さて、連載再開です。
そんなこんなでお茶を飲み終えて、いい時間になった私は、上にあがり、次の公演に備えました。
ソプラノコンサート
丸ビル1階 マルキューブ
辰巳 真理恵(S),髙木 由雅(p)
1)グノー「白いキジバトよ」~「ロミオとジュリエット」より
2)ヨハン・シュトラウス2世「伯爵様、あなたのようなお方は」~「こうもり」より
3)薮田翔一「小倉百人一首」より3曲
4)薮田翔一「令和の歌」
5)カッチーニ「アヴェ・マリア」
6)グノー「私は夢に生きたい」~「ロミオとジュリエット」より
7)プッチーニ「私のお父様」~「ジャンニ・スキッキ」より
歌手の辰巳真理恵さんは、タレントの辰巳琢郎さんの娘さんです。二世タレントだからとナメちゃいけません。かなりきちんとした実力派の若手ソプラノさんでした。ピアニストさんは、二期会のバリバリのピアニストさんで、こういう組み合わせなのに、無料コンサートでいいの?って感じの公演でした。
1)は聞き慣れない曲ですが、彼女は最近、歌劇「ロミオとジュリエット」に小姓役(いわゆるズボン役です)で出演したそうですが、これはその小姓のアリアです。そう言われると、こんなアリア、歌っていたかもしれない(笑)。ロミジュリって、好きなオペラだけれど、なかなか全曲通しで聞くチャンスって無いから、脇役のアリアまでは記憶にない私でした。まあ、こういう舞台では、普通は歌われないアリアです。
2)これは普通にコロラトゥーラソプラノさんが歌う有名アリアです。これを聞くと分かりますが、彼女、なかなかの実力者です。技巧がしっかりしているし、声もとても良いです。演技もしっかりしているし感情もきちんと込めて歌っています。それに何より彼女自身に華があります。きちんとお金のいただけるパフォーマンスをしています。実に将来が楽しみなオペラ歌手さんです。
3)は、最近作曲された曲です。何でも、彼女のアルバム(すでにCDも出しているのです)に収録されているそうです。しかし、フランス語のアリアを歌った時は、あんなに素晴らしかった彼女ですが、これら日本語の歌は…はっきり言って、何を歌っているのか分かりませんでした。歌詞が聞き取れないんですよ。3曲歌った中で、2曲目の「ひさかたのひかりのどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ」と「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ」は、断片的に推測できましたが、1曲目は「君がため…」しか聞き取れませんでした。百人一首には「君がため惜しからざりし命さへ ながくもがなと思ひけるかな」と「君がため春の野に出でて若菜摘む 我が衣手に雪は降りつつ」の二首あるんだけれど、どっちを歌ったのか分かりませんでした。とにかく、彼女は声が良いし、何語であるかを気にしなければ、歌だって良い。ただ、この曲が日本語の曲であるのに、歌詞が聞き取れず、何を歌っているのか分からないのは、実に残念でした。新曲ですからね。すべてが歌手さんの責任とは言い切れないかもしれません。作曲されたメロディ自体が日本語に即していない可能性だってありますが…それでも、それを何とかするのも歌手の仕事です。まあ、それだけ、日本人の客に向かって、オペラ発声で、日本語の歌を歌うのって、難しいんだろうなあ。
4)も新曲です。何でも、4月1日の新元号発表のその日に、彼女みずからが作曲家さんに依頼して作ってもらった新曲だそうです。で、その新曲の初演を行ったわけです。感想ですか? 例によって、何を歌っているのか全然分からなくて…ねえ。歌詞は万葉集の梅花の歌の前書き(令和の典拠部分ですね)なんだそうだけれど…。外国語歌詞の歌なら、何を歌われているか分からなくても全然平気なんだけれど、なまじ日本語歌詞だと、何が歌われているか分からないと、すごくイライラするものですね。
5)は、装飾音符の入れ方が実に絶妙でした。これを聞くと、歌い手の音楽的なセンスが良い事が分かります。装飾音符って、その入れ方で、ほんと歌の印象が変わるのだけれど、私はこの人の装飾音符が好きです。こういう歌詞の無い曲は、歌い手のメロディーの歌わせ方の上手い下手が出てしまいますが、本当にこの人は歌が上手なんだと思います。
