラディバリウス」とか「ガルネリ」とハッキリ書いてある、ちょっといたづらが過ぎるコピー楽器とか、ドイツを始めとするヨーロッパの中小工房の中古品(それでも100年ほど前のものがばかり)とか、あきらかにネックとか表板とか裏板に修復跡がしっかりと残っている楽器(ちゃんと修理されているので実用上は何の問題もないです)とかでした。

 さすがは弦楽器屋さん、専門店だよ、路面店とは品揃えの方向が全然違います。

 弾いてみた感じは、どれもこれも約20万円のヴァイオリンの響きでしたが、音は全くそれぞれで違いました。さらに、弾きやすさも全然違いました。とても弾きやすいものから「なんじゃ、これは?」というものもあり、また音程も無意識に弾いてもいい感じの音程で鳴る楽器から、すごくシビアで音程がなかなか定まらない楽器もありました。曲者ぞろいでしたよ。

 「簡単に弾けてしまう楽器よりも、少し難しいくらいの楽器の方が、あとあといいですよ。ただし、難しい楽器と、ダメな楽器の見極めはしっかりやってくださいね」とはお店の若旦那のセリフ。それくらい、癖の強い楽器が多かったです。ああ、路面店に並ぶ量産ヴァイオリンって、優等生ぞろいだったんだなあと、今更ながら思います。

 試奏していた時に、ちょっと響きの変な楽器があったのだけれど、それを若旦那に伝えると、その楽器を奥にいる職人さん(常駐しているんです)に渡して、その場で調整。あっと言う間に直って試奏続行。ううむ、やはり職人さんがいるお店っていいですね。

 しかし、ここのお店は10万円の楽器も1000万円の楽器も、何の区別もなく、並んでいるんですよ。すごいなあと思いました。

 試奏で使った弓は…350万円のオールドフレンチな弓でした。値段に騙されているつもりはありませんが、嘘みたいに弾きやすかったです。やっぱり、弓はおごらないとダメかもしれない。

 色々と弾き比べてみて、最終的に気に入ったのは、なんと「デル・ジュス・ガルネリの1744年」でした(笑)。すっごいボロボロで相当な年季モノに見えますが…実は単なるコピー品で、おそらく極々最近作られた楽器でしょうとは、職人さんのセリフ。そりゃそうだよね、本物が20万円の値札をぶらさげているわけないもの(笑)。

 この手の“イタズラが過ぎるコピー品”って、ヴァイオリン界にはたくさんあるそうです。もしかすると、コピー品とは知らずに「私の楽器は18世紀のイタリアもので~」なんて思い込んで使っているパターンもあるかもしれませんね。あれ、私が今まで弾いてきた楽器にも、もしかすると、そのパターンがあったのかな? 本当は安価なコピー品を、素人だと思って、足元を見て、ふっかけて売りつけられるところだったあ? まさか~?

 さて、このデル・ジュス・ガルネリ君ですが、ボロく見えるようにしてあるだけ(アンティーク仕上げです)で、実際は全然古くもなければボロくもないのだそうです。かなり良い感じでした。値段も値段だし、一品ものだし、一期一会なので、もう少しで財布を開いちゃうところでしたが、ビビッとまでは来なかったので、今回は見送りました。ここで、ガルネリ君を買っちゃっていたら、きっとミヤマの製作は、途中で放り出していたと思います(笑)。

 せっかく専門店に来たので、すっごいお高い楽器やビオラなども、たくさん弾かせていただきました。なにしろ、高価な楽器もショーウィンドウなどには入っていなくて、そこらへんにぶら下がっているので、すごく楽な気持ちで試奏できるんですよ(笑)。しかし、先生の名前を出して店に行くと、ほんと、いたれりつくせりですよ。先生の名前って強力だなあ…。

 さてさて、ここのお店で、これだけたくさんの色々な楽器を弾いて分かったことがいくつかあります。

 まず、高い楽器の特徴が分かりました。高い楽器とは、1)音量が大きい。2)響きが豊か。3)古い、です。

 逆に、安い楽器の特徴としては、1)身元不明。2)ボロい。3)ニセモノ。4)新作。5)弦の振動を楽器が受け止めきれない、です。私が結構重視する“音色”は値段とは全く関係ないみたいです。

 安い楽器の特徴の「5)弦の振動を受け止めきれない」について、ちょっと解説しておきましょう。これは私の感覚なんですが、安い楽器は太い弦を思いっきり弾くと、楽器自身が共振してしまって、弦の振動エネルギーを音エネルギーにうまく変換できないんじゃないかと思います。なので、弦の振動が、音ではなく、楽器そのものの振動になって、なんか変な音になるので、響きが足りなくなるのではないかと思います。逆に弦の振動をしっかり受け止める楽器は、強い振動ばかりではなく、弱い振動も音に変えるので、それが豊かな響きになって聞こえるのだと思います。

