ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画だというので見てきました。ヒュー・ジャックマンと言えば、一般的には“ウルヴァリン”でしょうが、音楽ファン的には「レ・ミゼ」の“ジャン・バルジャン”なわけで、そりゃあ見に行くしかないでしょう。
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で、見てきました。さすがに『ラ・ラ・ランド』後のミュージカルというわけで、実に音楽と演技が見事にシンクロしていました。歌も芝居の一部であって、そういう点では21世紀の新しいミュージカルだなって思いました。歌と芝居と演出が高いレベルで関連していました。良いね。
曲は、どの曲もとても良かったですよ。捨て曲無しです。おそらく、キラーソングは“This is me”だろうけれど、実にパワフルな曲です。いいよ、いいよ。
何度も繰り返して見たくなるミュージカルです。なかなか良質なミュージカルだと思いました。
もっとも、だからと言って、手放しで賞賛できるタイプのミュージカルなのかと言えば、ちょっと違います。音楽は良いんだけれど、その他の部分で、物足りなさを感じちゃいます。
まずは、ストーリー。主人公バーナムの立身出世物語(と挫折)を中心に、それに各種差別問題を絡めているんだけれど、ドラマ的には、そんなに深くないです。「ミュージカルのストーリーなんて、そんなもの」と言えば、それで終わりなんだけれど、だったら、もっと脳天気なストーリーでいいと思うわけです。素材的には、もっと深みのあるストーリーだって作れるだろうに…と思うと、ストーリー的に残念です。
主人公のバーナムという人は、アメリカではとても有名な実在のビジネスマンらしいし、バーナム以外の登場人物たちも、みな実在の人物で、バーナム同様に有名人らしいのですが、どれもこれも我々日本人には馴染みの薄い人物です。どうやら「みんな知っているよね」というのが前提にあり、あれこれ説明不足の掘り下げ不足なのです。たくさんのエピソードがストーリーに組み込まれていますが、その多くは見ていて「?」となってしまうのですが、おそらくそれはアメリカ人にとっては既知の話であり、細かい説明が省かれているのだろうと思うのだけれど、そういう部分が、我々日本人には、ちょっと不親切な作りになっているようです。
つまり、ストーリー的には楽しめないし、共感もしづらい話です。でも、それを補って余るほどに、音楽は良いです。
『グレーテスト・ショーマン』の音楽は、上質な、今時のロック風味のポピュラー音楽です。そこは1950年代のロジャースのミュージカルや1990年代のロイド・ウェーバーの音楽とは違うわけです。
ミュージカルがこの世に生まれて、約百年くらいでしょうか? そもそもは19世紀末のオペラが、あまりに重厚に規模も大きくなってしまったアンチテーゼとして生まれた、軽妙で洒脱なオペレッタが、20世紀になって、アメリカに渡り、様々な現代的な音楽を吸収して出来上がったのが、現代のミュージカルなわけです。ほぼ20世紀初頭に死滅してしまったオペラにとって変わるように、20世紀初頭に生まれたミュージカルですが、今やオペラとはだいぶ違う地平の上に成り立っているようです。その最極限が『ラ・ラ・ランド』だったんだろうと思いますが、この『グレーテスト・ショーマン』も音楽的には、かなり先端に近いところにいるのだろうと思います。少なくとも、ロイド・ウェーバーの音楽よりも、だいぶ尖っています。
今のアメリカ人は、こういう歌芝居を好むのかな…って思いました。
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