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残念だけれど、仕事が無いんだから仕方ないのです

 フルートのレッスンに行ってきました。今年始めてのレッスンでございます。

 まあ、レッスンの内容は、例によって例のごとしで、先生と姉様と三人でロングトーン練習をやりました。姉様のフルートが低音がうまく出ないという事で、先生がフルートを見たところ、要調整というわけで、姉様は正月早々の出費が決定しました。

 さて私は…と言うと、お正月はちびっと練習しましたが、なかなか根を詰めて練習をするというところまでは至らず、なんとも中途半端な状態でレッスンに臨んでしまいました。

 エルステ・ユーブンゲン19番の出来は8割程度かな。暗譜もほぼ出来ていますが、ところどころ抜けてしまうのてす。なので、抜けた所にくると、一瞬止まってしまって考えてしまうので、まだまだ全部を通せません。不合格です。ちなみに20番は、楽譜さえ見ることができれば、普通に吹けています。

 プチエチュードは不合格だったのだけれど、前回よりもだいぶミスが減ってきました。それでも、全体で3~4回ほど演奏が止まってしまったので、合格にはまだまだです。あとは、止まらずに演奏できるようになる事と、スラーをもっと厳密に演奏する事(そのためには、息の保持が大切なのですが…息切れがして途中で2度もブレスをしてしまいます。それがダメなんですね…)。それでやっと合格だそうです。頑張ろう。

 で、レッスンはほどほどに、後は箱根駅伝の話をしましたが、それはカット。

 駅伝の話から、国家試験の話に飛びました(なぜ?)。先生の持論として、プロというモノは自分で勝手に名乗って良いものではなく、一定の力量を持った者だけが名乗る事が許される存在であり、そのために音楽家に“プロ資格”というのモノを是非作るべきであり、作るなら国家資格にするべきだ…と言うのです。

 先生の念頭にあるのは、ドイツの『国家演奏家資格』なんだろうと思います。それを日本にも導入しろ…と、簡単に言っちゃえば、そういう事なんです。

 先生に聞いた所、ドイツでは、音楽家という職業に就くためには、この『国家演奏家資格』が必要であり、それがないと“アマチュアに毛の生えた人”という扱いになり、プロ扱いはされない、あるいは自称プロであるなら“二流のプロ扱い”なんだそうです。

 ちなみにドイツの場合『国家演奏家資格』を得るには、ドイツの音楽学校の大学院を修了するか、そのための資格試験に合格しないとダメなんだそうです。どちらにしても、かなり難易度の高い試験のようで、音大卒程度では到底無理難題な試験で、そう簡単には取れないみたいです。(ちなみにH先生はドイツの大学院を修了しているので、この『国家演奏者資格』を持っているんだそうです)

 つまり「音大出た程度でプロと名乗るなんて、おかしいでしょ!」って言いたいみたいなんです。

 と言うのも、フルート業界は、フルートで音大を卒業した人が多くて多くて、仕事の数よりも人間の数の方が多いんだそうです。

 ある程度の地位と名声をすでに得ている人は問題ないのですが、問題は、これからキャリアを積んで名前を売っていかないといけない、夢も将来もある新人たちなんだそうです。

 海外に留学をして、高い演奏力を身につけた人であっても、日本でフルートの仕事を得るのは、なかなか難しいのだそうです。と言うのも、日本で音楽の仕事を得るには、演奏力以外の能力(察してください)が、かなり必要で、留学経験があるとか、演奏が上手いとか言う程度では仕事を得ることができず、むしろ演奏力に難のある人であっても、あれこれ条件が揃えば音楽関係の職に就いてしまい、結果として、有能で優秀な若い演奏家たちが仕事からあぶれてしまう…という現実があるのだそうです。

 日本では“音大卒業”が一種のプロ免許みたいな役割を果たしていますが…音大卒業程度じゃまだまだ足りない。もっと高度な演奏力を備えている事を証明する資格が必要だ。そして、その資格を持っていないと音楽の仕事にありつけないようにすれば、業界全体のレベルも向上する…と、先生は考えていらっしゃるようなのです。

 なにしろ音大もピンキリだし、卒業生のレベルもピンキリなのです。音大のピアノ科を卒業しながら、ロクにピアノの弾けないプロのピアノ奏者を私は数名知ってます。低技術のためギャラが格安で、仕事内容によっては、それでも十分なので、発注する事もあります。おそらくフルート業界も似たような感じなのでしょうね、それが現実です。

 実際に、H先生のお弟子さんの中には、素晴らしい学歴と留学歴に加えて卓越した演奏力を兼ね備えている若手の演奏家さんたちがウジャウジャいますが、彼女たちの仕事の状況と言うのは…確かに厳しいです。私などが傍から見ていても可哀想に思ってしまうくらいに厳しい状況にある事が分かりますので、先生のおっしゃることも理解はできますが…。

