人は音楽を聞く時に、何を求めて聞くのでしょうか? 求めるモノはいくつもあるでしょうが、私なりに音楽に求めるモノを考えてみました。
1)鑑賞する
いわゆる“音楽鑑賞”です。美しい音楽を聞いて「うっとり」したり、楽しい音楽を聞いて「ワクワク」したり「うきうき」したり「アゲアゲ」な気分になったりしたり、音楽そのものを楽しむために音楽を聞くのです。
また、音楽そのものではなく、演奏家を楽しむために音楽を聞くのも音楽鑑賞と言えるでしょう。大好きなアイドルの事を思い浮かべながら音楽を聞くのだって、アリですよね。
2)知的充足感を得る
教養として音楽を聞く人がいます(クラオタに多いように見受けます)。そういう人にとって、音楽を聞くことは知的充足感を得ることであり、教養を深める事になります。
3)ストレスを発散する
私はこのパターンが多いのですが、私の場合は、オペラアリア(とりわけテノールの高音)を聞くことで、カタルシスを解放し、気分をスッキリさせます。人によっては、強烈なリズムに身を任せる事で陶酔感を得て気分をスッキリさせる人もいるでしょう。また悲しい音楽に身を委ねて、さめざめと泣いて気持ちを整理する人もいます。
4)癒やしを求める
ストレスの発散に近いと思いますが、気持ちがざわつく時に、落ち着いた音楽を聞いて、心を鎮めたり…となると、ストレスの発散というよりも“癒やし”を求めている、音楽に癒やされていると言えるかもしれませんね。かつて、ヒーリング音楽が流行りましたが、あの頃は、そういう音楽の聞き方をする人が大勢いたと思います。
5)現実逃避
たまにいます。音楽を聞いている時だけば、生活の苦労を忘れられる…ってか、生活の苦労から目をそらすために音楽に没入する人。生きている事がつらいんだろうなあ…。音楽を支えに生きているんだろうなあ。
6)承認欲求の充足
単純な話「こんな難しい音楽聞いている私ってエライでしょ?」と思いながら音楽を聞く人です。で、実際に知人に「最近、こういう音楽を聞いているんだよ」と報告して「すごいねえ」という反応を期待しているわけです。
いるんですよ、こういう人。私も具体的な顔が思い浮かびます。難しいクラシック音楽を聞く人に多いですが、ポピュラー系の音楽ファンにも、マイナーなアーチストとか、目の出ない新人とか、地下系の音楽家を見つけて聞いていたり…そうやって聞いていたアーチスト、後に大ブレイクをしたりする事もあるので、この手の人たちをあなどれなかったりします。
7)単なる生活の背景
実は人数的には、一番多いかもしれません。無音は不安なんです。今の自分の気持ちに沿った音楽が流れていて欲しいと思うのです。
昔ならFM放送を垂れ流しにしていた人とか、家庭に有線放送を引いて楽しんでいた人たちが、こういう人に相当するのだと思います。
今はネットラジオもあるし、ユーチューブもあるし、スポーティフやアマゾンミュージックもあるし、アレクサに命令すれば、適当に音楽かけてくれるし…こういう生活の背景として音楽を聞く人が増えたろうと思います。
いわゆるBGMですね、昔の言い方で言えば「家具の音楽」です。いわゆる、古楽とかバロック音楽も、貴族たちの生活の背景音楽として作曲されたモノが多いので、こういう聞き方って、実は音楽の正統的な消費の仕方なのではないかと思います
ざっと考えただけでも、こんなモノです。皆さんは、何を求めて音楽を聞きますか?
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コメント
私の場合、通常はフルートのCDを聞いていますが、
これは、もう、完全にBGMなので、
すとん様のおっしゃる家具音楽、ですなあ。
7)単なる生活の背景、です。
時々、音楽の友の、清水和音さんの連載に触発されて、
ショパンを車で聞きますが、
正直、2)知的充足感だったり、6)承認欲求だったり。
あと、最近、旅行の時に、サザンの新旧ベストアルバムを持って行って、
車の聞いたのですが、
旧ベスト「海のイエ~」は、つなみよりも前の曲でして、
ノリが良くって、3)ストレスが発散されます。
新ベスト「海のオ~イエ~」は、つなみ以降の曲でして、
桑田さんの円熟というか、なんというか、
旧ベストよりも深い曲が多く、
ノリは(私個人的には)いまいちと思いますが、
とっても深くって、1)鑑賞、4)癒し、ですなあ。
ヽ( ̄▽ ̄)ノ ヽ( ̄▽ ̄)ノ ヽ( ̄▽ ̄)ノ
(-A-) (-A-) (-A-) ← ざっくぅ
おしまい
オペラ座の怪人の怪人さん
「海のイエ~」は私も持ってます。名盤ですよね。残念な事に「海のオ~イエ~」は持っていないのです。買いそびれちゃいました。
今や音楽も配信の時代で、アルバム単位で購入ではなく、曲単位でポチポチと購入する時代なのかな?って思ってます。そういう意味では、ベストアルバムって買いづらいんですよね。
まず7)があって、あ、この曲いい、と気づいて1)、で背景を調べたり分析したくなったりして2)という順番でしょうか。
もっとも、私は楽器が全く何も出来ないので、器楽の場合はたいてい1)で止まります。
2)まで行った曲は楽譜が手に入れば見て、歌えそうならやってみる(ポピュラーやジャズならカラオケ的にコピーしてみる)。
うまく行くと3)と(自己満足という意味で)6)が得られ、るかな?
このコースの典型的な曲にエリック・サティの「Je te veux」があります。
メロディは誰もが知っていると思いますが、私も1年ほど前まで、これがもともと歌曲だとは知りませんでした。
歌詞見てみると、いかにもおフランスで、表面優雅だけど、含意するところは結構際どい。18禁とまではいかないけど15禁くらいのところではあるかな、などと考えつつ、高校生の部屋の前の廊下で口ずさんでいたりすると楽しいです。
音楽にはじめから2)や6)を求めて「頭で聞く」タイプの曲を聞くことはしません。発表当時は「実験的」でも、心に残る曲って、やはりある程度「大衆性」があるからだ、と思っています。
如月青さん
>発表当時は「実験的」でも、心に残る曲って、やはりある程度「大衆性」があるからだ、と思っています。
大衆性は大切だと思います。近い時代だとビートルズの音楽がそうですが、おそらくはクラシックとして残っている音楽は、モーツァルトにせよ、ベートーヴェンにせよ、ブラームスやらワーグナーにしても、大衆性というか、同時代性があったからこそ、今に残っているのだろうと思うのです。
なんで、こんな事を書くのかと言うと、すべてのクラシック音楽は、元々がポピュラー音楽であるという信念を私が持っているからです。ただ、この考え方を突き詰めていくと「では現代音楽はクラシック音楽ではないの?」という新しい問いが出てしまいますが、これに関する明確な答えが用意できないので、いまだに記事にできないのです。