 ヴァイオリンの値段に関して言うと、ここのお店は、海外オークションで競り落とした楽器を取り扱っているお店なので、ここの楽器の値段というのは、生産者が付けたものではなく、買い手がつけたものなんですよ。つまり、材料費とか人件費とか生産工房の固定費などの必要経費っぽいものは価格に全然反映されていなくて、楽器としての実力や健康状態だけが評価されて値段づけられているんですよ。なので、値段の付け方が実に納得できる感じだし、全体的にお安めの価格になっていると感じました。

 優等生っぽい楽器が欲しいなら、路面店がいいと思いますが、個性的な楽器とか、掘り出し物とか、ワケあり楽器が欲しいなら、この手の専門店がいいなあと思いました。あと、やっぱり職人さんが常駐しているところは、いいですね。

コメント

  1. テツ より:

    すっかりヴァイオリンに入れ込んでますね。

    サブタイトルではヴァイオリンが最後になっていますが、順番変えたほうがいいかも^^

    すとんさんのヴァイオリン開始の火付け役になってしまったような私ですが、防音室は狭くて思うように弓が動かせないし、防音室から出ると音を出さないということもあり、楽器はケースに入ったまんまになってます・・・

  2. すとん より:

    >テツさん

    >すとんさんのヴァイオリン開始の火付け役になってしまったような私

     はい、すべてはテツさんのせいです(笑)。

     なあ~んてね。それはともかく、ブログの記事だけを見るとヴァイオリンに入れ込んでいるように見える私ですが、リアルな音楽趣味生活では、実は声楽関係に追われて、てんてこ舞いしてます。

     ヴァイオリンは新しい事を始めたばかりですから、色々と書くことがありますが、歌関係は深めていく方向に発展しているし、書けない事も多々あるので、ブログの記事として、登場していないだけです。なので、結局、やっぱり、私は「ヴァイオリンの人」とか「フルートの人」とかではなく「歌の人」だったりしてます。

    >防音室は狭くて思うように弓が動かせないし、防音室から出ると音を出さないということもあり、楽器はケースに入ったまんまになってます・・・

     ヴァイオリンはフルートなんかよりも、ずっと広い空間でないと演奏できませんね。これは私もヴァイオリンを始めてから知りました。意外な事実です。

     それと、ヴァイオリンは、何も狭い防音室で練習する必要はないんじゃないの? 消音器をつければ、別に家族のいる部屋の隣で練習していても、迷惑にならないと思うけれど? 歌と声楽は時間制限の中で練習している私ですが、ヴァイオリンは、早朝でも真夜中でも平気で練習してますよ。ま、たまには、消音器をはずして、大きな音(と言っても、フルートよりも小音量だと思う)を出させて上げる事も必要でしょうが。

     ヴァイオリンはフルートにない、おもしろさがありますよ。お互い、少しずつ、がんばって行きましょう。

  3. serena より:

    とうとう、マンションの一室系、専門店デビュー?でしたか。
    ちなみに、アメリカ時代、上司がお宝鑑定団の楽器の専門家をやっていたので結構家の屋根裏でストラドラベルのバイオリンを見つけたから見てほしい、という電話がありました。まず間違いなく市場に出回っている中で最もお安い部類のものでしたが。意外と信じちゃう人いるんですよね・・・・・・

  4. すとん より:

    >serenaさん

     そりゃあ信じちゃいますよ。素人だし、日本人だし、「そうだといいなあ」という願望もあるし…。アメ横で日ざらしのロレックスを買うようなもので「こんなところで、そんな値段で、ロレックスが売っているわけない」と知りつつも、うっかり手にして、その気になって…って奴かもしれません。ま、私は時計の趣味はないし、実用一点ばりな人なので、ロレックス(&もどき)は一つも持ってませんが、知人がうれしそうに「○○で安く買ったんだよ~」と聞くと、冷やかな目で見てますが、アレと一緒ですね。

     私は残念な事に、時計だけでなく、カバンも靴も、ブランド物は持ってません(笑)。

     私は、必ずしもコピー楽器は否定しない人なんですが、それはあくまでもきちんとコピーであって、どこかにかならず「ホンモノじゃないですよ」という目印は入れてほしいと思います。それがニセモノの矜持ってやつでしょう。だから、ラベルまでコピーしちゃダメだと思いますよ。

     日本にある、ストラドもガルネリも、どれだけニセモノが横行しているか…。日本人、人がいいからなあ…。

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