 …でもね、悪貨は良貨を駆逐するって言うじゃない。同じ“音大卒”なら、安く使える子を雇いたいよね。なまじ留学してたり、なんとかコンクールのなんとか賞を持っているような子だと、あんまり安く雇えないからなあ…。それよりは、必要な演奏技量をクリアしていれば、親がかりの子だったり、亭主持ちだったり、別の本業を持っていたりして、安い謝礼で働いてくれる子を優先しちゃうよね。

 先生のお弟子さんたちを思う気持ちは分かるけれど、一人の社会人として“人を雇う”という観点から見ると、技術的な最低条件さえクリアしていれば、後はなるべく安く使える人材の方がいいのです。正直「安かろう悪かろう」であっても、それで間に合えば、それで良いのです。オーバースペックの予算オーバーでは困るのです。

 そういう意味では、モノホンの演奏家志望は、音楽事務所に入って、高度な演奏力を必要とする演奏の仕事をする以外使いようがないと思うのです。そんな人が、たとえそれが音楽周辺事業であったり、先生業であったりしても、演奏力が直接必要とされない仕事ならば、そりゃあ人気ないよなあ…と言いたくなります。かと言って、音楽事務所に入るには、それなりの仕事の実績がないと難しいので、全くの新人だと、ほんと厳しいと思います。

 だから先生のおっしゃる「演奏家に国家資格を!」と言うのは、理想としては分かります。そういう資格があったら、音楽事務所側も安心して若い音楽家に仕事の発注ができますからね。ただ、音楽の仕事全般に、そんな国家資格が必要となったら、それは困ります。人を雇う側からすると、有資格者は人件費が高いわけだし、そんな有資格者しか雇えないとなると、経費が増えるわけで、商売をする上で、それは避けたいのが本音です。

 だから先生のおっしゃるような、演奏家の国家資格と言うのは、我が国では作られないでしょうね。現状、音大卒という資格で十分なのです。

 優秀な人が食えない業界と言うのは、どうかと思うけれど、所詮、我が国では、音楽で食えるのは、ほんの一握りの恵まれた人たちばかりなのです。残念だけれど、仕事が無いんだから仕方ないのです。

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コメント

  1. おぷー より:

    欧州だって似たようなもんですよ。
    音楽院の入試はあるけど、可能性のある人は全部入れちゃいます。
    そして、学年毎に試験をして、伸びがなければ、容赦ない判断をくだされるので、
    卒業していく人は、最初の年の生徒数の3分の1位になってます。
    で、国家資格を貰いますが、みんなに仕事があるワケじゃないです。
    ですから、頭と人脈をバリバリに使わねばなりません。
    弱肉強食の世界であります。あな、恐ろし。。。

  2. operazanokaijinnokaijin より:

    北海道の高級リゾートのロビーで、
    外国人(白人)のおじ様フルーティストが
    もう、何年も演奏をしています。
    とっても優雅。

    北海道の中級リゾートのレストランで、
    日本人のおじ様フルーティストが
    単発で演奏していました。
    プロフィールが入口に書いてあって、
    日本の芸術系最高学府のご出身。

    その大学を出ても、
    オーケストラや大学などで、
    安定したフルート職に就けるのは、
    ごく少数で、

    フルートと無関係の安定した職に就くか?
    あるいは、フルートの安定した職を目指して、
    不安定なフルート職のまま、吹き続けるか?

    2番目に書いた、日本人フルーティストさんは、
    安定したフルート職を目指しつつ、
    今は不安定でもフルートを吹き続けているんだろうな、
    と思いつつ、

    さて、H先生の説・すとん様の説、
    どっちに1票を入れるかな、
    などと、僭越なことを思ってしまった、
    今日のすとん様エッセイでした。

    おしまい

  3. operazanokaijinnokaijin より:

    今、自称プロ演奏家が100人いるとして(前提A)
    内、10人だけが演奏家資格保持者として(前提B)

    今、1万円の仕事が100件あるとして、

    前提Aであれば、100人で100件の仕事、
    1人あたり1万円の報酬、ということがありえるが、

    前提Bであれば、10人で100件の仕事、
    1人あたり10万円の報酬、ということがありえる、

    で、H先生としては、前提Bを推し進めるべし、
    資格を持たない90人には、
    仕事を与えない、
    報酬をもらえない、というような仕組みを作るべし、
    というようなことと思います。
    そうすれば、資格保持者が演奏だけで食っていける、
    みたいな。

    しかし、現在の日本で、前提Bを推し進めるのは難しい、
    という気も致しますね。

    おしまい

  4. tetsu より:

    こんばんは。

    > 国家演奏家資格

    リサイタル聴きに行くときに国家演奏家資格の有無で選んだことはありません。
    名前だけ(フルートではなくて某ピアノリサイタル)で期待して行ったら?ということも少なくありません。
    音楽は聴いてナンボの世界です。
    そこら中でコンクールやっていてネットもある昨今、19c.か20c.初頭みたいに誰にも知られず埋もれて、という伝説はありえません。