6)は、コロラトゥーラソプラノさんなら、誰もが歌う超有名曲だけれど、この人が歌うこの曲は、実に熱い歌でした。最近、聞いた中では、ピカイチだと思ったよ。上手く歌うだけなら、この人以上に上手い人はいるけれど、ここまで熱く歌える人はなかなかいません。こういうのって勉強して手に入れられるものではないのかもしれません。才能…なんだと思います。二世タレントさんの良い面が作用しているんだろうなあって思いました。凡人じゃあ、なかなかここまで出来ないよ。
7)は、半分シャレですね。自分のお父さんにかけての選曲です。自分がタレント二世だとしっかり自覚しています。この歌は、声楽初学者の歌でよく聞きますが、やはりプロ歌手が歌うと、全然違いますね(当たり前)。こんなにも情感的で悲しい曲だとは思いませんでした。
とても良い公演でした。結果的には、二日間に渡る今年のLFJの公演の中で、私が一番感激したのが、この公演でした。私、辰巳真理恵さんのファンになってしまったかもしれません。それぐらいに、よかったんだよ。
続きはまた明日。
↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村
コメント
こんばんは。
> これら日本語の歌は…はっきり言って、何を歌っているのか分かりませんでした。歌詞が聞き取れないんですよ。
「蘇州夜曲」 ソプラノ:辰巳真理恵 ピアノ:斉藤雅昭
https://www.youtube.com/watch?v=R0N2WtcndjM
「蘇州夜曲」 歌詞
https://www.uta-net.com/song/45916/
こちらも歌詞みながらyoutube聴きましたが仰る通りです。子音が聴きとれません。
今はググればある程度の状況がわかるとんでもない時代になりました。Gooleは神ではなくてただのツールですが。
こちらはドイツリート大好きで、先日プログラムに「詩人の恋」があるだけでプレガルディエン、ル・サージュのリサイタル行ってきました。
バロックみたいな修飾が面白かったです。子音はマジドイツ人のドイツ語でドイツ語わからなくても充分楽しめました。
失礼しました。
tetsuさん
うーん、これは…西條八十先生に謝らないといけないレベルの歌だなあ。せっかくの良い声を持っているのだけれど、日本歌曲はまだまだ勉強不足なんだろうなあ…って思います。ちなみに、蘇州夜曲は、彼女のファーストアルバムに収録されている曲だったりします。
シューマンの「詩人の恋」は私も大好きです。ぜひ歌ってみたいものですが、Y先生には止められています(笑)。まだ私の手に負えるような曲ではないみたいなのです、残念です。
度々失礼します。
日本語も難しいです。
https://dot.asahi.com/aera/2019051400027.html
「天皇、皇后両陛下には末永くお健やかであらせられますことを願っていません」
リアルタイムでは見ていませんが宮内庁公開の動画では、
退位礼正殿の儀
https://www.youtube.com/watch?v=9TqFd94UyaY
5:56あたり
「已む」は難しいです。
tetsuさん
YouTube、見ました。この件に関して、一部のネット評論家さんたちは、安倍さんが漢字の読めない、教養のない人間であるかのように言ってます。まあ、そうかもしれないけれど、それは揚げ足取りだなあ…って思いました。実際「已む」は難しいね。
でも、動画を見る限りにおいて、読めなかったというよりも、噛んでしまったって感じじゃない? 首相は、この箇所だけでなく、これ以前の箇所でも、だいぶ噛んでいるし…ね。さすがの安倍さんも緊張していた…というふうに私は解釈します。
しかし、噛んでしまったのに『頭が悪くて読めなかった』と誤解されるのもつらいけれど、自分たちの政府のトップに向かって「バカ」と言える人たちの品の無さには呆れてしまいます。緊張して噛んでしまっただけなのに、それで鬼の首を取ったかのように騒いでいる人たちって、よほど暇なんだろうなあって思いました。
それにしても、変なところ噛んじゃった安倍さんも不運だよね。
天皇陛下の前で緊張しない人なんて、いないんじゃないの?