スポンサーリンク

合唱には二種類の合唱スタイルがある

 それは、拡声の合唱と、群衆の合唱です。

 同じような事を言っている人がいるかもしれませんが、寡聞に私は知りませんので、あえて記事にしてみました。ちなみに、この用語は私のオリジナルです。

 このスタイルの違いは「なぜ歌を大勢で歌うのか」という観点で分けてみました。

 拡声の合唱とは、要するに「本当は独唱でもいいのだけれど、それでは声量に乏しくて観客に聞こえないので、歌う人数を増やして音量を増してみました」という観点で行う合唱です。オーケストラで管楽器がそれぞれ2本前後と少数なのに、弦楽器はなぜやたらといるのか…と同じです。音量不足を楽器の数を増やして補う…という事です。

 昔はP.A.等のマイク設備はありませんでしたから、音量を増やすというのは切実な問題だったわけで、そのために響きの良い会場を用意したり、遠鳴りのする発声方法でうたってみたり…という努力と同じで、一人で歌ってもよく聞こえなければ、大勢で歌えば良いという発想です。実に正攻法です。

 一方、群衆の合唱とは“個人の歌”ではなく“人々の歌”を表現するために、あえて大勢で歌ってみた…という音楽のことです。いわゆるオペラ合唱がこれですし、第九の合唱もそうですし、教会音楽における合唱もそうです。独唱、重唱、合唱と並べた時の、合唱に当たるのがこれです。

 この2つの音楽は似ているようで、音楽としての仕上がりの方向が大きく違います。

 拡声の合唱は、音量増大が目的ですから、歌っている人の数を感じさせてはいけません。目の前にたとえ何人いようと、目をつぶれば、たった一人で独唱している、あるいは二人とか三人とかで重唱が行われているように聞こえることが理想です。そのためには、チーム力(?)が大いに求められ、合唱団のメンバーの個々の声の色や質、歌い方を徹底的に合わせていく必要があります。

 一方、群衆の合唱では、人々の集団性を表現するために、歌う人の個性が重視されます。歌い手が10人いたら、10色の声が聞こえるのが理想です。声の多様性が何より求められます。

 この2つは全然違うので、ゴッチャにしてはいけません。

 日本のアマチュア合唱団の多くは、まずは、拡声の合唱を目指していると思います。学校合唱もそうでしょうし、邦人合唱曲と言われるジャンルの音楽も同様です。イメージとしては「器楽のアンサンブルを人の声でやってみた」ってところでしょうね。一般の人のイメージする合唱も、こちらの合唱だと思います。ピアニカ合奏、リコーダー合奏、合唱と並べた時の、合唱にあたるのがこれです。“揃った”と感じさせる合唱をします。

 群衆の合唱は、オペラ合唱とか教会音楽などの合唱なので、独唱も出来る人たちが合唱をやっています…という音楽になります。歌う人に声楽的な素養が求められます。ヨーロッパ系の合唱団(って言葉も変ですが)の基本はこちらです。こちらなら“パワフル”とか“迫力満点”な歌も歌えます。

 とまあ、合唱音楽を大きく2つに分けて考えた私ですが、現実的には、こんなにきれいに分かれるわけもなく、多くの合唱団がこの2つの側面を持っていて、どちらの面を重視しているかぐらいの違いしかないのです。そういう点では、私の今回の記事は、机上の空論にしか過ぎないのです。

 現実は、なかなか理屈通りにはいかないのよ。

 それもあって、声楽経験者って本来は合唱でも重宝される存在のはずですが、現実的には声楽的な発声を封印して歌わないと、合唱団で機能しない存在になっちゃうのだと思うのです。

 それもどうかと思うけれど、それが日本の現実なら、仕方ないのです。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 音楽ブログ 大人の音楽活動へ
にほんブログ村

コメント

  1. 如月青 より:

    〉拡声型と群衆型
    合唱団で経験した曲目としては、群衆型が多いのですが、パートの中の声がバラバラ、という音大生によくあるパターンは避けるようにしていました。これは多分ソロを目指す人はハーモニーに関心が薄いせいでは?
    一人一人が上手、ということと歌声に統一性はないことは別で、曲の性質や他のパートとの兼ね合いで、皆で工夫して統一性を作るのは楽しいです。器楽と違うのは、音程やリズムを揃えても、曲によって色々な音色が作れることで、この曲は誰がソロ、誰がセンター、と相談するのは楽しみでした。

    合唱で個性を殺す、というのは一見上手な中学の部活によくあるパターンで、器用で先生の好みの声が出せる人しか幅が利かないから、なんか楽しくないですよね。近所の公民館に合唱サークルはありますが、↑みたいな雰囲気がありそうで、近づきたくない。

  2. すとんすとん より:

    如月青さん

    >これは多分ソロを目指す人はハーモニーに関心が薄いせいでは?

     いやいや、ハーモニーへの関心は、音楽をやっている以上ありますって。特にソロを極めていく上では、重唱は避けられませんからねえ。ただ、ソロを目指す人って、合唱で浮きがちなのも事実です。

     私が思うに、それはハーモニーに関心が無いのではなく「みんな、私についてらっしゃい!」という女王様気質なだけで「私がみんなに合わせる」のではなく「下々の者たちは私に従いなさい」って思っていて、歌っていても、全然歩み寄りがないだけの話だと思います。

     ソロの人って、たいてい鼻っ柱が強いからね(笑)。

     こんな事を書いている私だって、合唱をやっている時は、本音で言えば「合唱なんだから、俺についてこい!」って思ってますよ。それくらいの気持ちがないと、ソロは歌えません。ただ、そんな事、その場で言葉にしませんが(笑)。

タイトルとURLをコピーしました