    大学で専門知識を習得して、その専門知識と資格で実利を稼げるのは医者か弁護士(弁護士は最近ヤバイかも)あたりですが、このあたりは数十年前からほとんど変わっていないとおもいます。
    みなさんやりたいことを選んでいらっしゃるので、そのまま続ければいいとおもいます。

  5. すとん より:

    おぷーさん

     そちらの学校は良いですね。可能性のある人は入学できて、勉学に励んで結果を出し続けられれば卒業ですもの。怠けていたら追い出されるなんて…。こちらでは、入学が難しい代わりに、中で努力をしようが怠けようが関係なく卒業できますからね。

    >で、国家資格を貰いますが、みんなに仕事があるワケじゃないです。

     あ、なるほど。資格が万能ってわけじゃないんですね。資格は入場券みたいなもので、中に入ってからも戦い続けないといけないのですね。確かに、そちらも日本も、戦い続けないとダメって点では同じですね。

    >弱肉強食の世界であります。あな、恐ろし。。。

     言葉通りに「神に愛された人」しか生き残れない世界なんでしょうね、ほんとに恐ろしい…。

  6. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

    >そうすれば、資格保持者が演奏だけで食っていける、みたいな。

     そうそうそう! H先生はまさにそれを言っているのですよ。仕事の数に限りがあるのだから、その仕事を限られた人間にだけ得られるようにしろ…とね。

     お弟子をおもいやる先生の気持ちはよく分かるけれど、それじゃあ市場原理に反すると私は思うわけ。良質なモノが必ずしも売れるわけじゃないのが、リアルワールドですからね。

     でも、目の前に、食うに困り、生活に困窮している若くて優秀な音楽家がいたら、同情するしかないし、自分に出来ることは何かないかと思わないでもありません。そこは情の問題なんだな。

  7. すとん より:

    tetsuさん

    >音楽は聴いてナンボの世界です。

     そうなんですよ、そこがポイントなんです。

     私、ふと思ったのですが、国家演奏家資格も否定はしないけれど、やはりコンクールを盛んにすればいいんじゃないかな? コンクールならば、若くて優秀な才能を発掘できるし、コンクール後は、一定期間の間、コンクール優勝者を主催者たちはきちんとバックアップしていく。その後、売れるかどうかは、本人の責任…でしょ?

     とにかく、世に出るチャンス、人に聞いてもらえるチャンスを作ってあげること。それでいいんじゃないかな? 聞いてもらった後の事は、本人任せでいいでしょ。

     テレビ局とか広告会社などが、本腰いれてコンクールに取り組めば、色々変わる思うんだよね。

  8. ドロシー より:

    どんな国家資格でも、それだけで食えるなんてことはありません。
    弁護士や医師も資格取得にお金も労力もかかりますが、開業後だって、決して「資格があるから食える」ではありません。
    結局の所、学歴も、コンクール歴も、また資格試験も過去に認めたくれる人がいた、という証明にはなるでしょう。けど、音楽もその他の専門サービスも一番大切なのは、「いま」であることに変わりません。

    それはそうとして、私の音大卒の知人で平日はOL、土日は演奏家事務所から派遣されて結婚式場で演奏の副業をしていましたが、家庭事情で稼ぐ必要がなくなったため、平日のOLを辞めました。生活費はご主人の収入を頼るらしいですが、ギャラありの演奏はできます。辞めた次の日から堂々と「プロ」と名乗れるものでしょうかね。

  9. すとん より:

    ドロシーさん

    >どんな国家資格でも、それだけで食えるなんてことはありません。

     その通りです。資格と言うのは、技量や品質の保証でしかないわけで、良質だというだけで売れたり繁盛したりはしません。そこが自由市場経済の難しくて楽しいところです。
    >けど、音楽もその他の専門サービスも一番大切なのは、「いま」であることに変わりません。

     これ、ずっしり来ました。そうなんですよ、過去の実績ではなく、今の力量なんですよ。私も頑張んないと…ね。若いものたちに負けちゃいられませんって。

    >辞めた次の日から堂々と「プロ」と名乗れるものでしょうかね。

     プロ…の定義次第でしょうね。私は個人的には、どんな分野であれ、プロとは専業家であって、それだけで生活の糧が得られる人だと思ってます。基本的には、誰かに経済的に養ってもらったり、副業のある人は「どうかな?」と思ってますが、それを言い出したら、賞金の少ないマイナースポーツの方々はプロと呼べなくなってしまうし、過去の有名音楽家たちはたいていパトロンが付いてましたが、そうなると彼らはプロじゃないの?という事になりかねません。

     なので、最近は「“プロ”と名乗っている人はみんなプロ」というふうにも考えるようになりました…ので、そのお知り合いの方は、ご自身が自分をプロだと称するなら、プロなんだと思います。

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